時空間遡及異常事案-3680-JP
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通知:報告書へのアクセスが確認されました。転写ミーム3680-JP-13を展開します。なお、ミームにより経験する体感時間と実際の経過時間は大きく相違することに留意してください。

 

19:10:18 ウェイブラー博士補佐がサイト-298の自分のオフィスから目的地であるサイト-304へ出発する。しかし出発直後、サイト-298内のセキュリティロックが誤作動し、サイト正面入り口のロックを有効化させる。以後、このロックはリーサイト管理官によって誤作動のチェックが実施されるまで無効化されず、ウェイブラー博士補佐はサイト-298に閉じ込められる。

19:13:34 ウェイブラー博士補佐がサイトの裏口へと到着する。カードキーを用いてサイトの裏口から脱出しようと試みるものの、カードキーそのものをウェイブラー博士補佐は落下させ、そしてそのカードキーは付近の資料棚の下部に存在する隙間へと滑り込む。

19:20:50 該当時刻までウェイブラー博士補佐は付近の紙等を用いてカードキーを捕捉しようと試みるものの、再入手は叶わず、裏口を後にする。

19:27:13 再びウェイブラー博士補佐は正面玄関へと移動する。正面玄関は該当時刻時点で誤作動によるロックは解除されておらず、カードキーを喪失したウェイブラー博士補佐がそれらを解除する術はその時点で存在していない。

19:34:58 ウェイブラー博士補佐が正面玄関のドアを蹴り飛ばす。

19:35:19 正面玄関に外部衝撃が加わったことで、付近を移動していたセキュリティロボットが反応し、ウェイブラー博士補佐に対して敵性反応を示す。そしてセキュリティロボットは付属する装備を用いてウェイブラー博士補佐に対して鎮圧行動を開始する。ウェイブラー博士補佐はそれらを回避しつつ、一時的に自身のオフィスへと帰還する。

19:40:36 リーサイト管理官によって正面玄関の誤作動のチェックが実施され、正常な状態へと修正される。ウェイブラー博士補佐にも内部通信機器を用いてそれが知らされる。しかしながらウェイブラー博士補佐は自身のオフィス内にあるパソコンからサイト内部映像を確認しているのみで、そこから移動しようとしない。

19:42:29 内部通信機器によって移動命令が通達され、ウェイブラー博士補佐は溜息を一つ吐き、オフィスから目的地へと出発する。

19:45:17 廊下内でウェイブラー博士補佐とセキュリティロボットが対面する。セキュリティロボットは再びウェイブラー博士補佐を敵性存在と認定し、鎮圧行動を開始する。ウェイブラー博士補佐はそれらを回避しつつ、正面玄関へと移動するものの、その途中の廊下にて、セキュリティロボットの放ったゴム弾が頭部に直撃し、そのまま失神する。

19:59:59 以後、該当時刻までウェイブラー博士補佐はサイト-298の廊下で失神している。SCP-3680-JPが発生し、時間遡及が行われる。

 

アイテム番号: 3680-JP
レベル3
収容クラス:
keter
副次クラス:
inimical
撹乱クラス:
amida
リスククラス:
critical

特別対応プロトコル: SCP-3680-JPは現時点で発生している現象であるため、報告書に記載された内容を元に、リアルタイムによる臨機応変な対応を実施してください。特に該当現象の起点と推定されている人物に対しては常に複数の機動部隊による監視、追跡、場合によっては行動へのバックアップを実施するように心がけてください。

また、SCP-3680-JPの更なる情報収集のため、当報告書へのアクセスと共に、それまでの記録の一部を疑似的に体感可能な転写ミームの摂取が義務付けられています。ミームによる体感時間内において、オブジェクトに関する新たな情報が発見された場合、速やかにそれらは精査され、担当者へと共有されます。

なお、当該報告書、並びにオブジェクトの関連職員は時間サイト-01Aに配置・配備される形で、SCP-3680-JPによる遡及現象の影響を受けることの無いように保管されます。

説明: SCP-3680-JPは現時点で財団職員であるウェイブラー・トーマス博士補佐を中心として発生していると推測されている、全世界共通で発生している特定の時間範囲内(2017/04/18 19:00:00 ~ 19:59:59)での時間遡及現象です。この現象内で発生した事例と関連したパラドックスは報告されておらず、SCP-3680-JPは無期限の喪失型時間遡及1であると考えられています。ただし、この現象に関して、当事者と推測されているウェイブラー博士補佐は、この喪失の影響を受けることはなく、全てのSCP-3680-JPにおいて発生した事象を記憶しています。

現時点で財団が確認できている限り、この時間遡及は 105 106 107回発生しており、そのいずれにおいても当現象の阻止、並びに無力化には至っていません。また、発生要因についての調査は限定された時間内では極めて困難であり、その特定には至っていません。以下はその要因特定のため、SCP-3680-JPの時間範囲内でのウェイブラー博士補佐の行動について行ったインタビューの書き起こしとなります。
 

インタビューログ3680-JP-12

記録担当者: リーサイト管理官

対象: ウェイブラー・トーマス博士補佐


<転写開始>

<前略>

ウェイブラー博士補佐: 本当に言わなければならないのですか?

