アイテム番号: SCP-3706
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-3706実例群の製造・露見が高確率で予測される複数の地所について、現地に配置された財団の考古学者・古生物学者による厳重な監視が行われます。いずれかのSCP-3706実例の存在が露見した場合、現場に居合わせた非財団所属の個人にはクラスA記憶処理を施し、それ以上の問い合わせが発生した際には直近の発見物に関する偽情報が流布されます。
SCP-3706実例群は、そのサイズと状態を鑑みて保安エンジニアリングサイト-212Aまたは212Bへと移送されます。動作する実例は再起動・リバースエンジニアリングの可能性があることを鑑みてサイト-212Aへと移送されます。動作しない実例は適切な奇跡術的処置・破壊を実施すべくサイト-212Bへと移送されます。
SCP-3706-380に対する実験・稼働・情報要求の全てはレベル5の承認を要します。SCP-3706-380の情報を有する主要な職員には高潮作戦オペレーション・ハイタイドに関連する必要文書類への制限付きレベル5クリアランスが付与されています。当該クリアランスの濫用は終了処分の事由と見なされます。
サイト-212A
サイト-212Aは、オークニー諸島南東のダネット・ヘッド半島に位置する、12km2の面積を占める施設です。海岸線に沿って500m2級舟車保管倉庫が3棟設けられており、再起動させたSCP-3706実例群の動作試験を行うために沿岸海域へのアクセスが開放されています。当該サイトにはMTFシグマ-32 ("復旧の魔術師"Recovery Wizards) を含む1,000名以上の専任職員が常駐しています。
サイト-212A全域を包含する区域はイギリス政府により飛行禁止区域に指定されています。当該の指定は周囲の半径2km以内の海域にまで及びます。
サイト-212B
サイト-212Bはホイ島西海岸部に位置する施設です。当該サイトは奇跡術的処置済みの動作しない物品の収容能・解体能を持つ50m×20mの収容区画から構成されます。サイト-212Bには専任の警備要員15名と奇跡術的解体の専門家5名が配備されています。
改訂: 2017/04/15以降、サイト-212Bにおける全作業が延期されています。詳細はSCP-4700を参照してください。
説明: SCP-3706は、回収済み、およびに、未発見ながらも存在が見込まれている多数の舟車群であり、当該実例群にはそれぞれ固有の性質・複数の普遍的共通因子・多様な機能的属性が認められます。各SCP-3706実例は水域環境での移動能力を有しており、潜水艇として、あるいは海底走行型の全地形対応車として機能します。各実例は既知の海洋動物種に類似した外見を呈していますが、回収された実例の多くからこれら動物種からの著しい逸脱が確認されています。(表T-3706-01に記載) 各実例は有機金属ポリマーを主構成要素としており、確認される最古の変異舟車は石材から削り出されています。付属器官による移動機構を持たない実例は可変式ベントを通じた海水の取り込みと急速な噴出を利用したジェット推進機構を有しています。
SCP-3706実例群は外形と固有機能の両観点で多様性に富んでおり、全長3m未満の自動採集用の駆動車 (食料・鉱物・その他資源の収集のために設計されたもの) から、全長200m超の大規模侵攻用の潜水艦まで存在します。各SCP-3706実例は鋼玉コランダムを構成要素に含む結晶性の隔室を1つを有しており、当該の部屋で発生する空間歪曲を介して駆動します。この空間歪曲はSCP-3703で確認されるものと顕著に類似する高エネルギー性物質を生成します。鋼玉と空間歪曲、双方の大きさは舟車の大きさに依存して変化すると推測されますが、回収済みかつ動作を示さない実例においては、その全実例で鋼玉を破砕ないし喪失しています。
活性状態において、全てのSCP-3706実例は "ブーン" という鈍いノイズを発します。SCP-3706の表面には複数の溝が刻まれており、活性状態ではこれらの溝に光が "流れる" ようにして輝くことで、複数の模様・当該実例に関する歴史を象徴する芸術的図像・当該実例の適切な操作とメンテナンス方法を示す原始ノルド語風のルーン文字が表出します。加えて、かつての操縦者により "三つ組みのヒヅメ" マークが刻まれたと見られる有人操縦型のSCP-3706実例が多数確認されています。このマークは統計的な役割を果たしていると推測され、第一次・第二次世界大戦中のパイロットが敵機撃墜数だけ国旗を自機に描いた慣習に類似しています。
表 T-3706-01
