SCP-3546
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チェライズ・シュルツ作 “犬畜生め、俺は降りるぞ!” (2005)

アイテム番号: SCP-3546

オブジェクトクラス: Neutralized (元 Euclid)

特別収容プロトコル: SCP-3546によって生成された全ての作品は財団の管理下に留められます。これらの作品は異常性を持たないため、更なる措置は必要ありません。

説明: SCP-3546は、アメリカ合衆国ニュージャージー州チェリーヒルに居住していた63歳の未亡人、チェライズ・シュルツでした。シュルツ女史は(物理的にも、化学的にも、その他あらゆる点で)真作と区別できない芸術作品の複製が可能でした。2012年まで、シュルツ女史の作品は定期的にある民間企業によって買い取られ、世間の注目を集める偽造・窃盗・詐欺事件に利用されていました。

シュルツ女史はこれらの作品を非異常性の素材(通常はアクリル絵具)から作成しており、それらの配置や構成が異常な変形を遂げて、彼女が事前知識を持たない既存の芸術作品と同一のものへ変質するような手法で使用していました。彼女はそのキャリアにおいて数百点の絵画、フレスコ画、彫刻を複製しました。集合的に見て、これらの作品群は数億米ドルを超える巨額の利益を上げたものと推定されます。

シュルツ女史は各作品を50米ドル(輸送費・処理費別)で販売しました。

補遺3546.1: 初期インタビュー

インタビューログ


日付: 2012/07/21
質問者: ロバート・マルサス指令官
対象: チェライズ・シュルツ


[記録開始]

マルサス: シュルツさん、あなたは —

シュルツ: あら、そんな、私のことはチェリと呼んでくださいな。

マルサス: あなたはこの絵に見覚えがありますか?

シュルツ: あら、これまるで… ふん。ええ、分かります。2007年だったかしら。覚えてますとも、例の物凄い株の暴落があったすぐ後に描き上げたんですからね。夫の年金に手を付けてなくて幸いだったわ。夫はいつだってお金のことだと頭が回る人でした。

マルサス: これは“真珠の耳飾りの少女”です。

シュルツ: そんな題名付けたかしら? よく思い出せなくて —

マルサス: ヨハネス・フェルメールによって描かれた作品です。

シュルツ: 誰?

マルサス: こちらはどうですか?

シュルツ: これは — 2009年に描きました。“農夫の人生”。いったい —

マルサス: これはグラント・ウッドの“アメリカン・ゴシック”です。1930年に描かれました。

シュルツ: え?

マルサス: では、これは?

[沈黙。]

シュルツ: これはどういう事なの?

マルサス: この作品に見覚えはありますか、シュルツさん?

[沈黙。]

シュルツ: ええ。昨年仕上げたばかり。とても自慢に思っていましたわ。私の最大の作品の一つ。“納屋の馬鹿騒ぎ”と呼んでます。

マルサス: これはパブロ・ピカソの“ゲルニカ”です。

[沈黙。]

シュルツ: あなた、誰?

マルサス: シュルツさん、あなたは何処で絵画を学びましたか?

シュルツ: わ — 分かりません。夫が死んだ後に、ただ始めて — 知らないんです。何か創造的なはけ口が欲しかっただけ。私は絵を描くのが好きなんですの。とても上手く描けます。自然に湧いてくるんです。それが普通なんでしょう? 持って生まれた才能って。私はすごく表現力のある人間で、ただ私は — あなたは何者?

マルサス: シュルツさん、我々と一緒に来ていただきましょう。

[記録終了]

補遺3546.2: 実験ログ

以下は、財団の拘留下で独自の作品を作るために行われた、シュルツ女史の様々な試行の記録です。

実験ログ


日付: 2012/08/15


試行: 対象は何かしら超現実的で、無意味で、無作為な作品を作ろうと試みた。
結果: “記憶の固執”(サルバドール・ダリ作)と同一の複製画。


注記: 「他に溶けた時計だの、ハエだのを描いてた人がいるとは思いませんでしたわ — 何でこんな物を描こうなんて思う人がいるのかしら?」

実験ログ


日付: 2012/08/22


試行: 対象は数分間、無作為にキャンバスに絵具を走らせた。
結果: “収斂”(ジャクソン・ポロック作)と同一の複製画。


注記: 「私はただキャンバスに絵具を叩き付けただけよ。それしかしてない。もう誰かがそれを描いてるの?」

実験ログ


日付: 2012/10/06


試行: 対象は7つのキャンバスを白く塗り潰した。
結果:白い絵画 [7枚パネル]”(ロバート・ラウシェンバーグ作)と同一の複製画。


注記: 「きっと誰かがこういう事をやってるのは分かってたけれど、まさか7回もやってるとは思わなかったわ」

実験ログ


日付: 2013/05/14


試行: 対象はアクリル絵具を使用して、磁器製の小便器を異常生成した。
結果:”(マルセル・デュシャン作)と同一の複製品。


注記: 「今回はいけると思ったの。本当にそう思ったのに」

実験ログ


日付: 2014/09/21


試行: 対象は過去に一度見たことのある漫画のキャラクターを模して雑な絵を描いた。
結果: 当初は独自の作品と思われたが、後ほど、インターネット上に投稿された作品と同一の複製画であると判明した。1


注記: 「私は二度とここから離れられないんでしょう?」

実験ログ


日付: 2016/11/02


試行: 対象は2体の棒人間、数匹のネコ、1件の家屋の絵を描いた。
結果: ある研究者が即座に、自身の7歳の娘が先週描いたものと同一であると特定した。


注記: 「ハロルドが恋しい。猫たちが恋しい。家に帰りたい」

実験ログ


日付: 2018/12/05


試行: 対象はアクリル絵具を使用して、銃器を異常生成し、自身の額に向けて発射した。
結果: 研究者たちはこの自殺がアーネスト・ヘミングウェイのそれと同一であると判断した。


注記: オブジェクトクラスはEuclidからNeutralizedに更新された。

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