[リーサイト管理官が頷く。]

ウェイブラー博士補佐: これに何の意味があるのですか?

リー管理官: ウェイブラー、世界がかかっているんだ。

ウェイブラー博士補佐: それは理解しています。けれど、いやしかし、私がその時間に行おうとしていたこと自体が、オブジェクトに影響しているとはあまりにも考えづらいのです。

リー管理官: 私たちはどれだけおかしな物を見てきた? それこそ何が原因で、なんて誰にも想像ができないものだって山ほどあっただろう。今はとにかく情報が、そして何より時間が惜しい。分かったらさっさと吐いてくれ、無駄な時間を使わせないでくれ、ウェイブラー。

[ウェイブラー・トーマス博士補佐は嘆息の後、口を数回開閉させると、再び溜息を一度行い口を開く。]

ウェイブラー博士補佐: プロポーズです、コナー・デイビス研究員に対して。

<以下は下記を参照にしてください。>

<転写終了>


 
この事より、"ウェイブラー・トーマス博士補佐"によってサイト-304に駐在している"コナー・デイビス研究員"に対し、"プロポーズが行われる、もしくは試みられる"ことが異常性発生の要因の可能性が高いと判断されていますが、意図的にウェイブラー博士補佐がプロポーズを目的としない行動を時間範囲内で実施したケースにおいても、SCP-3680-JPが発生していることは特筆すべき事象であり、この事からSCP-3680-JPはその一貫した行動ではなく、ウェイブラー博士補佐を中心として発生している異常現象であるという意見が大多数を占めています。

ただし、SCP-3680-JPの時間範囲内において、観測上、ウェイブラー博士補佐が実際にプロポーズに成功した事例は確認されていません。この時間範囲内において、ウェイブラー博士補佐がプロポーズを試みるために、コナー・デイビス研究員が存在している座標へと接近を行った場合、その道中に置いて、必ず何らかの外的要因によってウェイブラー博士補佐が損傷を負い進行が不可能になる、もしくは失神するなどのインシデントが発生します。これはウェイブラー博士補佐本人の不注意によるものから、確率論的に予測不可能なものまで様々であり、そこに法則性は確認されていません。これはウェイブラー博士補佐に対し、機動部隊による護衛などを配備した場合においても例外ではありません。以下はそれが顕著に発生したケースの書き起こしとなります。
 

19:00:37 ウェイブラー博士補佐がサイト-298の自分のオフィスから目的地へ出発する。

19:02:53 ウェイブラー博士補佐がサイト-298の正面玄関を抜け、護衛目的で配備されている機動部隊と合流する。

19:06:31 ウェイブラー博士補佐と機動部隊がコナー研究員が存在するサイト-304に向かうために必須経路とされている交差点の通過を試みた時、突如、軽乗用車が3台同時にウェイブラー博士補佐と機動部隊の元へと走り込んでくる。

19:07:49 機動部隊はそれらの停止、ウェイブラー博士補佐は回避を試みたものの、うちの1台によってウェイブラー博士補佐は衝突され、衝突地点から1mほどの地点まで跳ね飛ばされる。

19:59:59 以後、該当時刻までウェイブラー博士補佐は交差点で失神している。SCP-3680-JPが発生し、時間遡及が行われる。

 
以上の事から、このオブジェクトの収束に当たってはウェイブラー博士補佐による、コナー・デイビス研究員へのプロポーズが成功することが条件に含まれている可能性が高いと判断されており、現在、複数の機動部隊によってあらゆるインシデントへ対応を行い、ウェイブラー博士補佐を指定座標まで送り届ける"ヴァーハナ・プロトコル"が展開・試行・実施されています。

以下はそれらヴァーハナ・プロトコルの実施を記録した映像ログの書き起こしとなります。所要時間の関係上、実際に発生した事例の多くは省略され、プロトコル実施以前に行われたインタビュー記録、そしてインシデントに関連する記述、並びにウェイブラー博士補佐の行動記述に限定したものであることに留意してください。
 

インタビューログ3680-JP-122

記録担当者: リーサイト管理官

対象: ウェイブラー・トーマス博士補佐


<転写開始>

<前項を参照>

リー管理官: なるほど。つまり [言葉に詰まる] 人生の岐路に君は立っていたわけだ。そういった場面で影響を与えるオブジェクトというものは決して少ないわけではない。ではここで改めて質問をするが、本当に覚えがないのか? 近日中に時空間に関連するオブジェクトを担当した事は? もしくは、確率論的、或いは因果論的アノマリーに接触した記憶は?

