クレジット
本記事は、CC BY-SA 4.0ライセンスの下で提供されます。これに加えて、本記事の作成者、著者、翻訳者、または編集者が著作権を有するコンテンツは、別段の定めがない限りCC BY-SA 3.0ライセンスが付与されており、同ライセンスの下で利用することができます。
「コンテンツ」とは、文章、画像、音声、音楽、動画、ソフトウェア、コードその他の情報のことをいいます。
タイトル: SCP-359 - The Hawk
著者: TopDownUnder
作成年: 2021
アイテム番号: SCP-359
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 臨時サイト-359がSCP-359の所在近傍に建設されています。現在、武装機動部隊(AMTF)ガンマ-27("不法侵入")が臨時サイト-359に駐留し、SCP-359の無力化およびSCP-359-Aへの進入、双方の手段発見と実行を任務としています。SCP-359の活動域は人為的に隔絶されているため、SCP-359の無力化案を策定する際には正常性の維持を閑却してください。
ヘファイシウムhephaesium.ヘファイシウムに関する情報は補遺359.2を参照の正確な含有量を推定するため、SCP-359-Aの定期的なGPR測定が実施されます。
アーカイブ版 特別収容プロトコル 2015/05/05: SCP-359の脚部に無線追跡装置を固定し、常時監視してください。オハイオ州運輸局と連携し、一般市民の死傷者の発生阻止を目的として、SCP-359所在付近の高速道路は無期限に閉鎖されます。
説明: SCP-359はButeo jamaicensis(アカオノスリ)を模した翼開長4.3mの金属製彫像です。サンプルが回収されていないためにSCP-359を構成する金属の正確な組成は明らかとなっていません。しかし、SCP-359の大部分がヘファイシウムにより構成されるという確信が現時点で持たれています。日中のSCP-359は完全に不活性状態にあります。定常状態において、SCP-359は夜間にのみ活動します。活動中のSCP-359は捕食性を呈し、感知した動く物体を攻撃します。特筆すべき事項として、有機的なものであっても、SCP-359が獲物を摂食することは一切ありません。代わりとして、SCP-359が獲物の死骸を摘み上げて活動域境界付近に堆積させている様子が観察されています。体躯に対しての翼開長が短いにもかかわらずSCP-359は飛翔能力を有しており、非常に複雑な機動飛行が可能であることが明らかとなっています。
SCP-359-Aは地中構造体であり、SCP-359が止まる台座の近傍に存在する孔穴からの進入が可能です。SCP-359-Aに通じる孔穴への到達に財団は成功していますが、未だ突破はできていません。SCP-359は当該の進入口に侵入する可能性がある人物を積極的に攻撃し、この状況においてのみSCP-359は夜間に活動します。SCP-359-Aへの進入に対する欲求を感知可能なのか、単純に接近する者を見境なく攻撃しているのかは不明です。地中レーダー探査(GPR)の測定により、ヘファイシウムを多量に含有する巨大な空洞の存在が明示されています。
補遺359.1: 発見
SCP-359は2009年1月、オハイオ州道33号線沿いでの失踪事件が相次いで報告されたことにより財団の注意を惹きました。ランカスター市警察署への潜入エージェントにより注目され、調査チームが派遣されました。無残な状態にされた行方不明者の死体およびにSCP-359の鈎爪と嘴に死傷者由来の乾燥した血液が付着していたこと、その双方が調査チームにより発見されました。当該事案が州政府から財団に移管された後、SCP-359が相対的に現代風の意匠であるにもかかわらず建造された記録が存在しないことが追加の調査で判明しました。既知とされる最初の言及は2006年であり、この年にSCP-359の位置する土地がランカスター市へと寄贈されています。
補遺359.2: ヘファイシウム関係文書
冶金学部門作成
