SCP-3614-JP
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アイテム番号: SCP-3614-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-3614-JPに関してその収容は放棄されました。必要に応じてSCP-3614-JPが発生した関係者への記憶処理が実施されます。

説明: SCP-3614-JPは創作物に対し、付随した情報として作者が追悼を行う文1が挿入される現象です。前書きや後書きとして文が挿入される他、外部媒体において作品に関する作者のコメントという形式などでも発生が確認されています。SCP-3614-JPの発生に規則性は確認されていませんが、既に作者が非異常の追悼文を記載していた場合はその作品には発生しません。

SCP-3614-JPで言及される死者については実際に該当する人物2は存在しません。SCP-3614-JP発生と同時に作者は死者に関する虚偽の記憶を植え付けられますが、この記憶は通常の記憶と同様に記憶処理による消去が可能です。また、SCP-3614-JPによる追悼文も作者が作成したと主張しますが、実際には不明なタイミングで作品に発生しています。

以下はSCP-3614-JP実例と発生した作者へのインタビューです。

作者: シンガーソングライター 宇山タケシ氏 (33)

発生作品: 楽曲『Glorious RUSH』のライナーノーツ

追悼文の内容: 「あの日イギリスで出会った、風になった名レーサー ジョスリンへ捧ぐ。」


インタビュアー: 新曲の評判も上々のようですね。

宇山氏: どうも。SNSでPVと解説を投稿したら話題になったみたいでね、そこから売れてありがたい限りだよ。

インタビュアー: その解説の中ではジョスリンというレーサーに触れていました。彼はどういった方なのですか?

宇山氏: 高校生の時短期留学していたイギリスでたまたまレースを見たんだ。そこに参加してたのがジョスリンさ。彼はイカした走り屋で、クラッシュする最期までスピードを追い続けていた。俺がカーレースを好きになったのもジョスリンの走りを見たからなんだ。彼には今も感謝してる。どうにかして皆に彼のレースを見てほしいもんさ。

インタビュアー: ええ。それで我々も少し調べてみたのですが、当時イギリスにジョスリンというカーレーサーは見つからなかったんです。

宇山氏: あーそうかもしれないな。地方のマイナーな大会だったから記録は無いと思うよ。

インタビュアー: ですが流石に死亡事故があったなら何かしら残っているはずです。しかし警察の記録などでもジョスリンというレーサーの死亡はありませんでした。

宇山氏: 警察だって?

インタビュアー: それにホームステイされてたイギリスのご家庭の方にも話を伺いました。宇山さんとレースを見に行ったことはないと。

宇山氏: ちょっと、そこまで調べてるのか?どういうことだ?

インタビュアー: もしかすると、ジョスリンさんは実在しないんじゃないかと。

宇山氏: いったい何なんだ?変に疑ったりして。この俺が適当な話をでっちあげてるほら吹き野郎とでも言いたいのかよ?

インタビュアー: いえ、そういうつもりでは。

宇山氏: ジョスリンていうクールな奴がいて、俺が作ったそいつへの鎮魂歌はサイコーだ、それだけの話だろ?誰一人知らなくったって俺は覚えてるし、この曲で俺以外にも冥福を祈ってくれる奴が増えてくれるだろうよ。ああ気分が悪い。もう帰ってくれ。


 

作者: 小説家 宮本一裕氏 (68)

発生作品: 小説『真夏のルーレット』の後書き。漁港近くの町で出会った病弱なマコトという少年と青年との交流を描いた作品。

追悼文の内容: 「Mとのひと夏を思い出しながら。向こうでは元気にやっていることを願う。」


宮本氏: ははは、面白いことを言うね。それじゃまるでマコトが本当はいなかったみたいじゃないか。

インタビュアー: まさかそんなことは無いとは思いますが。

宮本氏: まあマコトと過ごしたのは40年以上も前だ。私ももうトシだから記憶違いをしているかもしれないねぇ。とはいえ面白い話だね。あの笑顔も、楽しい思い出も、こんなにはっきりと覚えているのにそれは偽物の記憶だなんて。

インタビュアー: ご気分を害しましたでしょうか。

宮本氏: いやいや本当ならむしろ喜ばしいよ。

インタビュアー: 喜ばしい、ですか?