ウェイブラー博士補佐: 覚えは全くないんです、すみません。そして仮に、もしそうだったならば、真っ先に私自身が私自身を疑って、もっと早く名乗り出ています。私はこの10回ほどの繰り返しの中で、様々な財団の機材を用いて状況を調査し、そして様々な [咳払い] アノマリーを用いて事態の収束を図ろうとした。結果は何一つ引っかからず、20時になればきれいさっぱり元通りというわけでした。勿論、あなたの記憶もね、リー管理官。

リー管理官: なるほど。もしやこの質問も数度繰り返しているのか?

ウェイブラー博士補佐: いいえ。それは今回が初めてですよ。ようやくあの時間の影響を受けることの無い牢獄に記録を送り付けることに成功し、そしてそこにいた者たちがこの現象の調査を開始したのですから。1時間以内にあの場所にアクセスを試みるのは、大変骨が折れました。

リー管理官: そうか。であるならばそれは本当に苦労を掛けた。ようやくそこで私たちはスタートラインに立つことができたというわけだ。しかしそれにしても、そうか、プロポーズか。

ウェイブラー博士補佐: [嘆息] 何か。

リー管理官: いや、ちなみに成功したのかね。

ウェイブラー博士補佐: 大失敗でした。

リー管理官: そうか [沈黙] ただその失敗した、ということがこの現象を、時間遡及を引き起こした可能性も否定できなくはない。試しにだ、この後一度オフィスに戻り、その道筋をもう一回辿ってみてもらえるかい、ウェイブラー。

ウェイブラー博士補佐: まさか、冗談でしょう?

リー管理官: 冗談ではないし、これは興味本位で言っているわけではないことを強く主張しておく。反復的な実験の積み重ねこそが収容措置に繋がる事を、君も良く知っているだろう、ウェイブラー博士補佐。

[ウェイブラー博士補佐は数秒唸った上で、「わかりました」と告げ、自身のオフィスへと戻り、再度プロポーズを試行することを承諾する。リー管理官は全ての映像記録を時間サイト-01Aへ転送する準備を行うために、一度、インタビュー室から退室する。]

<転写終了>


 

インタビューログ3680-JP-133

記録担当者: リーサイト管理官

対象: ウェイブラー・トーマス博士補佐


<転写開始>

リー管理官: 君があのようなことになっているとは思っていなかったんだ。すまないね、ウェイブラー。

ウェイブラー博士補佐: いえ [嘆息] 予想できていたことですので、お気になさらず。そして記憶を保持しているご様子ですが、そのような解釈でお間違えは無いですか?

リー管理官: ああ。01Aにすんでのところで飛び込んだ。彼らは非常にしかめっ面をしていたものの、事情を知っている私を無碍にはできなかったようだ。そしてすぐに君に話を聞くためにこうして戻ってきた。流石に骨が折れるから以後は通信でこうしたことは行いたいものだがね。そして予想できていた、とは一体どういうことだ?

ウェイブラー博士補佐: はい、実のところ、反復実験に関してはこの事象を01Aに報告する以前に、数回私一人で行っていたのです。そしてそのどれもが、何らかの要因によって達成を阻害されています。ある時はマンホールのふたが外れ下水道へと落とされ、ある時はアノマリーの収容違反に巻き込まれ、そして今回は [インタビュー室の外を指差す] 警護ロボットに追い回され。

リー管理官: 普段は明確に職員を区別しているはずなのだが、システムエラーがあの時見つかったことが判明していてね。つまり、一度も君はプロポーズに成功していないわけだ。

ウェイブラー博士補佐: そうですね、この事象が始まってからは、一度も。

リー管理官: なるほど。それは重要な情報だ。何らかが、何らかの意思を持って、君のプロポーズを邪魔している。そしてそれを時間を遡及する事で無かったことにしようとしている、そのようにも考えられる。

ウェイブラー博士補佐: まさか、そんなバカげたことを

リー管理官: [話を遮る] 最も考えられるのは、君自身がアノマリーだということでもある。

ウェイブラー博士補佐: オーケイ、分かりました。その、何らかに意思を持って阻害されている可能性があるというのを、私自身が支持しましょう。それで、どうすれば私の潔白は証明されますか?