1960年代にギリシャの研究チームにより初期発見および命名がなされたヘファイシウムは、鉄とベリリウム青銅およびに未知の元素数種が混合した合金である。例としてSCP-359・SCP-070・SCP-1451など、動くことを意図して作成された構造物にヘファイシウムは最も使用されている。動きを付与することにおいて、より知られた他の方法もあるが、奇跡術や現実改変能力を行使できない人々の間では最も見られるものである。
ヘファイシウムはヘレニズム時代の鍛冶の神ヘパイストス(Hephaestus)にちなんで名づけられており、古代ギリシャの遺跡や工芸品で最もよく見られる。交易およびにアレクサンドロス大王とローマ帝国の征服により古代の世界を伝播した。ヘファイシウムの痕跡は中国の獅子像やインドの仏教ならびにヒンディー教の彫像からも発見されている。ヘファイシウムは広く普及していたにもかかわらず、その生産はギリシャにのみ限定されており、強固に秘匿されていたためにヘファイシウムの製造法は歴史の中で消失してしまった。最後の使用例として、西暦1000年頃のドイツ、ヒルデスハイムの聖ミカエル教会に建造されたベルンヴァルドの扉と柱が知られている。バルト三国全土にヘファイシウムの隠し場所があるとも噂されてきたが、その場所に関する知見も消失してしまっている。
しかしながら、ヘファイシウムにより構造物に付与されたは動きは永久に持続するわけではない。大気中の酸素との化学反応により、時間経過とともにヘファイシウムが錆び、やがては不活化される。嫌気的環境から急に酸素に曝露することで当該プロセスは顕著に進行する。通常、ヘファイシウムの発錆は緩慢な動作や刺激への反応喪失を引き起こし、やがて構造物は完全に不活化する。
ヘファイシウムにはもう1つ、リバースエンジニアリングへの対抗とされる異常な特性を有している。構造物が動作を示した後、何らかの方法で主となる合金塊から一部を切離・抽出・解体すると突如としてルナファクション.錬金術用語で銀を創ること。を起こして異常特性が消失する。そのためにヘファイシウムの正確な組成は不明である。
ヘファイシウムは財団にとって非常に有益なものである。動きを付与する簡易的手法の獲得は、警備やフィールド任務など、財団業務の自動化を助力する可能性がある。加えて、ヘファイシウム製造法に関連する知識の獲得およびにその所有を独占できれば、ヘファイシウム合金の唯一の売り手として財団に経済的利益がもたらさることが証明されている。重要性の観点で先の2点に劣るが、ヘファイシウムの製造法を再発見することは、この金属を生産・使用していた文化への更なる理解を促す超常人類学的功績となるだろう。
補遺359.3: SCP-359-Aの発見
2015年、地質学部門主導の調査プログラムに従い、地中のアノマリー発見を意図して北アメリカ大陸全土のGPR測定が実施されました。SCP-359近傍の測定でその土台直下に空洞状構造体の存在が示唆されました。加えて、この構造体に焦点を当てた測定により、膨大な量の(そしておそらく未活性化状態の)ヘファイシウム堆積物の存在も示唆されました。
偵察チームが派遣され、地中構造体に続く進入口の存在および穿孔の必要性が調査されました。
2015年偵察ログ
日付: 2015/04/17
偵察チーム: パイ-27
目的: RTFパイ-27が即座に配備され、地中構造体の直上エリア内に進入口が存在するかを調査する。進入口が見つからない場合には穿孔の開始地点が策定される。
部隊隊長: PI-1
部隊隊員: PI-2・PI-3
[ログ開始]
PI-1: 無線チェック。
PI-2: 良く聞こえる。
PI-3: 無線に意味あるか?私らがやろうとしてるのって、下に続く穴が見つからないとき用にこの機器を運ぶってだけだろ。はぐれたりはないでしょ。
PI-1: このオペレーションはいかなるときでも標準とされてる、今回のような些末事であっても。
PI-2: ログは記録管理もされている。
PI-1: そのとおり。よし、始めよう。日中をここで過ごすのはもったいない。
PI-3: はいはい…。
[PI-3は機器を拾い上げながら不満を述べる。パイ-27は33号線からSCP-359の土台に向かって歩き始める。]
PI-2: 大きな鳥だな。あれだけの大きさで、これほど長い間を隠匿できていることに驚いている。
PI-3: 私らは大丈夫だよな?
