SCP-3606-JP
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アイテム番号: SCP-3606-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 回収されたSCP-3606-JPは異常物品保管ロッカー#46に保管されます。

説明: SCP-3606-JPは契約書を模した異常な紙群です。現在までに██枚のSCP-3606-JPが回収されていますが、これらの出処や流通している数量は判明していません。

SCP-3606-JPには以下の文が印刷されています。

復讐書



[記入欄](以下、甲)は以下の通りに殺害を実行し、円滑な復讐を完了する事を約束します。


日付: [記入欄]

殺害方法: [記入欄]による殺害

殺害相手: [記入欄]


復讐が無事実行された場合、弊社(以下、乙)による速やかなアフターケアを約束致します。尚、締結後の契約不履行は両者認められません。

契約の円満終了後、当契約書の効力は速やかに失われます。

素敵な復讐を!

    

氏名: [記入欄]


SCP-3606-JP内で「甲」に指定された人物が、記入された日付・相手・殺害方法に従って殺害を行った場合、「アフターケア」と称された複数の異常現象が発生します(SCP-3606-JP-A〜Cに指定済)。これらの現象の発生後にSCP-3606-JPは異常性を喪失します。以下はSCP-3606-JP-A〜Cの詳細です。

SCP-3606-JP-A: 殺害対象に何らかの親族がいた場合、親族に対して不明な手段で非異常性の現金が支払われます。支払われる現金は大抵の場合において「殺害対象が密かに所持していた/譲渡されていた物」という体裁を取り、遺族の金銭状況によって基準と考えられている値段から上下する事が判明しています。「値段の上下は『遺族が金銭的困窮から大きく脱却できる値段』に順じて決定されているのではないか」という推測の元、現在調査が進められています。

SCP-3606-JP-B: 殺害対象が何らかの組織に所属していた場合、被殺害対象の欠員を埋める形で不詳の人型実体が出現します。また、人型実体が該当組織に所属した記録がないにも関わらず、周囲の人物はそれに違和感を抱きません。人型実体の外見や年齢に法則性は見受けられませんが、「下校・退勤後の行動が一切特定できない事」「殺害対象と比較して業務に必要な能力が大きく向上している事」などが共通の特徴として挙げられています。

SCP-3606-JP-C: 殺害対象が生前関わっていた人物に対して精神的干渉イベントが発生します。異常性の暴露を受けた人物は暴露以前と比較して徐々に前向きな性格・思考を持つ様になり、同時に殺害対象の記憶・興味を失っていきます。この二つの事象は相関関係にあるとされ、当異常性によって遺族らが鬱状態から回復した例も複数件が確認されています。尚、対象を殺害した当事者にはこの異常性は適用されません。


SCP-3606-JPは19██/██/██に草壁くさかべ 洋平ようへい 氏を絞殺したとして逮捕された高橋たかはし 亮太りょうた 氏に対する周囲の状況や処遇に不自然な点があるとして潜伏エージェントが財団に通報し、調査の末に発見されました。


インタビュー記録: 202█/██/██ 以下は202█/██/██に行われた、高橋氏へのインタビュー記録です。尚、インタビュー時点で高橋氏は20年の刑期満了により既に釈放されている事を留意して下さい。

インタビュアー: 于咬うかみ 研究員

対象: 高橋氏


[ログ開始]

于咬研究員: では、インタビューを始めます。

高橋氏: ……言っておくが、何も話す事はないからな。

于咬研究員: いえ、あります。貴方が財団に所属する前にSCP-3606-JP、この紙を利用していた件についてです[SCP-3606-JPのサンプルを見せる]。

高橋氏: [机を叩き、慄く]はぁ!? なんでそれを

于咬研究員: 知っている事を話してもらいます。ゆっくりでも構いませんので、まずは殺人の動機から順に教えて頂きましょうか。

高橋氏: [顔を伏せ、俯く。その状態のまま十数秒が経過する]

于咬研究員: お力を添えて頂けたら幸いです、どうか。

高橋氏: ……分かった、分かったよ。洋平と俺は長い仲だった。幼馴染という程でもないが、かなりの付き合いだったんだ。頭の出来も運動も、俺たちはいつも同じ感じで。只一個違ったのは、あれだ、その。

于咬研究員: 貧富の差、ですか。

高橋氏: [舌打ち]そうだ。 そりゃあ中坊の頃なんかは気にならなかったさ。だがな、酒が飲める歳になんかなりゃその差は決定的だ! 親父が死んでから俺は大学にも行かずに働いて、そこで突然家に来たあいつがお袋にいい仕事があるとか何か唆して、畜生。

于咬研究員: 洋子さんの死因は業務中の事故だと伺っています。業務環境も、とても良い物とは言えなかったのですね?

高橋氏: 葬式にも来なかったんだぞ! [机を叩く]あいつは結局ただの詐欺師野郎だ。だから、俺はあいつをブチ殺す事を誓って、でもあいつには、もう娘がいた。……娘に罪は、無い。でも、どうしても諦められなかったんだ。

于咬研究員: そこでこちら紙を入手したと。

高橋氏: 俺だって信じていなかった。復讐の云々をネットで調べたら出てきた電話番号に連絡をした後、突然コレが一枚送りつけられてきた。だから俺はまじないの様な気持ちでそれを書いて、[言葉を詰まらせる]分かってくれよ、そうして自分を納得させる他無かったんだ。

于咬研究員: 十分に理解できます。その後、実際に異変が現れ始めたのですね?

