SCP-3800-JP
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Item #: SCP-3800-JP
Thaumiel

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チベット仏教における"六道輪廻"の図。


特別収容プロトコル: SCP-3800-JPに関する知識及び技術は、その運用プロジェクトに所属する職員にのみ保有されます。SCP-3800-JPの適用対象はO5評議会によって選定され、適用対象下にある財団職員1名につき定期健康診断における評価B+以上のDクラス職員1名が常に割り当てられます。SCP-3800-JPの適用後は、その容姿の変化はオブジェクトとの偶発的な接触作用による事故に起因するという財団内カバーストーリーを流布してください。

SCP-3800-JPプロジェクトの研究主任であるジギスヴァルト・ローラント・ノール博士は、プロジェクトの存続が指示されている限り無期限にその地位を保証されます。


説明: SCP-3800-JPは"輪廻転生"思想を基に奇跡論とエリケシュ概念工学の複合によって確立された、死亡した財団職員の精神を再び財団に雇用するための超常的プロセスです。

仏教・ヒンドゥー教における生と死と再生のサイクルである輪廻転生の思想において、人間を含む生物全ては死後も永遠に新たな生命として生まれ変わり続けるとされており、不滅の霊魂が繰り返す新たな生涯の内容は、生まれ変わる前の生涯(前世)において積み重ねた様々な行為である"業(カルマ)"の結果に影響されると説かれています。

SCP-3800-JPはこの輪廻転生のシステムに着目し、財団職員に割り当てられる業務内容を業(カルマ)として定義することで、両者の間に相互の対応関係を作り上げることを基礎理論としています。ある職員個人の精神と特定の財団業務の間に概念的ブリッジ1があらかじめ構築されていた場合、対象となる職員が不慮の要因により死亡したとしても、その財団業務に新たな人員を割り当てることによってその人員の肉体に死亡した職員の意識を転送させることが可能となります。

具体的な作用として、割り当てられた人員には、およそ2週間を掛けて徐々に死亡した職員に酷似した精神的特徴が確認され始めます。これは"デジャヴュ"に似た体験したことのない記憶の不随意的な回想に始まり、同時に対象となった人員の記憶と人格が頻繁な健忘という形を通して段階的に忘却されることで、最終的にその精神は死亡した職員の完全な反復へと置き換わります。

SCP-3800-JPプロセスの対象となった職員は死亡する直前までの記憶・能力・人格をほぼ完全な形で保持しており、死亡したのちに自身の意識が現在の肉体に転送されたことについて自覚的です。死亡から現在までの間に関する対象の記憶は曖昧ですが、「紐のようなもので引かれ、現在の肉体に辿り着いた」という点で証言は一致しています。

SCP-3800-JPプロセスは死亡した職員の実質的な蘇生と見なすことが可能であり、突発的な収容違反や財団施設の襲撃による職員の喪失を減少させるほか、財団職員の死後意識への干渉による情報漏洩や、死霊術による敵対的蘇生を防ぐ手段としても有用と判断され、Thaumielクラスへと指定されました。

現在、SCP-3800-JPプロセスは限られた人数で実行中の機密オペレーションへ従事している職員や、特異な技術・能力等により進行中のプロジェクトに大きく寄与しているなどの理由により代替が困難と見なされる重要な立場にある職員に対し優先的に適用されています。


補遺


I. 歴史: 起源

財団は職員に、研究者としての高い能力と専門分野に関する深遠な知識を求めている。ここに居るのはみな、異常な存在を扱い、その原理を解き明かすためにふさわしい者として認められ選りすぐられた人々だ。容易に使い捨てることなどできない優秀な職員たち……。しかしそれらの換えがきかない人材は、いつ制御不能になるか分からないSCiPの側で、常に死の危険にさらされ続けている。

このジレンマは解決されなければならない。

- ジギスヴァルト・R・ノール、研究日誌エントリ、1968年5月8日

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ノール博士、1965年。

SCP-3800-JPの初期構想は、1965年、ジギスヴァルト・ローラント・ノール博士によって初めて起草されました。ノール博士はSCP-1716を始めとする複数のオブジェクトのリバースエンジニアリングを通したエーテル波型記憶転送技術の応用開発プロジェクトに長期間参加しており、当時から問題視されていた財団職員の業務中死亡率の高さについての解決策としてこうした技術を適用することを財団司令部に対し数度具申していました。しかしこれらの提言は、追加の職員は不確かな異常存在を用いずとも雇用可能であるという理由から却下されています。

転機となったのは1976年に発生したSilent Night事案です。財団北米管区で断続的に引き起こされた複数のSCPオブジェクトの局地的収容違反により、サイト-36、旧サイト-62において高位クリアランスを所有していた多数の職員が死亡したことで、進行中であったプロジェクト2つが停止、7つが大幅な遅滞を余儀なくされました。

当時の財団では組織活動の規模拡大に伴って個々のプロジェクトにおける人手不足が深刻化しており、それらを主導する特定人物の重要度が異常に高まる結果となっていました。特にO5評議会が主導する機密プロジェクトに関わっていた職員間のセキュリティクリアランスレベルの差は、これらの重要人物の代替をより困難とするものでした2

この事態を受けてO5評議会はノール博士の提言を見直し、博士に対し「死亡による特定職員の喪失を防ぐ手法」の開発を目的とするプロジェクトの開始を命じました。

II. 歴史: 導入初期

畜生、こっちに逃げたのは失敗だ!

