SCP-3560-JP
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アイテム番号: SCP-3560-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-3560-JP-A-5に装着されたGPS信号により、SCP-3560-JPの位置は常に監視されます。SCP-3560-JP周辺の半径2km範囲には、カバーストーリー"海荒れ"を適用し、一般人との接触を防いでください。SCP-3560-JP-Aは、研究用に雄型と雌型の2体(それぞれ、SCP-3560-JP-A-1およびSCP-3560-JP-A-2)をサイト-81██小動物収容水槽にて飼育しており、雄型の1体(SCP-3560-JP-A-7)の解剖標本を収蔵しています。実験に使用するDクラス職員を除き、SCP-3560-JPの影響範囲への接近は禁じられます。

説明: SCP-3560-JPは、全長が約50mほどの、異常なクラゲ型実体です。その形質はヤナギクラゲ属(Chrysaora)との類似が見られますが、遺伝子検査の結果はSCP-3560-JPが既存のどのクラゲとも一致しないことを示しました。SCP-3560-JPは太平洋の遠洋を浮遊し、主に大型の魚類などを刺胞毒によって捕食します。

SCP-3560-JPから半径200m付近に接近した人間(以後、被影響者と表記)は、SCP-3560-JPの方向に近づくことを促す強い精神影響を受けます。さらに接近すると、被影響者は段階を踏んで10cm程度の人型実体(SCP-3560-JP-Aと指定)に変異しSCP-3560-JPの傘内に留まります。

段階 外見上の変異 精神的な影響
第1段階 特に変化は見られない。 SCP-3560-JPに対して強い安心感(多くは、「母親のような安心感」と形容)を覚える。積極的にSCP-3560-JPに接近する。
第2段階 首筋に鰓状器官が発生。鰓呼吸が可能になると同時に、肺の萎縮により肺呼吸が不可能になる。 被影響者が衣服を脱ぎ始める。船舶などに搭乗していた場合、船舶から脱出し、海へ飛び込む。SCP-3560-JPを「母親」として認識する。
第3段階 手指の融合、頭部の萎縮。 知能及び語彙の大幅な減少。意思の疎通が不可能になる。
第4段階 身体全体の縮小、SCP-3560-JP-Aへの完全な変異。 情動反応の低下。(おそらく)知性の消失。

SCP-3560-JP-Aは、人間の身体をそのまま10cmまで縮小したような外見であり、現在、SCP-3560-JPの傘内には6 14 33体が生息しています。その外見的特徴より雄型と雌型に分けられています1。遺伝子検査では、一般的なヒト(Homo sapiens)との違いは見当たりませんでした。

SCP-3560-JP-Aは、SCP-3560-JPの触手の内側に生息し、SCP-3560-JPの毒性を利用して外敵から身を守ると共に、SCP-3560-JPの捕えた魚類等の食べ残しや動物遺体等を食料供給源とします。SCP-3560-JP-Aらが自発的にSCP-3560-JPから離れようとした事例は現在まで確認されていませんが、SCP-3560-JP-Aの遊泳能力や索餌能力は他の海生生物に比べ非常に低いため、SCP-3560-JP-AがSCP-3560-JPから離れた場合、海洋で生存するのは不可能であると見積もられています。

補遺:1発見時の記録

SCP-3560-JPは、太平洋上で海上パトロールを行っていたエージェント・惑原によって発見されました。発見当初、SCP-3560-JPはその傘内にすでに4体のSCP-3560-JP-Aを保有しており2、エージェント・惑原が程なくしてSCP-3560-JP-A-5へと変異しました。

以下は、エージェント・惑原がSCP-3560-JPを発見した際の探査記録です。
探査記録3560 - 日付:2016/██/██

探索者: エージェント・惑原(以降、A.惑原と記す)

通信者: エージェント・春村(以降、A.春村と記す)

付記: A.春村は海上の船舶から遠隔でA.惑原に指示を行っている。この日の海上パトロールにおいて、SCP-3560-JP以外の異常実体は発見されていなかった。


<記録開始, 17:56,2016/██/██>

A.春村: では、今回の海洋捜査はこれで終了にしましょう。報告すべき事項がなければ回収に向かいます。

A.惑原: 了解。…ちょっと待って下さい。少し気になる事項がありまして…[A.惑原が一方向へと泳ぎ始める。後に、SCP-3560-JPの位置する方角と判明。]100mを超える実体…クラゲでしょうか。もう少し接近します。

A.春村: 映像確認しました。確かにクラゲですね。しかし、こりゃ大きいな…

A.惑原: それに、見ていると何だか心が穏やかになる感じですね。まるで母親のような…

A.春村: 母親?わからなくもないですが…[唸り声]あっ、クラゲの付近に何か泳いでいます3。何だかわかりますか?

