SCP-3543-JP
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3/3543-JP LEVEL 3/3543-JP

CLASSIFIED

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Item #: SCP-3543-JP

Object Class: Eparch

特別収容プロトコル: SCP-3543-JPは自然界において低確率で発生し得るため、完全な収容は不可能です。自然発生するSCP-3543-JPがヴェールへ与える脅威度はごく小さいものであるため、収容プロトコルは観測と情報統制、及び人為的なSCP-3543-JPと、これを応用した異常技術の捜索・分析に注力されます。SCP-3543-JPの発生が観測された場合、速やかに多次元通信部門へ報告してください。

説明: SCP-3543-JPはヒューム素次元コードHume elementary dimensional code(以下、Hedcと呼称)の第一次元コード~第三次元コードの配列パターンが局所的に重複することで複数の宇宙が接続され、ポータルとして機能する現象を指す、SCP-3543-JP-1~3の総称です。自然発生するSCP-3543-JPの継続時間は非情に短く、かつ終了とともに宇宙の接続も解除されますが、他の宇宙の物質、エネルギー等が基底宇宙に出現する可能性を伴います。

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SCP-3543-JP-1のイメージ

SCP-3543-JP-1はHedcの第一次元コードのパターンが、異なる複数の宇宙において重複する現象です。基底宇宙でSCP-3543-JP-1が発生した場合、互いの宇宙の第一次元が一体化し、幅の無い直線状のポータルが発生します。SCP-3543-JP-1の発生確率は10m³あたり平均2回/年と推測されますが、第二次元・第三次元は依然として独立しており、三次元世界の物質や光等のエネルギーはこのポータルを通過することができません。またその発生時間も平均0.2秒程度と推測されるため、ヴェールに対する脅威度は低いものと判断されています。SCP-3543-JPの観測は極めて困難であり、局所的なHedc第一次元コードのゆらぎとしてのみ観測が可能です。

現在、SCP-3543-JPを人為的に発生させる複数の技術が確認されており、そのうち数点については財団で再現に成功しています。これにより得られた技術により、基底宇宙のHedcのマッピング作業が進められると共に、SCP-3543-JPにより当該宇宙に出現した物体を収容するための他宇宙への調査が、多次元通信部門により実施されています。

補遺1:ヒューム素次元コード理論弦概説

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Hedcのイメージ

ヒューム素次元コードHume elementary dimensional code理論とは現実の構成要素を理解するためのモデルであり、F・U・オーデン、A・オーイシ両氏により提唱された概念上の現実構成要素です。
ヒューム素次元コード理論によれば、我々の存在する宇宙の“現実”の最小単位は“有”と“無”であり、これら“有”と“無”が超高速で繰り返されるパターンにより、物理法則、数学法則等の普遍的な法則が定義づけられます。我々が存在する宇宙は三次元空間であり、各次元階層においてこの配列パターンが存在しており、この概念上の配列パターンをヒューム素次元コードと称します。
加えて、基底宇宙以外の宇宙においてもヒューム素現実コードは存在し、各宇宙の法則を定義づけています。ヒューム素現実コードのパターンや長さ、間隔は宇宙ごとに異なるため、各宇宙はそれぞれの“現実”を有し、独立しています。しかし、何らかの要因により複数の宇宙でこのパターンが一致した場合、これら宇宙は局所的に同一存在と定義づけられ、この個所を通じて相互の干渉が可能となります。
ヒューム素次元コードの性質については下記を参照してください。

多次元通信部門内部研究資料 F・U・オーデン博士著「多次元間における存在・非存在の一致」より抜粋


 “現実”とは何か?
 この宇宙において物理的に“現実”を構成する要素は、物理法則や数式といった普遍の法則だろう。これら普遍性はいわば現実の設計図であり、四則演算からニュートリノ振動に至るまで、この宇宙におけるあらゆる事象がこの設計図に組み込まれ、その普遍性によって宇宙全体で“現実”を揺るぎないものにしている。
 では、これら普遍的な法則自身を構成するものは何か? それこそが、“現実”の真の正体だ。
 概念物理学の観点では、“現実”を細分化すると、二極の概念にたどり着く。それは観察者と被観察者、私と他者、自分という内面世界と自分が不在の外界、1と0、則ち“有”と“無”であって、これが“現実”の最小単位となる。ヒューム素次元コード理論では、ヒューム内には各次元を定義する“現実”は“有”と“無”が繰り返される配列パターンであると見なし、ヒューム素次元コードHume elementary dimensional code(Hedc)と呼称する。このコードは、概念的には“有”と“無”が繰り返されているが、それは単純な反復運動ではなく、さながらコンピューターのプログラムが1と0で構成されように繰り返され、各次元の“現実”を構成している。そして我々の存在するこの宇宙は三次元であるため、ヒューム内においては各次元階層に対応したHedcが存在する。これらHedcの組み合わせにより、我々が“現実”と呼ぶものが生まれている。
 なお、時間は次元ではあるものの他の次元階層とは性質が異なることから、時間軸にHedcは存在しないと考えられる。