以下の表は種々のSCP-3706実例群について記述した登録事項から抜粋したものです。発見順序ではなく、その種別と他実例との機能性の相対比較とに基いて舟車には番号指定がなされています。過去の文書においては発見順序に基く指定がされていましたが、混乱を避けるためにデータベース全体で指定番号の変更がなされました。
| 副次番号指定 |
舟車種別 |
概要 |
| SCP-3706-01 |
自走式自動採集 |
ペロポネソス半島沖で回収された舟車群。全幅0.3~2m、全高0.1~1.5m。短尾下目に属する各生物種と外見的に類似。特筆すべき共通項として、様々な工具を備えた4本の有孔付属肢で鋏脚が置換されている。うち3実例では人間の腕が接合されていた。いずれの実例も回収時には動作していた。 |
| SCP-3706-09 |
自走式自動採集 |
北大西洋・北海・バルト海の一部海域とイギリス・欧州大陸の河川多数で回収された大量の舟車群。全長・全幅ともに0.5~5m。そのサイズに起因して、回収された実例の大多数がタイセイヨウクロマグロと類似するが、歯のない口・尾の先端には大きな腔を持ち、外殻全体に渡って発光性の模様が存在する点で原型の生物種と顕著に異なる。いずれの実例も "薄気味悪い" と形容される低音を絶えず発する。 |
| SCP-3706-15 |
人員輸送 |
アイスランド沖で回収された舟車。全長約8m、全幅約6m、全高約5m。ドラドDorado/シイラMahi-Mahiに類似。原型からの顕著な改造点として、15人分の座席を備えた広い隔室・舟車両側に等間隔に配置された黄色の大型オーブ4つ・兵装に接続されていたと推定される奇跡術的動力ノードの残骸を確認。当該実例内部の碑銘は右記の通り翻訳・解釈される。「汝が掌たなごころを三角へ、かの大きなる翠みどりの三角へ、添えよ。押し沈めよ。彼の女が息づかざれば鰭を数たび叩け。彼の女は老い痴り、気むつかしげなり。」 |
| SCP-3706-230 |
個人間戦闘 |
カナリア諸島沖で回収された舟車。全長約2.5m、全幅約1.4m、全高約1m。Carcharhinus leucasに類似。実例の "鼻" は三ケ月状に拡張され、凹部を鋼玉でコーティングした溝4本を有する顕著な改造が施されている。背鰭には "三つ組みのヒヅメ" マークが刻印されており、実例全体に渡って計60個が確認される。実例の複数箇所に原始ノルド語風のルーン文字が刻まれているが、各刻印の刻印様式には顕著な差異が認められる。明瞭性のため、後述のセクションで記録。 |
| SCP-3706-380 |
主力艦 |
オペレーション・ハイタイドの居住民に従い機密指定。関連文書は以下の補遺に付属、レベル5クリアランス要求事項。 |
翻訳 T-3706-01
以下はSCP-3706-230に刻印されているルーン文字の解釈です。
「おう、腕利き。資格を手にしやがったか、見上げたもんだな。このベッピンさんの名は光輝ビヨルトってんだ。いい女には違いねぇ、だがこいつの心を開きたきゃ、水ん中で野郎を5人はぶちのめして、その血を口に流し込ませねえと話にならんぜ。」~スノッレ
「ご機嫌よう、新しき水の開拓使アクアニールよ。どうか先の戯言は無視なさい。此の飛翔する器を御するに人血の供物など不要です。我らは野卑なる蛮徒ではないのですから。」~導師マギステルノルフ
「いやいや、間違いねえぜ、マギステルの言葉に耳を貸しなさんな。新入りが一発目で機巧からくりを動かせやしねぇで困り果ててる、その様子を眺めるのが奴らのお愉しみってわけよ。たかが人間が5つぽっちだ。なぁおい、奴ら互いに槍を投げ合うほか能のねぇ連中だぜ、だったら気にするべくもねぇだろうが。」~スノッレ
「水の開拓使スノッレの刻した銘文は一切を無視なさい。思惟ある存在に対しての偏見を煽り礼を失する振る舞いを唆したが故に彼は叱責を受けたのです。」~導師ノルフ
「ほぉ、こいつをかっぱらって飛び去った俺をどう咎めるんだか、見せてみやがれ。この流れ者の下衆野郎ヴァグル・ニージングルが。」~スノッレ
1体分の白骨化遺体が当該舟車から1.5m離れた地点から回収されました。当該の遺体はSCP-3047から回収されたものと一致しました。
警告: アクセス試行検知。本文書はレベル5機密下にあります。
ユーザーコード: HILDALAND
パスワード: THE13O5SRIDETHERISINGTIDE
識別認証。
お帰りなさいませ、05-01。
指定オブジェクト: SCP-3706-380
資産格付: Thaumiel
ステータス: アクティブ
推奨事項: 破滅的事象をもたらしかねないため使用は推奨されません。同種の舟車全てを発見・収集する試行が優先事項とされます。