PI-1: デブリーフィングを読まなかったのか?スリー?活動するのは夜間だけだ。具体的には、午後9時から午前6時の間。今が昼の1時8分。大丈夫だ。
PI-3: ていうか、デブリーフィング読む必要あったか?ワン?これからやるのは、穴を見つけるか穴を掘るかだろ。ホワイトハウスに潜入する隠密作戦ブラックオプスとは違う。
PI-2: 一理ある…
PI-1: それはいいから、進むぞ。
[枝角を引掛ける状態で樹木に懸垂したOdocoileus virginianus(オジロジカ)の死骸の横をパイ-27が通過する。]
PI-2: ヤツの狩場に到達した。こんなのを、もっと目にすることになりそうだ。
[パイ-27はSCP-359の土台に到達し、その影で歩みを停止する。]
PI-1: 件の構造体までどれくらい近づいたか確認してくれ、スリー?
PI-3: ちょっと待て。
[PI-3は背負っていた機器を静かに下ろし、バックパックからPDA.訳注: Personal Digital Assistant(個人用情報端末)を取り出す。]
PI-3: 私らは…そのド真ん中のさらに真上にいるみたいだな。レーダーを見るに、地下トンネルみたいなのが近くにあるみたいだが、かなり小さいね。
PI-1: 始めるに絶好の場所だ、そこに向かおう。
PI-2: 言ってるのはこの穴か?スリー?
[PI-1と-3はPI-2の場所まで歩いていく。PI-2は地面に開いた幅0.5mの孔穴を指差している。PI-3は自分のPDAをチェックする。]
PI-3: えっと…そう、それ。いかんせん小さいな。部門がよこした収穫機をまるごと下ろすには広げなきゃっぽい。
PI-2: なら仕事に取り掛かろう。私が機器の準備に取りかかるから休んでていいぞ、スリー。
[PI-3は樹木に寄りかかり休息をとる。PI-1が指揮する中、PI-2が穿孔機の設置に着手する。PI-2がドリルの起動を試みると同時に金属同士の摩擦する音がする。パイ-27の3人はSCP-359に目を向ける。SCP-359は翼部を展開している。SCP-359は土台から飛び立ち、急降下してPI-2を把捉した後に飛翔する。残りのパイ-27隊員は周辺の森に散開する。]
PI-3: どういうことだ、あれは!?日中は大丈夫だって思ってたのに!あんたも言ってたよな、それで██████.PI-2の実名、PI-2がRAISAに匿名を要求していたため削除されました。がどうなったか見たよな!
PI-1: 落ち着け、スリ‐
PI-3: 落ち着け?同僚が、チームメイトが、クソ親友が、デカい金属の鳥に持ってかれるのを目の当たりにして、どう落ち着けって?
PI-1: わからない、スリー。わからない。とにかく、ここから離脱しなくては。鳥が戻ってくるのが聞こえる。
[SCP-359が両翼で羽ばたく音がすると共に突風が木立を抜ける。PI-1と-3は州道に向かって走り始める。SCP-359はパイ-27を追跡し樹林帯から飛び出る。PI-1は息を整えるために暫時立ち止まる。傍で横倒しになっていた木の幹ごと、SCP-359は彼女を把捉して空中に連れ去る。]
PI-3: あぁっ!