宮本氏: 僕はね、あの夏マコトが弱って死んでいくのが分かっていたのに何もできなかった。あげく小説のネタにまでしている。

インタビュアー: ネタにだなんて。先生はマコトくんの追悼の意味を込めてこの作品を書いたのではなかったのですか。

宮本氏: もちろんそのつもりだよ。それでも、もしかしたら利用して儲けようとどこか心の片隅で考えているかもしれない。でも僕の記憶が偽物ならマコトはもともといなかった。僕が救えなかったうえに不義理を働いた子はいないんじゃないかって思えるんだ。

インタビュアー: それは……何というか、先生はそれでいいのですか。

宮本氏: うん、小説家は偽物の話で読者を救う職業だから。ならもしマコトの思い出が偽物の記憶であるならそれで僕は救われなきゃなんだよ。

インタビュアー: そう、なんですね。おっともう時間ですね。本日はお手間取りさせた上におかしな話をしてしまい恐縮です。

宮本氏: 興味深い時間を過ごせたよ。ああ本当にマコトがいなかったらどれだけいいことか。


 

作者: 財団職員 古嶋宗平博士 (39)

発生作品: 財団内論文『シュレーディンガー場を用いた新規多重収容プロセスへのアプローチ』の謝辞

追悼文の内容: 「我が友御法川くんへ。この論文を見てもらえないのが残念だ。」


古嶋博士: 本当に御法川くんは存在しないのだな?財団の優秀な研究者が言っているんだから間違いないのだろうが、正直なところ本心では信じがたい。現実改変や反ミームとかで消されたってことは無いのか?

インタビュアー: 現状のところ痕跡は見つかっておりません。未だ調査中ではありますので結論というわけではありませんが。

古嶋博士: ならまだ可能性があるということでそっちを信じたいところではあるな。あの収容違反で不意に亡くなるまで、彼女にはだいぶ助けられた。共著者というわけではないが色々な手配を行ってくれたし、この論文の根幹のアイデアも彼女との会話から生まれたものだ。

インタビュアー: 実際収容違反が起きたサイトの書類はだいぶ散逸しており、完全に行方を掴めているとは言えない状況です。ですが他のケースとの類推から、その記憶は偽である可能性が高いと考えられます。そのアイデアはきっと博士自身が考えられたものですよ。

古嶋博士: うむむ、そうなるのか。待てよ、となると結果的にはSCP-3614-JPが発生したことによって、手柄の一部を奪われていることになっているのか?御法川くんに感謝するべきだと思っていたが本当は恨むべきなのか?少し混乱してきたな。

インタビュアー: ご希望でしたら後ほど記憶処理を実施いたしますが?

古嶋博士: 確かに御法川くんが存在しないという結論になったらお願いしたい。作者は作品の評価を正当に受け取るべきだからな。

インタビュアー: わかりました。調査が完了しましたらお伝えします。

古嶋博士: ああ、是非頼む。いや、それでも彼女との思い出を残しておきたい私もいる。彼女の存在が支えとなったという記憶があるならそれを消していいものなのか?いやはやなんというか、タチが悪い異常性だな。

 
SCP-3614-JP発生による作品の評価や作者の精神状況の悪化はこれまで確認されておらず、同程度あるいは向上する傾向にあります。また、意図的な調査なしでSCP-3614-JPの発生が暴露される可能性は低いと考えられます。よってSCP-3614-JPの判別の手間と社会への影響が軽微であることから判断して、今後収容は実施せず個々の発生に関する真贋判定やカバーストーリー対応などは基本的に行いません。なお、収容の検討にあたり創作物に記載された追悼文について財団が調査した結果、その割合はSCP-3614-JPによる文が30%、実際に追悼対象がいる非異常の文は60%、追悼対象が存在しない非異常の文が10%程度であることが統計的に推定されました。

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