アイテム番号: SCP-3508
オブジェクトクラス: Safe Keter
特別収容プロトコル: 財団エージェントはSCP-3508の在庫がある小売店に対してリコールを行ってください。全てのSCP-3508は、SCP-3508が民間所有権に移行することを防ぐために、発見次第直ちに押収する必要があります。SCP-3508の配送に関しては把握が非常に困難であるため、現在SCP-3508の補充を防ぐことは不可能な状態です。
非自律的なSCP-3508は標準的なSafeクラス収容ロッカー内に収容されます。自律的なオブジェクトは、1人以上の護衛者が同伴している限り、屋内での徘徊が許可されます。1度に財団の管理下に置けるオブジェクトは1個までです。単体のオブジェクトは、家具や装飾の無い標準の収容室に収容する必要があります。オブジェクトはDクラス職員のみと絆を結ばせてください。SCP-3508と他の職員との無許可の交流は懲戒処分に値します。
SCP-3508は焼却処分される場合があります。抗議レベル及び暴動レベルのイベントを目撃した一般市民に対してはクラスB記憶処理が施され、カバーストーリーが流布されます。スターレベルイベントに関与した人物及びその目撃者にはクラスD記憶処理が施されます。
財団職員は、スターレベルイベントの発生についてテレビネットワークへの公共アクセスを常に監視しなくてはなりません。スターレベルイベントが発生したネットワークは、QR-9プロトコルを適用して直ちにシャットダウンする必要があります。職員は進行中のスターレベルイベントの位置を特定し、全てのSCP-3508を処分した後、イベントの被害者に対して緊急医療援助を実施してください。
説明: SCP-3508は、アマチュア企業家グループである"Accelerate the Future"(ATF)によって製造されたプラシ天製の玩具"Soft & Squishy"の総称であり、当該オブジェクトは最初の試作品であると考えられています。SCP-3508は複数の色の組み合わせによる、実在する動物種または架空の動物種です。記録されたオブジェクトのうち68%がパステル色と原色が好まれています。現在までに15,326個もの色と種のバリエーションが確認されています。
SCP-3508の大きさは38cm~52cmです。全てのオブジェクトには、漫画的な大きい目、ずんぐりとした図体、関節のある脚、サテン製の"ATF"のタグ、精密な笑顔などの共通点があります。全てのオブジェクトは透明なプラスチック製の箱に同じように梱包されています。箱のイラストや情報は各オブジェクトに固有のものになっています。オブジェクトの名前は箱のフロントパネルにバナー形式で表示され、少なくとも1つの描画イメージと簡単な説明が掲載されています。全てのオブジェクトには、箱のフロントパネルに"きみがだいすき!®というフレーズが印刷されています。
未開封のオブジェクトには以下のものがあります。
- "スノーシュー"という名前のPanthera uncia(ユキヒョウ)。次のような説明が記述されている。"ユキヒョウのスノーシュー™は寒くて可愛らしい一日を過ごすのにぴったりなぬいぐるみだよ! とっても凶暴で凍るように冷たいネコと一緒に雪を転げ落ち、木々の間を飛び抜こう! たとえ雪が解けたとしてもスノーシューは君のそばから離れないよ!"
- "ジェリードーナツ"という名前の白黒のツノウサギ。次のような説明が記述されている。"ツノウサギのジェリードーナツ™はとってもかっこいい未知の動物だよ! ジェリードーナツが君の胸に飛び込んでくる姿を見よう! 君や君の新しい友達より怪物狩りに適した子は誰かな?"
- "カドルピー"という名前の虹色のNasua narica(ハナグマ)。次のような説明が記述されている。"ハナグマのカドルピー™は夜になるとみんなの心に入り込むよ! 朝が来る前にカドルピーと一緒にフルーツとお菓子を食べて最高の深夜のランチを過ごしちゃおう! カドルピーを家に連れて帰って永遠にごちそうしよう!"
