クレジット
タイトル: SCP-3647-JP - "あ"は「旦」の"あ"
著者: SealBaby-V
作成年: 2024
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特別表記/T-Nn: T-Nnは多数の国家および正常維持機関内で使用される日時表記です。T-[SCP-3647-JP発生までの日数][SCP-3647-JP発生回数]という構造です。SCP-3647-JPが5回発生し、SCP-3647-JPが再び発生するまで残り200日の場合、T-2005という表記がされます。SCP-3647-JPが発生した時は"T=0n、SCP-3647-JP無力化以降はT+Nという形で表記されます。
特別収容プロトコル: SCP-3647-JPは収容および無力化の方法が確立されておらず、SCP-3647-JPが発生次第今後起こる事象を予測し対処しなくてはなりません。特に災害やテロなどの広範囲に被害を及ぼすものや従来なら致命的な被害が出る事象は事前に対応する必要があります。現在、トゥモロープロジェクトチームによるSCP-3647-JP発生要因の捜索が行われています。
説明: SCP-3647-JPは2020/12/31 23:59:59に宇宙規模で発生する異常現象です。SCP-3647-JPが発生するとT-365n+1に基底宇宙内の時間が逆行します。また、副次的性質として以下の事象が発生します。
- T-365n~T=0nの間に死亡したすべての生物が蘇生する。
- T-3650時点で位置していた場所に全ての物質や生物が移動する。.テレポートのような形をとるため、移動の際に障害が生じることは無い。
- T-3650時点での状態にすべての物質や生物が戻る。.ループ前に新しく生成された物品などは消失する。
財団はSCP-3647-JPを記憶処理で隠蔽することは不可能と判断し、LK-クラス: "捲くられたヴェール"シナリオの発生を宣言しました。SCP-3647-JPの無力化には成功していません。現在、SCP-3647-JP対策プロジェクト ("トゥモロープロジェクト") を編成し、SCP-3647-JPの調査が進められています。
補遺3647-JP.1: SCP-3647-JP発生以降の世界情勢
T-N1
T-N1では世界中が混乱しており、各地で暴動が頻発し行政に支障が出るようになりました。T-N1での主要国の七ヵ国.指標としてG7の七ヵ国が選ばれた。 の脆弱国家指標得点.各国の脆弱性を総計120点で採点したもの。 は以下の通りです。
国家 | 点数 | 状況 |
---|---|---|
カナダ | 62 | 要注意(低い) |
フランス | 53 | 安定 |
ドイツ | 54 | 安定 |
イタリア | 67 | 要注意(低い) |
日本 | 57 | 安定 |
イギリス | 72 | 要注意(要注意) |
アメリカ | 78 | 要注意(要注意) |
これらは例年に比べ平均10~30点以上点数が上がっており、状況が警報までに達していないものの、主要国である七ヵ国に要注意に達している国が存在することは、世界的な治安悪化の証左とされています。.実際に他の国の脆弱国家指標得点も同様に上昇していた。
音声記録 T-2401
以下はSCP-3647-JP発生後に行われたSCP-3647-JP対策チームによる調査報告会の音声記録です。当時の対策チームは除外サイト.スクラントン・ボックスに利用される技術を応用して構築された施設。 に所属している研究員および輪廻現象部門.同じ現象が何度も繰り返し発生する異常事象や空間を研究する部門 を中心としたメンバーで構成されていました。
それではまずこの映像を見てください。
これは除外サイト-81H3に保存されていたSCP-6SB3の実験記録の映像です。この日はT-3200での出来事です。映像に映っているDクラス職員ですが、SCP-6SB3の影響によりこの時点で死亡してしまいます。時間は13時28分、よく覚えていてください。