多次元通信部門内部研究資料 A・オーイシ博士著「唯一無二の“現実”たち」より抜粋


 ヒューム素次元コード理論では、我々の存在する“現実”とは、ヒューム素次元コード(以下、Hedc)と呼ばれる“有”と“無”の繰り返しにより作られるとしている。Hedcは(時折“ブレ”が生じるものの)常に一定のパターンを繰り返すので、“現実”とは唯一無二の絶対的指標として、この宇宙を定義し、形成している。
 そして、実は、我々が存在する宇宙以外にも宇宙が存在し、Hedcもまた存在する。より正確に述べれば、Hedcが我々の“現実”とは異なる配列を有するから、我々の宇宙ではない他の宇宙の“現実”が生まれるのである。
 ヒューム素次元コード理論において、“現実”が唯一無二であるため物理法則その他の法則は普遍的たり得るが、Hedcの配列パターンや長さが基底宇宙とは異なる場合、その“現実”では我々の宇宙とは全く異なる法則を有する。そして、これらの異なる“現実”たちは“唯一無二”であるために、互いに独立して、通常は決して干渉することはない。
 しかし、前述の通り、Hedcの配列は時として“ブレ”る、つまり“有”と“無”の配列パターンや長さの乱れを引き起こす。この“ブレ”は実に様々な要因により発生するが、特に顕著な例は、現実改変事象のフィードバックだろう。現実改変では高ヒュームの意識体によって、本来は宇宙に存在しない様々な現象を生じるが、Hedc自体が変化するのではなく、Hedcが本来定義する“現実”が改変者により局所的に書き換えられる。そして現実改変事象が収束すれば、周囲の宇宙の圧倒的な“現実”により、書き換えられた“現実”も再度上書きされるが、この過程でHedcの振動は異なる二重の意味を付与された状態に置かれ、これがHedcの配列自体にも影響を与えるのだ。
 現実改変による“ブレ”は、高ヒューム現実改変だけが起こすのではない。ミクロレベルであれば、いわゆる集団による現実改変によっても十分に発生し得る。興味深いことに、扉や穴、鏡、隔離された共同体などHedcの“ブレ”が生じやすい傾向にあるが、こういった場所は人類が共通して“異界”へのイメージを抱いているため、僅かなヒュームの低下によっても瞬間的なミクロレベルの現実改変が生じ易くなるためだと考えられる。
 そして、この“ブレ”により局所的ではあるものの、一つの宇宙に異なる“現実”が同時に存在する状態となる。そして、この乱れたHedcの配列パターンが他の宇宙のHedcと一致した時、唯一無二である宇宙は局所的に同じ“現実”を共有する、つまり同一存在となり、相互の干渉が可能となる。
 このHedcのブレ自体は、計算上は決して低くない確率で起こり得るが、その“ブレ”の範囲は非常に狭く、かつ周囲の正常なHedcに矯正されてほとんどは発生と同時に収束する。他の現実への扉は、思いのほか身近で開いているものの、開く時間はあまりに小さく、あまりにも短すぎるために、誰にも観測されないのだろう。




補遺2:SCP-3543-JP発生事例ログ
以下は、観測に成功したSCP-3543-JP発生事例ログの一例です。その他の記録は多次通信元部門へ問い合わせてください。
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インシデント_3543JP_142、赤丸中の黒い平面がSCP-3543-JP-2

インシデント_3543JP_142:
発生日時: 2002年██月██日15:26:32
持続時間: 約0.21秒
場所: スウェーデン王国ストックホルム市
概要: ████████ストリート上空約4mにて、12件のSCP-3543-JP-2が連続して発生。その面積は約1mm³から300mm³までと不均一であり、光を一切発せず、接続先を視認することはできない。監視カメラに記録されたものの、一般社会に感知されることはなかった。