- ジギスヴァルト・R・ノール、収容違反により死亡する直前の音声記録、1981年7月12日

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ノール博士、1981年。

従来の死後蘇生技術はその大部分が蘇生対象の死体を要求するものであり、フェイルセーフのためのサイト破壊措置や敵対的生命体による捕食などで死体が回収できない状況を考慮した場合、肉体に依存するこれらの蘇生技術はプロジェクトの目標に沿わないものと判断されたため、ノール博士はSCP-3800-JPの開発にあたって、当時既に広まっていた仏教・ヒンドゥー教の霊魂に関連する輪廻転生思想を取り入れました。

古代エリケシュ文明の遺構からサルベージされた概念工学技術の適用が実用化段階に移行し、SCP-3800-JPの初期モデルが確立された1981年、ノール博士はサイト-19におけるSCP-682の収容違反に巻き込まれ死亡しました。この事案において死亡した職員の身体は全て、SCP-682が吐き出した強酸性の消化液溜まりに漬かりほぼ全身が損壊した状態で回収されています。

この報告を受けたO5評議会は開発プロジェクトの遅滞を懸念し、ノール博士-SCP-3800-JP開発プロジェクト間に構築された概念的ブリッジを用いて博士の意識転送の実行を指令しました。この概念的ブリッジは、Dクラス職員での実験成功が確認された後、このような事態を予期してノール博士本人の承諾無しに事前に構築されていたものでした。

意識転送後のノール博士は「幻肢痛に似た身体感覚の不一致」を訴えたものの、死亡直前までの記憶と能力を完全な形で引き継ぐことに成功しており、すぐに自身のフィードバックを基にSCP-3800-JP適用モデルを改善するように指示しました。これが財団職員におけるSCP-3800-JP適用の第一号となり、改善を重ねた適用モデルが財団の各所に導入されていきます。

III. 歴史: 開発後期

私の首には一本の紐が結わえ付けられている。死は長きに渡り逃避のための手段として扱われてきたが、もはやこの場所ではそうと見なされていない。紐の先はO5の手にしっかりと握られている。死は通過点であり、私は次の肉体へと息が詰まるほど強引に引きずられ続けている。

この紐は断ち切られなければならない。

- ジギスヴァルト・R・ノール、デスクに置かれていたメモ、2002年12月14日

2002年、ノール博士の18回目の死亡が確認されました3。この死はロープによる縊首自殺であり、動機は博士が老齢を理由に退職を願い出た際、O5評議会が「現在のノール博士の肉体年齢は32歳であり、業務への従事に問題がない」「SCP-3800-JPの初期モデルは概念ブリッジの接続解除が困難であり、博士の解任はプロジェクトの基礎概念に負の影響を齎す可能性がある」という2点の理由から受理を見送ったことであると推測されています。

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ノール博士、2002年。

ノール博士の死を受けて、プロジェクト構成職員は通常通り意識転送のための手順実行を手配しました。しかしながら配置されたDクラス職員に対してSCP-3800-JPプロセス発現の兆候は見られず、この異例の事態について調査が実施されたところ、ノール博士と同パターンの精神エーテル共鳴が博士の勤務するサイト内で飼育されていた実験用ハツカネズミ(Mus musculus)から発せられていることが判明しました。

保安部門職員がサイト内からの脱走を試みていたこのハツカネズミを捕獲し尋問を行ったところ、ハツカネズミはテキストコミュニケーションを用いて自身がノール博士であることを認め、博士が秘密裏に考案した儀式的手法を通してSCP-3800-JPプロセスに干渉することで、O5評議会が彼に対して行っている"不法な"雇用から逃れようとしていたと自白しました。

ノール博士が考案したこの手法の発見は、SCP-3800-JP関連プロジェクトに大きなブレイクスルーをもたらしました。現在ではこの手法は、SCP-3800-JPの意識転送を人間以外にも適用し、人体構造では困難である特殊な任務への従事や身体の強化拡張の手段として応用できるものとして発展させたものと捉えられ、応用開発のための実験が進められています。

この発見の功績に対し、ノール博士には3つ目の財団星章が授与されました。これにより博士が財団加入時に承諾した財団内規定第38項の修正12条に基づき、10年ごとの雇用契約更新に博士が同意しなかった場合でも、財団と博士の契約雇用関係を合法的に無期限に延長することが可能となると見積もられています。

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