リー管理官: 今のところ、この現象に関してはあまりにも情報が少なく、そして同時に、あまりにも大規模であるために調査は難航している。君にはまだ同様に、反復的な実験を実施してもらう必要がある。サンプルデータは多い方が良い。そのサンプルを参考に事象の解決を図れるだけのプロフェッショナルがここには揃っているからね。やってくれるかい?

ウェイブラー博士補佐: わかりました。わかりました。私に財団内で生き恥を晒せというのですね。

リー管理官: 生き恥? とんでもない。そこからこの現象を解決できたのなら、それは英雄のテープになるはずさ、ウェイブラー。

<転写終了>


 
このインタビューの終了後、数度の反復的な実験を行った上で、リー管理官、並びにサイト-01Aメンバーにより、ヴァーハナ・プロトコルの立案計画、並びに評議会に向けての提案が行われ、承認されました。また、それまでの実験映像記録を転写ミーム化することにより、記録閲覧時間の削減、並びに記録データとしての有用性の向上がなされました。
 

インタビューログ3680-JP-32

記録担当者: ケイン・パトス・クロウ教授

対象: ウェイブラー・トーマス博士補佐


<転写開始>

ケイン教授: なぜ私が呼ばれたと思う?

ウェイブラー博士補佐: 考えたくもないですが、理由ならいくらでも思いつきますね。ええ、クレフよりは安心、かつ納得できる人選で何よりです。もっと選択肢はあるのではないかとも思いますが。

ケイン教授: 面白い冗談を言うね。選択肢が他にないから私にお鉢が回ってきたというのに。

ウェイブラー博士補佐: [嘆息] それで、今度はいったい私に何をさせるおつもりですか?

ケイン教授: エウロパを君に貸し出そう。

ウェイブラー博士補佐: [絶句] ありえない、正気ですか? 私にはロボットどころか重車両の運転歴も存在しないのに?

ケイン教授: ああ。いやなに、エウロパの全てを使いこなせというわけではないさ。君は歩行方法と [思案] 念の為に、飛行方法。その2つの操作だけ覚えてもらえれば構わない。

ウェイブラー博士補佐: つまり、より安全な移動方法としてあの卵形の機械を貸し出すと。

ケイン教授: そういうことだ。聞いた話によると君は [ケイン教授は渡された資料をめくる。] ほう、"メクラネズミ"も殲滅したのか。彼らは彼らで優秀なはずなのだが、何をどうやったのかね?

ウェイブラー博士補佐: 人聞きが悪いですね。彼らは [思案] 穴に落ちました。マンホールをはじめとして、集水桝、子どもが掘ったであろう落とし穴、極めつけは突然道路上に時空間異常が発生し、その入り口を踏んでいた数人がそのまま別空間へ落下しました。そして私自身は彼らがいなくなった後、サイト-304の付近にて目線を逸らした瞬間に足元に移動して来る穴に落ちました。未確認の異常ですが、それに出会ったのは今回が初めてです。

ケイン教授: そこまでしてでも、君のプロポーズをこの世界の運命の神様というやつは邪魔したいようだね。前世で何をしたんだい?

ウェイブラー博士補佐: 私が知りたいですよ。ともかく、恐らくそういった事案があったからこそ、あなたのエウロパを貸し出すという頓智気な手段を取らざるを得なくなったということでしょう。場合によっては、未確認のオブジェクトの出現にも対応しなければならない。いや、対応してみろ、とね。

ケイン教授: そういうことのようだ。それならば仕方ない、私の可愛い娘を貸し出そうじゃないか。いいかい、くれぐれもスクラップなんぞにしないでくれたまえ。私の知識の結晶であるのだからな。とはいえ、相応の事が起きない限り、傷一つつかないと思うがね。

ウェイブラー博士補佐: 念のため、その相応の事についてお尋ねしても?

ケイン教授: はは、それこそ───あのクソトカゲレベルと対峙するとか、そういったことが起きない限り、だ。

<転写終了>

以下は上記のインタビューの後、実際にエウロパを利用した32回目の試行記録の転写ミームとなります。なお、今後エウロパを利用した移動試行は評議会各員の許可を得た場合にのみ実施されます。


 

インタビューログ3680-JP-49

記録担当者: コンドラキ博士

対象: ウェイブラー・トーマス博士補佐


<転写開始>

ウェイブラー博士補佐: 違うんだよあれはコンドラキ。

コンドラキ博士: 気持ちは分かるがな [渡された資料に目を通す。] 次は俺にお鉢が回ってきた。今度は高度な光学迷彩によって姿そのものを隠蔽した場合、何が発生するかとのことだ。要するに、お前を監視している何かが存在していると仮定した上での対処となるな。

ウェイブラー博士補佐: なるほど。時に、だ。その [思案] コナーの様子はどうなっている?

