SCP-3627-JP
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shrine

SCP-3627-JP

アイテム番号: SCP-3627-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-3627-JPの領域内には劣化防止処置を施したアクリル樹脂を充填して生物の侵入を予防してください。SCP-3627-JPの周囲は一般的な建築用防資材にカモフラージュした防護壁で囲いこみを行います。SCP-3627-JPの存在する神社周辺の山域へ通じる登山道は閉鎖してください。

説明: SCP-3627-JPは██県に存在する神社の鳥居です。SCP-3627-JP内を通過する際、同時に通過した生命体、あるいは物体に対して異常な好意を抱きます。この対象は基本的に一対のものであると考えられます。この精神影響は相互的であり、知性生物にとっては「突然恋に落ちた」ような感覚を抱きます。

SCP-3627-JPは██県の██神社内に存在します。██神社は縁結びの神社の由来がありましたが、交通アクセスの不便さから特に見出されることはありませんでした。202█年8月3日、グループYoutuberである"僻地神社踏破隊イザナギch"の構成員4名が生配信にて訪問した際、SCP-3627-JPの影響に罹災したことで発見に至りました。その後、財団情報処理部門により配信視聴者53名全員を特定した上で記憶処理を実施し、SCP-3627-JPの存在隠蔽を実施しています1

映像記録3627-JP-01 - 日付 202█/08/03

チャンネルメンバーの4人が登山服を着た状態で配信が始まる。五十嵐がボディカメラで配信している。

伊藤: ハイどうもー、どうして山に登るのか、そこに神社があるからだ。イザナギchのイトーです。アダチンの縁結び企画も5回目、今回は██県の██神社を参拝しまーす。

安達: 俺、この神社から帰ったら結婚を申し込むんだ……

神田: この下りも5回目か、今度こそやっちゃうんか?彼女さん、見とるか~。

五十嵐: 寝取られビデオレターかよ!

伊藤: 今回の神社は最強の縁結び神社ですよ、何と縁結び確率100%!これまでに神社で縁を結んで別れた人間がいないとか何とか。

安達: それ、誰も参拝してないだけなんじゃないの?

伊藤: シー!それは実際に参拝して確かめるということで。 まあ縁起ははっきりしなかったんですが。

神田: 適当過ぎや。

五十嵐: 最強縁結び神社かどうかは分かりませんが、安全に気を付けて登っていきましょう。今回は大分山が険しいので。帰宅するまでがご参拝です。

4人が登山を開始する。2時間程度、雑談しながら登山する様子が映されている。

伊藤: お、着いたかな。中々大変な道のりでしたが、無事踏破できました。

神田: 頑張って登った割にはこじんまりとした神社やね。

伊藤: じゃあ順番に参拝しましょうか。アダチン、行ってきな。

安達: これまで溜まった縁結びパワーは、この婚約指輪にしっかりと溜まっています。これで決めます。

婚約指輪を握った状態で安達がSCP-3627-JPをくぐる。その後、安達は立ち止まった後に婚約指輪を見つめる。

神田: どうだ、パワー感じるか?

安達は婚約指輪に口づける。

伊藤: おお、パワー、感じたようですね。

安達: 俺は真なる愛を遂に見つけた。この子と生涯添い遂げることを誓う!

五十嵐: ん?彼女さんに婚約を申し込むってこと?

安達: あんなのはもうどうだっていい、今はこの子だけだ、この子が俺の永遠の伴侶になるんだ。この子もそう言っている!

安達は何度も婚約指輪に口づけを交わす。神田と伊藤は首をかしげる素振りをする。

神田: 何だ、あいつおかしくなったんか?おい、アダチーン。

神田と伊藤がSCP-3627-JPをくぐる、二人は立ち止まってお互いを見つめ、口づけを交わす。

五十嵐: おいおい、ちょっと待てよ、どうなってんだ。

五十嵐の視点でSCP-3627-JPをくぐる。その場に立ち止まり、右下部分にいたカマキリを見つめる。

五十嵐は手に取ったカマキリに口づけをして、そのま10分間カマキリを凝視する映像が継続する。映像中五十嵐が呟く音声が聴こえるがいずれも判別不可能であった。

五十嵐がすすり泣く声と共にカマキリを頭部からゆっくりと食べる映像が映り、食べ終えると映像が五十嵐によって止められる。

当配信において、カマキリが映り続ける映像の途中で通信の遮断が行われました。その後エージェントが急行し、4名の確保が行われました。

その後、財団監視下で経過観察を行い、SCP-3627-JPの精神影響についての調査が実施されました。

インタビュー記録3627-JP-01- 日付 202█/08/05

インタビュー内容: 伊藤・神田両名に対してSCP-3627-JPの影響についてインタビューを実施する。

エージェント般若: お呼びたてしてすみません。██神社での一件についてお聞かせください。

伊藤: 変な場所でしたねえ、私たちが結ばれた記念すべき場所ではありますが、あんまり行きたくない場所でもあります。

エージェント般若: 配信を確認しましたが、お二人はお付き合いされていたんでしょうか。

神田: いや、仲のええ奴らでつるんどったのは間違いないけど、別に恋愛対象とかでは無かったやね。まあ今となってはどうして最高の相方が隣にいたのに気づかんかったのか分らんけども。