[PI-3は木の根につまずくと同時に、SCP-359が方向転回する音がする。ボディカメラを下に倒れ込み、その衝撃で接続が切断される。]
[ログ終了]
上述のログに続いて、流血と創痕を伴ったPI-3が州道近辺で発見されました。PI-1とPI-2は両者とも死亡したものと断定され、後にSCP-359の獲物と同様の状態で発見されたことでその死亡が確定しました。
補遺359.4: ガンマ-27の編成とAWDの連携
補遺359.3の偵察ログでの出来事を受け、SCP-359を突破したうえでSCP-359-Aへ到達することを目的に、重装備部隊が複数派遣されましたがいずれも同様に失敗.締めて、死者6名、負傷者10名、約45万ドル相当の装備損失が4回の派遣により生じました。しています。冶金学部門・地質学部門・SCP-359研究チームによる合同委員会はより効果的な対策を講じる必要があると決議しました。結果、冶金学部門・地質学部門・異常兵器開発部門(AWD)から分遣される臨時サイト-359が設立されました。また、機動部隊ガンマ-27("不法侵入")が編成され、臨時サイト-359に配置されました。以下に機動部隊関連文書を引用します。
武装機動部隊ガンマ-27はSCP-359-Aへの到達任務に失敗した隊員、およびに機動部隊ニュー-7などの戦闘機動部隊からの補充要員から構成されます。SCP-359の終了およびSCP-359-Aへの到達、両手順の確立がガンマ-27の使命となります。当該任務の遂行のため、ガンマ-27はSCP-359の行動と攻撃パターンの定期的観測を実施します。SCP-359の詳細を理解して実行可能な終了手順を確立するために、任務で得られたデータは異常兵器開発部門と冶金学部門に伝達されます。
SCP-359関連文書
異常兵器開発部門 デザイン・パケット
エズラ・エベレスト技師編集 G-27宛
標的の説明: 実体はアカオノスリと同型の大型金属彫像(翼開長 4m・体高 推定9m・重量 不明)である。実体はヘファイシウム(鉄・ベリリウム青銅・未知の元素からなる合金)から構成される。実体の活動時期は、A)夜間、B)SCP-359-Aを防衛時。実体は多大な先入観を以てSCP-359-Aの防衛を行い、動きを見せる一切を攻撃する様子が観測されている。
利用可能な潜在的弱点:
- [利用不可] - 実体の構成にはヘファイシウムが部分的に含まれる。ヘファイシウムの融点は1,274℃である。実体周囲の大気温度を融点まで上昇させる超常兵器はSCP-359の終了に際して現実的な選択肢となりえる。理由: 周辺環境および地中構造体を破壊しうる方法は容認不可と検討されました。
- [利用不可] - 実体の主な武器はその鈎爪と嘴にある。これらの付属器官の無効化は実体の無効化も意味する。実体の切断が可能な超常兵器はその終了を容易に実現できる。理由: 実体の飛翔による突撃で機動部隊隊員が鈍的外傷を被る可能性が残ります。
- [利用可能] [失敗] - 現時点で実体の翼部は移動にのみ使用される。超常現象サイオニック超常兵器を用いて鎖を射出・展開することで翼部を拘束し、終了を容易にする。更新: 手順で使用された鎖は実体を拘束するには強度が不足していました。実体は拘束を打破してサイオンエージェントが終了されました。
- [利用可能] - ヘファイシウムは本体から分離されると錬金術的プロセスを経て銀に変化する。SCP-359の大部分を除去することでヘファイシウムの異常特性を消失し、実体の挙動も喪失する可能性がある。当該手順はSCP-359へ奇跡術的爆薬を投下することで実現される。
兵器-359-9に関する注記:
端的に述べるならば、当該の超常兵器は魔法のロケットに爆薬をくくりつけただけのものです。必要なコンポーネントは以下の通り:
- 異常強化爆薬24kg
- 奇跡術的に活性化された推進駆動システム
- 奇跡術師
- タイプⅡエバーハート共鳴器.EVEを発生させるために電力や奇跡術師を必要としないが、タイプⅠエバーハート共鳴器の5%しかEVEを発生できない。加えて、当該の共鳴器は故障やエラーを起こしやすい。