高橋氏: [少しの間]最初の方は普通だった。でも、警察や遺族の人達と面会をする度に、徐々に違和感が増えてきたんだ。なんつうか、スイッチが切り替わった様に皆の様子がおかしくなっていくんだ。

于咬研究員: 成程。

高橋氏: 洋平の妻だった女は、二回目の面会の時には既に男が出来ていた。あいつの同僚だか友人だかなんて、いなくなってからの方が仕事が効率的になったとか言いやがる。明らかにおかしい。そこで思い出したんだよ、あの紙をな。

于咬研究員: 出元に心当たりなどはあるでしょうか?

高橋氏: 知らねえよ。第一どこの誰がこんなサービスをやってるんだ!? 気味が悪くて仕方が無え。これをやって得する誰かが居るとは思えないし、そもそも何がどうなってやがるんだ。

于咬研究員: それを調査するためにインタビューが行われています。[手元の書類を整理する]これで質問は終わりですが、何か言いたい事などはあるでしょうか?

高橋氏: [沈黙]……一つだけいいか。戯言だ、聞かなくても構いやしない。

于咬研究員: どうぞ。

高橋氏: 昔、本で読んだ事があるんだ。死ぬ前と死んだ後の世界の差が、そいつが生きた意味だ何だってな。あぁ随分な極論だと思うさ。[少しの間]でも、それがずっと俺の中で気持ち悪く残っている。

高橋氏: もう誰もあいつの生きていた頃なんて碌に覚えちゃいねえ。皆次の生活を始めて、洋平の事を石ころの様に忘れていってやがる。なのに、なのにだ。俺だけは覚えている。未だ鮮明に覚えているんだよ。あいつの顔も、締め殺した首の触感も。何で俺だけなんだ? 何で、何で俺も忘れさせてくれなかったんだ……? 

于咬研究員: [沈黙]

高橋氏: 俺は、あいつの生を背負わなきゃいけないのか? 頼むから誰か答えてくれよ、なぁ。

[ログ終了]


付記: 高橋氏は記憶処理を施した後に開放されました。また、インタビュー中で出てきたインターネット上のサイト及び電話番号に対する調査が行われましたが、有益な情報は未だ得られていません。


補遺1: 202█/██/██現在、高橋氏が行方不明となっています。これに対して警察各署との連携や独自調査が行われた結果、何かしらの異常性/異常実体が関与している可能性が高いという判断が下されました。これを受け、202█/██/██にSCP-3606-JP使用者への大規模な調査が行われました。その特性上使用者が大抵の場合に於いて逮捕や拘留されている事から、調査は比較的円滑に進行しました。結果として、現在刑務所・拘留所に拘束されていないほぼ全てのSCP-3606-JP使用者の身柄/遺体が行方不明になっている事が判明しています。

また、並行して進められていた調査の中でSCP-3606-JPの出元の一つと推測される場所が特定されました。特定座標に位置していた建造物は既に廃墟状態となっており、屋内には大量のSCP-3606-JPが散乱していました。以下は建造物内に設置された作業机から発見された文書です。

また、この件に対し鯉枯博士から考察が提言されています。以下はその内容です。

私はSCP-3606-JP散布の目的はまた他にあるのではないかと考えています。
第一に如月工務店の目的が「罪人の確保」だけであった場合、幾つかの疑問点が生じます。何よりも付与された異常性について。目的がそれ単一とすると、無駄が多い。異常性を確立させるのにもコストが生じる事は皆様ならば既にお分かりでしょう。如月工務店が会社という形態を為しているならば尚更です。罪人の確保というのが最終目的として設定されているのにも関わらず、異常性の効果は殺害した本人ではなく殺害された側の人物へと向かっている。つまる所噛み合っていないのです。この異常性によるシステムが如月工務店の最終的な利益になっているとは考えにくい。

しかし、何かまた別の目的があるとなれば話は変わってきます。副次的な利益を取り上げて大々的な目標に見立て、顧客に示しながら本来の目的を裏で遂行するのは珍しい事ではない。インタビューの証言からも分かる通り、当異常性は「殺害された人物の抹消」に大きく偏っています。そこに何かしらの狙いがあるのではないか。

別の目的が隠されている可能性は高い。より精細な捜査を続けるべきです。


補遺2: 回収されたSCP-3606-JPのうち、一枚の裏面に不明な文書が記載されているのが発見されました。インクに異常性は発見されていませんが、内容から要注意団体"酩酊街"による物であると断定されています。以下は発見された文書です。

SCP-3606-JP関連文章-01 - 発見日付 202█/██/██

お元気ですか。
こちらでは最近、新しい人が沢山やってきています。街がにぎやかになって楽しげな声がいっぱい増えるのはとても喜ばしい事だけど、突然どうしたのだろうとちょっとだけ不思議に思っていました。貴方達のしわざだったのですね。

どうしてこんならしくない事をするのでしょうか。これはあなた達なりの贖罪なのでしょうか。
もしもこれが罪滅ぼしだったのなら、私はそれを望みません。

例えあなた達が決別を選んでも、例え私たちの事を忘れても。
ただ、帰る場所としてそこにあるだけだから。

だから、もういいんだよ。

酩酊街より 愛を込めて

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