インタビュー記録3494-JP-2
対象: D-19324
インタビュアー: ██博士
<録音開始>
D-19324: インタビューは、終わったんじゃねえのかよ。……わざわざ人を替えて、何の用だ?
██博士: ええ。1つお聞きしたい事がありまして。
D-19324: 「お聞きしたい事」も何も、あの研究員に全部話したよ。嘘はついていない。何なら天地天明に誓ってもいいぐらいだ。
██博士: 疑っているわけではないですよ。私はただSCP-3494-JP-2、いえ貴方のイマジナリーフレンドについて聞きたいだけです。
D-19324: だから、その事はあの研究員に話したって。あそこであいつと会って、一緒に遊んで、抱きしめられて、そしてどっかに行った。
██博士: 私が聞きたかった事はそれです。D-19324、貴方はあの空間で、イマジナリーフレンドに触れたんですか?
D-19324: ああ、そうだ。まあ確かに不思議な事だとは思うが、ぶっちゃけ他の事が気になりすぎてて、そこまで気にしてなかったな。
██博士: ありがとうございます。……後は私達の仕事です。
[██博士が部屋から退出する]
D-19324: ……何なんだよ。
<録音終了>
補遺1: SCP-3494-JPのオブジェクトクラス再分類の申請が霊的業務部門によって提出されました。
SCP-3494-JPのオブジェクトクラス再分類にあたり、レベル4/3494-JPクリアランスを有する人物は以下の資料を必ずお読み下さい。 -██博士
以下は以前SCP-████-JPとして指定されていたクラスB霊的実体に関する歴史的資料です。
アイテム番号: SCP-████-JP
オブジェクトクラス: Ticonderoga Kušum
特別収容プロトコル: SCP-████-JPの個体数は既に財団の収容限界を超過している事が確認されています。このため、霊的業務部門並びに情報隠蔽局による情報の秘匿が現在進行中です。SCP-████-JP自身が有する異常性により、SCP-████-JPは自己収容下に置かれています。現在、SCP-████-JPに対する積極的な収容は推奨されていません。
説明: SCP-████-JPは起源不明の、記憶に関する反ミームを持った特定のクラスB霊的実体群の総称です。SCP-████-JPは一般的に幼少期や青年期の人間の様な外見をしていますが、稀にイエイヌ(Canis lupus familiaris)やイエネコ(Felis silvestris catus)などの動物や一般的に「妖精」と呼称される様な外見をしているSCP-████-JP個体も確認されています。SCP-████-JPは殆どの場合人間に友好的な態度を示しますが、SCP-████-JP個体が収用下に置かれた場合には後述する異常性を利用して収用違反を行います。
SCP-████-JPは19██年に██博士が現在SCP-███-JPと指定されているオブジェクトに対して行ったクラスX記憶補強剤を服用した状態でのハルトマン霊体撮影機を用いた実験の結果、偶然発見されました。
SCP-████-JPの特筆すべき異常性は、あらゆる直接的な干渉が不可能である事です。これはシュタイナー・レヴィ非実体化抑制装置を用いた拘束、メトカーフ非実体反射力場発生装置を用いた物理的干渉なども含まれます。このため、財団はSCP-████-JP個体の永続的な収容及びに研究の試みに現在のところ成功していません。またSCP-████-JP実体群は既に世界各地に存在する事が判明しており、個体数は財団の収容限界を超過しています。しかしながら反ミームという性質上一般社会に与える影響が少ないという点で、これらの実体群は自己収容下にあるとみなされTiconderogaクラスに指定されました。
SCP-████-JPの上記のような特異性から、SCP-████-JPは通常の霊的実体とは異なる起源を持つと推定されています。SCP-████-JPの起源であると考えられる実体(以降、SCP-████-JP-αと呼称)を検知する試みが現在進行中です。発見済です。
SCP-████-JP-αは認識・記憶に関する強力な反ミームを有した実体です。多くの実体はSCP-████-JPと酷似した外見をしていますが、稀に不定形の実体も確認されています。SCP-████-JP-αはSCP-████-JPと同様にあらゆる直接的な干渉が不可能である事が判明しており、有効な収容手順は判明していません。しかしながら、SCP-████-JP-αもSCP-████-JPと同様に自己収容下にあり一般社会に対する影響が微弱であることが判明しています。そのため、積極的な収容はそのコストにより推奨されていません。
