SCP-3519
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アイテム番号: SCP-3519

オブジェクトクラス: Keter (Neutralized)

特別収容プロトコル: SCP-3519への感受性を有する人物が生き残っていないことから、これ以上の収容は必要とされません。感染は無力化したと見做されます。世界的メディアのかなりの割合が感染を媒介すると思われ、その収容は現時点の財団に可能な域を越えています。しかしながら、感染した記録媒体の ― 全てではないにせよ ― 大部分は更なる伝達が起こる前に劣化してゆくことが予想されます。

説明: SCP-3519は印刷物・視覚メディア・聴覚メディアにおける複数の媒介物によって拡散するミーム感染です。このミーム感染は、2019年3月5日に世界の終わりが来るということ、そしてその事象が発生する前に自殺するのが望ましいということへの強い確信から成っています。

SCP-3519は、差し迫った終末に関する信念を報じているのであれば、メディアと口伝えのどちらによっても伝達されます。感染は、証拠が欠如しているにも拘らず、当該ミームが積極的に受け入れられることを特徴としています。予測される出来事の具体的詳細は幅広く分かれており、宗教における救世主的な人物の出現、破壊的結果を及ぼす天文学的事象、自然環境の壊滅、技術的特異点、現実不全イベントなどの発生に対する信念が挙げられています。

特筆すべきことに、これらの出来事はどれ一つとして問題の日時に予想されるKクラスシナリオと関連しておらず、当日のKクラス発生可能性についての財団の評価はSCP-3519の報告後も0.015%という僅かな数値です。

初期感染に続き、影響者たちは恍惚として天啓を受けたと主張する、千年王国説を信じ始める、自殺念慮を見せるといった傾向を示し始めます。影響者が感染した様々なSCP-3519信念の文脈上では、超越のための前提条件、もしくは終末事象を乗り切るために好ましい手段として自己安楽死が合理化されます。

自殺は相当数の症例において初期感染の数週間後に発生します。現時点では的確なデータの収集が困難であることから、正確な統計情報は入手できません。しかしながら、SCP-3519の信念を全体的に採用してから40日以上生存している既知の感染者は存在しません。

補遺3519-A、SCP-3519感染メディアのサンプル:

18/12/29、CNNの報道番組、“アンダーソン・クーパー360°”1より抜粋:

アンダーソン・クーパー: それで、その予言というのはどの程度信用できるものなんです?

ケリーアン・コンウェイ: ホワイトハウスとしては、これは非常に信頼性のあるものと考えています。信用できる情報源が複数、世界が3月5日に終わりを迎えるかもしれないと語っています。

ニール・ドグラース・タイソン: 全く以て馬鹿げていますな。人々が自殺に走ったのは悲しむべきことですが、何も起きてはいないのです。空には何もなく、地球上にも気候変動や核戦争から生き残らねばならないという我々自身の脅威以上の物は存在しません。3月5日はそれこそ他の日と同じように進んでいくでしょう。これは2012年のいわゆるマヤの黙示録、或いは90年代に起こったヘヴンズ・ゲートの信者たちによる集団自殺のような事件でしかないのです。

カレラ大司教: 我々は最近、アステカ司祭の秘密結社が現代社会においてマヤの予言に取り組み続けていたという証拠を明らかにしました。それらの予言は、終末を来年の3月5日に再計算したという事でした。我々はこれが聖ヨハネの予言と一致しているのではないかと感じているのです。

コンウェイ: そうです、教会も我々の情報ソースの一つでした。テノチティトラン亡命政府の特使も同様でして、貴方も今朝のTwitterでご覧になったように、大統領と連絡を取り合っています。

画面には当日の朝の大統領のツイートが表示される。“アステカの特使から3/5に世界が終わると聞かされた。何と怖ろしい!”

