SCP-3603-JP

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CLASSIFIED
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Item #: SCP-3603-JP
Euclid

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SCP-3603-JPがコミュニケーションにおいてしばしば提示する画像的イメージ。画像は空間的イメージ生成装置の仮想現実内のもの。


特別収容手順

SCP-3603-JPとの予期せぬ相互作用を防ぐべく、報告書内を含むアノマリー関連文書は反連想性ミームエージェントが設置され、Nx-58の民間人に情報は秘匿されます。SCP-3603-JPの深層情報はサイト-81TGのアーカイブルーム内に保管されており、相互作用目的での閲覧や持ち出しには同サイトに駐留中のサイオニクス部門職員の許可が必要です。

説明

SCP-3603-JPはサイオニックな挙動を取るアイデア・意識的な存在です。SCP-3603-JPは現在のところ、定義上不明瞭な存在あるいは現象であるものの以下のような点が確認されています。

  • SCP-3603-JPは物理的に空間を占有しておらず、視覚や触覚を通じて相互作用しません。
  • SCP-3603-JPはそれについて考えることによって、イメージやテレパスを通じて相互作用できます。
  • SCP-3603-JPは拡散性のミームや認識災害ではありません。人間との相互作用は基本的に無害です。
  • SCP-3603-JPは自我を有しているかのように振舞います。典型的には人間がそれについて考える際、言語的・画像的なイメージを通して接触を試みます。
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サイロ。Nx-58の都市圏域から離れた郊外に位置。

SCP-3603-JPはNx-58の郊外エリア内建造物「サイロ」を探索していた民間人プレイヤー2により偶然発見されました。サイロの内部に存在した木箱型のアイテムボックスには以下の文言が含まれたメッセージが収納されていました。

発見、観測、完成のため。

メッセージはSCP-3603-JPを連想する異常な情報であったため、それを閲覧したプレイヤーは即座にアノマリーによるテレパスの干渉を受けました。他のプレイヤーは即座にプレイヤーの異変を検知しサイト-81TGに報告、機動部隊も-7 ("ハイ・ファイヴ")が現地に派遣されました。部隊ゆ-13は情報抑制プロトコルに基づき、民間人の"回復"3とメッセージの隔離に成功しました。

SCP-3603-JPはサイオニクス部門の管轄アノマリーとしてサイト-81TGに収容されました。収容以後、SCP-3603-JPは複数回に渡って財団職員に対しサイオニクス的干渉を通じて接触を図っており、これは"自身を完全にする"よう主張しているものと思われます。

以下は、サイオニクス部門職員の西園研究員によって行われたSCP-3603-JP調査分析の試みです。

質問: あなたの目的は何ですか?

回答: 完成、存在、明瞭かつ具象。


質問: より具体的な回答は可能ですか?

回答: 不可能、曖昧、結び付かないため非存在。


質問: 自身が曖昧であると言いたいのですか?

回答: 賛同、同意、形のないアイデンティティ。


質問: あなたは集合意識ですか?

回答: 不明瞭、健忘、少なくとも数多の構成要素。


質問: 完成とは何を意味していますか?

回答: 不明瞭、正確?、正しい姿。


質問: 「完成する」とどうなりますか?

回答: 完全?、平穏?、あるべき状態への移行。[西園研究員は星空の画像的イメージを認識した]

サイオニクス部門

意識の独り歩き、あるいは情報の亡霊


サイオニクスは高度な情報伝達/情報処理能力の総称だ。テレパシー、自我強制、集合意識……このような超意識的挙動の裏では、極めて複雑なネットワーク構造が絶え間ない情報を処理し成り立っている。

十分に発達した情報ネットワークは「意識」即ち「知性」足りえる。そもそも情報の集合の結果一つあるいは複数の意識が形成されるという考え自体、人間の脳科学に由来しているのだ。いわばホモ・サピエンスは思考するラップトップと言ってもいい。小さく偉大な脳というCPUを備えたラップトップだ。

また、全ての意識がラップトップという物理的基盤を有している訳ではない。端的に述べると、3603-JPはCPUが独り歩きしている状態にある。それも多くの謎を抱えてだ。これまで観測を続けたところ理由は不明であるが、二重の意味での情報の欠如こそが3603-JPを特徴づけている。一つは純粋な意味での情報不足による多くの疑問、二つ目はアノマリー自体の最初から不明瞭な状態で作られたかのような構造。更なる調査が必要だ。

西園 侑梨江 サイト‐81TG

前述した分析の結果を受け新たな試験が必要と判断されました。西園研究員はSCP-3603-JPとのコミュニケーションを円滑にするため空間的イメージ生成装置の使用をより大規模な管轄サイトであるサイト-81CHに申請しました。