「研究していた実体がSCP-████-JPの特徴に酷似した霊的実体へと突然変化した」という██博士の証言により、██博士が研究を行なっていた実体群がSCP-████-JPの起源であると示唆されました。霊的業務部門及びによる研究の結果、これらの実体群がSCP-████-JPの起源であると認められ、SCP-████-JP-αに認定されました。現在に至るまでSCP-████-JP-αがSCP-████-JPに変化する要因は発見されておらず、研究が続けられています。
補遺1: SCP-████-JP-αが有する反ミームには特異性が存在している事が確認されました。一部の人間(以降、SCP-████-JP-1と呼称)にはSCP-████-JP-αの有する反ミームが働かず、SCP-████-JP-αを特殊な器具を用いずに観測・対話する事が可能です。これはSCP-████-JP-1自身が有する霊的実体知覚能力の有無に関係していない事が確認されています。また、SCP-████-JP-1が認識できるSCP-████-JP-α個体数は1~2体ほどであると推定されています。
以下はSCP-████-JP-1群に確認された大まかな特徴です。
- 5~6、あるいは10歳ほどの児童期である
- 一人っ子、または長子である
- 社交的能力が高い
- 他者に対して何らかの劣等感を感じている
しかしながら、これらの特徴を満たす人間の中でもSCP-████-JP-1に指定されている人間は1~2割ほどである点や実体はSCP-████-JP-1に対して「スケープゴートとしての役割」「超自我の形成の補助」「孤独感の緩和」などの有益な影響をもたらす点により、これらの実体は「想像上の友達イマジナリーフレンド」として人間の発達過程における正常な現象であるとカバーストーリーを流布し、一般社会に認知させています。
また、現在までに確認された殆どのSCP-████-JP-αはSCP-████-JP-1を中心とした一定範囲内に存在している事が判明しています。この事からSCP-████-JP-1とSCP-████-JP-αには何らかの相関関係がある事が推測されており、霊的業務部門による研究が進められています。
補遺2: SCP-████-JPが既に一般社会に広く認知されている事やSCP-████-JPへのこれ以上の干渉が有益な結果をもたらさないと推定された事により、SCP-████-JPは20██/██/██にKušumクラスに再指定されました。また、それに伴いSCP-████-JP及びSCP-████-JP-αに関する研究は永続的に凍結されました。
SCP-3494-JPのオブジェクトクラス再分類が検討されている最大の理由は、SCP-3494-JPを所持する事により転移するSCP-3494-JP-1の特異な性質にあります。
SCP-3494-JP-1内部では、かつてSCP-████-JPと指定されていたSCP-3494-JP-2に直接干渉できる事が確認されています。また、特筆すべき点として現在までに確認された回収物は大部分が霊子で構成されているにも関わらず、非異常性の物品と同じような振る舞いを見せており特別な器具を用いずとも観測・干渉が可能です。この性質はSCP-3494-JP-2個体から離れたSCP-3494-JP-2の身体の一部にも適用される事が明らかになっています。このため、SCP-3494-JP-2の身体の一部を回収物としてSCP-3494-JP-1から取り出した場合、あらゆる干渉が不可能であったSCP-3494-JP-2/SCP-████-JPに対して容易に干渉が可能になります。
この性質を利用する事で、かつて収容及び研究が放棄されたSCP-3494-JP-2/SCP-████-JPに対する研究を安定して行う事ができることからSCP-3494-JPをThaumielクラスに分類し、実験に利用する案が霊的業務部門によって提出されました。
以下はO5評議会による投票の結果です。
O5評議会投票概要
評議会投票概要: SCP-3494-JPのThaumielクラスの分類、並びに研究目的での運用。
是 |
否 |
棄権 |
O5-3 |
O5-1 |
O5-4 |
O5-7 |
O5-2 |
O5-9 |
O5-10 |
O5-5 |
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O5-6 |
