SCP-3660-JP-Aの一例
アイテム番号: SCP-3660-JP
オブジェクトクラス: Eparch1
特別収容プロトコル: SCP-3660-JPは標準人型実体収容セル内に収容してください。1日に1度、SCP-3660-JPに対してメンタルケアを行ってください。過度な精神状態の悪化が確認された場合、限定的にCクラス記憶処理の使用が許可されます。
回収されたSCP-3660-JP-Aは調査の後、破棄してください。
説明: SCP-3660-JPは報告書作成時点で21歳の「源 美優」という名前の日本人女性です。現在、SCP-3660-JPには一切の異常な性質は確認されていません。
1日に1度、SCP-3660-JPの周辺には写真(以下、SCP-3660-JP-A)が出現します。出現位置については、SCP-3660-JPが第一発見者となりやすく、他者によって撤去されにくい位置に出現する確率が高いことが判明しています。また、数量や大きさに関しては出現位置によって異なることが判明しています。
全てのSCP-3660-JP-Aは不明な生物を撮影したものです。当該生物には概ねヒト(Homo sapiens)に類似した腕部を持つことや体色が青緑色である等の特徴がSCP-3660-JP-Aから確認されており、これらの特徴は現在財団が確認している全ての生物種と一致しません。当該生物は全てのSCP-3660-JP-Aにおいて腕部を用いてファックサインに酷似したポーズをとっており、顔面部にはモザイク処理が行われています。
SCP-3660-JPには報告書作成時点で重度の精神状態の悪化が確認されています。これはSCP-3660-JP-Aによって不明な生物から敵意を向けられていることが示唆されており、それに対する不安に起因する非異常のものだと考えられています。
補遺: 以下は収容初期に行われたSCP-3660-JPに対するインタビューの書き起こしです。
対象: SCP-3660-JP
インタビュアー: 中田博士
<ログ開始>
中田博士: それではSCP-3660-JP-A、あのような写真が出現し始めたのはいつ頃からですか?
SCP-3660-JP: えっと、2週間ほど前です。初めは郵便受けに1枚だけ写真が入っていたんです。趣味の悪い写真だなって思って、特に気にしてはなかったんです。よく分からないものが入ってるのは初めてじゃありませんでしたし、よくあるイタズラだろうと考えていました。
ですけど、それが連続して3日くらいあって、それも私のところだけに写真が入れられてるらしくて、まず友人に相談したんです。私と友人が良く行っているハンバーガー屋さんで話をしようってなって行ったんです。……チェーン店です、チェーン店ですよ?ハンバーガーの中にあの写真が入ってるなんて有り得ないはずなんですよ。
中田博士: そうですね。実際、我々の調査でもその店舗は異物が混入するような状況ではなかったことが分かっています。
SCP-3660-JP: で、やばいなってなって、警察に通報しました。怖くて、もう郵便受けも見ないようにしようって、外食もやめようと思ったんです。……お風呂場の一面にあの写真が貼られているのを見たとき、怖いってより……もちろん怖かったですよ。怖かったです。でも、もう駄目かなみたいな。だって、どこにも逃げ場はないじゃないですか。ここだって同じです。
[3秒程度の沈黙]
中田博士: ……貴方は我々が全力をあげて保護します。
SCP-3660-JP: 写真一枚も防げてないのにですか?ここに来てから何度食事に写真が入っていたか知ってますか?毛布の裏に、ベッドの下に、ロッカーの中、天井……知らないですよね。写真も防げないのに保護するんですか、あの気色悪い化け物にいつ襲われるかも分からないのに?
中田博士: 何も全ての化け物が人間を襲うとは限りません。
SCP-3660-JP: 中指立てといてなんの敵意もないと?
[6秒程度の沈黙]
SCP-3660-JP: ……すいません。取り乱しました。
中田博士: いえ、こちらも気を配れていませんでした。ひとまず今日のところのインタビューはこれにて終了とさせていただきます。ありがとうございました。
[椅子の軋む音。中田博士が立ち上がった音だと思われる]
[短い悲鳴]
中田博士: どうかしましたか?
SCP-3660-JP: せっ、背中に、写真が。
<ログ終了>
終了報告書: 中田博士の背中には5枚のSCP-3660-JP-Aが貼り付けられていた。インタビュー中のいずれかの時点で出現したと推測されている。当インタビュー以降、SCP-3660-JPはインタビューの実行を拒否している。
追記-1: 20██/██/██、出現したSCP-3660-JP-Aの裏面に日本語の文章が発見されました。SCP-3660-JP研究チーム(以下、研究チーム)は対話を試み、当該文章の下部に質問文を記述しました。その結果、翌日出現したSCP-3660-JP-Aの裏面に質問の返答にあたる文章が記述されていました。当手順の繰り返しにより、研究チームはSCP-3660-JP-Aにて確認されている生物と見られる知的生命体(以下、SCP-3660-JP-B)との対話に成功しました。以下はそのログです。
<ログ開始>
SCP-3660-JP-B: やあ彼女。日本語を練習したよ。違和感がなく喋れているかな。大丈夫かな。
研究チーム: 失礼します。我々が彼女の代理として会話させていただくこととなりました。まず質問なのですが、貴方は誰ですか?
SCP-3660-JP-B: おっと、彼女ではないのか。俺は[乱雑な文字。日本語とは異なる言語だと推測される]です。日本語で表現できなくてごめん。
研究チーム: ありがとうございます。では、何故貴方は彼女に対してこれほどまでに敵意を持っているのですか?
SCP-3660-JP-B: おっと、なぜそう思うのか。
研究チーム: 貴方が写真に写っている方ですよね。あの中指を立てるジェスチャーは一般的に敵意を表しますよ。
SCP-3660-JP-B: 本当か。俺は勘違いをしていた。あのジェスチャーは愛を表していた。あのジェスチャーは愛を表すジェスチャーだとだと聞いた。それをたくさん送って彼女に俺の愛に気づいてもらおうとしていた。顔を見せるのはちょっと恥ずかしい。でも、顔を見せなくても愛は伝えられる。
研究チーム: それは間違いですよ。恐らくその情報は小学校にて流行っていたようなものでしょう。
SCP-3660-JP-B: 驚いた。反省した。
研究チーム: あのような写真を送り続けると、恐らく彼女によくない影響を及ぼすと思います。別の形の写真を送るなんてのはどうでしょう。
SCP-3660-JP-B: ごめん。彼女にも伝えて。
<ログ終了>
対話後、SCP-3660-JP-Aの出現は停止しています。また、それに伴いSCP-3660-JPの精神状態も劇的に改善したように見受けられます。
追記-2: 対話から1週間後、裏面に以下のような文章が記述されたSCP-3660-JP-Aが出現しました。
貴方達は嘘つきだ。彼女と俺の愛を邪魔している。
あのジェスチャーの意味を調べた。やっぱり「Fuck you」であってるじゃないか。
本当に俺の思いにぴったりの意味だ。彼女の身体は素晴らしい。俺達の家族になって家族を増やしてほしい。これを日本語では愛とか結婚とかいうだろ。彼女の身体であれば十か二十も増やせる。
だから「Fuck you」。彼女に対してずっと伝えてた。
貴方達は嘘つき。もう話さない。
以降、SCP-3660-JP-Aの出現が再開しました。しかしながら、SCP-3660-JP-Bに対する対話の試みは一切成功していません。当文章によって判明した情報について、精神状態の著しい悪化の要因となることが予想されるのでSCP-3660-JPに対しては秘匿されます。