しかし、SCP-3647-JPが発生したことにより、このDクラス職員は生き返っています。T-3651のこのDクラス職員の部屋の映像を見てみましょうか。非常に取り乱している様子が見られますね。後のインタビューによって判明したことですが、SCP-3647-JPが発生したとき、彼にとってはさっき死んだはずなのになぜか生き返っていたという証言が得られています。
では次にT-3201での映像を見てください。この日は実験は行われず、Dクラス職員は部屋の中で待機していました。今は立ち上がってストレッチをしていますね。もう少し見ていてください。
……はい。急に倒れましたね。この後すぐに救急隊が向かったのですが、死亡していることがわかりました。死因は心臓麻痺でした。この死亡した時間は、T-3200の時に死亡した時間と全く同じで、13時28分でした。
次にこの男性ですが、この人はT-2250で首吊り自殺で死亡しています。SCP-3647-JPが発生したことで生き返ってしまったので、すぐに再度同じように首吊り自殺しようと試みたようです。実行した日がT-3631です。
この男性の自殺現場は三日後のT-3601に発見されるのですが、えー、その時点でですね。少し言い難いのですが、まだこの男性は生きていました。三日間首を絞められ苦しんでいた状態で。
現在は病院で治療されているのですが、その間にも何度も自殺しようとしては死ねないという状況が続いています。
まとめますと、
- T-N0で死亡した人はT-Nnにならないと何があっても死亡しない。
- 逆に、T-Nnになると何があっても死亡する。
- T-N0に死亡した人はそこまでの記憶だけを有している。
この三点が判明しました。今後も調査を進めていきます。以上です。
以下の記録は民間人のSCP-3647-JPに対する反応と、それに関与していると考えられる世界情勢および財団への影響です。
SNSに投稿されたものより抜粋 T-1301
俺たちは2021年を迎えられなかった。世界は今や自殺パーティの会場になってる。三日前は隣人が、一昨日は小学校時代からの友人が、昨日は親が自殺しようとした。だが誰も死ねない。死ぬことを許されていないんだ。
財団は少し前に世界に向けてこう言った。
「私たちは人類の守護者です。この事態は私たちに任せてください。」ってな。
だが実態はどうだ?あいつらは結局何もできていないし今だって苦しんでいる人たちがいる。
俺は知っている。あいつらは人類のためと言って死刑囚を使い人を無残にも殺し続けていた。
今だってそうだ。2020年の間にあいつらは何人の人間を殺してきていると思う?
そいつらが生き返って、そしてまた死んでいくんだ。
もしだ、もし三か月後俺たちが2021年を迎えれなかったらどうする?また人が生き返って、震えながら死ぬことを待つしかできない人がたくさんいる。2021年を迎えられないことに耐えかねて自殺しようと、それでもずっと死ねずに苦しむかもしれない。それをあいつらは放置してるんだ。
そんな奴らを人類の守護者と言えるのか?人の記憶を書き換えることができて、大量の異常存在を抱えている奴らが人間の心を持っていると思うか?
気づいてくれ。あいつらは人類の守護者なんかじゃない。敵だ。
俺達が自分たちの手でこの事態を何とかしないといけない。
この投稿がされた後、カオス・インサージェンシーおよび蛇の手によりサイト-06-3・サイト-17・サイト-88などの人間型収容サイトが同時に襲撃され、多数の収容違反が発生しました。その際、特に財団に対し敵対的だったオブジェクト群は各団体と共に逃亡し、行方不明になりました。.T-N2で収容施設内への帰還を確認したが、収容違反後の動向を口にすることは無かった。
ライブ配信映像より抜粋 T-1121
配信タイトル: 最後まで一緒に話しましょう。
いやー前の2020年じゃいじめられてたけど、もう解決したし、人生やり切った!って感じだねー。
うん。いっぱい包丁で刺したよ。あいつらはそっちの部屋にいる。さすがにグロすぎて配信に乗せれないけどさ。
でも、死ぬほど苦しくても死ねないなんて、ざまあみろだね。
でも、お母さんにちゃんとごめんって言えなかったな。前の2020年じゃ自殺して、今回は殺人犯になったなんて、どう謝っても許してくれないだろうな。
