アイテム番号: SCP-3563
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: その性質上、SCP-3563の収容は現状不可能です。代替策として、SCP-3563の収容の取り組みは、SCP-3563が今後発生しうる場所の確定を重視しています。
SCP-3563の発生が確認された場合、報告があった場所に即座に財団職員を派遣します。連邦捜査局の用いる標準的な50 m2の可動式死体安置ユニットをSCP-3563発生地に設立し、その地域一帯を現地の適切な警察に対応するバリケードテープで仕切ってください。SCP-3563が終結するまで、この死体安置所の外部には2人のレベル2警備員を駐在させます。SCP-3563の可動収容ユニットの外部に駐在する警備員は、現地の警察官に見合った服装を着用します。
SCP-3563の影響を受けた民間人はクラスA記憶処理を施した上で財団の拘束下から解放します。
説明: SCP-3563はニューイングランド全域で発生する現象であり、特にメイン州東部およびニューハンプシャー州に影響を及ぼします。SCP-3563は人口500人以上、1,000人以下の町でのみ発生します。財団研究員の見極めによれば、SCP-3563は以下の条件と一致する場所が存在する場合にのみ発生します。
- それまで市場に出されていた廃屋もしくは空き家がある。
- 廃屋の近所に家族が居住している。
- 廃屋は1人以上の子供を持つ家族がかつて所有していたものである。
- かつての所有者の子供が行方不明になっている、もしくは死亡している。
SCP-3563は専ら上記条件を満たす場所の外部 (典型的にはその家屋の私道の端や前庭) で発生します。
SCP-3563は2つの要素、SCP-3563-1とSCP-3563-2から成ります。
SCP-3563-1は非異常な合板と材木で組み立てられたレモネードスタンドであり、キャップ付きの釘と螺子で接合されています。発生記録のうち少なくとも85%において、SCP-3563-1のカウンター上には、赤と黄色のクレヨンもしくは絵の具で "レモネート [原文ママ]、25¢!" と書かれた看板が掲示されていました。
SCP-3563-2は人間の子供であり、性別、人種、民族的背景は異なるものの、年齢は一貫して7〜12歳に見受けられます。DNA検査により、SCP-3563-2実体はSCP-3563の出現から最低でも2年以内に実世界で行方不明もしくは死亡を宣言されていた子供と直接対応すると確認されています。
SCP-3563-2はあらゆる人物にレモネードを25セントで売ろうとしますが、ピンクレモネードやアイスティー、タールと同等の粘度を持つ未知の液体金属を売る場合も確認されています。SCP-3563-2はその年の子供によく見られる振る舞いをし、一貫して財団職員に友好的です。
SCP-3563で販売されるレモネードを購入して飲んだ人物は、SCP-3563-1が設置された構内の空き家に進入するよう強制されます。SCP-3563-2は空き家に最低でも██人の人間が進入するまでレモネードを売り続け、その人数に達すると、SCP-3563-2はSCP-3563-1を離れて空き家に進入します。SCP-3563-2はその後 [削除済] し、臓器や金銭的価値のある私物、そして (これまでに数例のみ) 貴金属が詰められた歯のみを残して去っていきます。
SCP-3563-2を空き家の中まで追尾しようとした、もしくはSCP-3563-2の進入を妨害しようとした結果、これまでに█人以上の財団職員が死亡しています。去ったSCP-3563-2の位置を特定する試みも、SCP-3563が終結した瞬間に追跡装置がオフラインになる他、追尾しようとしても視線上から外れた瞬間にSCP-3563-2が消失する結果となっており、ほとんど成功を収めていません。
インタビューログSCP-3563-2-03
対象: SCP-3563-2-03
インタビュアー: 客員研究員 ██████博士
前書: SCP-3563-2とそれに対応する実世界の子供との関連性を確認するべく、20██/03/09にインタビューが実施された。DNA検査により、SCP-3563-2-03はデクスター・ハーショア (8か月前にマサチューセッツ州████████のバリモアブラザーズ・キャンディー・バレルBarrymore Brothers Candy Barrelの外で死体として発見された8歳の少年) であると確認された。死因は頭部への鈍的外傷であり、デクスターはつまづいてコンクリートに激突したと見られている。
<ログ開始>
██████博士: どうも、レモネードを売ってるのかな?
SCP-3563-2-03: うん! ハットおじ…… ママとパパが言うにはね、僕が5ドル稼げたらお菓子屋さんに連れてってくれるの、好きな物を買っていいよって。
██████博士: ひょっとしてキャンディー・バレルにかい?
SCP-3563-2-03: 対象は硬直し、少し時間を置いてから返事をする。レモネード買わない? 手作りだよ、パパがレモンを絞ってくれたんだ。たったの25セントだよ!
██████博士: お父さんと最後に会ったのはいつかな?
SCP-3563-2-03: そんなの簡単だよ! パパに会ったのは…… 対象は俯いたまましばらく沈黙する。あの…… えっとね、レモネード買わない? 手作りだよ、パパが絞ってくれたんだ!
