SCP-3553-JP
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財団記録・情報保安管理局より通達

SCP-3553-JPの報告書は好奇心抑制ミームを摂取した職員のみ閲覧することが許可されます。閲覧後、僅かでもエクスクラメーションマークの起源に関する関心を抱いたのであれば、記憶処理を受けてください。

アイテム番号: SCP-3553-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: フロント企業を介してエクスクラメーションマークの起源に関するカバーストーリーを流布してください。

Webクローラーによりインターネット上の書き込み等から対象が捜索されます。対象が特定された場合、直ちに確保し、インタビューを行ってください。

全ての対象は標準的ヒト型実体収容チャンバーにて収容されます。

説明: SCP-3553-JPはヒト(Homo sapiens)がエクスクラメーションマーク1の起源について疑問を持ち、探求した際に極低確率で発生すると見られる現象です(以下、SCP-3553-JPの対象となったヒトを単に対象と表記)。SCP-3553-JP発生確率は探求の深度や関心に比例して概ね増加することが判明しています。

SCP-3553-JPが発生する際、対象は映像を思い浮かべます。当該映像の内容や長さは対象ごとに異なりますが、エクスクラメーションマークに類似した光景が登場するということ、それが対象にとって大きな恐怖を感じる内容であることは共通しています。その時点で恐怖によりエクスクラメーションマークの起源に関する一切の興味は失われます。しかしながら、対象はエクスクラメーションマークを視認する度に映像がフラッシュバックすると報告しており、全ての対象は精神的に消耗しています。

特筆すべきことに、好奇心抑制ミームを摂取した研究チームによる調査を行ったにも関わらず、エクスクラメーションマークの起源について有用な情報を得ることはできていません。

補遺: 以下は対象に対する映像についてのインタビューからの抜粋です。

あのとき、私は宇宙にいました。何故いたのか、どこにいたのかはわかりません。ただ、一人だったことは覚えています。

目の前には星──地球だったかもしれません、少なくとも私にとって大切なものです──が浮かんでいます。私は窓からそれを眺めていました。窓に手を触れると、ひんやりとした感覚が伝わってきて、まるで何かと一体化したかのような感覚を覚えました。

そこで私はふと気づきます。星の上──重力はないので厳密には正しくないですが──に何かが浮かんでいるのです。それは宇宙船、あるいは塔でした。概ね長方形の形状に、宇宙と見間違えるほど真っ黒な表面。そして、星より何倍も大きい。

そして、それは星へと降下を始めました。いや、追突の方が正しいかもしれません。とにかく、私はそれを見ることしかできませんでした。宇宙空間は音を伝えないはずですが、星からは悲鳴が聞こえます。それは、家族、友人、恋人、誰も彼もの叫び声を混ぜて捏ねたかのような歪なものでした。私は叫びながら窓を叩きます。

そこで映像が終わります。そして、私の前には、あの光景を模したかのような図形があるのです。丸と、棒の図形が。

僕はあの光景を遠くから見ていました。いや、ただニュースで見ていたのかもしれません。それでも深く記憶に刻み込まれています。

どこかの都市に大きな穴が空きました。あの具合だと、東京かもしれません。とにかく、地面にぽっかりとした円形の穴が空きました。地面に穴が空いているわけではなかったかもしれません。ゲームで言えば、そこだけデータが抜け落ちたかのような、絵で言えば、画家がそこだけ色を塗り忘れてしまったかのような感じでした。

僕、いや、誰一人としてそこに何があったのかを思い浮かべることはできませんでした。それは単に知らなかっただけかもしれませんし、記憶にも穴が空いてしまった可能性もあります。皆、とてもパニックになりました。ただ、誰も何故穴が空いたのかも分からなかったので、どうパニックになれば良いかも分かりませんでした。ある人は世界の終焉を、ある人は楽園の到来を予期しましたが、多くの人は他人事として捉えていました。

そして、穴からは黒い直方体が出てくるのです。それがどんな用途に使われるか、僕達は検討もつきませんでした。穴から出てきた後、それはより大きくなったのです。生物の成長のようではなく、水にインクを垂らしたかのように拡がりました。拡がったそれは、何と形容すればよいのでしょうか、確実に人工物ではあるのですが、かといって人知が及ぶ領域にあるわけではないのです。あれは何らかのオブジェでしょうか、それか何かをかたどったシンボルでしょうか……まあ、そんなことはどうでも良いです。