コンドラキ博士: コナー? ああ、そりゃあ心配だろうな。だが財団が観測している限りでは、彼女は普段通りサイト-304のオフィス内で仕事をし、やや早めに退勤、そしてサイト付近に存在している休憩所にてSCP-3680-JPによる時間遡及が発生するまで待機している。ああ、お前がそこに呼びつけたのか、なるほど通りで毎回そこで律儀に待っているもんだ。

ウェイブラー博士補佐: クソ、そこは放っておいてくれ。とにかく、彼女に対して何かが起きているといったことはないんだな? あくまで私を中心にこのバカげた現象が発生していると、そういうことか。

コンドラキ博士: そうだな。そしてどうやら、というか案の定。お前がアノマリーだと主張をする層が増えてきた。当然だ。この空間の中でお前だけが時間サイトにいるわけでもないのに、全ての記憶を保持したまま時間遡及を越えてきているんだからな。

ウェイブラー博士補佐: それは [沈黙] そうか。私にはてんで覚えがないが、その可能性を否定もできない。もしそれが立証されたのであれば、私は甘んじてその運命を受け入れよう。

コンドラキ博士: 今はまだそれは少数派に過ぎない。これはお前の人望もあるからな。だが、いずれその波はやってくるだろうよ。そうだな、そんなお前を処分してこの異常を解決できるだけの人間が来てしまった時が───この試行の終わりだと思え。上層部がそう判断した、そういうことだろうからな。

ウェイブラー博士補佐: 分かっている。ただ今は私なりに、精一杯やってはいるつもりなんだ。そこは分かってくれたまえ。

コンドラキ博士: 俺は分かっても上は分からないだろうさ。この異常を解決できるなら、それが全てで、それが至上だ。さて、本当はエウロパの二の舞になる可能性があるから非常に貸し出したくはないんだが、上から言われたら仕方がないからな。行ってこい、あいつらはもうサイトの入り口で待ってるぞ。

ウェイブラー博士補佐: そうか、ありがとう。いい知らせを期待していてくれ。

コンドラキ博士: まさか、また失敗する方に俺は賭けるよ。ウェイブラー・トーマスはそういう男だからな。

<転写終了>

以下は上記のインタビューの後、実際にアノマリーによって発生する光学迷彩を利用した49回目の試行記録の転写ミームとなります。

この事案、並びにその後に実施された調査によって、SCP-3680-JP発生中において、ウェイブラー博士補佐がアーティファクト等を用いて移動を試みた場合、そのアーティファクトの種類、並びに異常の範囲など、様々な条件を加味した上で、それらに対応する形で未確認の異常現象が発生する可能性が高いことが指摘されました。これにより、ヴァーハナ・プロトコルの実行に関しては一時的に見直しが実施され、機動部隊による警護に関しても必要最低限の人員のみを配備するといった形で評議会、並びにオブジェクト担当者による判断が下されました。以下はその後に実施された調査の一例と、関連インタビューの書き起こしとなります。

インタビューログ3680-JP-76

記録担当者: エージェント・萌永

対象: ウェイブラー・トーマス博士補佐


<転写開始>

ウェイブラー博士補佐: とても嫌な夢を見たような気がする。しかも君が目の前にいるということは、どうやらその嫌な夢というのはまだ続いているようだ。今は何回目のリトライなんだ?

エージェント・萌永: 失礼な事を言いますね。今は76回目、いよいよ大台に乗りますよウェイブラー博士補佐。確かに夢の中に逃げたくもなるのも理解できますが、逃げ込めるのはせいぜい1時間ほどですよ。

ウェイブラー博士補佐: だったら1時間バカみたいに足掻いた方が、よほど財団職員らしいだろうな。それで? わざわざ君が日本から来たんだ。何となく、上が考えていることは理解できる。

エージェント・萌永: はい。ウェイブラー・トーマス博士補佐。あなたを"死んでも"目的地まで送り届けろというのが今回の私のミッションとなります。

ウェイブラー博士補佐: "死んでも"か。向こうに行ってからの君の話はよく聞いている。要人警護のスペシャリストであると。それこそ、自分の身を顧みずに必ず対象を守り抜くとのことであったな。

エージェント・萌永: そうですね。おかげで女の身でありながらまともな部品はこの顔と体の前側だけとなってしまいましたが。

ウェイブラー博士補佐: そうか。そのような覚悟を持つ君のような人物に警護にあたってもらえるのはありがたい。とはいえ私も全力を尽くすつもりではあるが [思案] 今までのアノマリーを用いた打破と方向性が変わったということは、何かこの現象について分かったことが?

