以下はD-37371を記録した映像の書き起こしです。
<ログ開始>
D-37371: えー……これで撮れてるか。
D-37371: 俺はD-37371で、このボロ小屋で暮らすことになった……
[10秒間の沈黙]
D-37371: あー、やっぱり無理だわ。
D-37371: まあ、とりあえず。明日からはここで寝泊まりしながら動画を撮り続けるってことだ。……俺はこんなにちっぽけで、いつ死ぬかも分からないけどな。
[カメラが倒れる]
D-37371: おい!
[8秒間の沈黙]
[D-37371によりカメラが立てられる]
D-37371: 俺が悪かった。うん、悪かった。
D-37371: まあ、何はともあれ、これからの日々は楽しくなりそうだ……
[カメラが倒れる]
D-37371: おい!
<ログ終了>
<ログ開始>
D-37371: えー、D-37371だ。あいつら、財団から送られてきた食事を食べようと思う。
[D-37371が木箱を開封する]
D-37371: なるほど。この中に俺の食事が含まれているということだな。流石にこの量を……食べきるのは不可能だ。
[4秒間の沈黙]
D-37371: この感覚にはまだ慣れないな。
[2秒間の沈黙]
D-37371: とりあえず。そろそろ飯に……
[木箱が倒れる]
[6秒間の沈黙]
D-37371: まったく、俺はこれを止めようとすることさえできない。人間には衛生観念てのがあるんだがな……
[オレンジが拾い上げられる]
[D-37371も床からリンゴやオレンジを拾い上げる]
D-37371: 俺もこれしか食べれないのか?
[D-37371はオレンジを齧る]
D-37371: 酸っぱい。とても食えたもんじゃねえな。
[32秒間の沈黙]
D-37371: クソ、晩飯がなくなった。食えたもんじゃないが食わないとは言ってないだろうが。
<ログ終了>
<ログ開始>
D-37371: あー、多分3日経った。だいぶここの生活にも慣れてきた気もする。
D-37371: って言っても、このフルーツだらけの食事には慣れないし、なんと言っても睡眠不足だ。夜中、なんかの間違いで俺はこの床と同化してしまうかもしれないし、そもそも俺は場所を沢山取られているから、位置取りだけでも一苦労だ。
[D-37371の周辺に水がかかる]
D-37371: 最悪だ。今そこまで暑くないだろ……ああ、あと、俺は抜け道を見つけた。
[9秒間の沈黙]
D-37371: ……今俺が話した抜け道ってのはもののたとえで、別にここから抜け出したいわけじゃない。
D-37371: えー、今から言える限りの抜け道を伝える。
[68秒間の沈黙]
D-37371: ……駄目みたいだ。抜け道を他者に伝達するのは駄目だ。他のより少し厳しくなる。
[19秒間の沈黙]
D-37371: まあいい、伝えるのはやめだ。見て学んでくれ。
D-37371: 俺はリンゴを食べている。
[5秒間の沈黙]
D-37371: 俺はオレンジを食べられた。
D-37371: 俺は一人でリンゴを食べている。
[5秒間の沈黙]
D-37371: カメラは倒れた。
D-37371: カメラは倒された。
[5秒間の沈黙]
D-37371: とりあえず、間になんか挟めばとりあえず大丈夫らしい。ただ、あまりにも直接的なのは駄目だ。あと、絵での伝達だが、あれも駄目だ。
D-37371: ……まあ、ここまで言ったら、お前らも大体状況がわかっただろ。
<ログ終了>
<ログ開始>
[D-37371の目の前に絵が飾られている]
D-37371: どうだ、うまいだろ。俺が書いたわけじゃないがな。芸術ってのはよくわからない。けど、この絵にはなんか心に響く……あれがあるよな。
D-37371: 最初に絵の具なんか送られてきたときは、財団の奴らの気が狂ったのかと思っていたが、まさかこんなものになるとは思わなかった。器用なもんだよ、俺は手を使っているのにこんなの書けねえ。
D-37371: ニュースで同じようなものを見たことがある。確か
[4秒間の沈黙]
D-37371: これは駄目なのか。あ、1つ分かったことがあるんだが、行動は話すよりずっとハードルが高い。というかほぼ何もできない。
[D-37371は絵の具を吹きかけられる]
[10秒間の沈黙]
D-37371: ……ほら、こんなふうに。本当に器用だな。
<ログ終了>
<ログ開始>
[D-37371の目の前に絵が6枚飾られている]
D-37371: ずいぶん増えた。あー……この絵は増え続けている。食事する間も惜しんで。俺はこの大量の草は食えないんだが。
D-37371: ……これはいいのか。何が良くて何が駄目なのか分からないな。
[沈黙]
D-37371: 考えてみたんだが、どうしてこうなったと思う?
D-37371: ……これは独り言だ。本当に。
D-37371: これは誰かが求めたのか、それとも最初からそう決まっていたのか?
D-37371: どちらにしろ、凄くもったいないと思う。この絵はとても美しい。それとも
[5秒間の沈黙]
D-37371: それなら、しょうがないことかもしれない。ここは静かだし、大衆の見せ物にならなくてもいい。
D-37371: でも、この部屋で一生孤独であることには代わりはない。
[7秒間の沈黙]
D-37371: もし俺が、偶然、偶然だ。この小屋の扉を開けてしまって、鍵を閉め忘れてしまうとする。そうすれば……
[5秒間の沈黙]
D-37371: 冗談だ。
[18秒間の沈黙]
<ログ終了>
<ログ開始>
[21秒間の沈黙]
D-37371: えー、起こされた。
[8秒間の沈黙]
D-37371: ……何が起き
[D-37371が持ち上げられる]
[床が激しく振動させられ、埃が舞う]
[木箱が破壊される]
[溢れ出したリンゴやオレンジが踏み潰される]
[カメラが倒れる]
[キャンバスが倒れる]
[絵が次々と倒れる]
[絵の具が飛び散る]
<ログ終了>
終了報告書: D-37371には小屋からの退去命令が出された。財団は小屋の所有者としてD-37371を強制的に退去させなければならなかった。
退去の1時間後、小屋のある地域で大規模な地震が発生した。当該地震によって、小屋は倒壊した。
以下は地震後に小屋を訪れたD-37371を記録した映像の書き起こしです。小屋への訪問はD-37371の強い要請などによって実現しました。
<ログ開始>
[D-37371は小屋の残骸に駆け寄る]
[D-37371は瓦礫を退かす]
[D-37371は発見する]
[D-37371はその場に座り込む]
[1238秒間の沈黙]
[D-37371は立ち上がる]
[5秒間の沈黙]
[D-37371は歩き出す]
<ログ終了>









