映像記録
序: 2019年6月24日、身悶えするように動くゼラチン状の塊のライブ映像がYouTubeに投稿され、Simurgh.aicに検出されました。その後しばらくして、財団の空想科学者たちは、乳牛150,000頭分に相当する牛ミームの異常な塊が640m2の面積に存在しているのを検出しました。機動部隊イータ-33(“そウシかめっ面するなよ”)隊員が調査を開始し、問題のミームをウィスコンシン州北部の大規模な廃倉庫まで追跡しました。
オネイロス型実体や異常な乳製品関連実体と交戦するため、サイト-82司令部はこの任務における超常物資の使用を許可しました。
注記: 機動部隊の隊員は以下を基にして選抜された。
a) チームワークスキル。
b) この類の任務に必要とされる、彼らの元型的な重要性を指し示す空想科学マーカー。
エージェント: η-1、η-2、η-3。
装備:
- 標準的なスペクトラ繊維ボディアーマー、3着。
- M4カービン銃、3丁。
- 戦術幽体投影キットおよび皮下紋章、1点。η-1が装備。
- 偵察ドローンおよび遠隔制御装置、1点。η-2が装備。
- 強制進入用キット、1点。η-3が装備。
- 各種の実用手榴弾およびスタン武器。
- 特殊赤外線視覚化装置。
- SCP-3863-1-タイプ牛乳蜂蜜、250mL。
序: MTF-イータ-33は戦術捜索・救助ヘリコプターで派遣された。鋳鉄および鋼鉄製の屋根は一部崩落し、倉庫の上部に巨大な穴を空けている。
<記録開始、9:47 PM>
«9:47:» η-1とη-3は正面入口の外で待機している。η-2が開いた入口に向かってドローンを操縦する。
«9:50:» ドローン映像は、薄暗く照らされた屋内空間を映している。25頭の大人しい雌牛が狭い仕切りの中に収まり、引き戸の裏で守られている。雌牛の左脇腹と乳房には金属製の丸窓が取り付けられている。
«9:52:» ドローン映像は、屋根の崩落部の真下にある穴を囲む糞尿と干し草の混合物を映している。ドローン映像は、牛の仕切りの間を通って穴に通じている、紫色のゼラチン状チューブのネットワークに焦点を合わせる。ドローンの音声受信機能が、壁の隙間から漏れるノイズを検出する。
«9:57:» ドローン映像は一般的な農業用具、肥料、種の袋を映している。
«9:58:» 小さな輪郭がη-1のカメラ付近にある藪の中で動く。η-1は懐中電灯で動きのあった位置を照らす。少しの間を置いて、η-1は「目撃確証ならず、警戒を続ける」と表明する。
«9:58:» η-1は身振りでゴーサインを送る。η-2がη-3に頷く。η-3は強制突入用の爆薬を施設の正面扉に設置する。3名は防護布の裏に身を寄せ合う。
«9:59:» 爆薬が起爆する。η-3が施設に入場し、後にη-2とη-1が続く。
«10:01:» チームは狭くて窓の無い玄関を通り抜け、広間に入る。誰もおらず、屋内は光源を欠いている。隊員たちは暗視スコープを起動する。
«10:04:» チームはエリア内を徹底的に走査した後、左折して道を2/3進む。彼らは開放的な設計のオフィス空間へ繋がる半開きのドアに遭遇する。オフィスにはラミネート加工されたポスターが数百枚貼られている — ポスターはいずれも、乳製品を消費する人物のストック写真の上に意欲付けメッセージを重ねたものである。
«10:06:» η-1は牛乳が天井から漏れているのを発見する。ドローン映像は識別可能な発生源が無いにも拘らず、波打つような動きを検出する。η-2は「そこら中から来ている」と主張する。
«10:07:» η-1は牛乳のサンプルを採取し、ビニール袋に保管する。牛乳は微かに緑色の生物発光を発している。
«10:08:» η-3はチームをオフィスの裏にある控えの間に誘導し、「硫黄の臭いがする」と主張する。η-1が電子フォトニック・センサーを起動すると、隣接する部屋からエーテル放射が漏れているのが明らかになる。
«10:09:» η-3が隣り合った控えの間に押し入ると、そこは凝乳で満たされている。η-3は金属のドアを開け、カービン銃を構える。1頭の雌牛が鳴いているのが視界に入る。エーテル放射は雌牛の後方から、ウシ科の屁と一致する形式で流れ出している。
«10:11:» チームは広間に戻り、曲がりくねった廊下を通って東に向かう。
«10:15:» 振動が施設を揺さぶり、続けて長い牛の鳴き声が響く。η-1の牛乳サンプルが震え、体積を10倍に増す。彼女はサンプルを放棄する。
«10:18:» η-3は、幅3mの乳首1個が支柱と交差していると報告する。乳首からは微かな緑色の牛乳が漏れている。
«10:19:» η-1は乳首を切開し、内部に更なる肉組織があることを明らかにする。肉組織はガラガラと音を立て、切開部を押し通って切除器具を消費する。切断作業は放棄される。
