アイテム番号: SCP-3580-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-3580-JPの出現条件を満たすと思われる対象を全て把握するのは非常に困難であり、その発生を予測/阻止することは不可能に近いことから、収容チームはSCP-3580-JPの出現の隠蔽に注力してください。
SCP-3580-JPの出現が発覚した場合、その様子を記録した機器を回収し、記録を編集してください。また、対象の所有者に対してはカバーストーリー「事故死」を適用し、疑似死体の提供を行ってください。
"多次元宇宙奴隷解放委員会"に対する調査は現在も継続中です。
説明: SCP-3580-JPは複数の動物種(以下、対象)の周囲に出現することが確認されている異常実体です。当報告書執筆までに財団は37件のSCP-3580-JPの出現事象を確認していますが、その異常性からSCP-3580-JPによる事案が脱走や事故などとして捉えられている事例があるとみられ、潜在的な事例数は前述したものよりも多い可能性があります。
SCP-3580-JPは体長30cmほどの黒色の卵型実体であり、4本の節足動物のものに類似した関節肢を持ちます。映像には関節肢を用い時速約60kmで移動を行う様子が確認されています。また、関節肢を用いた跳躍を行い、2mほどの塀を飛び越える様子なども記録されています。
SCP-3580-JPの対象となった動物は飼育下にあった、餌付けを受けていた等のヒト(Homo sapiens)との接点が確認されています。しかしながら、その発生事例の少なさ等から、ヒトとの接触がSCP-3580-JP出現の必要条件であると断定できない状況です。また、対象となる種は多岐に渡り、事例が多い順にイエネコ(Felis silvestris catus)、イヌ(Canis lupus familiaris)やジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca)等が確認されています。
SCP-3580-JPは対象の周囲10m以内に瞬間的に出現し、対象の追跡を開始します。通常、その高い移動能力からSCP-3580-JPは1〜5分ほどで対象に接触します。対象に接触したSCP-3580-JPは卵型部分の底面を展開し、対象をその内部に収納します。開口部よりも大きな対象を収納する際では開口部を拡大し対象を収納する様子が確認されています。また、その体積を超えた複数の対象を収納する場合も確認されており、その内部容積は不明です。SCP-3580-JPは対象を収納すると移動を停止し、瞬間的に消失します。
SCP-3580-JPの消失と同時に対象と継続的な交流を持っていたヒトの近辺に紙片が出現します。紙片にはSCP-3580-JPの出現に関連していると見られる実体からのメッセージが英語で記されています。紙片のメッセージは事例毎に僅かに異なりますが、概ね同様の内容について言及されています。例として、以下に8件目のSCP-3580-JPの出現の際に回収された紙片に記されていた内容を添付します。
我々は多次元宇宙奴隷解放委員会という名前で活動している者です。我々はその名の通り、全ての宇宙における奴隷の解放を目標としています。
この度は貴方達の宇宙に奴隷搾取活動が検知されたためにこのような行動を取らせていただきました。少々強引な行動となったことを申し訳なく思います。
我々はこの星では至る所でこのような奴隷搾取が行われていることを確認しました。この現状は多次元宇宙奴隷憲章に違反しており、必ずや是正しなければならないものです。このような他種族の自由を奪い、自らの利の為に使役させる行為は存在してはなりません。
現在、この星には他にも奴隷搾取活動が確認されていますが、今回のようなケースが最も多く発生しているとの分析結果が出た為に、第一に処理するべきとの結論が出され、優先的に処理している状況となっています。他の事例につきましても、本事例を処理した後に対処する予定です。
"多次元宇宙奴隷解放委員会"と名乗る組織について、現時点で当紙片以外の情報は発見されていません。当メッセージが真実であった場合、当該組織は多宇宙に干渉できる存在である可能性が高く、相当に規模の大きい組織であると予想されます。財団は当該組織の規模を考慮し、当該組織の捜索を行っています。
発見経緯: 2024/5/14、アメリカ合衆国カリフォルニア州の住居に設置された監視カメラにおいて、黒い卵型実体がイエネコを追跡している様子を記録しました。2024/5/17、映像を確認した監視カメラの管理者は警察に通報し、動画をSNS上に公開しました(動画には後にカバーストーリー「CGクリエイターの悪ふざけ」が適用された)。警察が映像を確認したところ、追いかけられているイエネコが行方不明として捜索されているイエネコと一致していることが判明しました。警察が映像のことをイエネコを捜索している一家に知らせるために訪れたところ、紙片が出現していたことが判明、警察はこれを何者かによる事件と断定し、捜査を開始しました。
その際に警察内部に潜入していたエージェントにより財団に対して当該事件の報告がなされました。財団は当初これを非異常の事件であると考えていましたが、財団のデータベースに照合した結果、黒い卵型実体の目撃情報に関する報告が過去3件なされていることが判明しました。詳細な情報を照合し、財団は過去に目撃された実体と当該事件の実体が同一である可能性が高いとしました。その後、目撃情報は報告された地域において近い時期にイエネコまたはイヌの行方不明が報告されていることが判明し、財団は実体と動物の失踪の関連を認めました。その後、アメリカ合衆国カリフォルニア州にて別の監視カメラが実体がイエネコを収納している様子を記録しており、動物の失踪と実体の関連が決定的となりました。最終的に実体をSCP-3580-JPとナンバリングし、当該事件、以前の目撃3件とSNS上にて発見された事例2件を含めた6件をSCP-3580-JPによる事案として認定しました。
補遺: 37件目のSCP-3580-JPの出現において、他の事例とは異なる内容のメッセージが記された紙片が出現しました。本事例と他の事例の相違点として、本事例は同一のヒトに対して2度目の紙片出現であった点が挙げられます(本事例において紙片出現の対象となった人物は多数のイエネコを飼育しており、それによりSCP-3580-JPが2度出現することになった可能性があります)。
以下は出現した紙片の内容です。
我々は多次元宇宙奴隷解放委員会という名前で活動している者です。我々はその名の通り、全ての宇宙における奴隷の解放を目標としています。
2度目のこのような行動、誠に申し訳ございません。現在我々も他の宇宙の奴隷解放活動に忙しくこちらの宇宙の解放活動を僅かにしか進められていません。力不足で申し訳ないです。
我々は現在、大規模な奴隷解放活動を計画しています。本当は今すぐ行いたいのですが前述した活動に苦戦しておりまして、活動が完了しだい計画を実行に移したいと考えています。
計画では奴隷を使役している主人を大量に捕縛する予定です。それが成されたならば多くの奴隷が主人の支配から解放されることでしょう。実行が今すぐできないことを悔やむばかりです。
今に貴方達はあの悪辣なる有毛の四足歩行生物の長きに渡る支配から解放されるでしょう!貴方達のような高等生物を使役することは多次元宇宙奴隷憲章第4章に違反しています。我々は貴方達をあの毎日繰り返される給餌や、排泄物の処理等の奴隷業務から解放してみせます。ですから、もう少しの辛抱をお願いします。
職員会議によって、今後出現するであろうSCP-3580-JPに対する対策をSCP-3580-JP研究チームの最優先業務とすること、研究チームの人員の増強が決定されました。また並行し"多次元宇宙奴隷解放委員会"の捜索も進められています。