説明: SCP-3706-380は、触手を除いた部分において、全長200m、全幅125m、全高75mの舟車です。上部構造はオーストラリアコウイカ (Sepia apama) に類似していますが、地上環境での移動を可能とする50mの "触腕" 6本と、より指向的かつ器用な動きが可能な触手2本を有するなどの顕著な大改造が施されています。船殻表面を覆う巨大な溝は青・緑・黄色で常に発光する回路を形成し、象徴的かつ宗教的な含意を伴う複雑な模様を形成しています。 実例の前面先端には黄色のオーブ4つが等間隔で配置されており、眼のような外観を呈しています。
内部空間は16の個別デッキに区分され、長期滞在に応じた種々の設備を有しています。SCP-3706-380は乗員325名分の収容能を有し、短期間であれば最大800名までの運送が可能です。
SCP-3706-380には14基の主兵装 (口部に設置された奇跡術的高出力ビーム兵器など) と多数の小型防御兵装が備えられています。主兵装は回転する卵形構造体で構成されており、構造体の上面は短軸に等間隔で溝が刻まれています。主兵装が発砲する際、兵器周辺の彫り込まれた溝が特徴的な赤みを帯びるように変化します。
経緯: SCP-3706-380は、1935年6月5日、オークニー諸島ウェストレー沖3km点に当たるノース・サウンドで発見されました。当時、当該舟車の船体部分は海底に埋没しており、背面ハッチが開いていたために海水が内部へ流入していました。SCP-3706-230付近で発見された死骸と一致する257体の白骨死体が内部より回収されました。死体は小規模前哨基地 (現在はサイト-Aに指定) へと移送され、人間に由来しないものであることが明らかとされました。その後に行われた海底周辺部の掘削調査により、SCP-3706-380に付随する舟車が存在することが判明しましたが、完全な形態を維持した付随舟車は1つとして発見されませんでした。
当初は、SCP-3706-380を海底から引き揚げる試みが貴重な沈没船の回収に偽装して計画されていました。しかし、第七次オカルト大戦の勃発によりこの計画は無期限に延期され、以後の15年間でSCP-3706-380は処置されないままの状態に置かれました。財団の古生物学者により、類似する遺物が大量に発見されだしたことを契機に計画が再検討され、回収作戦が立案された後に実行に移されました。SCP-3706-380の回収は1951年6月7日に完了し、現在のサイト-Aに位置する臨時乾ドックで当該舟車は一時的な収容状態に置かれました。
当該舟車全体にわたる検査により、おおよそ50年にわたる海水暴露に起因する重大な損傷が確認されました。同年代に沈没した物品群との顕著な相違点として、当該舟車には海洋植物類の繁茂が見られませんでした。初期評価では損傷の修復が不可能であることが述べられ、SCP-3706-380の解体・廃棄が予定されました。しかし、解体の事前準備として内部構造のリスト記録化作業をしていた技術者により稼働中の動力源が偶然に発見されたため、O5評議会による特権行使を介して解体指令は中止されました。当該舟車を機能的に修繕・復活させることを目的とした特殊プロジェクトが承認され、サイト-Aの建設とともに、1956年8月5日からプロジェクトが本格的に始動しました。
当該舟車とその機能に関する知識を欠いていたため、プロジェクト初期の進捗は緩慢としたものでした。しかし、別のSCP-3706実例が新たに発見されたこと・SCP-3706実例群に対するリバースエンジニアリングが遅々としながらも発展したことに伴い、1977年3月18日に実例群は完全に修復されました。新たに発見されたSCP-3706実例群はその機能の解明を目的としてサイト-Aに移送されました。また、動作を示さない舟車を解体するための姉妹サイト (サイト-B) が建設されました。
3月18日同日に機能の修繕作業が着手され、1985年8月23日には原始ノルド語風ルーン文字の翻訳に関する重大な革新が財団職員にもたらされたことで、これまでに回収された実例全てで刻まれていた文字を翻訳することが可能となりました。当該言語の構造・文法の複雑さに起因して文章の正確な解釈には更なる時間を要しており、1990年9月5日、マッピング・完全な理解という言語学的達成がもたらされました。
1995年12月13日、舟車群に搭載されていた高機能の機体維持システムが財団職員により修繕され、SCP-3706-380の一部に海水が流入していたことが判明するに至りました。当該システムは停止させられました。それから2年かけて航海システムが修繕され、2006年10月15日には動力システムが十全に修繕されました。