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O5-8 |
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O5-11 |
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O5-12 |
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O5-13 |
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現段階で、オブジェクトの性質及び危険性を完全に把握できていない。この状況でThaumielクラスへの分類を認可し、実験に使用する事は非常に危険である。よって、私はこの申請を却下する。 - O5-1
SCP-████-JPが現在財団の収容限界を超過している実体であり、それを無闇に刺激することへの不安要素が大きい。このため、私はこの申請に反対する。 - O5-8
SCP-████-JP及びSCP-████-JP-αに対する研究により、得る物が確実に存在するのならばある程度のリスクは許容して運用するのは1つの手だ。また、実験によってそれらの実体への対抗策も発見されるかもしれない。よって、私はこの申請に賛成する。 - O5-10
-
事案記録3494-JP: 20██/██/██、███県███市の民家にて1体のレベルⅤ霊的実体(以下、SCP-3494-JP-εと呼称)が出現しました。SCP-3494-JP-εは非常に敵対的な振る舞いを見せ、多数の被害を発生させました。SCP-3494-JP-εは民間人の通報をきっかけに財団に認知され、機動部隊が派遣されました。
以下はSCP-3494-JP-εの出現から財団の機動部隊の到着までに生じた被害の記録です。
被害(順不同) |
追記 |
民家及び周辺の家屋の倒壊。 |
カバーストーリー「老朽化」を流布。 |
民家周辺の道路の陥没。 |
カバーストーリー「地盤沈下」を流布。 |
民家の住民2名の死亡。 |
夫婦と推測される。複数の打撲跡が確認され、両腕には火傷を負っていた。 |
民間人14名が建造物の崩壊に伴い重軽傷を負った。 |
専門の医療機関で治療中。 |
大量のエクトプラズムの発生。 |
広域のクラスA記憶処理剤の散布で対処しました。 |
SCP-3494-JP-εによる被害を抑えるため、対象の無力化を目的とした機動部隊す-5("十七時の鐘音")が派遣されました。隊員には事前に霊的実体を無力化させるためのアイテムを多数保持させていましたが、本来アイテムの効果として期待される程の有効的な結果をもたらしませんでした。これにより、通常の霊的実体との相違点が存在する事が推定されました。
機動部隊の到着から32分後、██博士によりSCP-3494-JP-εがSCP-████-JPと同様の起源をもつ霊的実体であるという仮説が提唱されました。当初その仮説は「SCP-████-JP個体は非実体性であり、物体への干渉は不可能である」「SCP-████-JP個体は人類に友好的である」などの理由から信憑性に欠けていると考えられていました。しかしながら既存の手段での被害の抑制が非常に困難だと推定されたため、臨時的にこの仮説を採用しました。それに伴い、既存の対応と並行してSCP-3494-JPを用いて対抗策を研究する案が承認されました。
仮説の承認により、サイト-81██にて██研究員によるSCP-████-JPのサンプル採取を目的とした実験を行いました。
実験記録3494-24 - 日付20██/██/██
対象及び実施方法: ██研究員にSCP-3494-JPを所持させる。対象には麻酔薬及びSCP-████-JPのサンプルを入手するための器具を所持させた。また、サンプルの入手に伴いSCP-████-JPの反応を確認し、記録するため対象にはクラスW記憶補強剤を服用させた。
結果: 対象は47分間消失した。
回収物: SCP-████-JPの身体の各部位。
追記: ██研究員には重度の鬱症状が確認された。
霊的業務部門により、██研究員が回収した物品を元にしたアイテムの改良・作成が行われました。SCP-3494-JP-εの無力化を目的としたアイテムの作成は霊的業務部門の最優先事項として位置付けられ、結果的に██研究員の再出現から3時間14分後にスラント霊素固着波生成器及びnPDN(非物質変異無効装置)を元にしたアイテムが臨時的に作成されました。