<ログ終了>
後書: SCP-3563-2とそれに相当すると思われる子供との間には直接的な関連性があると見られるが、この関係がどのような手段で確立されたのかはまだ判明していない。SCP-3563はインタビューの17分後に終結した。
インタビューログSCP-3563-2-08
対象: SCP-3563-2-08
インタビュアー: D-1252、25歳白人女性。3件の轢き逃げと、国家公務員殺害の罪で告訴された。精神疾患があるとは診断されていない。
前書: インタビューは20██/12/02、SCP-3563-2-08が廃屋に進入した直後に実施された。インタビュー時、対象はヒトの脳脊髄液に覆われていた。歯科記録から対象はダニエラ・オークス (4か月間行方不明となっていた8歳の少女) であると確認されている。
<ログ開始>
D-1252: な — 何なのこれ、ここ酷く散らかってる。
SCP-3563-2-08: こんにちは! ごめんなさい、レモネードはもう売れ残ってないの。さっき最後の一滴まで絞り出しちゃった。
D-1252: 一体…… 何があったの? 博士、この子に何を尋ねればいい?
グラント博士: 何か覚えていないか訊いてほしい、3か月以上前のことを覚えているかもしれん。
D-1252: 分かった、あー…… うん、あのね、貴方に何があったの? 貴方って幽霊か何か? 新聞で見たけど、3か月前から行方不明だったそうじゃない。
SCP-3563-2-08: まさか! 幽霊なんていないってパパが言ってたもん。それに、今までハットおじさんと遊んでたんだから! おじさんから、君はこれからお金を稼ぐのを手伝うんだよって言われたの。だからこうしてレモネードを売ってるの!
D-1252: そうなのね、で、そのハットおじさんって何? 貴方のお父さん? 行方不明になった日のことは覚えてる?
SCP-3563-2-08: ううん、最後にパパに会ったのは、その…… パパが森の中を歩きたいって言って、だからネイチャーハイキングに出かけて、それから…… えっと。対象はしばらく沈黙する。ごめんなさい、もう行かないと。
<ログ終了>
後書: 対象が廃屋から逃走しようとしたため、D-1252に追尾するよう指示したが、対象が裏口から出た途端に見失った。SCP-3563はその直後に終結した。"ハットおじさん" なる実体の調査が進められている。
インタビューログSCP-3563-2-14
対象: SCP-3563-2-14
インタビュアー: グラント博士
前書: インタビューは20██/04/02に実施された。財団職員が到着する前に、SCP-3563-2-14は既に█杯のレモネードを売り終えていた。SCP-3563が発生した家屋に機動部隊を派遣し、屋内にいた民間人を外に出した。民間人はその後、クラスA記憶処理を施した上で解放した。DNA検査では決定的な結果は得られず、SCP-3563-2-14の身元は不明である。対象は男性であり、10~12歳と思われるアフリカ系アメリカ人である。
<ログ開始>
グラント博士: やあSCP-3563、調子はどうだい?
SCP-3563-2-14: どうも、おじさん。レモネードを買いませんか? すごく安いですよ、たったの25セントです。
グラント博士: "ハットおじさん" について教えてくれるかな?
SCP-3563-2-14: 質問が分からなかったんですが、何ですって? どうしてそのことを知って…… 何が起こってる? 対象は目に見えて不快になり、動揺して腕を掻く。レモネードを買いませんか? おじさん。
グラント博士: 質問に答えてほしい、SCP-3563。ハットおじさんとは誰なんだ? 君がいなくなってからその人に会ったのかい?
SCP-3563-2-14: おじさ…… いえ、すみませんが、ビジネスモデルについて見知らぬ人に話すわけには…… 話したらあの人からひどい目に遭わされる。
グラント博士: あの人っていうのは、ハットおじさんのことか?
SCP-3563-2-14: 帽子を被った男の人が、今貴方を迎えに来てる。そんなにたくさん質問するべきじゃなかったんだ。
グラント博士: その帽子を被った男の人っていうのは、どういう見た目をしていた?
SCP-3563-2-14: レモネードはいかがですか? たったの25セントですよ。
<ログ終了>
後書: 対象はそれから何も反応を返さなくなり、質問に回答する代わりにレモネードを売ろうとし続けた。SCP-3563は30分後に終結した。約2時間後、グラント博士は最初のSCP-3563の発生地点から4 km近く離れた██████川で死体となって浮かんでいるのが発見された。検死報告によればグラント博士はレンガで撲殺されたとのことであり、これは血の飛び散り方や血痕が類似の殴打事件と一致するためである。
補遺3563-a: 20██/08/14、財団は長年の潜入エージェントから、メイン州████████████の闇市で大量の臓器を始めとするヒトの高価な有機物が売られているとの報告を受けました。購入者の特定を任されたエージェントは、24歳の麻薬の売人であるジェームズ・██████に辿り着きました。当該人物はそれまでに複数の臓器、数点の腕時計、3点の革製財布、純銀が詰められた13本の歯を購入していました。これらの物品を購入した場所について問われると、対象は "黒っぽいオーバーコートを着て、つばのある帽子を被った男" から購入したと財団エージェントに供述しました。物品を誰から購入したのか質問しても、対象曰く当時は "とても暗かった" とのことで、それ以上回答できませんでした。対象にはクラスA記憶処理を施した上で、地方当局に身柄を引き渡しました。
補遺3563-b: 20██/09/24、"帽子を被った男" は財団POI-528と指定されました。今後、ニューイングランドの闇市場で大量の臓器が売られた場合、財団エージェントがサイト-██に直接報告することになっています。