エージェント・萌永: はい。少し前まで、あなたは様々なアーティファクトを用いての現状の打破を試みておりました。その過程で、非常に気になる現象がいくつか見られておりまして。

ウェイブラー博士補佐: 気になる現象?

エージェント・萌永: はい。49回目、光学迷彩を用いた実験を覚えておりますか?

ウェイブラー博士補佐: ああ。あの [嘆息] 蝶によって私が気絶させられたリトライだな。物理的に外部からの視覚を遮断することは極めて有効であるという結果が得られたと思うが、それ以外にも何かあったのか?

エージェント・萌永: そうですね。あなたがSCP-408によって気絶させられる直前。サイト-304に仕事のために駐在していたSCP-073があなたの元に向かって移動を開始しようとしていました。

ウェイブラー博士補佐: [思案] カインが?

エージェント・萌永: それについて研究員が質問をしたところ、"理由は不明だが、ウェイブラー博士補佐の侵入を阻止しなければならないと感じた。彼は自身の運命を受け入れていない。"と彼は回答を示していました。それだけではない、32回目ではSCP-682の脱走まで確認がされました。そしてそれ以外の実例も然り、あなたがアノマリーを用いてこの事態の解決を図ろうとした場合、同様にアノマリーによってそれが阻止される可能性が高いと判断がなされています。

ウェイブラー博士補佐: それは [思案] そうか、それで君が。

エージェント・萌永: ええ、護送に秀でている、かつ、人間とアノマリーのちょうど中間地点に位置するであろう装備を保持しているエージェント、そこで私に白羽の矢が立ったということですね。

ウェイブラー博士補佐: 状況は理解した。しかしながら、なんとまあ。これを引き起こしている何かは、そこまでして私のプロポーズの失敗を願っているのであろうか。もう散々楽しんだのではないか?

エージェント・萌永: さて、分かりませんよ。私たちに神様気分とやらは。私たちは一財団職員でしかありませんので。

<転写終了>

以下はエージェント・萌永によってヴァーハナ・プロトコルにおいて最も目標地点、並びに達成まで近接した試行記録の転写ログとなります。しかしながらこの事案により、限りなく非異常性のエージェント1名の同行であった場合においても、アノマリーと遭遇する可能性があることが判明し、ヴァーハナ・プロトコルの内容に関する更なる見直し、並びにSCP-3680-JPの発生要因、解決要因に対しての根本的な確認が実施される運びとなりました。
 


 

インタビューログ3680-JP-90

記録担当者: アルト・クレフ博士

対象: ウェイブラー・トーマス博士補佐


<転写開始>

<前略>

ウェイブラー博士補佐: なぜ [思案] いや、そうか、当然だったのか。

クレフ博士: プロポーズに返事をもらえなかったこと、何か思い当たることがある様子だな、ウェイブラー。

ウェイブラー博士補佐: 思い当たることばかりだ。一番最初もそうだった。辿り着けはしたが、車に泥水をかけられ、犬に追いかけられ、マンホールに落ち、ボロボロで、全くもって、見てもいられない悲惨な状態だったんだ。そこでプロポーズをしようとして、気が付けばこれに巻き込まれていた。 [嘆息] 今思えばその時、無意識に、プロポーズをやり直したいと私はそう思ったのかもしれないな。

クレフ博士: もちろんそれがトリガーになりうることだってあるだろう。だが今回は恐らく違うと上は判断している。俺がわざわざ出てきたんだ。その意味は分かるか?

ウェイブラー博士補佐: 私を殺すのか?

クレフ博士: それももちろん試すさ。ただあんたはこの試行の中で何回か死んでいる。それでもこの現状が打破される気配はない。それならば更に考えられることは2つ。1つ目はサイト-304やサイト-298という"場所"に原因があること。そして2つ目は"コナー・デイビス研究員"という個人に原因があること。

ウェイブラー博士補佐: コナーは [息をのむ] コナーは、関係がない。

クレフ博士: それはやってみないと何とも分からないさ。コナー・デイビス研究員の殺害、という試行は現在までに一度も行われていない。それは観測上異常性が確認されていない財団職員の殺害という事案を倫理委員会が渋っていたからであって、その許可さえ取れれば上はすぐにでもそれを試すだろう。

ウェイブラー博士補佐: 私だ、私に原因がある。私の無意識の願いがこの現象を巻き起こしている、だからこそ

クレフ博士: [声を遮る] 悪いがそれを判断するのはあんたじゃない、上だ。そしてそう思うのであれば、あんた自身がこの問題を解決するしかない。

ウェイブラー博士補佐: そんな、ことは分かっている。

クレフ博士: だったらこんなところでこんな胡散臭い男に油を売ってる暇なんてないはずだ。さて、大事な90回目のリトライだ。次はどんな手段を使って彼女の元に辿り着いて、どうやってこの事態を解決するんだ?