結果として、SCP-3494-JP-εの発生から5時間41分後に実体の無力化が完了しました。これによりSCP-3494-JP-εがSCP-████-JPと同様の起源を持つという仮説の信憑性が高まり、SCP-3494-JP-εの起源に関する情報を得るため再び機動部隊が派遣されました。SCP-3494-JP-εが出現した民家を探索した結果、死後4日ほど経過したと推定される5歳前後の子供の死体が屋根裏部屋で発見されました。司法解剖の結果、死因は飢餓による衰弱死と断定されました。
以下は発見された死体に確認された特徴です。
- 平均1.7~1.9Hm程のやや高い現実性を保っている。
- 首・背中・鼠蹊部に複数の打撲痕が見られる。
- 両手の甲・腹部・背中に複数の火傷痕が見られる。
検査の結果、高い現実性を維持している事以外の特徴は全て非異常性のものであると結論付けられました。
SCP-3494-JP-εの無力化後に行われた研究により、SCP-3494-JP-εが発見された死体と同様に高い現実性を維持していることが判明しました。SCP-3494-JP-εはこの性質を利用し、現実改変に近い形で自らの実体化を行っていたものだと推測されています。
事案3494-JPをきっかけとして、SCP-████-JPと同様の起源・性質を持った霊的実体の更なる存在が示唆されました。これは既知の霊的実体の中にも一定数存在すると予想され、SCP-3494-JPの研究がそれらの収容の補助になると霊的業務部門により提唱されました。また、このような霊的実体の中でもSCP-3494-JP-εと同様に霊的実体側からの干渉が可能な未知の個体への対策は既存のものでは困難を極めると推測されています。これらの要因により、再度SCP-3494-JPのThaumiel再分類が検討されました。
20██/██/██、O5評議会・霊的業務部門・倫理委員会によってオブジェクトクラス変更に関する会議が行われました。O5評議会の決定により、安全性の確認のためにSCP-3494-JPを用いた実験についての30日間の試運転期間が設けられました。
試運転期間中に行われたDクラス職員による24回の実験と並行して、現時点で確認されている4325体のSCP-████-JPの経過観察を行いました。結果として、SCP-3494-JPを利用してSCP-████-JPに物理的に干渉する事によるリスクは極めて低い事が確認されました。
この結果を踏まえ、SCP-3494-JPはO5評議会・倫理委員会による可決により20██/██/██にThaumielクラスに再分類されました。
補遺2: 霊的業務部門により、上記の性質を利用したプロトコル・デイドリームが確立されました。詳しい概要は以下の資料を参照して下さい。
以下は20██/██/██に制定されたプロトコル・デイドリームの概要です。
このプロトコルはSCP-3494-JP-2の実験・研究用サンプルを採取するための手順です。プロトコル・デイドリームを行う場合、以下の基準を満たす職員を選出して下さい。
- 幼少期にSCP-████-JP-1であった事が推定されている。
- 財団忠誠度テストで高得点を獲得している。
- 過去に医療関係の職業に就いており、人体の解剖などについての一定の知識がある。
- 精神的に安定している事が最低2人の担当職員により認められている。
選出された職員はプロトコル・デイドリームについての説明を受け、その後担当職員による最終チェックをクリアした後、プロトコル・デイドリームを実行します。プロトコル・デイドリームを行う職員は任意でクラスW記憶補強剤の服用が認められています。
以下はプロトコル・デイドリームの手順の概要です。
- SCP-3494-JP-2を拘束しサンプルを回収するための物品を所持している事を確認し、SCP-3494-JPを所持する。
- SCP-3494-JP-1に転移した事を確認した後、SCP-3494-JP-2に対して麻酔薬を注射し、昏睡状態にさせる。
- SCP-3494-JP-2の解剖を始める。この時、脳や心臓などの一般的に生命維持に不可欠であるとされている臓器を避けてサンプルを回収する。
- SCP-3494-JP-2のサンプルの回収が完了したら、可能な限りSCP-3494-JP-2に対しての記録を取る。SCP-3494-JP-1内部では電子機器による記録を残せないため、紙と鉛筆を用いたスケッチなどの方法で記録を残す。