爆弾とロケットはAWDが提供します。奇跡術師はあなた方で用意できるでしょう。奇跡術師はロケットを活性化させ、標的まで誘導してください。通常であれば標的が放出するEVEを追尾させるところですが、鳥型実体からのEVE放出量はゼロであるとあなた方の観測を基に推定しています。全てが恙無くいけば、359は粉々になり、これ以上に機動部隊隊員を損失することもないでしょう。
加えて、正直に述べると、これ以外の選択肢は残されていません。あのトリとの縁を断ち切りたいのなら今回が上手く行くことをお祈りしてください。あなた方も私も為す術のない状態にあるとわかっていますよね。人口密集区域に近すぎるためこれ以上の異常を伴うやり方は行使できません。司令部も決して許可しないでしょう。
兵器-359-9の状態: コンポーネント 調達・配置済み。
補遺359.5: SCP-359の破壊とSCP-359-Aへの到達
2017年ガンマ-27ログ
日付: 2017/01/23
機動部隊: AMTFガンマ-27
目的: AMTFガンマ-27が配備され、兵器-359-9によるSCP-359の無力化を試みる。SCP-359が無力化された場合、サイト-359に駐留した地質学部門の分遣隊に通知したうえで、SCP-359-Aへの進入口を拡張するための穿孔が開始される。
補注: ログはG-1のボディカメラから回収された。調査のため派遣されたチームにより、SCP-359-Aへの進入口内部に落ちているベストが発見された。ガンマ-27がサイトー359からの通信に応答しなかったことを受けて当該チームは派遣された。G-1の所在は未だ判明しておらず、AWOL.訳注: Absence WithOut Leave(無許可の部隊離脱)が公式表明されている。
部隊隊長: G-1
部隊隊員: G-10・G-23・G-28
[ログ開始]
G-1: 全員、無線チェックだ。
G-23: クリア。
G-10: クリアだ。
G-28: うるさいくらいに、クリア。
G-1: 兵器はどんな具合だ?ツーエイト?
G-28: 良さそう。
G-1: よし、じゃあ行くぞ。
[G-1が森に進入し、残りのガンマ-27隊員が追従する。G-23とG-28が兵器-359-9を交代で運搬する。暫くの後、樹林帯を超えた先に、土台の上で非活性状態にあるSCP-359が映される。土台およびSCP-359-Aへ続く孔穴の周辺に、過去にSCP-359の終了を試みた複数の痕跡が残されている。また、SCP-359の周囲には植物が存在しておらず、小さな空閑地が形成されている。]
G-1: エイト、ロケットの準備にどれくらいかかりそうだ?
G-28: 5分、または6分。そう長くはないはず。
G-1: 359が私らをぶちのめして任務を台無しにしてくるには十分すぎる時間だな。兵器はあの空き地の隅に設置しろ、お前が終わらせるまでヤツはこっちで惹き付ける。テン、万が一の為にお前はエイトとここで待機。ツースリー、私とこい。
G-10: アイアイ、隊長。
[ガンマ-27隊員はG-1の指示に従い頷く。G-28は兵器-359-9に両手を置いて自身のEVEを流し込む。G-1と-23は空閑地に進み出てライフルの照準をSCP-359に定める。両隊員はSCP-359に大量の銃撃を浴びせて彫像を活性化させる。過去の対峙と同様に、SCP-359は翼部を展開して空中へ飛翔した。G-1と-23は林内に離脱する。SCP-359が森林の上から追跡する。2名はSCP-359に追い着かれないよう奮闘するが、先行した状態を維持できている。]
G-1: ロケットはいけそうか?エイト?
G-28: 微細な支障はあったけど、もうじき終わ‐
[起動した瞬間、兵器-359-9が火花による激しい音を発してSCP-359の注意を引く。空閑地の端にいるG-10と-28を発見し、SCP-359は転回して飛ぶ方向を彼らに切り替える。G-1は息を切らしながら立ち止まる。SCP-359を追いかけながら、追従してくるようG-23に合図を送る。]
G-23: 何が起きたの!?
G-28: わからない、こんな音立ててはいけないのに!
G-10: AWDのクソども…
G-1: んなことはどうでもいい、逃げろ。
G-28: 兵器は?置いてくのは‐
G-1: とにかく走れ!