あと2分。みんな。短い間だったけど、配信見てくれてありがとね。
みんなはちゃんと生きるんだよ。
せっかくだし、配信はつけてままにしておくよ。
ここの住所は概要欄に乗せておくから、通報.配信の後、多数の通報があり、警察はパニックを起こしていた。 したかったらして良いよ。
じゃあね。
[20秒沈黙]
……死にたくないなぁ。
この配信がされた後同様の拉致監禁殺人未遂事件が多発しました。その半分以上が被害者を暴行している途中に心臓麻痺により死亡しており、T-N0時点で自殺した時間に犯行を行っていたからだと考えられています。他の生存していた容疑者は一貫して「あの配信に憧れた。復讐がしたかった。」と証言しました。一部ではこの行動を支持する団体が主に日本で複数発足し、各地でデモ活動や集団での犯罪に及んでおり、その中には超常犯罪も含まれていることから準要注意団体への繰り上げが検討されています。
T-N2
財団が懸念を抱いていた二度目の2020年、T-N2が始まり、世界はより一層混乱していきました。T-N1よりも世界中で暴動の数が増え、また二度死を経験し再び生き返ったことによる心的ストレスにより鬱などの精神病を患う人が急増しました。こういった要因により世界の治安はT-N1よりも悪くなっており、主要国の七ヵ国の脆弱国家指標得点は以下のようになりました。
国家 | 点数 | 状況 |
---|---|---|
カナダ | 73 | 要注意(要注意) |
フランス | 65 | 要注意(低い) |
ドイツ | 67 | 要注意(低い) |
イタリア | 79 | 要注意(要注意) |
日本 | 68 | 要注意(低い) |
イギリス | 85 | 要注意(高い) |
アメリカ | 93 | 警報(警報) |
全ての国が10点以上増加しており、今後複数回SCP-3647-JPが発生することがあれば世界の行政機関は完全に崩壊する可能性があります。
連続通り魔事件容疑者聴取記録より抜粋 T-3422
二回やり直せたんだったらさ、どうせもう一回やり直せるだろって思ったんだよ。
どうせ大晦日になったらまた同じ年の元旦に戻るんだろ?
なら今のうちにやれることやっといたほうがいい。
警察のあんただって、あの時逮捕できなかった犯人を今捕まえようとか、あの時助けれなかった人を先に保護しておくとか。そういうことだよ。
俺だってそうだよ。あの時できなかった、その辺のやつらを適当に殺すこと。それをしたかっただけだ。本当はずっとずっとやりたかったんだ。だが一度やっちまうともう取り返し付かないだろ?でも今は取り返しがつくかもしれない。
俺とお前らに何か違いはあるか?俺たちはこの現象に甘えて、乗じて、何かやれなかったことをしようとしてるんだ。
そもそも、どうせ刺したあいつらだって死なねえんだ。次のループで俺のこと殺そうって、もう1回やり直させろって考えてるかもな。ははは。
この事件はT-N2の間では、単独での犯行で最も被害者の多い事件であり、負傷者は15人、従来であれば致命的な怪我を負った人は7人、そしてその中には世界オカルト連合構成員が含まれており話題となりました。犯人は犯行に過去にカオス・インサージェンシーによって盗まれたAnomalousアイテムの類似品を使用していたため関係性が疑われています。.警察はT-N3以降も犯人を逮捕するため確保しようとしていたが、確保することはできなかった。
この事件をきっかけに連邦捜査局異常事件課は超常犯罪の取り締まりを強化し、アメリカ合衆国内の犯罪率は従来の割合まで低下しましたがテロなどの大規模犯罪は定期的に行われています。 財団などの正常維持機関に対し協力要請が送られ、一部の事件は承認し協力していますがSCP-3647-JPの原因捜索に注力していたためほとんどは拒否しました。
T-N5
T-N5ではデモや暴動の数は減少しましたが、その代わり人類は全体的に無気力になり、それは財団職員にも影響しました。ループ前に比べ離職率は5%増加し21%に、自殺未遂者は10%増加し20%になりました。