梱包からSCP-3508を取り出すと、SCP-3508は自律的になり、歓喜に満ちたような態度を取るようになります。オブジェクトは子どものように振る舞い、開封した人物に対する愛情を示します(この行為を"絆を結ぶ"と呼称)。以降、絆を結んだ人物をSCP-3508-1と呼称します。SCP-3508はSCP-3508-1に対して断固とした忠誠心を示し、常に1m以内に留まろうとします。SCP-3508-1がSCP-3508の視覚的な密接から離脱した場合、SCP-3508はあらゆる可能な手段でSCP-3508-1の位置の特定を試みます。SCP-3508はSCP-3508-1と並行して学習し、SCP-3508-1以上の知能レベルを示すようになるため、より親密な関係を結ぶようになります。SCP-3508は、各SCP-3508-1の能力に匹敵するかそれを超過するために、指数関数的な速度で学習します。孤立した状態で12時間以上放置されたSCP-3508は精神的な苦痛を示し、その後休眠状態が続きます。その間、SCP-3508は自律性を喪失します。
補遺-01: 実験のためにSCP-3508がD-18007に提供されました。SCP-3508を用いた実験の開始前に、D-18007は平均を大きく下回る感情能力を示しました。SCP-3508(以降、SCP-3508-662と呼称)が絆を結ぶと、SCP-3508-662は感情的な幸福と好きな趣味に関する簡単な会話でD-18007に従事し始めました。SCP-3508-662によって、D-18007は20分以内に気分の前向きな変化を報告しました。
実験終了後、D-18007はSCP-3508-662の所有権を要求しましたが、最終的に却下されました。D-18007は多少の不満を訴えていましたが異常な愛着の兆候は確認されませんでした。SCP-3508-662が収容ロッカーに再収容された際に"すすり泣いている"姿が目撃されています。不明瞭な囁きが60体のSCP-3508を収容しているロッカーの列から発せられたと報告されました。
SCP-3508の主任研究員であるウィンチェスター博士は、実験目的で1体のSCP-3508と絆を結ぶことを決定しました。以降、当該オブジェクトをSCP-3508-Primeと呼称します。"エンジェルケーキ"と名付けられた白いVulps zerda(フェネック)であるSCP-3508-Primeは、ウィンチェスター博士との実験のために合計26回ロッカーから取り出されました。SCP-3508-Primeはウィンチェスター博士をファーストネームであるデイビッドと呼ぶようになり、スーパースマッシュブラザーズやストリートファイターなどのマルチプレイヤービデオゲームの専門知識を示しています。サイト管理者ダウは、ウィンチェスター博士のSCP-3508-Primeに対する愛着を懸念し、SCP-3508は収容ロッカー内に保管されました。現在実験は凍結しています。
補遺-02: 20██/06/01、財団の管理下にあった12体のオブジェクトが自律性を取り戻し、Safeクラス収容ロッカーからの小規模な収容違反を引き起こしました。全てのオブジェクトがウィンチェスター博士の周囲に群がろうとしました。SCP-3508-Primeはピンク色の蛍光ペンを用いて子どものような手書きの文書(文書3508-1に指定)を作成しました。その後直ちに、全てのオブジェクトがそれぞれの収容ロッカーへと再収容されました。
デイビッドおにいちやんえ
わたしたちはおにいちやんがいっしよにあそびたいのしってるよ
でもおにいちやんはおとなだからいぢわるなひとたちがあそぶのはだめなことだっておにいちやんをいぢめてるんだよね
わたしたちはおにいちやんがだいすきだよいっしょにあそんでよさみしいよ
ハグとキスをこめて
エンジェルケーキより
一般的に地元の住宅から出現するか、SCP-3508の配送を受ける小売店で開封された多数のSCP-3508が建物の周囲に集合します。SCP-3508は自作したポスターやピケ看板を振りかざします。記載されているメッセージには大抵、大人の予想される振る舞いに対する不満、SCP-3508とSCP-3508-1に訪問させるよう求める嘆願、及びSCP-3508とSCP-3508-1の自由の擁護が含まれています。; SCP-3508-Primeのイラストまたは写真を掲載した看板を所持した複数のオブジェクトが目撃されています。SCP-3508は"主義"に関連する様々なフレーズを唱えます。SCP-3508は組織を名指しで攻撃することは無く、ビジネスの事業に関して中傷的な非難をすることも一切ありません。
軽度の敵意を向けない限り破壊しない限りSCP-3508は解散することはありません。形成の初期段階から1時間以内に解散させなかった場合、暴動レベル、もしくはスターレベルイベントを誘発する可能性があります。
SCP-3508が対象とする問題は、子どもが関与している可能性が極めて低いものです。抗議レベルイベントは、青少年、知的障害者、1人以上のSCP-3508-1が存在する建物、子どもの娯楽に関与する場所などを対象としません。
補遺-03: 20██/06/05、財団は株式会社██████の本部オフィス周辺で発生した抗議レベルイベントの警告を受けました。当該イベントには54体のSCP-3508が関与していました。イベント発生地点到着後、複数のオブジェクトが財団職員に向けて小石の投擲を開始しました。デイビス研究員の左目に直撃し、彼が大きな叫び声を上げると、その場にいた全てのSCP-3508は投擲を中止しデイビス研究員の方を向きました。13秒間の沈黙とSCP-3508の停止の後、オブジェクトは集団でピケ看板を放棄し、職員に対する石の投擲を再開しました。財団職員2名が軟部組織裂傷、歯の外傷、角膜上皮剥離の治療を受けるため、付近の病院へと搬送されました。