エージェント般若: なるほど、すみません、失礼かもしれませんがお二人とも同性が恋愛対象なんでしょうか。

伊藤: いいえ、今も別に同性に対しては何とも思いません、こいつ以外は。

伊藤が神田を抱き寄せる。

神田: ウチも一緒やね、ちょっと他の同性とくっつくのは考えられんわ。

エージェント般若: 映像では神社の鳥居をくぐった瞬間が、いわゆる恋に落ちたタイミングのように見えました。

神田: そうそう、ビビーンと来て居ても立っても居られなくなってしまってねえ。縁結びパワー強すぎるわ。

伊藤: 急に好きになった、というのとは微妙に違うかな。一応オカルト系chやってるとはいえそこまで霊的なことは信じて無かったんですが、あの瞬間前世からの縁というか、結ばれるべき運命を確信しましたね。

エージェント般若: なるほど……。それでは他のお二人の行動も納得いくものだったんでしょうか。

神田: それはよくわからんなあ。指輪が運命の相手ってなんやねんって感じだし、泣きながら虫は食うし、頭おかしなったんかな。

【記録終了】

インタビュー記録3627-JP-02- 日付 202█/08/06

インタビュー内容: 五十嵐に対してSCP-3627-JPの影響についてインタビューを実施する。

エージェント般若: 配信の際の状況についてお聞かせください、ちょっとよく分からない行動を行っていたと思いますが。

五十嵐: まあ理解出来ないでしょうね。それでもいいなら話しますが。

エージェント般若: 大丈夫です。

五十嵐: あの鳥居をくぐった瞬間、そこにいた彼に見染められた形になりますね。彼からのアプローチだったとは思いますが、私も同時に一目惚れしてしまった形になります。

エージェント般若: 彼、というのは映っていたカマキリのことでしょうか。

五十嵐: はい、あの時ずっと彼を映していたでしょう。あの時に愛を囁きあっていたんですよ。

エージェント般若: カマキリと意思疎通していたということでしょうか?昆虫の言葉を認識できるんですか?

五十嵐: いや、彼以外の言葉は分からないですよ。そもそも虫って喋るんですかね?

エージェント般若: それはこちらが聞きたいのですが……。とにかく意思疎通していた訳ですね。最後に彼を食べたのはどうしてですか?

五十嵐は涙ぐむ。

五十嵐: 僕たちが結ばれる方法について話しあっていました。どちらかがメスならば交尾を試みることもできたかもしれませんが、残念ながら彼も僕もオスです。僕はずっと一緒にいれたらいいと話したんですが、彼はそれを善しとしなかった。劇的な愛を求めていました。

エージェント般若: それが彼を食べる行動に繋がったわけですか。

五十嵐: 何度も考え直すように伝えたのですが、彼の決心は硬かった。愛の形として片方が片方を捕食する、許されざる愛を抱いた僕たちには禁忌の愛で契りを結ぶしかなかったと納得して、彼は私と一つになりました。

エージェント般若: なるほど、ちなみにカマキリの共食い行動はメスがオスを摂食している間に交尾時間を伸ばす行動とされていますが、それはお互い知っていたのですか?

五十嵐: 帰って調べたらそうらしいですね、僕も彼もそういう経験がなかったので繋がりたい欲望を上手く表現できなかったんだと思います。カマキリと結ばれる方法があったら良かったのに……。でもそれほど後悔はないです、彼は僕と一緒にいますから。

五十嵐は自身の腹部をさする。

【記録終了】

インタビュー記録3627-JP-03- 日付 202█/08/08

インタビュー内容: 安達に対してSCP-3627-JPの影響についてインタビューを実施する。

エージェント般若: 配信の際の状況についてお聞かせください。

安達: いやあお恥ずかしい。居ても立っても居られなくなって愛を叫んでしまいました。元カノにも悪いことを言ってしまって、今は反省しています。

エージェント般若: 指輪に何かあったんでしょうか。

安達: ええ、紹介します。私の運命そのものです。

安達がリングピローに載った指輪を後ろから持ってくる。指輪にはフリルが飾り付けられている。

エージェント般若: この指輪がそうなんでしょうか?渡す相手がいるとかではなく?

安達: はい。彼女、といっても性別があるわけではないんですが。

エージェント般若: えーっと、自分が何を言っているのか分かっていますか。

安達: ええ、異常だとは思いますし、他人には多分理解できないでしょうね。でも私は彼女と出会うために産まれてきたと言ってもいいと思っています。

エージェント般若: 自覚はあるんですね。分かりました。この指輪……、いや彼女が運命の人だと感じたのはあの鳥居をくぐった瞬間でしょうか。

安達: はい、まさにあの瞬間です。ただ大切な人に渡すだけの存在と思っていましたが、他人に渡すなんてとんでもない。彼女が愛そのものだとあの瞬間に理解しました。

エージェント般若: ちょっと想像ができないのですが、どのような存在でしょうか、例えば前世の恋人とかそういうものなんでしょうか。

安達: かなり近いですね、前世や何らかの縁が私たちを結びつけたという確信があります。今世で契りを結ぶべき相手であると。っと失礼、出てもいいでしょうか。

安達に電話がかかってくる。そのまま会話するように勧めると数分会話を続けた。

安達: 申し訳ない。病院に予約した件について問い合わせがあったもので。

エージェント般若: 病院ですか、登山の際にお怪我でもされたんでしょうか。

安達: えーっと、そういう訳ではないんですが……。彼女と契りを結ぶと言いましたが、その、サイズが合わないんですよね…。手術しないといけないんですよ。

【記録終了】

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