- 消失イベントが終了し、再出現した事が確認できた後担当職員に回収物を手渡す。
プロトコル・デイドリーム終了後、希望する職員に対してクラスA~Cの記憶処理剤の使用が認められています。なお、事前にクラスW記憶補強剤を服用した職員に関しては記憶処理剤との同時服用を避ける目的で記憶処理は認められていません。
過去██回行われたプロトコル・デイドリームにより、財団はSCP-3494-JP-2/SCP-████-JPに関する構造及び性質の理解について高い成果を残しました。その成果の一例として、現在までに安定した収容手順が発見・確立されていなかった霊的実体の7█%がSCP-████-JPと同様の起源を持つ事が判明しました。またそれに伴い、霊的実体に関する1██個の対抗手段の改良・改善が行われました。
以下は現在用いられている霊的実体に関するアイテム及び儀式と、プロトコル・デイドリームの結果改良・改善された内容についての詳細(一部抜粋)です。
アイテム及び儀式 |
改善された内容 |
改良版カーデック計数機 |
霊体の検出の制度が上がり、反ミームを有した霊体の検出が可能になった。 |
ハイズビル幽体固定法 |
SCP-████-JPと同様の起源を持つ霊体の実体化の完了までにかかる時間が大幅に短縮された。 |
シュタイナー・レヴィ非実体化抑制装置 |
一部のクラスⅣ霊体及びクラスⅤ霊体に対しての非実体化の抑制が可能になった。 |
防霊収容庫 |
一部のクラスⅤ霊体の安定した収容が可能になり、収容違反の回数が目に見えて下がった。 |
ハルトマン霊体撮影機 |
改良版カーデック計数機と同様に、反ミームを有する霊体の検知・撮影が可能になった。 |
SCP-████-JPに関する調査の結果、SCP-████-JP-αはSCP-████-JP-1の形而下の「友人」の概念が具現化した実体であると判明しました。この具現化の要因はSCP-████-JP-1が主体となっていると推定されており、多くの場合SCP-████-JP-1の特異性はSCP-████-JP-αに受け継がれます。しかしながらSCP-████-JP-1とSCP-████-JP-αの間には特有の相互関係が確認されており、SCP-████-JP-αによる基底世界への干渉の試みは確認されていません。
SCP-████-JP-αがSCP-████-JPに変化する要因は、SCP-████-JP-1がSCP-████-JP-αを完全に忘却する事であると判明しました。SCP-████-JPが霊体の性質を有する事から、SCP-████-JP-1による忘却はSCP-████-JP-αにとっての事実上の死であると考えられています。またSCP-████-JP-αがSCP-████-JPに変化した場合、SCP-████-JP-αとSCP-████-JP-1の相互関係が失われる事が確認されています。これはSCP-████-JP-1の忘却が原因であると示唆されています。
また、SCP-████-JPはSCP-████-JP-αの性質を受け継ぐ事が確認されました。これらの要因により、SCP-████-JPと同様の性質を有しながら基底世界への干渉が可能な霊的実体が発生していると結論付けられました。
補遺3: 事案3494-JPで実験を行った██研究員の精神の安定が確認された為、SCP-3494-JP-1内部の状況及びSCP-3494-JP-2の様子を確認する為のインタビューが行われました。
以下は██研究員に対し行われたインタビュー記録です。
対象: ██研究員
インタビュアー: ██博士
<記録開始>
██博士: それではインタビューを始めます。よろしくお願いします。
██研究員: よろしくお願いいたします。……ええと、事案3494-JPについての話ですよね。
██博士: そうですね。正確には貴方が体験した、SCP-3494-JP-1内部で起こった事やSCP-3494-JP-2についての事ですね。
██研究員: 起こった事……ですか。
██博士: はい。どんな些細な事でも構いません。転移した後の事をお聞かせ下さい。
██研究員: 了解しました。私はSCP-3494-JP-1に転移し、そこでSCP-3494-JP-2個体を視認しました。資料の通り、確かにあの子……SCP-3494-JP-2個体はあの頃のままの姿でした。私は即座にSCP-3494-JP-2個体に麻酔薬を静脈注射し、昏倒させました。
██博士: そして、サンプルの採取をしたんですよね?
