アイテム番号: SCP-3615-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル(1976年2月6日策定): SCP-3615-JPはサイト-81██の標準人型実体収容室に収容されています。当該オブジェクトによる財団への情報提供は、セキュリティクリアランスレベル4以上の職員3名の監督下でのみ許可されます。セキュリティクリアランスレベル2以下の職員との接触は許可されません。当該オブジェクトの行動範囲全域には録音装置が設置され、財団職員との記録外の会話は禁止されます。
説明: SCP-3615-JPは、西暦2000年6月18日に東京都██市で誕生すると予想される人物「天野 ██」を自称している人型実体です。SCP-3615-JPは原因不明の事象により、2025年3月1日から1975年12月30日へ時間転移したと主張しています。
収容経緯: SCP-3615-JPの存在は、1975年12月28日に財団が受信した、2025年3月2日時点の財団・時間異常部門1からの異常な電報によって財団に認識されました。電報の内容は、SCP-3615-JPの出現と、それによって引き起こされる過去改変の危険性を警告し、対象の迅速な「確保、収容、保護」によって社会からの隔離を要請するものでした。この異例の事態を受け、O5司令部は特例として2025年時点の財団との共同プロジェクトを承認し、当該人型実体の保護を決定しました。
1975年12月30日21時00分、未来の財団からの通信で示された座標「東京都██区███1-██-6」にて機動部隊じ-12("黒い涙")が待機中、突如として閃光が発生し、直後にSCP-3615-JPが出現しました。当該人型実体は部隊による確保に驚愕したものの、抵抗を試みる素振りを見せずその場で確保されました。
<インタビュー記録3615-JP-1975/12/31>
対象: SCP-3615-JP
インタビュアー: 山本博士
付記: 当該インタビューは、SCP-3615-JPの確保6時間後に行われました。インタビューに際し、対象の同意の下でキーラー式ポリグラフ装置が使用されました。
<記録開始>
山本博士: それでは、インタビューを開始させていただきます。まずは、あなたの名前、年齢、職業、生年月日を教えてください。
SCP-3615-JP: 天野 ██、24歳。██大学の大学院生です。生年月日は、ええと、ヘイセイ12年、6月18日です。
山本博士: (ペン先が紙を叩く音)なるほど。あなたは、いま現在が昭和50年、つまり1975年の大晦日であることを認識していますか?
SCP-3615-JP: (6秒間の沈黙)いいえ。おっしゃっている意味が理解できません。今日は3月1日だったはずですけど。昭和50年って、どういうことですか。
山本博士: (唸り声)実のところ、私もまた、あなたのおっしゃっている言葉の意味をあまり理解できていないのです。まず、ヘイセイ12年の"ヘイセイ"というのは、昭和の次の元号ですか?
SCP-3615-JP: ええと、まあ、はい。ヘイセイの前は昭和ですね。今はレイワですけど。
山本博士: (紙の上をペンが走る音)なるほど。
SCP-3615-JP: あの、これは何かの実験ですか?
山本博士: あなたがおっしゃりたいところの"何かの実験"ではないと思われます。我々は、2025年から現代に時間転移なさったあなたを保護するために、あなたの身柄を拘束しています。
SCP-3615-JP: (6秒間の沈黙)つまり、私はいま1975年にタイムスリップしていて、あなたがた秘密組織に捕まっていると?
山本博士: いささか語弊がありますが、認識自体は概ね相違ないかと存じます。現段階では、我々はあなたに対して危害を加える存在ではない、と付け加えておきます。
SCP-3615-JP: (沈黙)
山本博士: 少し話題を変えましょうか。天野さんは██大学で何を研究なさっていたのですか?
SCP-3615-JP: 電子情報学です。今は、ソーシャルネットワークと人工知能の共存にむけた課題、そして今後この分野が進むべき方向性について研究していました。たとえば──[未来の技術情報に基づく内容と見られるため割愛]
山本博士: えー、分かりました。その……対話型人工知能の話はまた後日にしましょう。██大学のほうには、念のため確認を取らせていただきます。──ところで、あなたのご家族やお知り合いなど、1975年時点で連絡がつくと考えられる人物はいらっしゃいますか?
SCP-3615-JP: (6秒間の沈黙)長田教授は、おそらく1975年時点では小学生だと思います。両親や祖父母は、顔も名前も知りません。████園2という養護施設で育ちましたから。
山本博士: それは……失礼しました。
SCP-3615-JP: そんなことより、私は元の時代に帰れるんでしょうか。たとえば冷凍睡眠とか、特殊相対性理論に則って擬似的なタイムカプセルを造るとか……。
山本博士: 現状、人間を未来に送還する手段が存在するかという質問には、ノーと返答せざるを得ません。
SCP-3615-JP: そう、ですよね。
山本博士: 失礼を承知で質問させていただきます。元いた時代に帰りたい特別な理由が存在するのであれば、お教えください。
SCP-3615-JP: (6秒間の沈黙)結婚の約束をしてたんです。同じ施設で育った幼馴染と。
山本博士: それはおめでたい──あ、いえ、お気の毒に。
SCP-3615-JP: 結婚式の日も、決めてて。だから、帰らないといけないんです。お願いします。
山本博士: (しばしの沈黙)現状、我々にできることは、あなたを社会から隔離し、保護することだけです。申し訳ありません。
SCP-3615-JP: (6秒間の沈黙)きっと、悪い夢だよね。ソウイチくん……。
<記録終了>
所感と提言: ポリグラフ検査の結果、対象に虚偽証言の兆候は見られませんでした。当該人型実体の証言は一定の信憑性を帯びているように見受けられます。
また、対象が有する知識の性質は、現代において考えうる常識の範囲をはるかに逸脱していると推定されます。仮に対象が未来から来た人物だと仮定した場合、対話によって得られる情報や技術は、財団にとって大きな資産となる可能性があります。しかしながら、財団が対象から情報を得ることで、致命的なパラドクスを発生させる危険性もまた大いにあると推測できます。取り扱いは慎重に行うべきだと提言します。 -山本博士
<事案報告 - 1976/2/6>: SCP-3615-JPは、1976年2月6日に発覚したロッキード社製旅客機の受注をめぐる大規模汚職事件の概要と発覚経緯を、1976年1月7日時点で正確に説明しました。当該の事案により、SCP-3615-JPが未来の知識・記憶を有しているという主張の信憑性は、財団により事実と断定されました。
注意: この文書は1976年策定の初期プロトコルのアーカイブです。現行のプロトコルはこちらを参照してください。









