SCP-3632-JP
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アイテム番号: SCP-3632-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-3632-JPは財団webクローラーによって監視、発見が常時行われています。発見された場合、研究に供する場合を除いて該当ページは破棄されます。SCP-3632-JPの実施、SCP-3632-JP参加者が確認された場合、可能な限り参加者の入手した物品を破棄し、記憶処理を行ってください。SCP-3632-JP参加者の所属するコミュニティは定期的な観察を行い、何らかの異常事態が発生した場合はエージェントを派遣し即時の収容を行ってください。

説明: SCP-3632-JPは要注意団体"如来観光"によって提供される「因習村体験ツアー」と称されるパッケージツアーです。

SCP-3632-JPへのアクセスは多くの場合、インターネット広告や旅行情報サイトにおいて旅行プランの1ページとして発生します。このページはブラウザをバックした段階でページ自体が消滅することが確認されています。その後、記載されている電話番号、メールフォーラムにおいて規定事項を入力し、代金を振り込むことでSCP-3632-JPの参加が可能になります。これらの情報を各種広告、旅行会社は関知しておらず、IPアドレス等の逆探知にも失敗しています。収容プロトコルの制定にもかかわらず、SCP-3632-JPが発生、実施されていることが確認されているため、これら以外のアクセス方法があると推測されますが、その秘匿性の高さから現在時点で有効な対抗策は確立していません。また、これらの広告自体に異常性は存在しないものの、SCP-3632-JP参加者にはオカルト愛好者や、大学生など、興味を持つ傾向がある人物が多いことから、何らかの指向性をもって発生していることが示唆されます。

SCP-3632-JPは日本における土着的信仰を基盤とする閉鎖的共同体、あるいはホラー作品におけるカルト的宗教をモチーフにした恐怖体験を疑似体験的するミステリーツアーであるとされており、後述するツアー内容においてもそれらを模したイベントが発生します。

SCP-3632-JPは多くの場合都市部のバスターミナルから開始します。指定された時間に到着した参加者は観光バスに案内され、ツアーにおける注意事項の説明を受けます。注意事項の内容は以下の通りです。

  • 貴重品は各自で管理してもらうこと
  • 旅行先の情報は最後まで明かされないこと
  • 妨害電波により外部との通信が一時的に遮断されること
  • ケガ、病気の際は重篤なものを除きツアー中は医務室で待機になること
  • 写真・動画の撮影は事前に許可を取ること

その後、バスは窓を封鎖した状況で出発します。その後約5~20分で外部からの観測が不可能になり、不明な地点への転移が行われます。転移地点はツアーごとに変化するものの、多くの場合、日本の山間部に存在する集落の様式を有しています。転移地点には複数の人型実体(以下、SCP-3632-JP-A)が存在しています。これらSCP-3632-JP-Aはツアー内のスタッフ、キャストとして集落の住人を演じている様子が見られますが、現在時点で同一人物の同定には成功していないことから実在する人物ではないと判断されています。SCP-3632-JP-Aとの会話は可能ですが、SCP-3632-JPに関する調査、探索及び如来観光への質問には一貫して回答せず、自らの起源に関しても同様です。また、後述するように行方不明になる参加者も存在し、この参加者はSCP-3632-JP-Aに分類するものと推測されます。

参加者はバスを下車したのち、添乗員に連れられたうえで複数のイベントを体験します。ツアーごとにイベントは変化するものの、大まかなツアー内容が一致することからか、複数回発生したイベントも確認されています。これらのイベントは一般的な安全管理の面から危険なものも複数見られますが、現在段階で重篤な負傷を受けた参加者は存在しません。

以下は確認されたイベントの一覧です。

イベント記録3632-JP(抜粋)

