SCP-3663収容ゾーン。実体そのものは写っていない。
アイテム番号: SCP-3663
オブジェクトクラス: Euclid Keter
脅威レベル: 橙 ●
特別収容プロトコル: SCP-3663は現在、サイト-54の保守点検用トンネルだった場所に位置しています。非実体化を防止するために、職員は当該領域へのアクセスを許可されておらず、トンネルの湿度を低下させる努力が行われています。
SCP-3663が非実体化した場合は、機動部隊ニュー-4(“ボックスカッターズ”)が a)SCP-3663を発見し b)当該実体に害が及ぼされるのを防ぐことを目標として動員されます。可能であれば、SCP-3663には再収容を支援するためのGPS追跡装置を装着させます。発見されたSCP-3663は移動式の配管ネットワークに移送され、サイト-54で再び拘留されます。
SCP-015から2km以内の地点へのSCP-3663の自発的な移動を阻止する試みが行われています。
説明: SCP-3663は、主に段ボール(箱やチューブの形状)・粘着テープ・麻糸で構成されているヒト型実体です。SCP-3663は未知のメカニズムによる完全な移動と発声が可能であり、質問に応答して直近の環境に反応することができる準知性体であることが証明されています。SCP-3663の体内には、全ての主要人間臓器の雑な段ボールおよび紙製の模型と、血管・神経系を表す染色された綿が収められています。SCP-3663はこれらの内容物を機能させる必要性を持っておらず、これらが実体内において果たしている役割は不明です。
SCP-3663は自身や他の物体を瞬時に長距離転送することが可能であり、その範囲に上限は見られません。これが実行される手法は現在不明ですが、実体との肉体的接触が必要とされます。物理的な場所に関係なく能力を発揮できるにも拘らず、SCP-3663は3663-適切領域(最低でも直径40cmの閉鎖されたトンネル様の空間、または空間ネットワークと定義される)を極度に優先する傾向を見せ、常に該当する領域での出現を選択します。
外部から干渉を受けていない時のSCP-3663の挙動は容易に予測可能です。当該実体は以下に記録されている単純な循環型行動パターンに従事します。
- SCP-3663は3663-適切領域に出現し、低い声を発しながら、威嚇の試みないし恐怖心を示唆する素振りで腕を振ります。実体は領域内を徘徊し始め、定期的に立ち止まって大きな高音のノイズを発します。
- SCP-3663は領域内にいる人間の下に向かおうとします。対象者が近くにいない場合、この行動は実行されず、SCP-3663は無期限に領域内に留まるだけだという点に注意してください。稀にSCP-3663は3663-適切領域の外部にいる人物を(最大で)50mまで追跡する様子が観察されています。
- SCP-3663に掴まれた対象者は、不安および/またはパラノイアの高まりを経験します。SCP-3663は非実体化します。
- SCP-3663は別な3663-適切領域に、対象者を伴って出現します。対象者は例外なく無意識ですが、それ以外の危害を加えられていません。対象者を解放してごく短い距離を移動した後、SCP-3663は再び非実体化し、3番目の領域に出現して新たなサイクルを開始します。
このサイクルの何処かの時点でSCP-3663が移動を妨げられるような損傷を受けるか、もしくは3663-適切領域から50m以上引き離された場合、SCP-3663は即座に非実体化し、修復された状態で帰還して新たなサイクルを開始します。軽微な切り傷や裂け目などの小さい損傷はこの効果を引き起こしません。
補遺.1: インタビューログ3663-1:
回答者: SCP-3663
質問者: ドイル研究員
序: 以下のインタビューは、SCP-3663の中央収容エリア(元サイト-54保守点検用トンネル)の内部にある間に合わせのインタビュー室に埋め込まれた双方向音声映像記録システムを介して実施されたものである。
<記録開始>
ドイル研究員: こんにちは、SCP-3663、もし良ければ—
SCP-3663: トン… トンネルかいじゅうだ。
ドイル研究員: 何だって?
SCP-3663: おれさまはトンネルかいじゅうだ。SCP… SCP-3663じゃない。トンネルかいじゅうだ。それがおれさまだ。
ドイル研究員: …そうか。では、あー、トンネル怪獣くん、なぜ君はこういう行動をとっているのかな? つまり、人をあちこち動かして回ることだ。
SCP-3663: トンネルかいじゅうはひとをさらうんだ。それがおれさまだ、トンネルかいじゅうだ。おれさまは… おれさまはひとをさらって、おれさまがすむトンネルにつれていく。トンネルのなかに。パイプに。おれさまはトンネルかいじゅうだ。
ドイル研究員: そこは分かるが、それを行うことで何を達成したいと思っている? 君は現れる場所を適当に選んでいるようだから、私には大して違いが出るとは思えないんだがね。君なら簡単に—
SCP-3663: やめてくれ。それがおれさまがやることだ、やらなきゃいけない、おれさまは… おれさまこそがトンネルかいじゅうだ。それがおれさまだ。やめてくれ。
ドイル研究員: 何だって? 私たちは君を助けようとしているんだよ、君だってずっと地下で過ごし続けたい訳じゃないだろう? 私たちはここに君のための部屋を設置できる、だからもうああいう汚い配管の中に潜り込む必要は無いんだよ。良い事じゃないかい? どう思う?
