SCP-356-JP
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処理部隊が浮上させた防潜網の一部。

アイテム番号: SCP-356-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-356-JPへの対処のため、監視衛星と海上任務部隊「Adventurer」の分遣隊がアメリカ東海岸およびモロッコ、西サハラの各港湾に展開します。所属船舶はフロント企業による運航を装い、SCP-356-JPの沈底している海域を哨戒してください。

後部機雷投下口は溶接によって閉塞されていますが、閉塞部の状態を確認するため半年ごとに深海調査船による検査が行われます。閉塞部破損による防潜網流出が確認された場合、事前に指定される周波数帯で「Adventurer」本部へ通報し処理部隊を誘導してください。処理部隊は周辺海域を管制後、防潜網及び付属している機雷を安全に処理しなければなりません。

説明: SCP-356-JPは、北大西洋の北緯25度から33度、西経35度から67度付近の海域内1に存在し、防潜網を放出する海中物体です。海中物体は、帝政ロシア海軍の潜水艦Krabに酷似しており、本来は機雷投下口である箇所から防潜網を放出しています。防潜網それ自体に異常性は確認されていませんが、膨大な量の防潜網が断続的に放出される事で大規模な航路障害物を形成します。

全ての防潜網は海面下で浮遊するように調整されており、船舶の航行上重大な損傷を発生させます。SCP-356-JPとして分類後から現在までに民間船舶187隻、海軍艦艇24隻、財団所属船舶8隻がスクリューへの絡網などによって航行不能となりました。このうち、民間船舶8隻と潜水艦2隻は救助の遅れにより乗員乗客全員が死亡しています。1915年からは放出される防潜網に対潜水艦用と思われる機雷が付属するようになり、SCPS Dough-boyの触雷沈没など処理部隊の被害が続出しました。

SCP-356-JPの発見当時、哨戒システムが構築される前に多数の船舶に被害が生じたため、被害者によって出没海域に関する流言が多数発生しました2。財団は、海上保険の高騰と海運関係者の業務拒否による社会的混乱の発生を憂慮し、各国政府、保険組合、報道機関と連携してSCP-356-JPに関する流言を沈静化させました。被害者については、当時の「個人記録に関する諸手続3」によって処理が行われました。

SCP-356-JPは、1897年にアメリカ船籍の客船Lexington号が航行不能に陥っていた貨物船を救助した際にその存在が確認されました。当初、該当する海域に防潜網が自然発生する現象として記録されていましたが、1900年に客船Square Mile号が海中を移動しつつ防潜網を放出する物体について報告したことで情報は改訂されました。

1939年10月以降、SCP-356-JPによる防潜網の放出が極めて狭い範囲に限定されたため、財団は対象が何らかの理由で停止したと判断し海底探査による捜索作戦を実行しました。1955年の第6次海底探査では、新鋭バチスカーフを含めた最大規模の部隊が動員され、その結果西経██度██分、北緯██度██分に着底している潜水艦の発見に成功しました。艦尾の機雷投下口から露出していた防潜網は、以前に回収されていた防潜網と同一であると判明し、この潜水艦がSCP-356-JPの本体であると結論付けられました。

SCP-356-JPと断定された潜水艦は、類似した形式の艦の安全潜行深度をはるかに超えた地点に在るにもかかわらず、水圧による破壊の痕跡が見られませんでした。右舷前方と艦橋直後に大きな凹みがありますが、これは爆雷による被害状況に酷似しており、SCP-356-JPは外部からの攻撃によって撃沈されたと考えられます。艦橋の側面には「C.I.C.P」及び「Ile-211」と塗装されており、何らかの組織に属していた可能性があるため調査部門が追跡調査を行っています。また、潜水艦Krabが1915年竣工であるのに対してSCP-356-JPが1890年代から出現したことに関する矛盾についても、同一の性質を持つオブジェクトの存在を視野に入れて調査中です。

補遺-356-JP-1: ドイツ海軍装甲艦Deutschlandによる記録
1939年10月25日、ドイツ海軍所属の装甲艦Deutschlandに搭載された偵察機が、西経██度██分、北緯██度██分で10隻前後の艦艇と飛行船3隻が爆雷攻撃を実施しているのを発見し、艦長Paul Wennekerに報告しています。その報告は当日の航海日誌に記載され、艦長Paul Wennekerによって以下の注釈が加えられました。

偵察機からの報告とほぼ同時刻に通信室でも大量の通信を傍受した。様々な言語が混じり合い内容は不明瞭。書きとめられた単語で頻出していたのはsciphereとcicp。sciphereは英単語としては古すぎる。cicpに至っては全く意味不明。

艦長Paul Wennekerは11月の帰港後に本件を報告していますが、海軍総司令官Erich Raederは、当日の航海日誌の差し替えと注釈の削除を指示しました。

補遺-356-JP-2: 引き揚げ作業の中止について
SCP-356-JPからは防潜網の流出が続いており、溶接による閉塞も一時的な対処しかできないため、より確実な収容を意図して引き揚げ後に陸上保管する計画が立案されました。

しかしながら1986年の作業開始以来、潜水船及び調査船に対する探信音の発振、調査船へのリムペットマインの設置など妨害行動が多発しました。特に、引き揚げ作業で運用予定だった深海潜水調査船3隻が相次いで破壊されたことは引き揚げ計画を中断させるのに十分な理由となりました。

現在、引き揚げ計画は無期延期となっています。

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