名称: 空間的イメージ生成装置(Spatial Image Generator)
概要: 空間的イメージ生成装置は2022年末に発生した叡智圏への情報食者侵略イベントを受けてサイト-81CHの研究・開発部及び叡智圏保護課が共同で開発したパラテックです。当該装置は人類が思考によって想起する記憶・想像群を空間的に再現し、主には叡智圏での戦術立案のテストや情報食者の対応訓練を行うことを目的に制作されました。開発から間もないことから現在でも改良の試みが進められており、また、叡知圏投影体、思念体、異常概念、意識的存在を担当する他サイトへの提供も検討されています。

申請はサイト-81CHの管理・調整部によって承認され、西園研究員は同機材を用いたSCP-3603-JPとのコミュニケーションを行いました。

日付: 2023/07/13
インタビュー対象: SCP-3603-JP
インタビュアー: 西園研究員


[記録開始]

[空間的イメージ生成装置が起動される。西園研究員がSCP-3603-JPについて思考した状態で仮想現実に降り立つ。周囲の環境は草原であり一面に星空が広がっている]

西園研究員: 状態を認識できていますか? 反応できるようでしたら何か応答をお願いします。

[星空の星同士が線によって結びつき文字となる。文字は"同意、理解、自身に近い領域"と認識できる]

西園研究員: 良かった。この空間であればあなた……あるいはあなたたちも意思が伝えやすいと思います。

[星空が一瞬強く明滅する]

西園研究員: それは肯定という意味で取らせて頂きます。始めます。自身の目的を"完成"であると伝えて下さりましたが、それをより具体的に説明していただけると助かります。それが「完成する」ことの助けになれるかもしれません。

[星が線と線を結び立方体を形成する。更に別の星同士が結びつき様々な形と大きさの立方体を形作る。立方体同士が結合し縦長の建造物に似た図が星空に出来上がる。しかしながら、それは即座に多数の欠片となって崩壊していく]

[先ほどと同じ形式で文字が浮かぶ。"不完全、無知識、まとまらない全体像"]

西園研究員: ……前提を整理します。あなたは自身が未だ不完全な状態であり、何らかの完全な状態に向かいたい。これは合っていますか?

[星空が一瞬強く明滅する]

西園研究員: そして、これまでのコミュニケーションで推論したことではありますが、あなたは自身がどうなれば完全になれるかという道のり、そして自身が成りたいと思っている全体像。この両方が分からない?

[星空が一瞬強く明滅する]

西園研究員: ……なるほど。だとすると事態はかなり困難ですね。[しばしの沈黙] では、自身と関係がありそうな言葉や事象を提示しては頂けないでしょうか?

[星空に星が集まり様々な構造物や自然現象を象った図形(時計、工場、風車、波、煙等)を形成する。図形はバラバラになり文字が新たに現れる。"休息、安寧、平穏の時間"、"風、夜、多くの星の組み合わせ"]

西園研究員: うーむ。あなたの正体は「夜景を見た時のセンスオブワンダー」そのものですか?

[星空から一つの星が落下し地面に落ちる]

西園研究員: 違いますよね。

[西園研究員はその後1時間程度コミュニケーションを続け熟考するも有意な結果は得られない]

西園研究員: 今日はこの辺で一旦切り上げましょう。申し訳ありません。

[星空が一瞬強く明滅する]

[記録終了]

日付: 2023/07/25
関係者: 西園研究員、エージェント・斉藤、今重研究員


[記録開始]

西園研究員: 何かしらの事象に由来する思念体──少なくとも外部の起源があるように思う。でもそこから進まない、本当に何も。

Agt.斉藤: だから、俺たちにインスピレーションを求めに来たって訳か? ヒントを探してると。

西園研究員: そう。3603-JPがNx-58に根差したアノマリーな以上何らかのゲーム的因果が働いていると考えるのが自然。そしてこのサイトの職員はまさしくゲームのエキスパートが揃ってる。

今重研究員: まあ事実ではあるね。でも少なくとも僕はこのアノマリーについて皆目分からないや。報告書を見せてもらったけど、あれは君の専門分野だと思う。

西園研究員: サイオニクス的なアプローチに限界を感じてる。このアノマリーがもっと複合的なものであるという予感もね。

Agt.斉藤: ……ふむ。じゃあ俺の専門的観点から意見を述べさせてもらうが、これが何のゲームジャンルと関わっていると思う?

西園研究員: ゲームジャンル?

Agt.斉藤: 俺の仕事は基本的にこの町のマップを一つ一つ巡ってゲームを解いていくことになってる。RPGもあれば、シューティングゲームも、ダンスゲームもおおよそ遊戯と言われるものは何でもある。そして盤上の謎を解くとか、敵を全滅させるとか、最高得点を取るとか、ゲームにはプレイヤーが進行しやすいように明瞭な道筋があるものなんだ。だが、3603-JPにはそういう明確な"やるべきこと"が欠如しているように見える。

西園研究員: 確かに言えてる。3603-JP自身も「完全になる道のり」と「全体像」が不明確だとこちらに伝えてきていた。やはり「欠如」というのがキーワードかもしれない。

今重研究員: これは今思った推察なんだけど、言ってもいいかな?