インシデント_3543JP_402:
発生日時: 2009年██月██日02:50:30
持続時間: 約3.02秒
場所: アメリカ合衆国カリフォルニア州サンノゼ市郊外
概要: █████ホテル412号室にて発生した小規模な現実改変事案の隠蔽作業中、室内の32インチテレビモニターにSCP-3543-JP-2が発生。半径約5m圏内に未知の電磁パルスを放出し、周辺の電気製品の動作不良を引き起こした。目撃者は接続先について“雲一つない真っ青な空が見えた”と証言した。画像取得には失敗している。

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インシデント_3543JP_1057

インシデント_3543JP_1057:
発生日時: 2012年██月██日15:26:32
持続時間: 推定5時間から7時間
場所: アメリカ合衆国ペンシルバニア州アレンタウン市郊外
概要: 2008年に閉院した████████病院の244室にSCP-3543-JP-3aが発生、肝試し目的で侵入していた一般人が目撃し、警察に通報した。目撃者に対しては検査により異常がないことを確認した後、記憶処理を施して解放した。到着した調査チームにより、244室内部は室温が38℃あり、桃色に輝く森林が広がることが確認された。ドローンによる内部調査が計画されたが、投入する前に消失し、その後、再発生は見られなかった。特筆すべき点として、現場は2010年頃から地元住民の間で“異空間に通じる廃病院”という都市伝説が広がっており、肝試し目的の一般人がたびたび侵入していた。

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発見当初のSCP-████-JP

インシデント_3543JP_2775:
発生日時: 不明
持続時間: 継続中
場所: フランス共和国オー=ラン県コルマール市
概要: 2016年██月██日に老衰により死去したS・ガロ氏宅の自室から発見。ドレッサーの鏡面部分にSCP-3543-JP-2が発生しており、長時間にわたり消失しないことから、人為的に発生させられたと考えられる。接続先に岩に囲まれた黄色い台地が見えるが、不明な理由により接続先では光を除く一切の運動エネルギーが発生せず、接続先への進入に成功していない。ガロ氏の日記より、生前の氏は異常芸術社会との接点があり、少なくとも2003年にはSCP-3543-JP-2aの発生した対象を入手していたとみられる。対象は収容され、SCP-████-JPに指定された。

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観測ログ_3543_01、赤丸中の黄色く発光した箇所がSCP-3543-JP-3a

観測ログ_3543_01:
発生日時: 2019年██月██日11:30:11
持続時間: 0.0007秒
場所: サイト-8162 長期ヒューム観測チャンバー5
概要 観測開始後、初めてSCP-3543-JP-3aの発生が観測された事例。発生したSCP-3543-JP-3aは1mm*1mm*3mm程度の空間であった。その後、複数のチャンバーにおける継続観測により、同規模のSCP-3543-JPが1例確認されており、0.00002秒未満で消失した。

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収容当初の SCP-████-JP

インシデント_3543JP_3275:
発生日時: 2020年██月██日03:15:42
持続時間: 継続中
場所: 日本国山形県山形市
概要: 市内の███商店街に出現。近隣住民からの警察への通報を財団が傍受し、急行した機動部隊により拘束。外観はコーカソイドの中年男性に類似するが、接触した光線をスペクトルによって異なる角度で反射・吸収する異常性を有し、衣服や所持品も同様の異常性が確認された。中世ギリシャ語に類似した言語で会話が可能であり、自身を“ハラランボス・ミツォタキヌス”と称し、“収集・管理・隠匿Collection・Control・Concealment財団のフィールドエージェント”であると証言した。検査の結果、身体及び所持品のHedc配列パターンが基底宇宙と異なることから、SCP-3543-JP-3bの発生により転移した他次元の正常維持機関の人間であると判断された。SCP-████-JPに指定され、サイト-81██にて収容。現在、多次元通信部門により定期的な検査とインタビューが実施され、対象のHedc解析及び出身宇宙へのアクセスが試みられている。




補遺3:プロジェクト・アクロース・ザ・カントリー
SCP-3543-JPの人工的な再現に成功する以前は、他の次元への干渉は、自然発生したポータルに依存していましたが、2004年にSCP-3543-JPによる他次元への干渉が実用化されて以降、多次元通信部門の主導により、積極的に他の次元への探索が実施されるようになりました。
その一方で、SCP-3543-JPを用いた技術は財団内部の複数の部門からも注目を集め、技術流用に関する複数の提案がなされました。また、多次元通信部門も物理法則等が未知の次元等に対処するため、収容作戦や研究のために他の部門と協力する必要性が増加していました。これを受けて、財団内でより横断的にSCP-3543-JPの技術を研究し、更なる有効活用を行うべく、2010年にプロジェクト・アクロース・ザ・カントリーが発足しました。
プロジェクト・アクロース・ザ・カントリーには複数の財団内部部門が参加しており、SCP-3543-JPを応用した技術展開について各々の知見から提案し、これを検証します。検証の結果、有効であると判断された提案には最大で3年間、専用の予算が計上され、更なる研究・技術開発が勧められます。
以下はプロジェクト・アクロース・ザ・カントリーによる協議事項リストの抜粋です。完全なリストは、サイト管理官へ閲覧を申請してください。