2個目の穴が空きました。場所は覚えていません。すぐ後、3個目の穴が空きました。あの直方体は拡がりながら上昇を続けます。4個目の穴が空きました。5個目の穴が空きました。6個目の穴が空きました。ここらへんでメディアは報道を辞めました。追いつきませんし、意味もないからです。でも、やはり穴からは直方体が出てくるのです。しかしそれは拡がりはしませんでした。一番最初の直方体がリーダー、将軍、あるいは母だったのかもしれません。僕はぼーっとそれを見ていました。何かをしようとする気は起きませんでした。ふと、足元に違和感を感じます。穴が足を捕まえていました。そして、僕は何かを見つけます。

そこで終わりです。僕は穴の中に何を見たのか覚えていません。きっと、これからも覚えることがないでしょうね。

私は小屋にいます。暖炉があって、丸太でできた暖かい小屋。窓の外には雪が降っていて、深緑の林が広がっています。そして窓からは塔のようなものも見えました。雪景色に似合わない、真っ黒な塔です。私達はその塔を酷く恐れていて、長い間見ることや外に出ることを禁止されていました。何故恐れていたかは知りません。皆、口にも出していなかったから。

私は家族と一緒に小屋で暮らしていました。家族というのは現実のものではなく、あっちの話です。家族は両親と妹で、静かながらも幸せに暮らしていました。ただ、私達はもともとはあの小屋で暮らしていなかったようなのです。妹が時々言うのです。いつになったら前の家に戻れるのか、と。両親はそれを笑いながらはぐらかしていました。妹はまだ小さかったですが、はぐらかされたことはわかるらしく頬を膨らませていました。

両親は毎日夕方にお祈りをしました。ただ、宗教のようなものではありません。決まった文句も聖典もありませんでした。必死に助けてくれるよう祈っていました。きっと、神を信じているわけではないでしょう。あれは極限状態の人間の口から自然と出てくる反射、防衛本能のようなものなのかもしれません。お祈りは10分程度で終わるのです。ただ、小さな子どもにとって、10分は永遠に等しい。妹は外へと出ていきました。私は、ただ見ているだけでした。

父は私を殴りました。母は泣いていました。私は何故妹をそのままにしてしまったのかと考えました……実は、今も考えています。もちろん、妹を放っておいたのは"私"ではないのですが。考えた結果、あの塔が私にそうさせたのではないかと思います。これは単なる自己弁護で、他者に責任を押しつけているだけなのかもしれません。でも、それ以外……考えられない。

[8秒間の沈黙]

両親は私を放って、妹を探しにいきました。一人っきりですと、暖炉の火も全く暖かいとは思えません。それどころか、私の肌を熱さで冷徹に突き刺してくるように思えるのです。しばしの間、孤独でした。

扉を開けたのは父でした。私はすぐに聞きました、妹と母はどうしたのかと。父は沈黙で答えました。そして、ゆっくりと歩き始めました。そのときに私はやっと、父の顔から人間らしさというものがすっかり姿を消していることに気づいたのです。父は私を見ていませんでした。父はただ窓を見ていました。

何かに躓いたのでしょう。父は転びました。そして、その身体から首が取れました。ちょうど、父の身体、頭、私が一直線似になる構図です。頭は徐々に黒く溶けます。私はダンボールの底のリンゴが腐っていく様子を思い浮かべます。黒く溶けたそれは床に染み付いて、いずれ床が黒くなります……黒いという表現はいささか正確ではないかもしれません。あれは底のない穴のようでした。

私はそこでこっちに戻ってきます。そして毎回気づくのです。私から見て、父の身体と穴がちょうど「あの形」を模しているだと。

財団記録・情報保安管理局より通達

報告書閲覧後は簡単な検査を受けることが義務付けられています。

以下の図形を視認してください。

当図形及びその起源に一切の好奇心を持たなかった場合、閲覧を終了してください。

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