これによりSCP-3647-JPの研究に遅れが生じるようになると考えた財団は、民間人の雇用や非敵対的な要注意団体および人物への協力体制の構築、各国政府への資金や技術提供の申請をはじめとした大規模な国際的SCP-3647-JP対策プロジェクト ("トゥモローTomorrowプロジェクトProject") を立ち上げました。
以下はトゥモロープロジェクト - イベント調査チームとプロジェクト責任者O5-3とのメールのやり取りです。
To: O5-3
From: トゥモロープロジェクト - イベント調査チーム
Subject: SCP-3647-JPについて
O5-3へ
宇宙科学部門に所属している調査チームがSCP-3647-JPのある特性を発見したことを報告します。
ご存じの通り、SCP-3647-JPの影響により世界の時間はT=0nになるとT-365n+1に戻りますが、その際に瞬間的な宇宙規模でのヒューム値の低下が発生していることがわかりました。瞬間的な低下のため完全な値は出せていないのですが、少なくとも0.1Hm未満には確実に達しています。
この特性に対し国際統一奇跡論研究センターの教授と呼ばれる博士と議論を行ったところ、この事象は大規模な現実改変の可能性があるという結論が出ました。
そしてもうひとつ、微量なのですが世界中の生命体のEveエネルギーが減少していることがわかりました。人類や動植物、オブジェクト達までも。仮にこれがループ毎に一定量減少しているとしても、おそらく1000ループは問題ないという話が出ています。
しかしこの失われたエネルギーがSCP-3647-JPを引き起こしているものに渡っているとすると相手は非常に危険である可能性があります。
現在イベント調査チームはSCP-3647-JPを引き起こすことが可能そうなオブジェクト・PoI・GoIをリストアップしていますが、もしかすると私たちがまだ存在を把握していない何かがいるかもしれません。少なくともリストアップしたものたちは確認の必要があると考えています。
そのためトゥモロープロジェクトが扱える機動部隊を要請します。特に現実改変者や奇跡論に長けている人物であれば効率よく調査ができると考えています。よろしくお願いします。
To: トゥモロープロジェクト - イベント調査チーム
From: O5-3
Subject: Re: SCP-3647-JPについて
トゥモロープロジェクト - イベント調査チームへ
許可する。
財団からは他の部隊より現実改変者と奇跡論に長けている隊員、あとは戦績の良い何人かを招集しよう。他の団体や人材にも声をかけ機動部隊に入ってもらえるか交渉してみよう。
名目上は財団の機動部隊だが、財団職員以外の人物も含めるため君たちが自由に扱える部隊という認識で構わない。
頑張ってくれ。期待している。
機動部隊ベータ-25 ("ループ・ブレイカー")
部隊任務: 機動部隊ベータ-25はトゥモロープロジェクト直属の機動部隊です。主にSCP-3647-JP発生の原因に関与している可能性のあるオブジェクトや要注意人物、要注意団体への調査および襲撃などの業務をしています。
この部隊の隊員は主に他の機動部隊・世界オカルト連合より排撃班・友好的なGoIおよびPoIからの人材・自衛隊などから現実改変者および奇跡術の対処に長けた隊員を中心に戦績の優秀な隊員を招集し構成されています。
財団からは以下の部隊の隊員より招集されています。
- 機動部隊アルファ-1 ("レッド・ライト・ハンド")
- 機動部隊アルファ-9 ("残された希望")
- 機動部隊ベータ-777 ("ヘカテーの槍")
- 機動部隊デルタ-5 ("トップランナー")
- 機動部隊イプシロン-11 ("九尾狐")
この機動部隊は名目上は財団の保有する機動部隊となっていますが、トゥモロープロジェクト直属の機動部隊のため他の団体の指示に従い行動することもあります。そのため国際的な機動部隊であり財団が確実に自由に動かせる部隊ではありません。
T-N8
トゥモロープロジェクトが調査している間にも要注意団体やデモによるサイト襲撃が発生していました。T-N5時点から全体の数は減っているものの、T-N1時点から継続して襲撃している団体の脅威度は上がっていき、いくつかのサイトは甚大な被害を受けました。