タイソン: “テノチティトラン亡命政府”などというものはありません、都市伝説です。

カレラ: タイソン博士、貴方はもっとこれらの物事に心を開かれるべきです。

クーパー: さて、お時間はここまでとなりましたが、私個人としては恐ろしいのを認めるのに吝かでないですな。

招待状 19/2/12

地球上でのラスト・ダンス
どこ: ████ █████ ██の屋根の上!
いつ: 19/02/14、午後1時から午前1時まで
なに: 地球最後のバレンタインを一緒に祝おう。ホームバーと生演奏アリ! 仮装してきてもいいです。飲み食いしたい物は何でも持って来て。コンドームが嫌なら捨てちゃえ、これでお終いなんだから、ハハッ。バレンタインの後にチェックアウト予定なら、零時には帰る事を考えておいてね。午前1時になったら高圧電線を落としてヴァルハラ逝きの電撃をブチかますのでプールに集合だ。それとウチは30階建てだからクスリがお好みなら寝る場所は沢山あるよ(真夜中過ぎまで待ってネ)。

Eメール 19/02/20

From: Ssoika@████████████
To: Solsticesunrise@█████████
件名: 理解できたと思う

現実世界がシミュレーションであるというニック・ボストロムの仮説について話した時のことを覚えているかい? 仮に、生命がシミュレーションであるという彼の主張の確率が1であるとしよう。たった今この世界で何が起こっているかを見てほしい、5日を過ぎても生き延び続ける確率は間違いなく1なんかじゃない、急速に0へと減少している。仮に生き延びたとしても、その先にどんな人生が待っているって言うんだ?

世界中の誰もが世界は全く同じ日に終わると、そして生存本能その他全てに反して、その日が来る前に自殺しなければならないと決断する確率はどうだろう? ありそうにないことだが、それは実際に起きている。

スイッチをオフにされる直前のシミュレーションは、内側からはどんな風に見えるだろうか?

僕らが新しいプログラムに移行するとき、外の彼らは僕らをオフラインにする必要があるのかもしれない。

君を愛している、リンナ。すぐにまた会おう。

補遺3519-B、タイムライン:

(T-90) 18/12/05: MTF ψ-10によるメディアの定期監視が、ジョージア州ボガートから発信されているAMラジオ放送 “フィフティ・デイズ2に最初のSCP-3519実例を検知する。当初、これは一般的な黙示録の信念、並びに福音派の宗教放送における終末論的な予言との類似性によって無視された。

(T-71) 18/12/24: ボガートにあるアンドロメダ座教会の信徒17名が、フェノバルビタールの過剰摂取で死亡しているのが発見される。

(T-70) 18/12/25: ボガートでの死者のニュース報道は、国際的なメディアを通じて取り上げられている。財団のミーム分析は、類似するカルト宗教団体の自殺に関する報告と比較して異常なほど同情的な報道に着目する。

(T-67) 18/12/28: 大手の報道発信局は、一面見出しに“クリスマス・イブの惨事”を掲げて活動している。

(T-65) 18/12/30: インドのカリャンコットで発生した300人以上の集団自殺がSCP-3519と関連付けられる。

(T-62) 19/01/02: 関連する自殺は17ヶ国で2600人以上に拡散している。感染がSCP-3519に指定される。ワタナベ・ノリ博士が主任研究員に着任。

(T-61) 19/01/03: SCP-3519の収容プロトコル確立。

(T-53) 19/01/11: MTF η-10の日報がSCP-3519の兆候を示す。機動部隊司令部はMTF η-10の隊員らの任務を解き、Eクラス隔離下に置くよう指示した。

(T-49) 19/01/15: リチャーズ司令官(MTF η-11所属)より、SCP-3519の幾何学的拡散に直面している検疫の努力が完全な失敗に終わったという報告が入る。

(T-47) 19/01/17: SCP-3519収容プロトコル改正。

(T-45) 19/01/19: 自殺率は世界人口のおよそ1%まで増加している。この危機に対する国際的認識は、SCP-3519の妥当性に関する信念の広範な拡散によって妨げられている。

