アイテム番号: SCP-3812-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-3812-JPの完全な収容は不可能であるものの、一般に露見する可能性が極めて低いことから収容作業は事後処理を中心に行われます。SCP-3812-JPが何らかの要因により実行された場合、カバーストーリー「火災」を適用し適切な処理を行ってください。
説明: SCP-3812-JPは、██県旧██村に伝わっていたとされる異常な豆腐を生成する手順です。生成された豆腐はSCP-3812-JP-1に指定されています。SCP-3812-JPは以下の手順によって構成されます。
- 水に浸してに膨潤した大豆に注水を行い破砕します。
- 1で得られた物質を絞り豆乳とおからに分離します。
- 豆乳を少なくとも5L以上の容積を持つ容器(材質は任意)に移し、直火で加熱します。1
- にがり・塩・水をレンコンの通気口2を通じながら投入し、速やかに全体を攪拌した後に皮を剥いだ蛙(種は問わない)を加え約10分放置します。沸騰する直前に蛙は回収します。
- 直火で熱したまま、容器の底に穴を開け内容物が直火に触れるようにします3。
- 5の状態で約60分加熱すると、突如容器内部から火炎が発生します。内容物と容器の隙間から火が上がっている状態になりますが、内容物の表面が炭化することはありません。火炎の発生を確認し次第速やかに容器の側面を破壊します。
- 6から約5分で自然に鎮火します。結果としてSCP-3812-JP-1が生成され、SCP-3812-JPは終了します。
SCP-3812-JP-1の基本的な組成は一般的な豆腐と変わりませんが、原材料に含まれていない栄養素を豊富に含んでいます。またDクラスや研究員による摂食実験では、豆の芳香が強い、一般的な豆腐と比べると美味であると感じるなどおおむね好意的な感想が得られています。
SCP-3812-JP-1に含まれる有機物は高熱に対する耐性を獲得しており、約800℃以下の温度では燃焼しません。
補遺: SCP-3812-JPは蒐集院から回収された文書によりその方法が発見され、財団が再現実験に成功したことからSCP-3812-JPに指定されました。
回収された文書に、SCP-3812-JPが成立する原理が記述されています。以下に現代語訳を抜粋します。この原理は財団によって全容が証明/解明されていないことに留意してください。
大豆は穀物由来の霊力を持っていることや、「マメ」という言葉が魔を滅するに通ずることから、魔除けの効能があります。節分で撒かれる大豆が煎ったものであることからもわかる通り、加熱を行うことで効能が増加することが分かっています。この製造方法では事前に魔除けに関わらない固形部分を取り除き、内容物を水に溶かし出してから加熱することで、魔除けの効能をより増幅させていると考えられます。
豆腐を固めるときに使用されるにがりや塩は、いずれも██村にある大変美しい海から採取されています。██村には海の恵みに関する信仰が自然と発達しており、霊的な力が備わっていたと考えられています。またレンコンを用い、浄土に在る蓮の花へ繋がるルートを構築します。
製造方法の肝である豆腐を直火で熱する過程は、焚き上げ文化と関連していると考えられています。先に述べた節分において煎り豆を用いられる別の理由として、生きた豆を使用すると発芽する可能性があり縁起が悪いという理由があります。これはすなわち豆の魂が中に閉じ込められていることを意味しており、仮に加熱を行ったところで魂の残滓が残ってしまい不純物になります。この製造方法では固まり始めた豆腐を直火で熱することで、焚き上げと同等の効能を発揮し、大豆の魂を天に還し浄化及び豆腐の精製を行っています。途中で燃焼が始まるのも魂が天に還るためです。
蛙を一時加えるのは、蛙の跳躍力を溶かし込むことで魂の返還を手助けするためです。「還る」に通ずるというのは誤った言説です。長時間煮込みすぎると身が煮崩れを起こすため、沸騰する前に回収します。
このように大豆の持つ魔除けの効能を最大限増幅させる工夫が凝らされた豆腐は非常に生気に溢れたものとなり、生物には薬、非生物には毒となります。例えば鉄の容器に入れれば容器が急激に錆びてしまいます。この性質により豆腐を長時間保存することは難しく、この製造方法が██村以外に広まらなかった原因であると考えられています。
特に高温の豆腐は特に反応性が高く、容器と反応を起こし爆発の危険があります。火炎が確認できた場合速やかに容器を壊すことでガスを放出し爆発のリスクを低減できます。
この方法によって製造された豆腐は栄養満点で特に子供の成長に適しています。またこの豆腐は熱に強く、どんな調理をしても真っ白であることから縁起物として食されていました。豆腐が堅牢であることから、豆腐の中に叶えたい願いに関する物体を入れて調理することでその願いが叶うという迷信もありました。
次第に燃え盛る豆腐そのものが神聖視されるようになり、██村ではこの製造方法をかたどったお守りが作られていました。豆腐が炎から守られるように、豆腐をかたどった部分に大事な物、例えば子供の名前を記すことで外敵から守ってくれるという風習が確認されています。
財団によるSCP-3812-JPに関連する伝承などの抹消過程において、このお守りが広く日本全体に普及していたことが判明しています。旧██村は大正時代に戦争による出兵などで自然消滅しており、村民が全国各地に散らばる過程で文化のみが拡散されたと考えられています。一方で、同時期に商業栽培が始まったチューリップ(Tulipa)と混同され広まり、戦後時点ではお守りではなく名札として使用されている場合がほとんどでした。従って、該当する名札の造形はチューリップ由来であるというカバーストーリーを流布することで対応を行いました。
お守りのイメージ図