被害記録 T-N8
- 財団のイメージを低下させるようないたずら.SNSや落書きなどによるもの。 2755件
- 職員の誘拐 43件
- サイト管理官以上の役職の職員への死に値する傷害 13件
- Anomalousアイテムの盗難.ほとんどがカオス・インサージェンシーによるもの。 227件
- 収容サイトからのオブジェクトの盗難.同上。 196件
- 収容違反の誘発.同上。 301件
- 収容違反による一般人への被害 4790件
- サイトへの爆撃.一般人からの襲撃が多々あった。 29件
- サイトの壊滅 2件
輪廻現象部門によりSCP-3647-JPが異常性を喪失する時期が試算されました。以下は試算結果です。
T=018439 |
T-N12
数年にわたりトゥモロープロジェクトによる要因の調査が行われてきましたが少なくとも地球上およびその周辺にはSCP-3647-JP発生の原因となるようなものは存在せず、要因は外宇宙・異次元などに存在する何かという可能性が浮上してきました。
アイディタレンズを利用した並行宇宙の観測、宇宙科学部門による地球外に対する調査を基にSCP-3647-JP発生の原因調査が再び行われました。
並行宇宙の観測記録 T-3112
トゥモロープロジェクト - 並行宇宙観測チームは25147個の並行宇宙を観測しそれらの世界でSCP-3647-JPが起こったか、起こった宇宙はどういった対応を取ったかというところに注力して調査しました。その結果、4%の宇宙はSCP-3647-JPが発生する前に宇宙規模で滅亡しており、93%の宇宙ではSCP-3647-JPは発生しておらず、残りの3%の宇宙ではSCP-3647-JPが発生していることがわかりました。以下は観測記録の抜粋です。
TL-153
この宇宙ではループはT-N18529で終了しました。SCP-3647-JPの原因はつかめておらず、また人類は度重なるSCP-3647-JP発生によるストレスにより精神病を患っている人が多く、財団や世界オカルト連合などの正常維持機関は機能しておらず、活動している職員や構成員もほとんどいないため実質解散状態になっています。
SCP-3647-JPが終了した世界でもこの状態は続き、この宇宙の文明は衰退していきました。
TL-429
この宇宙のループはT-N3で終了しました。この宇宙では財団が世界を支配しており、オブジェクトに対する過剰な実験や人類の管理を常習的に行っています。財団は存在を隠匿せず規模を拡大しているため技術力などが我々の宇宙よりも長けており、SCP-3647-JPの原因を二年で突き止めました。
この宇宙でのSCP-3647-JPの原因は"新生カオス・インサージェンシー"を名乗る団体によって行われ、大規模な現実改変を可能とする神格実体を召喚したことにより発生しました。財団は即座にその存在を認知し、保有する[削除済み]という兵器を用い神格実体の無力化および新生カオス・インサージェンシーの壊滅を行いました。
TL-716
この宇宙のループはT-N34で終了しました。この宇宙ではBIクラス: ("侵入間際") シナリオが頻繁に発生しており、外宇宙に関する技術が他の宇宙に比べ非常に長けていました。
この宇宙でのSCP-3647-JPの原因は外宇宙に存在する神格実体によるもので、SCP-3647-JP無力化に対し活動する職員は少なかったものの成功しました。
この観測調査により
- SCP-3647-JPが発生した宇宙は全体の3%であることから頻繁に起こるイベントではない。
- SCP-3647-JPの原因は何か特定の一つというわけではなく宇宙毎に原因は変わるが、その中でも最も多かったのは外宇宙に存在する神格実体である。
- SCP-3647-JPを無力化する方法は、SCP-3647-JPが終わるまで耐えるかSCP-3647-JPの原因を見つけ無力化するかの二つ。
ということがわかりました。
以下はトゥモロープロジェクト - イベント調査チームに送られた機動部隊ベータ-25 ("ループ・ブレイカー") 隊長ヘンリー・ブロートとのメールの内容です。