(T-36) 19/01/28: 自殺率は約30%増加。現在の死亡統計は検証が不可能。主流派キリスト教徒、イスラム教徒、ヒンドゥー教徒、仏教徒の間において亜種ミームの存在が確認される。

(T-35) 19/01/29: MTF u-4が実用的なSCP-3519対抗ミームのプロトタイプを報告。

(T-34) 19/01/30: ローマ教皇フランシスコがSCP-3519関連自殺のための教皇特免を発布しようとする。GOCエージェントが現地で教皇を拘留、隔離している。

(T-34) 19/01/30: 収容プロトコル改正。

(T-33) 19/01/31: SCP-3519に感染したGOC工作員が教皇特免の噂を報道陣にリークする。

(T-32) 19/02/01: 自殺率は世界人口の2%に上っている。SCP-3519関連の殺人事件、特に子供の関与するものに関しての信頼性のある報告が表面化し始める。世界各地の公衆衛生とインフラが大量死の影響を受けている。

(T-27) 19/02/06: 自殺による死者は最低でも2億5千万人であり、さらに1億人が疾病や必須サービスの喪失で死亡または瀕死と推定される。財団サイトは、世界的に職員数が10%低下したと報告している。

(T-27) 19/02/06: 収容プロトコル改正。

(T-14) 19/02/19: 1000 UTC頃、イスラエルとイランの間で限定的な核兵器の撃ち合いが勃発。加えてイスラエルの兵器は幾つかの他の湾岸諸国も標的とした。死者の総計は不明。国連の緊急措置によって世界的核戦争は回避され、GOC関係者は結果を確実にするために異常な強制手段を用いたと伝えられる。

(T-13) 19/02/20: ワタナベ博士の死に続き、マリレッツ・カーク博士がSCP-3519プロジェクト主任に昇進する。

(T-13) 19/02/20: 対抗ミームは一体どこで何をしてるんだ?

(T-12) 19/02/21: 疫学モデルは、直接感染と副作用の組み合わせから、今朝の時点で最小でも致死率50%と予測を立てている。

(T-10) 19/02/23: RAISAから遂に対抗ミームについての返事が来た。なんでも“現場で適切な媒介メディアに挿入することが不可能と判明”したそうだ。u-4は兵器化版のミームに取り掛かっているはずだが、私たちのメールに返事をよこさない。彼らには急いでもらわないと、適切な媒介メディアが残らなくなってしまう。

(T-8) 19/02/25: 収容プロトコル改正。

(T-7) 19/02/26: 世界的メディアの大部分が沈黙している。財団サイトからの報告は矛盾している。エリア-055の職員数名は、自殺遺書でSCP-3519に感染してないと主張し、進行中のK-クラスシナリオを自己実現型の預言だとしている。収容下の知的アノマリーが何匹か自殺していると噂されている。SCP-3519割当の者は誰一人、これを確証・否定するクリアランスを持っていない。

(T-6) 19/02/27: プロジェクトSCP-3519はエリア-055の悪化してゆく衛生状態と施設劣化を回避するために隔離地点へ移動した。カリフォルニア州ビショップに近い放棄されたキャビン。財団システムへの衛星アップリンクアクセスは手付かずであることが確認された。食料と水はたっぷり持参してある。

(T-5) 19/02/28: 次席研究員のローリー・ジョーンズ博士がSCP-3519プロジェクト主任に昇進。

(T-4) 19/03/01: プロトコル ローズ・アラバスター3制定 — 次席研究員ローリー・ジョーンズ博士、O5-6に昇進。

(T-3) 19/03/02: 今日マリレッツを埋葬した。

(T-1) 19/03/04: サイト-42のデサイ博士とのコンタクトが途絶。他には誰も応答しない。

(T-1) 19/03/04: 収容プロトコル改正。

(T=0) 19/03/05:

(T+1) 19/03/06: いい天気だ。

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