アイテム番号: SCP-3729-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-3729-JPは、サイト-81██の標準人型オブジェクト収容室に収容されます。SCP-3729-JPの態度・意志を反映させ、財団における機密性・重要性が比較的低い業務を担当させることが認められています。
説明: SCP-3729-JPは、収容当時20歳のモンゴロイド女性です。
SCP-3729-JPに対しては、SCP-3729-JPの言動やその存在自体が「平凡である」「ありふれたものである」と認識させる認識災害が発生します。ここにおける「平凡」という評価は、「平凡でつまらない」というようなネガティブな意味合いを含むものです。ただし、曝露者はこの評価に客観的な根拠を示すことが困難です。
収容以前のSCP-3729-JPは、[編集済]大学の学生でした。SCP-3729-JPは、恐らくは自身の異常性を原因として、大学において必要最低限の人間関係のみを構築していたことが判明しています。よって、SCP-3729-JPの収容に際し、カバーストーリー"自主退学"による隠蔽は問題なく達成されました。
関係者への聴取により、SCP-3729-JPは遅くとも小学1年生の時点には当該異常性を獲得していたことが判明しています。なお、ほとんどの関係者は、SCP-3729-JPについての記憶が曖昧でしたが、これは「平凡である」と感じさせる異常性による副次的なものです。SCP-3729-JPは、記憶に直接的に影響を与える異常性を有していないことに留意してください。
補遺: 以下は、収容直後のSCP-3729-JPに対するインタビューです。
<記録開始>
インタビュアー: では、インタビューを開始します。まずは、財団の存在・理念に対しては理解していただいたということでよろしいでしょうか。
SCP-3729-JP: 正直に言いますと、まだ完全には信じられていません。しかし、一旦飲み込みます。
インタビュアー: ありがとうございます。そして、SCP-3729-JP、あなたは「存在が平凡でつまらない」と周囲に感じさせてしまう異常性を有するとのことですが、さぞ心理的負担が大きかったことと思います。
SCP-3729-JP: あー……私自身としては、自分のことをつまらないとは思っていません。
インタビュアー: ええと、確かに、あなたを客観的に平凡だと示すのは困難です。実際、経歴や能力には特徴的なものがあるといえるかもしれません。しかし、周囲の人物は、あなたのことをつまらないと思っています。特に、小学生やそれ以前の頃は、遠慮なく言い放たれることもあったでしょう。それは苦しかったのではないですか?
SCP-3729-JP: そうですね、本当に小学校とかの頃は、そのように言われることもなくはなかったです。あと、それ以降でも、口にこそ出されませんが、つまらないと思われていたとは感じます。
インタビュアー: では、何故?
SCP-3729-JP: インタビュアーさんは、「面白い数のパラドックス」と呼ばれるパラドックスについてご存じでしょうか?
インタビュアー: 申し訳ございません。存じ上げません。
SCP-3729-JP: まず、全ての自然数を「面白い」か「面白くない」かで分類してみるんです。
インタビュアー: 「面白い」ですか。
SCP-3729-JP: 例えば、6は、「完全数」と呼ばれる数の内で最小ですから面白いです。100はキリが良いですし、2進数なら256もキリが良いですから面白いでしょう。1729はかなり面白いですね1。
インタビュアー: ああ、タクシーですね!2
SCP-3729-JP: そうです。そうやって分類していくと、何の特徴も無い、平凡な「面白くない数」も出てくることになります。では、「『面白くない数』の中で最小の数」は、特徴的な「面白い数」なのではないですか?
インタビュアー: [5秒の沈黙]
SCP-3729-JP: ええとですね、この矛盾感は、「面白い数」の定義が曖昧・恣意的であるため生じるのです。もしこれが通ってしまうと、「『面白くない数』の中で最小の数」が「面白い数」になり、「『面白くない数』の中で2番目に小さい数」が「『面白くない数』の中で最小の数」になり、それが「面白い数」になり……と続いて、結局全部の数が面白くなってしまいます。
インタビュアー: ……なるほど、興味深いお話でした。ただ、あなたが自身をつまらないと思っていないことと何の関連があるのでしょうか?
SCP-3729-JP: 「皆の中で最もつまらない人」って、非常に面白い特徴ではないでしょうか?
インタビュアー: それは……失礼ながら、「恣意的」なのではないのですか?
SCP-3729-JP: そうかもしれませんが、そうでないとも言えないのです。「最も面白くない」というのは、面白い特徴だと思っていますよ。それに、「誰からもつまらないと思われる人」なんて、なかなかいませんから。
インタビュアー: うーん、まあ、ともかく、落ち込まれてらっしゃる訳ではないようで、安心しました。
<記録終了>
なお、当該インタビューは、プロトコル・クッキーカッターに則って実施されました。財団は、これまでにSCP-3729-JPと同様の異常性を有するオブジェクトを███体収容しており、そのようなオブジェクトへの各種対応はマニュアル化されています。