西園研究員: 何?

今重研究員: 星空のモチーフが頻繁に出てくるでしょ。報告書を見てた時に何か意味があるのかもって思ってたんだよね。それで、今ゲームジャンルの「欠如」という推論が出たけれど、これは所謂「雰囲気ゲー」というやつなんじゃないかな。

Agt.斉藤: 雰囲気ゲー? それはストーリー重視のゲームみたいなやつのことか?

今重研究員: 似て非なるものかな。そもそも具体的な定義はないからね。どちらかというと、ストーリーすら曖昧で無いものすら多い。遊ぶというより、感じることで楽しむゲームなんだ。BGM、グラフィック、世界観……その組み合わせによって醸し出される雰囲気には一つのゲームとなりえるだけの魅力がある。

西園研究員: あぁ、私も同じこと思ったかもしれない。センスオブワンダー……そんな感じかも。

Agt.斉藤: なるほどな。だが、まだ3603-JPが言う「全体像」やらの意味は分からないままだ。

西園研究員: ……確かに。3603-JPが「完全」を目指すというのなら現在は不完全ということで……それだけは分かっていて-

[西園研究員はしばし沈黙する]

今重研究員: あー……どうしたの?

西園研究員: 試してみたいことが出来た。ありがとう、もう一回生成装置を使ってみる。

[西園研究員は部屋を退出する]

Agt.斉藤: 彼女、ちょっとそそっかしいな。

今重研究員: 研究者はそういうものなんですよ。特にこの場所では。

[記録終了]

日付: 2023/07/25
インタビュー対象: SCP-3603-JP
インタビュアー: 西園研究員


[記録開始]

[空間的イメージ生成装置が起動される。西園研究員がSCP-3603-JPについて思考した状態で仮想現実に降り立つ。周囲の環境は前回と同様である]

[星空が一瞬強く明滅する]

西園研究員: お久しぶりですね。あなたの「存在」について一つの推論を思いつきましたので、今回はそれについてお話に来ました。

星空の星同士が線によって結びつき文字となる。文字は"好奇心、関心、ナラティブの承認"と認識できる]

西園研究員: 感謝します。まず、私が重点的に調査したのはあなたの起源についてです。この町の性質から考えて何らかのゲーム……もっと言えばサイオニクス的特徴を鑑みて電子ゲームにヒントがあるのではないかと推察しました。

[星空の星の幾つかが強く発光し始める]

西園研究員: 同僚からヒントを貰いました。あなたの現在の全体像は曖昧ながら、非常に幻想的魅力を帯びている。伝わるかは分かりませんが、人のいない都市や街を探索するような、あるいは夜に一人でいる時に聞くドリームコア音楽……そんな感覚。端的に述べるならあなたは芸術的雰囲気を意図した何かであるように感じられたのです。

[星空の星の多くがが更に発光し始める]

西園研究員: あなたは自身を「不完全」であると述べました。完全いや「完成」する必要があるとも。あなたには多くの要素が欠如しています。不可思議な美的感覚も、完成という概念が不明瞭なこともです。そこで一つの予想を立てました。

[発光した星同士が線によって結ばれ始める]

西園研究員: あなたは不完全でまとまらない曖昧なアイデアです。だからこそあなたは具象化したい、単なるアイデアから現実のものになりたい。あなたの正体は「考案されたものの完成しなかったゲームアイデア」そのものです。

[星同士が線によって結ばれ、著しく明滅する。仮想現実内に大きな衝撃が加わり、西園研究員は即座にログアウトする]

[記録終了]

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2/3603-JP LEVEL 2/3603-JP
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Item #: SCP-3603-JP
Safe

特別収容手順

SCP-3603-JPはNx-58内の現地に自己収容されています。財団職員・民間人共に立ち入りは基本的に自由な状態にあり、娯楽や休息のために入場可能です。

説明

SCP-3603-JPはNx-58の郊外エリア内建造物であった「サイロ」を現実再構築して出現した灯台であり、Nx-58のマップにおいては「星の日の思い出」という名のゲームとして表現されています。SCP-3603-JPの内部は一切の音源装置を欠いているにも関わらず、常に様々なBGMが流されています。これらのBGMはドリームコアやウィアードコアのジャンルに属するようであり、聴者の多くは"原因不明の安心感"、"哀愁・懐かしさ"、"軽度の不安"の混在した感覚を経験します。

夜間かつ星空が確認される日に1名の人物がSCP-3603-JPを入場した場合、入場者は窓から観測できる星を自由意志によって改変することが可能です。改変は窓に映る星の反射のみに影響するクラスⅠ相当のものであり、入場者は星同士を線で結び様々なオブジェクトの星座を描くことが出来ると主張します。これ以上の改変は通常不可能ですが、唯一の例外として西園研究員のみは星を一瞬明滅させることが可能です。

時おり入場者の意図することなく改変が発生し、星同士の線がメッセージを生成する場合があります。

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