SCP-3663: おねがいだ。おれ… おれさまは… [SCP-3663は5秒ほど沈黙する] …トンネルかいじゅうだ。やりたくない… こんなこと、それがおれさまがやることだ。やらなきゃいけない。おれさまはトンネルかいじゅうだ。おれさまはそれをするんだ、おれさまはトンネルのばけものなんだ、トンネルかいじゅうだ。 [SCP-3663の“顔”に2つの湿った点が表れる] パイプに、トンネルにかくれておまえのところにいくんだ。やらなきゃいけない。おねがいだ。 [SCP-3663の正面の表面素材が、水害の蓄積によって構造統合性を失い始める] おねがいだ。もうあそびたくない。おれさまはかいじゅうだ。トンネル。おれさまは[不明瞭]
ドイル研究員: …今日はここまでにしようか。ありがとう。
<記録終了>
SCP-3663の新たなサイクル開始とそれによる収容違反を誘発する規模の深刻な損傷を与える可能性があるため、近い将来に更なるインタビューを行う予定はありません。
補遺.2: イベント3663-デルタ:
20██/██/██、SCP-3663の挙動は確立されていたパターンから短期間逸脱しました。14:20、SCP-3663はサイト-54の保守点検用トンネルに出現し、80db以上の声を発し始めました。現場スタッフから“苦しそう”と表現されたこの発声は深刻な心理的影響をもたらし、多くの職員をショック状態に陥れました。SCP-3663は約4時間にわたって施設内を彷徨い歩き、職員を攻撃し、小規模な物損行為を行いました。SCP-3663がナイフ・パイプ・蛇口・銃器による自傷行為を繰り返し試みたことは特筆に値します。この過程でSCP-3663は複数回破壊されましたが、その都度近場のエアダクトや保守点検領域に再出現しました。
事案に続き、職員2名の遺体がサイト-54内部から回収されました。検死解剖の結果、死因は全ての主要血管・洞・耳管・消化器系および呼吸器系の大半における紙の残渣/木材パルプの蓄積と判明しました。他にも相当数の職員が同種の軽微な影響を受けていたことが明らかになりましたが、こちらは完全な快復が見込まれています。SCP-3663のオブジェクトクラスとSCP-3663-適切領域の定義は事案に応じて更新されました。
その後の情報収集により、当該事案はPOI-3663-1が79歳で自然死したのとほぼ同時に発生したことが明らかになりました。死亡する以前、問題の人物は全く注目すべき点の無い生活を送っており、異常な団体・人物・オブジェクトとの関わりを持っていませんでした。SCP-3663の創造または起源との接点を確立する試みは現在も進行中です。
補遺.3: 発見ログ:
序: 以下は[編集済]の民間監視カメラ映像から回収された動画3663-1の転写である。映像はSCP-3663の存在を最初に記録した証拠物件である — この日時以前には、当該実体に関連する異常活動を示唆する記録・目撃証言・物理的痕跡などは発見されていない。
<転写開始 [15:22、1979/08/09]>
00:00: 2人の子供 — どちらも8~12歳頃の男性 — が建築現場の跡地で遊んでいるのが見える。片方(POI-3663-1と指定)が、SCP-3663似の粗雑な段ボール製“スーツ”を着たもう一方(POI-3663-2と指定)の下へと走っていく。
00:23: 両名は短時間カメラの視界を離れた後、戻って来る。彼らが行っている“ゲーム”は、未完成の下水管システムの中で-2が-1を追い回す事が中心であるように思われる。POI-3663-2は繰り返し-1を掴んでトンネルの奥へ引き込もうとする。同じく、POI-3663-1は攻撃を防ぐために偽物の武器を数多く使用している。
01:04: POI-3663-1が配管に躓いた時、空が僅かに暗くなる様子が観察される。POI-3663-2は話しかけながら-1を掴んで立ち上がらせようとする。POI-3663-1はそれを怒った様子で押し返す。POI-3663-2は殴られたかのように後ずさりする。
01:30: POI-3663-2が震え始め、映っている空が暗さを増していく。POI-3663-1は自身の頭を掴み、POI-3663-2を指差して叫んでいる。どちらの子供も激しく苦しんでいるように見える。
01:50: POI-3663-2が“スーツ”の上半身を脱ごうとして失敗する。
02:49: カメラ映像がロストし、砂嵐に変わる。連続的なハム音が聞こえる。記録によると、半径200m以内にある他の電子機器も全て同時に故障している。
04:12: カメラ映像が復旧。どちらの子供も映っておらず、追加の異常も観測されない。
06:08: SCP-3663がカメラを通り過ぎていく。実体は僅かに震え、非実体化する前に自身の顔を引っ掻く。
<記録終了>
POI-3663-1は後ほど、4000km以上離れた地下鉄の廃線路に無意識で横たわっているのを発見されました。対象者はSCP-3663とPOI-3663-2のどちらに関する記憶も示さず、自分は一人で遊んでいたと主張しました。対象者の社会復帰は問題なく完了しました。今日まで、POI-3663-2や、同人物が存在していたことを証明する記録は回収されていません。