ウェイブラー博士補佐: それは [沈黙]

クレフ博士: そこで言葉に詰まるほど、お前は個人で考える中であらゆる手は尽くしたんだ。ウェイブラー、だから、それを運命として受け入れざるを得ないのも、仕方ないんじゃないか?

[ウェイブラー博士補佐はクレフ博士の問いかけに返答を示さない]

クレフ博士: さて、次に会うとしたら、恐らくそれがこの異常が、何かしらによってお前の手で解決したか、はたまたコナー研究員の死によって解決したか、まぁどんな形であれ、全てが終わった後だろう。もしそうなったとしても、恨みっこはなしだ。

<転写終了>

以下はこのインタビューの後に実施された、ウェイブラー博士補佐本人の提案によって行われたプロポーズに関する移動、並びに行動を実施しなかった際の試行記録となります。この記録においてウェイブラー博士補佐に対しての外部干渉などは観測されなかったことから、この時空間遡及はウェイブラー博士補佐を中心として発生していない可能性が高いことが指摘されています。
 


 
以下は上記の試行記録の際に19:53:44時点でリー管理官に送信されたメールの写しとなります。
 
 
現在、108回目の試行が進行中となります。この試行がSCP-3680-JPに効果的でないと認められた場合、現行のヴァーハナ・プロトコルは一時的に凍結され、代替案としてコナー・デイビス研究員の殺害が内容に含まれる"アスラ・プロトコル"への切り替えが行われます。現在進行中の試行を閲覧する場合、下記の記録データ受信を実行してください。

 

+ 試行記録データを受信

 