[G-28は兵器-359-9を放棄して接続は切断された。G-10は-28の手首を掴んで逃走し、SCP-359が直上を通過するに際して兵器は横転した。G-1はSCP-359を追跡し、超常兵器を飛び越えて林内に突入する。]
G-1: 州道まで戻れば、そこまでは追ってこない!超常兵器は後で取りに来ればいい!
G-23: ねぇ、野郎ども。1つ質問。
G-1: 何だ?スリ‐
[G-1はG-23に振り向くが、彼女が後ろにいないことに気がつく。]
G-1: スリー、お前どこだ?
G-23: 兵器にジュースをどのくらい注いだの、エイト?
G-28: かろうじて射出できるだけ。な、なぜ?
G-23: ただ‐
[タイプⅡエバーハート共鳴器の作動音をG-23のマイクが拾う。]
G-23: ‐疑問に思っただけ。
G-1: 考えていることは分かってる、そしてそれは上手くいかないぞ、スリー。誰かの誘導が必要だ。
G-23: ん… テン、ロケットって人を乗っけられるほど強度あると思う?
G-10: イエ‐
G-1: ノーだ、無理だ。
G-23: クソ、了解。すぐそっち行く。
G-10: ファック!ここまで追ってくんじゃねぇよ。
G-28: こんな遠くまでは来ないと思ってたのに!
[ドアの閉まる音と金属同士の摩擦音がする。G-10と-28の悲鳴がマイクを通して聞こえる。]
G-1: テン、エイト、どうした!?
[G-1が樹林帯を抜け、州道が目前となる。SCP-359はAMTFの強化輸送車両.強化輸送車両(FTV、Fortified Transport Vehicles)はAMTFが使用する車両であり、爆発・鈍的外力によるダメージ・軽微な現実改変/奇跡術的攻撃への耐久性を以て設計されています。FTVの製造に使用される材料は高価で希少であるため、FTVは機動部隊からの要求に応じて生産・配備されます。の上に止まり、嘴でガラスを突き破ろうと試行する。本事案はSCP-359-Aを防衛するためにSCP-359が最も遠くまで飛行した記録でもある。G-10と-28はFTV内部にいると推定される。]
G-1: 待ってろ、今行く!
G-23: やめて、ワン。死ぬだけよ。
[G-1が周囲を見回すが、G-23は未だ発見できない。]
G-1: お前一体どこだ、スリー?
G-23: 今行くところ。
[騒音がしてG-1が顔を上げる。空閑地からSCP-359の方向に飛行する物体が見える。淡い水色のオーラが物体に纏っている。接近するにつれてG-1はその正体に気づき、前方の州道に向かって走り出す。]
G-1: おい… スリー、絶対止めろ!命令だ!
G-23: [笑い声] この後のこと、私の違背のこと報告できないと思いますよ、隊長。
[G-23は兵器-359-9を辛うじて掴みながらG-1の横を通過する。州道へ接近するにつれてG-23は兵器の先端を押し下げ、SCP-359に照準を合わせる。]
G-1: まだ中にいる、スリー!