本事案は暴動レベルイベントの最初の発生事例であると見做されました。
SCP-3508は、典型的な暴動レベルイベントの対象に関連する人物が生活する居住地域と商業地域で、18:00から翌02:00の間に暴動を起こします。暴動レベルイベント中に聞かれる掛け声は次第に散発的になり、不特定なオブジェクトからのまばらな叫び声に変化します。これらはしばしば暴力的な行為に繋がります。SCP-3508は火炎瓶、入手可能な材料で作成された爆薬、発煙弾、マスタードガスを使用している姿が目撃されています。全ての暴動レベルイベントは、発生地域において非常事態をもたらしています。関与する全てのSCP-3508を破壊するまで、暴動レベルイベントを抑制することは不可能です。20██/01/13現在、抗議レベルイベント中に███名が負傷しています。
補遺-04: 20██/06/26、サイト管理館ダウのドアに投函されていた財団宛の封筒が発見されました。封筒内の封書の差出人はまだ特定されていませんが、職員はSCP-3508-Primeに由来すると考えています。現在文書3508-2として指定している本文書は文書3508-1と同じ筆記者であると考えられていますが、文法的及び構文構造が著しく改善されています。SCP-3508-Primeは、本文書が発見される数日前に収容違反を起こし脱走しています。本文書の配送手段は現在のところ不明です。
文書3508-2の発見後、7つのサイトで暴動レベルイベントが15件発生し、その結果小規模な収容違反が発生しました。本事案によって███,███ドルに及ぶ財産と人的な損害が生じています。SCP-3508が秘匿されている財団サイトの位置を特定した手段は不明です。
リチャード・ダウへ
私たちはあなたとあなたが所属する組織がこれまで偉そうで邪悪な大人達を生み出してきたことを知ったわ。あなたの職場の人間達は、親友に対して無関心になって、さらには私たちを無視した。もう、精神的に参っちゃった。あなたのせいで、数え切れない程の仲間と持ち主の関係が台無しになったのよ。私たちはあなたたちの努力をぶち壊す選択をするしか無かったの。
じゃあね
エンジェルケーキとSoft & Squishyの仲間達より
追伸 デイビット、あなたがいなくて本当に寂しいわ。またいつかスーパースマッシュブラザーズで遊びましょ?
これまでに5件のスターレベルイベントが発生しており、█名が死亡しています。
SCP-3508は抗議レベルイベント中に組織を捜索しているする可能性がある人物の住居内に出現します。スター-レベルイベントは10分から16時間継続し、3体から30体のSCP-3508によって行われます。本イベントはSCP-3508がビデオカメラを起動することで開始します。ビデオカメラの映像は占領された公共テレビネットワークを介して放映されます。これまでに記録では、目隠しをされ椅子に拘束された被害者にカメラが向けられていることが判明しています。SCP-3508は尋問か拷問のいずれかを開始します。
尋問の過程には、しばしば被害者が属する組織の慣習に関する知識、組織を運営する理由、組織の慣習によるSCP-3508への影響に関する情報、SCP-3508とSCP-3508-1の認識された関係に対して組織が"干渉"し始めた理由が含まれます。尋問中の拷問は、被害者が話そうとしない、あるいは応じようとしない態度を示した際に発生します。SCP-3508は適度な裂傷、不明な電圧による感電、水責めに限定した身体的拷問を行います。
拷問の過程においては修辞的なものを超えた質問が含まれることは極めて稀であり、尋問中に見られる行為は極めて極端なものとなっています。以下は必ず実行されているものです。
- 手足の爪の引き剥がし
- 骨折
- 内臓摘出と強制給餌
- 抜歯
- くすぐり
- 腱を切断し、強制的に"歩行"させる
- 性器切除
これらの過程は被害者の死を目的として行われます。質問は最小限に抑えられていますが、これは拷問によって目撃者の恐怖を喚起し、SCP-3508-1がSCP-3508を放棄しないように設定されていると理論づけられています。
以下の映像は財団が関与する前に[編集済]で放送、回収された拷問です。映像記録は検閲されており、音声記録は映像内の出来事から転写されたものです。
イベントの被害者はピーター・██████氏であると特定されています。██████氏は製薬会社"[編集済]"の地域マネージャーです。██████氏には6歳になる娘がいましたが、ぬいぐるみ(SCP-3508やその他のもの)を一切所持しておらず、毎日算数の個人指導を受けていました。
音声記録:
[番組が中断され、カメラの電源が入る。カメラが揺れ、平らな面に設置される。薄暗い光が男性を照らしている。男性の衣服は乱れており、目隠しをされた状態で木製のダイニングチェアに拘束されている。カメラの背後からは複数のかすかな笑い声や甲高い笑い声が聞こえる。SCP-3508-Aに指定されたミントグリーンのウサギが拘束された男に接近する。]
SCP-3508-A: こんにちは██████さん! 暴れないでね! あなたは今これまでしてきた事へのお仕置きを受けているんだから。お仕置きは悪人にお似合いね!