発生タイミング 参加するSCP-3632-JP-A イベント内容 注記
バス下車、もしくは集落入口部 和服を着た二人の若年女性。容姿から双子と推測される 手毬や竹とんぼなどの玩具で遊びながら童謡を歌っている。参加者が接近すると高い笑い声をあげて逃走する 歌っている童謡は一致するものが存在せず創作と思われる
集落探索時 煙草をくわえた老年男性 参加者へ集落の地図を見せながら説明する。地図の欠けた地域を質問すると不機嫌な様子を見せ、無言で立ち去る 自由行動時、欠けた地域に向かうと破壊された社殿が確認できる
集落探索時 不特定多数 参加者を遠くから観察する。接近すると上述の行為を否定し好意的に会話する ツアーによっては不自然な笑顔を浮かべている
飲食時 宿泊施設を営む中年女性 参加者に郷土料理を提供する。料理には本来飲食に適さない野草が含まれている。指摘した場合、口ごもり、その場から立ち去る  
常時 不特定多数 集落の複数個所に存在する石像を拝んでいる。石像について質問すると「今は知らなくていいから」と返答を行う 石像は多くの場合多頭多腕の人間を模している。ツアーによっては頭部の欠けた物が存在する
就寝時 不特定多数 参加者の宿泊する施設の周辺を白装束で彷徨する。接近する、声をかけるなどしても反応はなく山間部へ立ち去る  
ランダム 不特定多数 花嫁の存在しない花嫁行列  
ランダム 建設会社を名乗る高齢男性 複数の部下を連れ、旧家で村の開発について話し込んでいる 多くは一日目に発生し、翌日起床時に死亡/遭難/行方不明になったと知らされる
ランダム 擦り切れた着物を着た高齢男性 参加者がこれまでに遭遇したイベントを確認し、早く帰れと忠告する このイベントが発生することで下記の最終イベントが発生する

参加者がイベントに一定数遭遇することで、最終イベントが発生します。最終イベントは多くの場合3パターンに別れています。

最終イベント記録3632-JP

イベント名 イベント内容 注記
神格降臨イベント 参加者の一人が行方不明になり、SCP-3632-JP-Aらが捜索を開始する。数時間後、負傷したSCP-3632-JP-Aが帰還し神格の復活を告げる。同時に全長4mほどの人型実体が出現し、集落を襲撃する。参加者は襲撃を回避しバスによって脱出する 出現実体は上述したイベントにおける欠けた地域から発生し、石像と同じ特徴を持つ
住人襲撃イベント 就寝時、複数のSCP-3632-JP-Aによって参加者が拘束、拉致される。その後集落奥地の洞窟へ連行され、内部で不明な神格の生贄/結婚相手に選ばれたと説明され、殺害を示唆される。直後、これまで遭遇したイベントのSCP-3632-JP-A複数名が参加者の拘束を解き、救助した後洞窟へ放火する。参加者は火災の発生する集落からバスによって脱出する 参加者を救助するSCP-3632-JP-Aはランダムであることが確認されている
土石流発生イベント 参加者の一人が行方不明になり、SCP-3632-JP-Aらが他の参加者に対し「[イベントごとに秘匿される地域]へ向かったのか」と詰問する。直後、山間部で激しい破裂音が発生する。複数のSCP-3632-JP-Aが確認に行くも直後土石流が発生し、呑み込まれる。参加者は土石流を回避しバスによって脱出する 脱出後、集落が土石流に沈み、崩壊したことを知らされる

最終イベントを終了した参加者はおみやげとして複数の郷土品、食料を渡され帰還します。帰還後、記憶補強を行っていない参加者のSCP-3632-JPに対する記憶は不安定なものとなり、漠然と"楽しい旅行をした"という記憶が残る程度に留まります。また、これと並行してSCP-3632-JP内での画像、映像、音声の記録は異常な速度で劣化し、最終的に破損することが確認されています。

事案報告3632-JP: 帰還後、一部参加者の帰属するコミュニティにおいて、信仰宗教団体や反社会的カルト団体への変化が確認されています。これらの変化はSCP-3632-JPにおける集落と同様の構成を持つ傾向がみられ、一部コミュニティでは異常実体の出現が確認されています。

これに伴い該当コミュニティは閉鎖的共同体としての性格を強め、周囲から孤立する、あるいは反社会的組織として摘発される傾向が見られます。このコミュニティの定義は家族、友人関係といった小規模なものから、大学のサークルやSNSコミュニティなどの中規模なもの、マンションや集合団地など大規模なものまで複数確認されており、これまで確認された中で最大のものはサイト-81██に存在するDクラス収容房です。