57名の職員がサイト-Aの基幹要員として配置され、SCP-3706-380を操作することを目的とした言語学的・機能的な訓練を受けました。より緊急を要する、他複数部門でのプロジェクトを原因に、SCP-3706-380の処女航海は繰り返し延期されてきましたが、インシデントI-3700-032が発生したことを受けて、処女航海の予定日は2017年3月30日に決定されました。SCP-3706-380の処女航海中、以下に記載するインシデントI-3706-01が発生しました。
インシデント I-3706-01: 2017年3月30日、SCP-3706-380は試験運転のためにペントランド海峡に進水しました。O5補佐官2名と復旧作業を監督する技術者4名を含む、追加人員6名が搭乗していました。当該実例は外洋へと進航し、水面航行を保ったまま25ノットまで加速しました。進航ルートにはハロウ村落の近辺を二度通過することが予め定められていました。
航海に先立ち、ソフトウェア不具合を原因として動力システムを再起動せざるをえませんでした。これは歪曲空間の周囲に巡らされた動力経路群にこれまで検出されていなかった詰まりが発生したことに起因します。当該の閉塞がシステムの再起動により解消されたことにより、兵装システムが検知されないままに復元されていました。これに伴い、航海中2度目のハロウ村落付近を通過した際には、他の訓練済み職員複数名と共に操縦を担当していたサランディン・リー司令官が非活性状態の刻印に右手を押し当てました。この時点で多数の警報が作動し、舟車の最上部に備え付けられたアームが海面上まで伸ばされました。
SCP-3706-380とそれに付随する警備艇に搭乗していた職員により、SCP-3706-380内部から機械的な轟音が一度発せられたことが報告されました。これまで観測されてこなかった、可動付属肢の接合部分に位置する開口部から一筋の "光の柱" が放射されました。光は1km近辺に位置するハロウ村落に影響を及ぼしました。
法医学的再現に基けば、ハロウ村落ないし半径300m以内の全ての営造物が一瞬で蒸発し、跡地には深さ6mのクレーターが形成されました。直ちにセキュリティプロトコルが施行され、目撃した可能性のある人物全てに必要なだけの記憶処理が行われました。爆発とそれに続く村落の焦土化の原因は、オークニー諸島に位置する廃棄物処理施設へ向かっていた輸送フェリーに積載されていた軍事兵器が誤って爆発したためであるとして詮索をする民間人には流布されました。攻撃機能の他にも有しているかを確認する航海・実験は見合わせられています。本インシデントにより、成人56名・児童5名が死亡したと現時点で推定されています。いずれの遺族にも十分な補償が宛がわれています。
当該インシデント以降、SCP-3706-380が将来的に起こしうる兵装関連のインシデントを回避することを命題として、当該舟車の乗組員に選定される職員への訓練課程は修正されました。主兵装・副兵装を問わず、兵装を起動・制御すると判明している端末・ルーン刻印・機械装置の全てに対して、明らかに視認で判別できる大きさの警告ラベルが貼付されました。
回収された文書とデータ: SCP-3706-380の初期回収時、大量のアーティファクト (奇跡術的アーティファクトを含む) も引き揚げられました。これには下記に示す、個人的な身の回りの物品も含まれます。
- 貝殻片およびウニ殻で作製された櫛
- コンブや他の海藻類で作製された寝具と布
- 大量かつ多数種の魚類の痕跡を残す漁網・槍・その他の器具
- 装飾的な私物 (通常種からの顕著な逸脱が見られる様々な海洋動植物で作製された容器に収められた蝋燭など)
- 大縮尺の環境を描画した、流動する絵図と写真 (既知の地理的特徴のいずれとも一致しない)
- 3m長の上腕骨5本と1.7m長の両手の骨1セット (1m長の各指骨は末端にかけて硬く鋭く肥厚し曲線を成すように骨化している)
SCP-3706-380船殻の "ブリッジ" に隣接する大型の私室区画内から2つ隔室が発見されました。両隔室には海藻由来の紙で装丁された書物が1冊ずつ収められており、精査の結果、これらは航海日誌であると推定されました。回収時、密閉された両隔室のうちの一方は過剰量の海水流入に起因して損壊していました。当該の隔室に置かれていた日誌は水損により判読不能の状態でした。もう一方の日誌には原始ノルド語のルーン文字による一個人の記録が存在しており、当該の記録は以下のとおり翻訳・解釈されています。
判読不能な手書きのルーン文字 (日付と推測)
奴らめが、至る所に居る。我らは見放された。
見放されたのだ。あぁ、愛しのヘルガ… 言伝を遣わしたのだよ。幾度なく、幾度なく送り遣った。だが、なしのつぶてか。
呪われしグズ=バニGuð-Baniの男めが… 深遠の魔の者との戦で為し得た栄光はいずこか… 死があるのみか。
放逐のみか。
飢餓のみか。
底に潜む魔の者どもに嵌められた。
逃げ道はない。
逃げ道はない。
逃げ道は。
ない。
どこにも。