G-23: 待って、なに‐
[兵器-359-9がSCP-359と衝突し、爆発する。間も無くして爆発はSCP-359とFTVを飲み込む。SCP-359の体の大部分が爆発で飛散する。黒焦げの、それでも無傷なままのFTVも吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた後に少し転がってから停止した。G-1は膝をつき、その光景を目の当たりにする。押し殺した嗚咽が聞こえる。暫くして、G-1は手探りでボディカメラを停止する。]
[経過時間不明、G-1がボディカメラを再起動させる。FTVから回収したと推測される穿孔機を担いで森を歩いている。]
G-1: 車内を探した。テンとエイトは、彼らは生きながらに焼かれた。スリーのアホが… やりようがあったんだ。輝かしい栄光と名誉を欲しただけなのに… パイに続いて、このザマか…
G-1: 私は-Aに向かう。地質学の連中に穴掘りの連絡とかする手筈だったが、知るか。こんなことのために、この任務が私から奪ってった奴はあまりに多すぎるのに、なのに最初に入るのが私じゃないなんて、そんなのは絶対嫌だ。
[G-1が孔穴に到達する。小声で呟きながら穿孔機を設置する。種々の操作から5分後、機器が作動して穿孔を始める。]
G-1: あそこだ。まずはクソヘファイシウムを取りに行く。クソみたいな任務に、それだけの価値があったかどうか、この目で確かめてやる。
[大きなビープ音が鳴る。]
G-1: バッテリーが少ない。降りたら電源を入れてやるよ。
[G-1がボディカメラを起動させ、這い進んでいた洞穴を照らす。G-1は苦しげな呼吸音を立てる。荒い息の合間に独言する。]
G-1: 下は… クソ暑い… あと… 少しだ。
[洞穴が広がりG-1が立てるようになる。洞穴の終端にドアが確認できるが、SCP-359-Aに通じていると推測される。ドア周辺の温度が約21℃であることを機器が示す。]
G-1: [独り笑い] おい。神さま、どれだけ人が死んで、どれだけ機械がダメになって、どれだけ金がかけられたか、わかってますか?おっと、あの金属にはそれだけの価値があるんでしたよね。
[G-1はドアの取っ手に手を伸ばす。回そうと試行すると、ドアノブが外れて地面に落ちる。]
G-1: 最後の試練ってか?そんなんじゃ止まんねぇよ。
[G-1は後退した後、ドアに肩から体当たりする。3回の繰り返しを終えた時点でドアが軋みながら開扉される。その直後、ドアの向こうで耳障りな異音が響き渡る。負傷した動物の鳴き声・地面に物体が叩きつけられる墜下音・金属の亀裂音が聞こえる。暫くすると音は止み始め、やがて無音となる。G-1は躊躇しながらドアの側面を掴んでゆっくりと全開にする。]
G-1: おい…
[ドアを開け放った先には地上のものに酷似した地下の生態系が広がっている。SCP-359-Aは地下数メートルにあるにもかかわらず上方には空が確認できる。遠方に水域も確認できる。G-1からの視界では、その構造は際限なく続いているように見える。]
G-1: 私がやったのは…
[SCP-359-Aの至る所に動物の彫像が置かれている。その多くはありふれた生命的営みの最中を象られていたが、恐怖とパニックに陥っている状態の彫像も存在した。鳥類を象った彫像の大半は飛行中の姿勢ありながら、地面に墜落したような様相であった。]
[いずれの彫像も目を除いた全身が錆に覆われていた。その目はまだ動いているのが確認できる。]
G-1: [沈黙]
[G-1はボディカメラを手で覆い、電源を切る。]
[ログ終了]
SCP-359-A内部の彫像を分析した結果、純粋なヘファイシウムの身体と銀製の目で構成されていたことが判明しました。現時点でSCP-359研究チームに有力視されているのは、SCP-359-Aはヘファイシウムで構成された動的構造物からなる生態圏であり、外気、つまり酸素の即時曝露による構造物の発錆が引き起こされたという説です。SCP-359-A内部の植物の分析から、いずれの植物も遺伝子改変が生じていることが判明しており、光合成能を欠如していましたが二酸化炭素の吸入を可能としていました。
ヘファイシウムは当該の彫像に動きを付与するために既に使用されており、財団が獲得できる状態にはありませんでした。それにもかかわらず、当該の構造物はSCP-359-Aから搬出されてエリア-34に移送されました。
死去したガンマ-27隊員の遺体は回収されて適切な葬儀が執り行われました。SCP-359の残骸は拾い集められて保管を目的にエリア-34に移送されました。現在のサイト-359は解体途中にあり、資源は他の財団施設へ再配置されています。SCP-359-Aおよび進入口は再封鎖され、標準的保安境界線が確立されています。
SCP-359とSCP-359-AのDecommissionedへのクラス変更を検討中です。