19:06:32 ウェイブラー博士補佐は時計に目線を送りながら、

サイト-298からサイト-304へと出発する。

19:10:21 ウェイブラー博士補佐はサイト-304へ到達するために必須経路となっている

交差点の前で立ち止まり、正確に該当時刻で交差点に足を踏み入れる。

瞬間、ウェイブラー博士補佐の前を1台の乗用車が通過し、

付近にあった水たまりの汚水をウェイブラー博士補佐へと浴びせかける。

19:14:17 ウェイブラー博士補佐は眼鏡をハンカチで拭きながら、交差点を通過する。

通過し終えようとしたところで、交差点内の道路と歩道の高低差に足を躓かせ、

ウェイブラー博士補佐は転倒する。眼鏡の右側が破損するも、それを掛け直し、

ウェイブラー博士補佐はサイト-304へと移動を継続する。

19:20:43 ウェイブラー博士補佐は必須経路内の住宅地へと足を踏み入れる。

経路内において手前から2番目の曲がり角の直前でウェイブラー博士補佐は

時計を見ながら立ち止まり、その後、正確に該当時刻で曲がり角を右折する。

右折したウェイブラー博士補佐の足元には直近の家屋で飼育されているイエイヌの尻尾が

存在しており、それを踏みつける形でウェイブラー博士補佐は動作を完了する。

19:21:36 イエイヌは激昂する様子を見せる。

イエイヌの首輪に繋がれている鎖は破損しており、そのままイエイヌは

ウェイブラー博士補佐の追跡を開始する。ウェイブラー博士補佐はそれからの

逃走を行うものの、結果としてサイト-304への最短経路を外れ、市街地へと突入する。

19:38:21 追いつかれたイエイヌに左腕を噛まれる形で双方の移動が終了する。

ウェイブラー博士補佐は噛傷からの出血に顔をしかめながらも、

市街地からサイト-304への最短経路へと戻るために移動を再開する。

19:43:10 ウェイブラー博士補佐が市街地より最短経路へと帰還することに成功する。

ウェイブラー博士補佐が最短経路を3分ほど進行し、経路内に存在するマンホールの

前で時計を見て立ち止まる。そして該当時刻に正確にウェイブラー博士補佐が

マンホールへと足を伸ばすと、マンホールの蓋の一部が破損し、ウェイブラー博士補佐は

崩壊する蓋と共にそのまま落下する。

19:52:38 ウェイブラー博士補佐がマンホール内のステップを用いて

道路上へと帰還する。ウェイブラー博士補佐は道路上に這い上がると

すぐさま立ち上がり、サイト-304に向けて駆け足で移動を開始する。

19:56:21 ウェイブラー博士補佐がサイト-304の敷地内へと到達する。

他の研究員がその異様な様相に視線を向ける中、そのまま移動を継続し、

サイト-304の中庭へと到着する。

19:57:43 ウェイブラー博士補佐はベンチから立ち上がろうとする、

コナー・デイビス研究員を確認すると、声をかけて自身の方に振り向かせる。

そして白衣から指輪の入った箱を取り出し、コナー研究員へと近づいていく。

19:58:21 ウェイブラー博士補佐がコナー・デイビス研究員へ、プロポーズを敢行する。

20:00:01 時間遡及が実施されず、基底世界のタイムスタンプが

正常に動作していることが確認される。































































インタビューログ3680-JP-108

記録担当者: エージェント・萌永

対象: ウェイブラー・トーマス博士補佐


<転写開始>

ウェイブラー博士補佐: 最後のインタビューの相手が君とはね。

エージェント・萌永: 私だから、ではなく私しかいなかったためです。他の博士や研究員はこの時間遡及に伴って発生したパラドックスや不和が存在しないかの調査で大忙しですから。私は運ぶべき人間がいなくなったため、こうして事後処理のインタビューに付き合わされているわけです。

ウェイブラー博士補佐: そうか、そういうことなら申し分ない。

エージェント・萌永: それで? 何をどうしたんですか。何をやっても [咳払い] 私が送り届けた上でも、解決しなかったにも関わらず、まさかあなたが1人でそれを解決できるとは思えません。

ウェイブラー博士補佐: 運命を受け入れたのさ。この、失敗だらけの自分の運命を。

エージェント・萌永: それは詩的過ぎるかと。もう少し具体的にお願いいたします。

ウェイブラー博士補佐: 一番最初のプロポーズを再現した。

エージェント・萌永: 一番最初の、というとSCP-3680-JPが発生した直後のプロポーズですか?

ウェイブラー博士補佐: ああ。車に泥水をかけられ、犬に追いかけられ、マンホールに落ち、そのように悲惨な状況でプロポーズを敢行した一回目だ。

エージェント・萌永: まさか、[思案] やり直したことをやり直せ、と異常性は示していたと?

ウェイブラー博士補佐: これは私の考えでしかなく、そして確かめようがないことではあるが、恐らく、異常性自体は2つ存在していたのだと思われる。1つ目が偶発的に発生する時間遡及、そしてもう1つが正当に定められた因果を辿らなければ先に進むことができない、そんなものだろう。それが最悪のタイミングで重なった。ああ [嘆息] 余程、運命の女神様とやらは私の事がお嫌いらしい。

エージェント・萌永: おっしゃる通り、参考にしようがないため、にわかには信じられません。しかし、解決したということは、あなたの考えが正しかったか、ニアミスを起こしたのでしょう。

ウェイブラー博士補佐: ふむ、手厳しいな。

エージェント・萌永: 当たり前です。再現性のない異常性が最も厄介であり、そして最も恐ろしいことを、私たちはよく存じているでしょう。

ウェイブラー博士補佐: まさしくな。だからこそ、体を張り、醜態をさらしながらも記録だけは全て残しておいたのだから、そこは厳密に調査し、その再現性などを発見してほしいものだ。

エージェント・萌永: そうですね。何はともあれお疲れ様でした。これから更にあなたに対して厳密な調査が行われるかと思われますが、まずは [思案] プロポーズ成功、おめでとうございます。

ウェイブラー博士補佐: いや、失敗した。

エージェント・萌永: はい?

ウェイブラー博士補佐: 失敗したよ。そこもきちんと再現されていたさ。「ちょっと待ってください」と言われてしまった。考えてみればそうだ。あんな格好をした男からプロポーズをされれば、時間を置きたくもなる。

エージェント・萌永: いいんですか? それで。

ウェイブラー博士補佐: ああ。また時間を置いて、何度でも彼女に自分の思いを伝えるさ。私は───それだけの失敗を積み重ねて、そしてそれだけリトライをしてきたのだからね。

<転写終了>


最新版の報告書を表示いたします。


アイテム番号: 3680-JP
レベル0
収容クラス:
neutralized
副次クラス:
none
撹乱クラス:
none
リスククラス:
none

特別収容プロトコル: SCP-3680-JP関連資料はサイト-298に保管され、現在も調査が進められています。

説明: SCP-3680-JPは財団職員であるウェイブラー・トーマス デイビス博士補佐、並びにコナー・デイビス研究員、もしくはサイト-304を中心に発生した時間遡及現象と、それに伴う一連の影響を指します。詳細につきましては時空間遡及異常対応事案-#3680-JPを閲覧してください。

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