██研究員: そうですね。私の部屋にはクーラーも扇風機もありませんでしたから、少し暑苦しかったですが。汗が垂れないようにしながら、私はSCP-3494-JP-2個体の右足及び背中の皮膚、髪束と左足をサンプルとして採取し、その部位の止血を行いました。その後はスケッチを取り、消失イベントの終了までにできるだけデータを残しておこうとしていました。
██博士: ……そこで、何かあったんですか?
██研究員: はい。そこで大体3時間ほど経った後、SCP-3494-JP-2を寝かしておいた部屋から何やら物音が聞こえてきました。
██博士: 寝かしておいた……貴方はそこにいなかったんですか?
██研究員: 私はその時、別の部屋のスケッチをとろうと部屋を移動していました。私は物音を聞き、その部屋に戻ると麻酔薬を注射されて眠っているはずのSCP-3494-JP-2がこちらを見ていました。
██博士: 麻酔が切れていた、という事ですか?
██研究員: ……それは分かりません。私は確かに規定量の麻酔を注射したはずですから、本来であればまだ麻酔は切れていなかったはずなのですが。SCP-3494-JP-2は私を見て、そして対話を試みてきました。私は身構えていましたが、SCP-3494-JP-2は私に対して「久しぶり」と、まるで何も無かったかのように話しかけてきました。
██博士: SCP-3494-JP-2個体は自分の身体の事を把握していなかった、という事ですか?
██研究員: そういうわけでは無かったと思います。ただ、SCP-3494-JP-2は私を気遣っているような素振りを見せていました。私がSCP-3494-JP-2に対する罪悪感を抱かないように振る舞っているようでした。……そして私を見て、「お医者さんになれたんだ。おめでとう。」とあの子は……SCP-3494-JP-2は言いました。
██博士: [相槌を打つ]
██研究員: SCP-3494-JP-2は、私に向かって「お話しましょう」と呼びかけてきました。██博士も知っているように、私の両親は医者でした。忙しくて深夜まで帰ってくる事がない日もよくありました。……そんな時にあの子、SCP-3494-JP-2は私の寂しさを紛らわせてくれる唯一の存在でした。……半分以上依存してたのかもしれませんが。
██博士: 続けて下さい。
██研究員: ……そんな事もあってか、思わずSCP-3494-JP-2の誘いに乗って話し始めました。もしかしたらSCP-3494-JP-1を早く脱出する方法があるのかもしれない、とも思いまして。
██博士: 貴方は、SCP-3494-JPとどの様な話をしたのですか?
██研究員: SCP-3494-JP-2に対して、私はあの空間…SCP-3494-JP-1について尋ねました。「この空間は、一体何なのか」と。そうしたらSCP-3494-JP-2は、「子供の頃のエゴで成り立っていた私たちとのお別れの場所」と答えました。「私みたいに忘れられちゃった子と遊べる場所」とも。……その後私は、あの子、SCP-3494-JP-2について、あの子自身について尋ねました。
██博士: ……SCP-3494-JP-2は、何と言ったんですか?