To: トゥモロープロジェクト - イベント調査チーム
From: ヘンリー・ブロート
Subject: 今後について
トゥモロープロジェクト - イベント調査チームへ
今後の方針についてお聞かせ願いたいです。リストアップされたGoIやPoI、オブジェクトたちはすべて調査しました。その中には多少強引な調査、襲撃を行ったものもあることはわかっていると思います。
SCP-3647-JPの異常性、「T-365n~T=0nの間に死亡したすべての生物が蘇生される。」「T-3650時点での状態にすべての物質や生物が戻る。」この二つが存在する限り、一度襲撃したところは確実に復讐にやってきます。SCP-3647-JPが有効な限り何度でも。
次の手を打たなければ、私たちはずっと体力を消耗していくだけです。身体的にもですが、特に精神的に。T-N5以降人類全体が無気力になっているのは知っていると思います。それは我々機動隊、そしてあなたたちプロジェクト参加メンバーも同様です。
仮にSCP-3647-JPの原因が外宇宙の神格実体だったとします。では、それをどうやって今保有する技術で見つけるのか。TL-716はもともと技術を持っていたからこそ対処できました。しかし我々は有していません。見つけたとしても、無力化する方法すらわかりません。
正直言って、これ以上できることは無い気がします。何か我々を照らす希望や指標がなければ、これ以上の抵抗を諦め、ループが終わるまで待つ方がいいのかもしれないと考えてしまいます。
T-N15
監督評議会投票記録 T-32715
SCP-3647-JP対策プロジェクト ("トゥモロープロジェクト") の放棄に関する監督評議会投票記録
賛成 | 否決 | 棄権 |
---|---|---|
O5-1 | ||
O5-2 | ||
O5-3 | ||
O5-4 | ||
O5-5 | ||
O5-6 | ||
O5-7 | ||
O5-8 | ||
O5-9 | ||
O5-10 | ||
O5-11 | ||
O5-12 | ||
O5-13 |
賛成4 | 反対8 | 棄権1 |
議題は否決された |
我々はまだ諦めるべきではない。財団や連合といった正常機関が歩みを止めてしまえば、世界中の人々は何もかも諦めてしまうだろう。そんなことはあってはならない。我々、財団や正常維持機関だけではなく、人類にはまだやらなければならないことがある。こんな所で停滞している場合では無い。トゥモロープロジェクトは継続される。
- O5-3 -
世界情勢と財団内の変化
T-30915
宇宙科学部門はNASA.National Aeronautics and Space Administration: アメリカ航空宇宙局・JAXA.Japan Aerospace Exploration Agency: 宇宙航空研究開発機構 などの宇宙機関とのコンタクトを取り、SCP-3647-JP発生の要因となる実体の捜索協力を求めました。交渉には時間をかけたものの協力関係を作ることに成功し、"トゥモロープロジェクト - 外宇宙捜索チーム"として結成しました。
T-29115
望遠鏡の需要が急増。個人でSCP-3647-JPの要因を探そうといったイベントが定期的に行われている。また、財団やプロジェクトへの参加希望者、宇宙機関への就職希望者が急増し「世界を救いたい」という声が頻繁に挙がっている。
T-21315
テロの数が減少。カオス・インサージェンシーや蛇の手からの襲撃は無く、動向が全くつかめなくなった。一部の団体は解体を宣言した。
T-13715
機動部隊ベータ-25 ("ループ・ブレイカー") には外宇宙に行った際の戦闘訓練を実施させるようになった。
T-10415
スクラントンボックス作成に利用される技術を応用し、探索記録をループ後も残すことができる外宇宙探索機の制作と外宇宙で実体に対する攻撃が可能な戦闘機などの制作プロジェクトが始動した。
T-315
設計が完了した。
T-N28
