アイテム番号: SCP-3643-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: オデェム島は外部社会に対して秘匿されます。SCP-3643-JPの対象となることを避けるため、オデェム島における財団職員の滞在期間は半年以内に制限されます。SCP-3643-JPの性質上、当該事象の防止が不可能であることから、現地職員の職務は被影響者の経過観察及び祭事の記録に重点が置かれます。
説明: SCP-3643-JPは太平洋上に存在するオデェム島において、毎年1月1日の正午から日没に発生する死亡現象です。
1月1日の正午頃、島内に定住する人物の内の1名(以下、"対象")が昏睡状態に陥ります。昏睡状態は30-60分で解消されますが、その間はいかなる外的干渉によっても対象の覚醒には成功しません。対象は覚醒直後、倦怠感や脱力感を訴えます。その後、時間の経過と伴に呼吸不全や心機能低下等の症状を併発し、最終的に日没とともに対象は死亡します。日没時刻における対象の死亡を回避する手段が存在しない一方で、後述の通り症状の部分的な緩和は可能です。
SCP-3643-JPはオデェム島内の宗教観と密接に関係しています。オデェム島では現実世界と異なる世界として、神々が住む天上の存在が信じられています。神々は退屈であるとされており、年に一度、現実世界の様子を語る使者として人間を天上へ召し上げ、話の対価として豊穣や大漁、住人の健康を約束しているとされています。この召し上げがSCP-3643-JPであると考えられており、対象を見送る儀式が執り行われます。
12月下旬から祭場の設置が開始されます。設置場所は居住地域の西に存在する海岸であり、対象が祭壇上で西方の風景を一望できるよう設置されます。昏睡状態からの対象の覚醒後、対象は速やかに祭壇へ運び込まれます。この際、対象はオデェム島固有種であるアサの亜種(Cannabis sativa subsp. odiem (█████))によって調合された薬液を接種します。薬液は覚醒作用および神経情報の受容鋭敏化作用を有し、接種により対象は死亡直前まで明瞭な意識を維持することが可能となるため、対象が最期まで親しい隣人らと触れ合い、美しい景色(後述)に包まれることで現世に対する未練を断ち、安らかな気持ちで旅立つのを助ける役割があるとされています。
祭場内では伝統民謡の演奏が行われるとともに、全住民が列を成して一人ずつ対象の下へ接近し、対話を持ちかけます。多くの場合、会話内容は対象に関連する回想です。対話時間は平均して2-3分程であり、最後に対象が使者としての使命を果たすよう激励し、対話は終了します。
全住民との対話が終了すると、住民は対象を取り囲む位置に移動し、音楽に合わせ伝統舞踊を披露します。披露される舞踊は狩りや戦闘の前に人々を鼓舞する目的で踊るものです。踊りは対象が死亡する直前まで継続されます。
日没間近には住民は祭壇で身を寄せ合い、祭壇から一望できる島の夕景を共に眺めます。以下は住民に行った景観に対する音声記録の文字起こしです。
祭壇の設置場所から一望できる夕景
祭壇が設置される場所はこの島の宝と言って差し支えのない、非常に美しい夕景を見ることができる場所なのです。夕刻になると世界のすべてが橙に染まり、眩しくも温かい光が丘の奥へと沈んでいきます。木々は輪郭のみを示し、海は青さを忘れ夕を抱いて揺れます。既に60は歳を重ねて来ましたが、あの景色に感嘆しなかった日など、ただの一度もございません。
使者として選ばれ、島の宝を望みながら天上へと赴けるとは、何たる幸運でしょうか。きっと安らかな心でこの世界に分かれを告げられるでしょう。我々が召し上げられる時刻が夕方であるのは、神々の思し召しなのだと思うのです。神々も使者の申し上げる夕景の話を大層喜んで聞いて下さることでしょう。
対象は日の入りと同時に死亡します。対象の死体は伝統的な葬儀の後、浜辺で土葬されます。