██研究員: [ゆっくりと上を向く]「私は、私たちは形なんかなくて、ふわふわとしてて、子供が居ないと消えちゃうぐらい弱いの。」「……もっとも、私たちは長く覚えられて貰えなくて、すぐ死んでこんな身体になっちゃうし。」「それが正しいとしても、少し寂しいね。」……と。勿論異常存在が言う事を鵜呑みにするべきではないとは思いますが。
██博士: ……なるほど。
██研究員: その後私はSCP-3494-JP-1からの脱出をするため、「私はここから脱出しないといけない」とSCP-3494-JP-2に言いました。ここから出る為にはどうするべきか、とも尋ねました。
██博士: SCP-3494-JP-2は、何と?
██研究員: SCP-3494-JP-2は私にしがみつき、「もう少し話していたい」と言いました。ただ、あの時の私……私たちにはこれ以上話をする余裕はありませんでした。
██博士: [相槌を打つ]
██研究員: ……そうして、私はSCP-3494-JP-2に今何が起こっているのかを話しました。SCP-3494-JP-2は黙って、私の話を聞いていました。
██博士: SCP-3494-JP-2に対して説得を試みた、と。
██研究員: そうですね。……SCP-3494-JPは私の話を黙って聞いた後、1分ほど沈黙しました。そして、SCP-3494-JP-2はゆっくりと、小さな声で「じゃあ、お別れしないとね」と私に言いました。「これじゃあ歩きづらいし、手を貸して」とも。私が左足を切断したせいで歩き辛くなっていたので、私はSCP-3494-JP-2に肩を貸しました。
██博士: [相槌を打つ]
██研究員: SCP-3494-JP-2を玄関に連れて行くと、SCP-3494-JP-2は片足立ちのままドアノブに手をかけました。そして、私の方を向いて「お話ししてくれてありがとうね」「元気でね」……と。
██博士: 別れを惜しんでいた……という事ですか?
██研究員: もしかしたらそうなのかもしれませんね。……私はあの子に、「どこに行くんですか」と尋ねました。
██博士: SCP-3494-JP-2は、何と言ったのですか?
██研究員: 「どこにも」と。「自分は忘れられないといけないから。それが正しい事だから。」……そう言って、あの子は最後に「応援してるよ、さよなら。」と……そうしてあの子はドアを閉めました。
██博士: そうして、貴方はSCP-3494-JP-1を脱出したと。
██研究員: ……そうですね。私の家が崩れていく様子を、ゆっくりと見ていました。私は部屋に戻り、脱出に身構えていました。私はふと、罪悪感に包まれてきました。
██博士: 何故ですか?
██研究員: ……ずっと、あの子には励まされていました。深夜まで両親が帰って来ない時も、父親が過労で倒れた時も、あの子だけが側にいて寂しさを少なくしてくれました。SCP-3494-JP-2は確かに異常存在なのかもしれません。ですが、あの子は間違いなく私だけの大事な友達だったんです。……それを私は忘れ、そして大人になって、あの子を傷つけました。正しい事をしたのだろうかと、今でも自問自答しているんです。
██博士: ……少なくとも、結果から見て事案3494-JPの解決には貴方の回収物が必要でした。気に負いすぎる事は無いと思いますよ。
██研究員: ……そうですね。
██博士: ……それに、SCP-3494-JP-2は貴方の事を悪く思っていないと思いますよ。
██研究員: どうしてですか?
██博士: その口調では、貴方宛のSCP-3494-JP-3の内容をまだ確認できてないようですね。……再出現の時の貴方の様子では、確かに難しいとは思ってはいましたが。
██研究員: SCP-3494-JP-3は、もう消失したはずではないのですか?
██博士: 今までの記録と共に3494-JPデータベースに残してあります。気持ちが落ち着いたら、確認してみてはいかがでしょうか。
██研究員: ……ありがとうございます。
<録音終了>
終了報告書: ██研究員は通常業務に復帰しました。██研究員に目立った異変は確認されていません。現在、SCP-3494-JP-2に対し使用する麻酔薬の調整が検討中です。
以下は██研究員の実験により出現したSCP-3494-JP-3の内容です。
……昔みたいに話したい、ってわがまま言って良かった。おうえんしてるよ、がんばれ。 さくらより