十年以上にわたり制作されていた外宇宙探索機 ("Boost") の打ち上げ成功が確認されました。トゥモロープロジェクト - 外宇宙捜索チームは外宇宙の大きさを暫定的に区間分けし、それぞれの方向に対し外宇宙探索機 ("Boost") を複数打ち上げ、同時探査を実施することを発表しました。
探索には数十年以上かかると予測されており、その間は人類のメンタルケアや新たな財団職員の雇用、SCP-3647-JP無力化後の対応準備へと注力を注ぐようになりました。
To: トゥモロープロジェクト関係者各位
From: トゥモロープロジェクト - 外宇宙捜索チーム
Subject: 朗報
朗報です。見つけました。
SCP-3647-JPを発生させている実体を発見しました。
T-N64
トゥモロープロジェクト - 外宇宙捜索チームはSCP-3647-JPを発生させている神格実体を地球から約850光年離れた場所で発見しました。この神格実体は推定身長が40m程の、膝に顔を埋めるような体勢をした顔の部位・髪・生殖器の無い実体でした。また、原因と判断した主な点として
- 神格実体周辺のヒューム値が10000Hm以上の数値を検出した。
- T=063時点で瞬間的に神格実体周辺のヒューム値が1Hmとなり、それ以外の箇所が0.1Hm未満になった。
の二つが挙げられます。
トゥモロープロジェクトは対外宇宙神格実体戦闘機 ("Sunrise") の起動準備を開始。機動部隊ベータ-25 ("ループ・ブレイカー") 内で行った戦闘訓練で優秀な戦闘員たちを配置し、"トゥモロープロジェクト - 討伐チーム"としました。選ばれたのは以下の四名です。
- エドガー・レーネ
- ウィラマー・バイツ
- ハーヴィー・ローウェス
- ヘンリー・ブロート
対外宇宙神格実体戦闘機 ("Sunrise") には宇宙科学部門が制作した多機能宇宙服・10000Hmに耐えうるよう強化されたSRA・ガトリング砲および専用の現実性凝縮弾頭.SRAが機能しないほど高い現実性を有した空間に対し、着弾させることで一定範囲の現実性を一時的に吸収しSRAを機能させるもの。などを搭載していました。
T-564
以下は討伐チーム四名に配布された作戦概要です。
作戦概要
準備段階
- それぞれ搭乗しているSunriseをワイヤーで接続し、神格実体を囲むように張る。
- ワイヤーに強化SRAを均等に取り付けていく。この際BoostによるSRAの運搬や移動の補助などのサポートが行われる。
- ワイヤーをそれぞれ引っ張り、神格実体とSRAの距離を縮め周辺のヒューム値を安定させていく。
攻撃段階
- ある程度の距離を保ちながら現実性凝縮弾頭を神格実体に撃ち込む。
- 1Hmになるまで撃ち続け、そのまま無力化する。
- 弾頭が無くなる・1Hmまで下がりきらなかった場合、T=0の瞬間を狙い直接攻撃する。
T-164
以下は対外宇宙神格実体戦闘機 ("Sunrise") 内でのトゥモロープロジェクト - 討伐チームの四名の会話音声記録です。
エドガー: 全員作戦は確認したか?
ハーヴィー: はい。確認しました。
ヘンリー: オーケーだ。
ウィラマー: したぞ。
エドガー: よし。ところでこの音声は録音されて本部にリアルタイムで送信しているらしいが、作戦前にみんなに何か言うことはあるか?
ウィラマー: 少しくらい考えてこればよかったな。
ヘンリー: 意気込みか何か言うのか?
エドガー: 何でもいいが、これ以降四人で集まって何か言う機会なんてないぞ。
ウィラマー: そうだな……俺が帰ってきたら病院とか全部すっ飛ばしてすぐに行きつけのバーに行くからその日は貸し切りにしとけ。とかか?
ハーヴィー: そういう感じですか。なら、作戦が成功したら私をO5まで昇級させてください。
エドガー: だめだろ。
ハーヴィー: まあまあ、最後の戯れじゃないですか。
エドガー: 俺は……新年会したいな。ずっとできてない。
ヘンリー: まあ、ずっと同じ年だったし、新年のイベントやりたいな。スリーも呼ぼう。ウィラマーの行きつけのバーで、ついでにハーヴィーの昇級祝いだな。
ハーヴィー: ははは。いいですね。
ウィラマー: 一番うれしそうだな。
エドガー: こんなものか?