A.惑原: もう少し接近してみますね。[A.惑原がさらにSCP-3560-JPに接近。徐に潜水装備を外し始める。]

A.春村: エージェント・惑原、潜水装備を外したのはどういうことですか?

A.惑原: 特に理由はありません。あと、先ほどのクラゲですが、やはり母親と見て間違いないようです。もう少しお母さんに近づきたいな。お母さん、お母さん…[その後も「お母さん」と連呼し続ける。]

A.春村: [困惑する]惑原さん、惑原さん?聞こえますでしょうか?どうか応答して下さい。

A.惑原: [A.春村には反応せず、その後も「お母さん」と連呼し続ける。録音、録画機器がA.惑原の手によって外され、海中に投げ出される。A.惑原の手は手指が融合しているように見える。]

A.春村: [探索本部連絡口へ向かって]…エージェント・惑原に異常発生。現場には精神影響を及ぼす実体がいると思われます。無人探査をお願いします。

[海中の録画機器がSCP-3560-JPの触手に絡まり、A.惑原の姿を捉える。急速にSCP-3560-JP-Aへと変異し、SCP-3560-JPの傘内へと遊泳する。傘内ではSCP-3560-JP-Aが合計で4体、元A.惑原を囲むように遊泳する。]

<記録終了, 18:05,2016/██/██>

エージェント・惑原の変異を受け、SCP-3560-JPおよびSCP-3560-JP-Aの捜査が無人機にて行われる過程でSCP-3560-JP-A-1、SCP-3560-JP-A-2、SCP-3560-JP-A-5が回収され、またDクラス職員を利用したSCP-3560-JPの異常性の詳細な調査が行われました4。これらのSCP-3560-JP-Aを人間へと戻す試みは失敗しましたが、SCP-3560-JP-A-5の体内ではかつてエージェント・惑原がパトロール業務の一環で装備していた財団製の小型埋め込み式GPSが問題なく作動していました。これを利用しSCP-3560-JP-A-5をSCP-3560-JPの傘内に戻すことで、継続的な位置情報の取得を行い収容に繋げています。

補遺2:2018/██/██追記
2018/██/██の観測で、SCP-3560-JPの周辺にヒトの20週胎児と酷似した10cmほどの未知の実体が8体浮遊しているのが発見されました。財団無人機によって3体を回収、分析したところ、遺伝的にはヒトと同一であり、エージェント・惑原と親子関係にあることがわかりました。

その後実体を成長させた結果、3体全てがSCP-3560-JP-Aと変化し、またSCP-3560-JP傘内に存在した実体も5体全てがSCP-3560-JP-Aへと変化しました。このため実体それぞれをSCP-3560-JP-A-9〜SCP-3560-JP-A-16と指定し、まとめてSCP-3560-JP-A子世代と呼称します5。特筆すべきこととして、飼育下のSCP-3560-JP-Aを繁殖させる試みは現在まで成功しておらず、SCP-3560-JP-Aの繁殖にも何らかの形でSCP-3560-JPが必須であると考えられています。

補遺3:2020/██/██追記

2020/██/██の観測で、SCP-3560-JPの周辺に新たなSCP-3560-JP-A幼体が19体確認されました。財団無人機によって4体を回収、分析したところ、遺伝的にはエージェント・惑原の孫にあたる関係にあることがわかりました。このことから、発生した幼体それぞれをSCP-3560-JP-A-17〜SCP-3560-JP-A-35と指定し、まとめてSCP-3560-JP-A孫世代と呼称します。また、SCP-3560-JP-A-5を含め、SCP-3560-JP-A親世代の行動が緩慢になっています。これは高齢による運動力の低下と考えられており、解剖的な側面においても、SCP-3560-JP-Aに変異した後の平均寿命は多くても4年程度だと見積もられています。

現在のところ、SCP-3560-JP-Aの子世代および孫世代も、SCP-3560-JP-Aの親世代同様生活サイクルのほぼ全てをSCP-3560-JPに依存しており、SCP-3560-JPの傘内から離れる素振りは見せていません。

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