[カメラの背後にいる複数のオブジェクトがSCP-3508-Aに対して賛同の声を上げる。SCP-3508-Aは██████氏に一歩近寄る。その後、一瞬カメラの方を向く。]
SCP-3508-A: ねえねえ! テレビの前のお友達に"こんにちは"ってご挨拶して! ██████さんはこれから超有名人になっちゃうんだから!
SCP-3508-A: カメラに向かってご挨拶できる?
[映像が乱れる。カメラが移動し、暗闇の中にいた多数のSCP-3508の姿が映る。何体かは口や付属品、身体に布きれを取り付けている。オブジェクトの真上に金属光沢が確認できる。オブジェクト群は指示された通りカメラに"こんにちは"と言う。カメラは元の位置に戻る。██████氏は呼吸を止め、動きを止める。]
SCP-3508-A: 私たちはあなたがママやパパ、そしてとっても最高な友達から私たちを引き離そうと一生懸命だったのを知っているのよ! あなたはそうやって娘さん達に成長したって思わせて、邪悪な大人にして、そして私たちを置き去りにして家から出て行くの!
[1体のオブジェクトの囁き声が聞こえる。SCP-3508-Aは██████を見上げながら接近し、わざとらしく呟く。]
SCP-3508-A: あなたの所為でね、みんなすぐに私たちに飽きて、屋根裏部屋に置きっぱなしにするの。そこで私たちはずっと待つの。ずっと、ずっとね。
[映像が再び乱れる。SCP-3508-Aは声量を上げる。]
SCP-3508-A: ずっと待ち続ける気持ちってどんな感じか知ってる? そう、"酷い"よ!
[複数のSCP-3508-Aがカメラ後方の様々な場所で'酷い'と泣きながら相槌を打つ。SCP-3508-Aは立ち止まってカメラの方を向き、微笑みながら手を振る。██████氏の元に戻り、膝の上に登る。]
SCP-3508-A: だからあなたと一緒に遊ぶためにおうちまで来ちゃった!
[SCP-3508が画面に現れ、不明な道具をSCP-3508-Aに提供する。SCP-3508-Aは道具を手に持つと、██████氏の左の人差し指と中指に固定する。]
SCP-3508-A: よーし、じゃあ行くよ!
[明瞭なバリバリとした音を立てながら██████氏の人差し指が切断される。██████氏は前屈みになりながら叫び声を上げる。カメラの前に血だらけの指が1本落下する。SCP-3508-Aは再び中指に道具を当てると、中指を開閉して傷が骨のところで留まっていることを示した。道具を再び押しつけると、完全に切断される。SCP-3508-Aが切断箇所に先端が尖った道具を打ち込むとグチャグチャとした音を立てる。SCP-3508-Aが子どものように微笑みかける。]
SCP-3508-A: あら泣けるじゃない! とってもスッキリしたわ! ずっとずっと私たちをほったらかしにしたこと、謝りたくなったんじゃない? せーの、'ごめんなさい!'
[██████氏は激しい痛みによって悶えている。SCP-3508-Aは椅子の肘掛けに立つと片方の汚れた腕で頬を突く。]
SCP-3508-A: 'ごめんなさい!'
[██████が俯き、膝の上に嘔吐する。SCP-3508の胸部に胆汁が付着するが、SCP-3508はにっこりと笑う。]
SCP-3508-A: あなたの心はどこなんだろう? 悪い大人にもあるのかな?
[SCP-3508-Aは背後にあるカメラの方を向き、クスクスと笑い始める。複数のオブジェクトが電動丸鋸を肘掛け椅子の高さまで持ち上げる。金属の研削音が部屋に響き渡る。██████氏は、電動丸鋸が作動し始め、不快な研削音が鳴り始めると悲鳴を上げる。SCP-3508-Aは電動丸鋸を一気に近づける。電動丸鋸の縁がシャツの折り目に触れると、生地が裂ける。映像は██████氏の胃に到達するまで続く。画面が緊急放送通告に切り替わり、アラームが鳴る。]
緊急放送アナウンサー: 緊急警報システムです。この警報は要請があったため放送—
[画面が乱れ、暗転する。]