«10:20:» ドローン映像は、雌牛たちが逃げている、あるいは何かに向かって突進している様子を映している。
«10:23:» η-3は霜に覆われた二枚扉を押し開け、高さ~20mの巨大な部屋に入る。不確定な幅の、身悶えする淡褐色の乳房が部屋を埋め尽くし、伸縮する数百本の大きな乳首を生成している。従業員と推定される睡眠中の人間たちが、小さめの乳首の周囲に3人1組で空中浮遊している。彼らの頭蓋から大量のクリームチーズが放出され、下方の巨大な地下タンクに流れ込んでいる。
«10:24:» η-2のドローンは、1頭の雌牛が上部通路から転落し、甲高い叫び声を上げる様子を捉える。雌牛が地面と接触する1秒前、巨大乳房が身震いする。雌牛は地面と衝突し、溶けて牛乳のような液体に変質する。液体の一部は部屋の中央に向かって移動する。
«10:25:» より多くの雌牛が後に続き、やがて25頭全てが落下する。飛沫が部屋を埋め、MTF隊員に降りかかる。
«10:27:» 浮遊するピンク色の乳房(SCP-3739-1-B個体、“乳房の母”)が隊員3名に接近する。η-1は後ずさりし、蟀谷を掴む — 彼女はテレパシーを受信している。η-1は「何が望みだ?」と訊ねる。“乳房の母”はうねり、笑う。η-3がカービン銃で狙いをつけ、発砲する。恐らくは形而上学的な性質が一因となって、“乳房の母”は発砲から被害を受けない。
«10:28:» η-1はη-3に向かって頷き、η-3は頷き返してからη-1の前に防衛体制で立つ。η-2も同じように行動する。η-1は持参した道具一式を開く。彼女は香を燃やし、個人的な夢日記の中から選んだ箇所を読む。
«10:29:» “乳房の母”は複数の腕を生やし、それぞれの内側に折り畳まれていた更に多くの腕を展開して曝け出す。巨大乳房には魅力的かつふくよかな顔面が現れ、口から牛乳を吐き出す。巨大乳房は含み笑いと甲高い叫び声を上げながら、「あなたのお母ちゃんは最後まで牛乳を飲み切ってほしいのよ」と言う。
«10:30:» η-2は、巨大乳房の前方顔面の中央部付近にある肉質の色褪せた嚢にドローンを近づける。η-3はカービン銃を構え、発砲のタイミングを待つ。
«10:31:» η-2は「俺は乳糖不耐症なんだ」と言い、“乳房の母”を還元主義的な卑語で罵倒する。ドローンは自然の化学シグナルが“乳房の母”から放出されるのを検出する。15体の“子供凝乳”が巨大乳房から分離し、η-2に粘性のクリームチーズを浴びせかける。数体の“子供凝乳”は“乳房の母”から直接液体を吸っている。“子供凝乳”たちは「食え! 飲め!」と叫ぶ。η-2は従うのを拒む。
«10:32:» η-1はマッチを擦り、親指の先端を燃やす。彼女は親指を戦術紋章に押し当てた後、牛乳蜂蜜を飲み干す。η-1の身体が弛緩する。η-1の幽体が彼女の物理肉体の胸から生え出て“乳房の母”に飛びかかり、その乳首を掴んで引っ張る。
«10:33:» η-2は完全にクリームチーズで覆われているが、それを消費することを拒む。“子供凝乳”たちはη-2を巨大乳房まで引きずっていき、液体を漏出させている乳首を彼の口に押し込もうとする。η-2は従うことを余儀なくされる。
«10:32:» η-1は“乳房の母”と戦闘している。どちらも叫びながら拳を交わしている。η-3は巨大乳房に歩み寄り、露出した肉質の突起物に狙いを付けて発砲する。彼は「お前は現実じゃない」と叫ぶ。肉質の突起物は勃起し、牛乳をη-3に噴射する。彼は自らの意思で牛乳を消費し、明白な負荷を伴わずに数リットル飲み干す。
«10:34:» η-1は“乳房の母”よりも素早く空中で旋回し、身を翻している。“乳房の母”はη-1に向かって緑色の牛乳を搾り出す。η-1は“乳房の母”の乳首の1本を掴み、容易く引き延ばす。“乳房の母”はショックを受けて叫び、萎んで床に落ちる。ビシャッという湿った衝突音が明瞭に部屋に響く — “乳房の母”は物理実体化しており、体液の残りを漏出させている。
«10:35:» η-2の姿は最早見えない。巨大乳房は揺れ動き、牛乳を広い室内に撒き散らす。η-1の幽体が物理肉体と再接続する。彼女は幽体投影キットをその場に放置する。η-1とη-3は逃走する。
<記録終了、10:35 PM>
抽出: η-2のドローンから回収された作戦後映像には、η-2が苦痛に叫ぶ声が記録されている。これは倉庫が牛乳で満たされる中、およそ30分続く。
映像の終わり近くに、η-2は裸で姿を現し、胴体無しで活動している義手によって身体に焼き印を押されている。彼は身震いし、牛のような鳴き声を上げる。義手はドローンに気付いて延伸し、牛追い用の突き棒から電撃を発してドローンを撃墜する。映像が終了する。