この変化はSCP-3632-JP参加者が中核となって発生していることが確認されています。また、参加者が存在するうえでカルト化したコミュニティとそうでないコミュニティを調査したところ、カルト化したコミュニティにおいては参加者がおみやげをコミュニティ内まで持ち込んでいたことが確認されました。これを受け、調査において回収された物品は可能な限りサイト内に持ち込まず、成分調査後破棄が義務付けられています。

補遺1: 20██/██/██、SCP-3632-JP調査においてSCP-3632-JP-Aが有意な回答を行いました。以下はその記録です。

インタビュー記録3632-JP-01 - 日付 20██/██/██

質問者: エージェント・新田

対象: SCP-3632-JP-A-12 (老年男性の容貌を持つ実体)

«再生開始»

(前半部は事実確認の為省略)

エージェント・新田: 現在、あなた方の村で提供された体験がそのまま都市部で発生しています。何かご存じのことはありますか?

SCP-3632-JP-A-12: ……まあ、もうええかあ。そうだわ、ワシらは返したんだわ

エージェント・新田: 返した? 一体何を?

SCP-3632-JP-A-12: [笑い声] 無自覚やのう。考えてもみい、人里離れた田舎っちゅうだけで、都会モンはそこに勝手に何かを見る。悪いもんや、怖いもんや、おっそろしいもんを。ワシらは一方的に、田舎に生きとるっちゅうだけで、都会モンからは見えへん、見いひんというだけで、色々なものを押し付けられとんのや。呪い、ちゅうのは言い方やけんどもな

エージェント・新田: そういった差別的な意識に対する復讐を行っているということでしょうか?

SCP-3632-JP-A-12: 復讐っちゃ、そんな大層なものやないわな、さっきも言うたやろ、返したんやと。ワシらに向けられたものを丁寧に熨斗つけてお返ししただけや。 [笑い声] そもそもお兄ちゃんも、ワシが本物やと思ってへんやろ? 本物やいうんは、なんというべきかな、人間というか、そういうもんやとは

エージェント・新田: ええ、特定できる個人ではないだろうとは推測されます

SCP-3632-JP-A-12: [笑い声] ワシは総意やからな。……まあ、巡り巡るだけよ、ヒトがヒトであろうとする限り、きっとこのツアーは手を変え品を変え色んなとこで始まるだろう

エージェント・新田: 何故、そう断言されるのですか?

SCP-3632-JP-A-12: 説明しづらいなあ、そうだな、観光ちゅう言葉は英語で何というか知っているか?

エージェント・新田: Tourismは観光業ですから、Sightseeingですね?

SCP-3632-JP-A-12: そう、サイトシーイング、見るべきものを見ること、見なければならない、目を逸らさず多陀阿伽陀のごとく一切を見ろ。人のいない場所に因習は発生せず、よって人の見るものもない。恐ろしいもの、汚いもの、知らないものを周縁へ放り投げず、受け取らず、ただあるがままに観ろ。それだけ、そのためのツアー、そのための観光。私たちはその為のキャスト、添乗員、世界は全て釈迦如来の掌が如く

[SCP-3632-JP-A-12の周囲から光源の不明な激しい閃光が確認される。複数のSCP-3632-JP-A実体が重なり合うように視認できる]

複数のSCP-3632-JP-A: ようこそ、たくさんの非日常、ちょっとしたお土産、見所の数々。ようこそ、因習村へ

不明な音声: そして早く去れ、この村からな

«再生停止»

補遺2: SCP-3632-JPの目的地に上述の変化したコミュニティが追加される事案が発生しています。追加されたコミュニティはその段階で財団の観測から消失します。この消失に伴い、参加者を含め関係していた人物に対する記録及び記憶はほとんどが行方不明になったものとして処理されていることが確認されているため、一種の記憶改変、官僚災害が発生しているものと推測されます。消失以降も断片的な記録、記憶が残留することがあり、これらが新たな都市伝説を発生させるケースも確認されています。

これらの追加されたコミュニティがSCP-3632-JPの目的地に選択される割合は増加しており、同時にSCP-3632-JP発生数も増加しています。

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