プロジェクト・ACROSS THE COUNTRYアクロース・ザ・カントリー 議事要旨


議事番号:3543JP-03
提案者: 流通部門
提案内容: 基底次元において、海底や高山等の輸送リスク/コストが著しく高い場所に対し、SCP-3543-JPを用いて平地と接続することで、人員/物資/オブジェクトの輸送コストの大幅な軽減を図るとともに、輸送途中の収容違反や人員/物資ロストのリスク軽減が見込める。


検証結果 ネガティブ。現在までに、基底次元内の異なる二地点がSCP-3543-JPによって接続された事例は確認されていない。また、他の次元を経由することで、基底次元内の異なる二地点を接続することは技術的に可能であるが、SCP-3543-JP発生のためには莫大なエネルギーと費用を要し、かつ、場所ごとに発生装置を構築せねばならないため、費用対効果が見込めない。


プロジェクト・ACROSS THE COUNTRYアクロース・ザ・カントリー 議事要旨


議事番号:3543JP-11
提案者: 巷説部門
提案内容: 特定の場所に侵入した人間が消失する、いわゆる神隠しの伝承は古今を問わず存在し、新たに発生している。これらには、SCP-3543-JPが原因である事例が相当数含まれると考えられるが、ヒューム素次元コードの解析は現状、サイト内の専用の施設でのみ行われている。解析装置を小型化し運搬可能とすることで、現場での解析が可能になれば収容効率の改善が見込める。


検証結果 ポジティブ。統計的にSCP-3543-JPは山中や未開の森林、砂漠、海中等、人間無意識界で“異界”と認識される環境で発生する確率が高くなる傾向にある。解析装置の小型化は技術的に可能であり、これらの環境にて直接解析を行うことのメリットは、技術革新に要するコストを大きく上回ると判断される。


プロジェクト・ACROSS THE COUNTRYアクロース・ザ・カントリー 議事要旨


議事番号:3543JP-19
提案者: 演繹部門
提案内容: 基底次元の“現実”がヒューム素次元コードによって設計されるのであれば、上位/下位の創作次元においても同様に、各物語世界の“現実”を設定するコードが存在することになる。これら各物語世界のコードがSCP-3543-JPと互換性があれば、これらを重複させて物語緩衝層を突破することが可能ではないか。上位/下位物語層の“現実”のコードの解析を提案する。
検証結果 ペンディング。基底次元だけが“現実”のコードが存在するとは考えづらく、また、下位の創作次元において異なる物語間を移動するアノマリーが存在することから、SCP-3543-JPと同様の現象が存在する可能性がある。しかし、それら上位/下位創作次元の存在が基底次元に出現すること自体が稀であり、その物語内の現実のコードの存在を判断するためにはサンプルが不足している状態である。


プロジェクト・ACROSS THE COUNTRYアクロース・ザ・カントリー 議事要旨


議事番号: 3543JP-31
提案者: 戦術神学部門
提案内容: 多くの神格実体は概念世界に起源を持つが、一部の神格は明確に出自を他の宇宙に持つ。それならば、抗神兵器をSCP-3543-JP-3bを用いて顕現前の神格に転送し、攻撃することが可能ではないか。あるいは、顕現した神格実体の攻撃に対してSCP-3543-JP-2を防壁として使用することが可能ではないか。


検証結果 ネガティブ。抗神兵器として SCP-3543-JP-3bを用いることは理論上可能であるが、転送先の正確な位置情報を設定するためにはヒューム素次元コード情報、つまり顕現前の神格またはその存在する次元内存在のサンプルが必要となる。顕現前の神格への攻撃は、実現可能性が低いと判断される。また、防壁としてSCP-3543-JP-2を用いる場合、現状の技術では発生装置の起動から発生完了までに数分のタイムラグが存在し、かつ、これはSCP-3543-JPの規模に比例して長時間化する。対神格戦において、攻撃を受けてから防壁を展開するのは事実上不可能であると考えられる。インシデント_3543JP_4412の発生を受け、議事3543JP-32の運用可能性について再評価がなされた。現在、対神格戦闘を視野に入れた、高出力エネルギーに対する防御手段としてのSCP-3543-JPの活用が検証されている。

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