ヘンリー: そうだな。もうすぐ作戦開始時間だ。
エドガー: 絶対に成功させるぞ。
他三名: 了解。
T-164
以下は作戦実行日の映像記録です。
実体がSCP-3647-JPを発動させるまで[100:00] ヘンリーが作戦開始を宣言。
[97:28] ワイヤーを繋げた状態でboostを飛ばす。
[92:31] 指定の位置にboostをすべて飛ばし、SRA設置作業が始まる。
[88:11] いくつかのSRAが負荷に耐えられず破壊される。エドガーが予備のSRAを取ってくるよう無線でウィラマーに指示する。
[81:54] 一つ目のワイヤーにSRAを設置し終わる。同様の作業を繰り返し行う。
[43:01] 一通りSRAの設置作業が終了する。
[40:23] それぞれの区画に分かれワイヤーの範囲を狭めていく。
[30:54] ハーヴィーが「実体が少し動いた」と報告する。作業は一時中断され様子を見ていたが、それ以上の反応がなかったため継続された。
[28:24] 実体がSRAで囲われ、近づくことが可能になる。
[26:08] メンバーが全員Sunriseに戻り、それぞれのコックピットに乗る。
[24:31] Sunriseが四つの機体に分かれる。
[21:12] 実体を囲むようにそれぞれ配置につく。
[20:01] Sunriseからガトリング砲が出現し、現実性凝縮弾頭を発射し始める。
[19:41] 実体のヒューム値が8217Hmまで下がる。
[18:59] 実体から指向性光学エネルギー放射がウィラマーの乗っているSunriseに対し発射される。ウィラマーがロストする。
[18:52] 他三機が距離を離そうとするが、神格実体が再び指向性光学エネルギー放射を発射し阻む。
[18:36] 撤退から交戦に方針を変え、発射を継続する。指向性光学エネルギー放射も同様に継続して発射されるが、回避している。
[17:38] 実体のヒューム値が6923Hmまで下がる。ハーヴィーのSunriseに指向性光学エネルギー放射が一部接触しコントロールが効かなくなる。
[16:25] 実体のヒューム値が4711Hmまで下がる。ハーヴィーのSunriseは弾頭を打ち続けていたが、コントロールが効かなくなっているところを実体により指向性光学エネルギー放射を発射されロストする。
[08:38] 実体のヒューム値が1005Hmまで下がる。ヘンリーのSunriseの方に対し放たれた指向性光学エネルギー放射が、ヘンリーを庇うように前に出たエドガーのSunriseに当たりロストする。
[01:32] 実体のヒューム値が249Hmまで下がる。
[00:12] 実体のヒューム値が58Hmまで下がる。
[00:08] 実体のヒューム値が35Hmまで下がる。Sunriseが旋回し実体に対し直進する。
[00:01] 実体のヒューム値が12Hmまで下がる。Sunriseが実体に突撃する。
[00:00] 実体のヒューム値が1Hmまで下がる。爆発が起きる。
[映像断絶]
O5-3より
現在時刻6時50分。
もうすぐだ。
ここからの景色も良いものだな。
さて、この64年間、君たち人類を苦しませ続けたことを本当に申し訳なく思う。
いきなり異常に巻き込まれ、困惑した人もたくさんいただろう。
だが、それは勇敢な四人の戦士によって取り除かれた。
私は彼らに最大級の敬意を払おうと思う。
我々は異常を人々から遠ざけ、闇の中に閉じこめてきた。しかしそれは、君たち人類を守るためであった。
今後、ヴェールを剥がした我々はどうするべきなのか協議中だが、ここで誓おう。
"人類は恐怖から逃げ隠れていた時代に逆戻りしてはならない。"
我々は絶対に逃げない。君たち人類を守るため職務を全うし、人生を捧げよう。
しかし、こんな美しい景色を見れば疲れも吹っ飛んでしまうな。
64年ぶりの初日の出だ。
T+1
2021/1/1