[ログ開始]
潜水艇のビデオレコーダーがオンラインになる。エージェント・ネレウスとシトラーテ両名が潜水艇のすぐ前に浮遊している。その向こうにSCP-3813の姿が見える。
ヴァンガード: オーライ、全員オンラインだ。準備はいいか?
シトラーテ: 聞こえてるぞ。行こう。
エージェント・ネレウスとシトラーテはSCP-3813に泳ぎ接近する。彼らの進入地点は機械の下面に近い損傷したパネルだ。接近すると、ネレウスは構造物の表面を調べる。
ネレウス: まだこれを近くで見たことはなかったな。これは人が作ったのか?
ヴァンガード: 聞いた話によるとそうらしいが。
ネレウス: こんな大きさのものが動けたとは信じられないな。
シトラーテ: (SCP-3813の内部を見る)これは危険そうだな。俺の後ろにいろ。何かおかしなものが見えたら俺に言え。
両潜水士はSCP-3813に入る。進入地点は海底より上だが、ようやく肩幅ほどの直径しかない。両名は暗視ゴーグルを起動し、少しずつ前進する。
ネレウス: どこへ出ると思う?
シトラーテ: どこか……内部へ……そこには……広いところが……少なくともここよりは……(不平を呟く)やっと……動ける程度だ……
両エージェントは少しの間前進し続ける。すると概ね直径1mのチューブに出る。進入地点から反対側に、チューブの壁に大きな石が固定されている。
ネレウス: あの入り口が何でこんなところに繋がってるんだ?
シトラーテ: この道を上がっていこう。動力源を探すのがスタートとしてはいいだろう……多分。
エージェント2人はパイプを泳ぎ昇る。彼らは小さなパイプが枝分かれしているのを通り過ぎる。ネレウスがそのうち1つの前で止まる。
ネレウス: ここを見てくれ、何が見える?
シトラーテ: 辛うじて見える……魚か?多分。
ネレウス: かもな……これで見えるかどうかやってみよう。
ネレウスは頭部に装着したランプを起動する。小さなパイプの中をそれで照らすと、パイプの終端で何かが素早く動くのがカメラに映る。
ネレウス: あれは何だ?
シトラーテ: わからん。ヴァンガード、あれが見えたか?
ヴァンガード: ああ、録画を見返している……わからん。2人とも、あれはライトを付けるのとほとんど同時に動いた。気をつけてくれ。
ネレウス: 了解。
前進し続けると、マイクがゆっくりとした規則的な音がSCP-3813の構造の深くから聞こえてくるのを拾い始める。
ヴァンガード: 2人ともあれが聞こえるか?
シトラーテ: (止まる)いや……何を言って ―
大きな、低いハム音がおよそ2秒する。ネレウスとシトラーテのビデオフィードが暗くなる。
潜水艇内部の電子機器が誤作動し始める。これは一瞬で終わり、潜水艇内部の全ての電子機器が完全にシャットダウンする。エージェント・ヴァンガードは潜水艇内部のSOSバルーンを打ち出し、支援を待つ。SCP-3813内部では、ネレウス、シトラーテ両エージェントとの通信は回復せず、およそ4分後両名は独立したビデオレコーダーを起動する。
ネレウス: おそらくただの電波干渉だろう。進み続けよう。
彼らは前進し続け、バルブのように見えるものに到達する。ドアの外のホイールを回して、ネレウスはバルブを開け、ドアを開く。その上の空間は空気に満たされているが、水が入り込み始めている。両名は急いで上がり、バルブを乱暴に閉める。
彼らが入ったのは狭い廊下だ。天井は低く、両名は頭を打たないように屈んで前進する。両名はヘルメットのバイザーを開く。
シトラーテ: オーケー、完全に水没してはいないようだな。いいぞ、これで俺達は ―
ネレウス: 待て、ここを見ろ。
ネレウスは彼らの目の前の壁を指差す。そこにはヒューマノイドが明らかに周囲の壁に埋め込まれた機械と融合しているのが見える。その目は閉じており、肉は腐っている。
シトラーテ: クソ、これは人間か?
ネレウス: ああ……状態は良くないようだがな。進み、うむ……進み続けよう。
男たちはSCP-3813の狭い区画の内部を探索し続ける。彼らは廃棄された機械部品のある幾つかの小さな部屋を通り過ぎる。彼らはどこかの時点で損傷し、修理されたように見える部位を見る。新しいリベットが打ち込まれ、漏れている蒸気配管が継当てされたり交換されている。彼らはスーツの温度計が上がり始めているのに気づく。
シトラーテ: 暑くなってきてるぞ。(止まる)この道の先に何かが聞こえる。ハンマーの音みたいだ。
ネレウス: 行くぞ。
彼らは廊下が崩壊して終わるところに来る。床にもう一つバルブがある。シトラーテがそれを開け、両名は降下する。
その場所は先程のチューブに似ており、両名はその先に何があるのかは見えないまま足を先にして降りている。彼らが身を捩り降りていくにつれ、温度計は上がり続ける。
シトラーテ: クソ暑くてたまらんな。ここの壁も ― ファック!壁に触れるなよ、クソ!
ネレウス: ここから出なくては、ローストになっちまう。
シトラーテ: 後ろ向きに上がれるか?
ネレウス: 全く無理だ、壁に触れることも ―
2人は今や垂直になった壁を滑り落ち、ネレウスの声は途切れる。シトラーテは底の平たい足場につく。ネレウスはシトラーテの頭と肩に乗る。
シトラーテ: ホーリーシット!俺は ― ゴッド、ネレウス!ここじゃ焼かれちまう、どいてくれ ― どいて ―
ネレウス: その下に何がある?下は何だ?ここから出なくては!下はどうなってる?!
シトラーテは少しの間足で足場を探る。
シトラーテ: 平たい!閉じている!ダメだ、ダメだ ―、神よ、俺達は ―
ネレウスは手をチューブの側面に押し当てる。皮膚の焼ける音がして、彼は痛みに叫びを上げ、チューブを登ろうとする。ネレウスの手は熱い金属を滑り、背中からシトラーテの上に落ちる。足場は崩壊し、両名は下の部屋に落下する。
彼らはおよそ3m下の金属の格子に落下する。部屋の温度は安全ではない。両名は急いで立ち上がる。ネレウスは焼けた手を見て、シトラーテは部屋を見回す。
シトラーテ: ネレウス ― あそこだ。
両名は部屋の反対側を見る。反対側の壁近くに大きな、7つの歯を持つ歯車がある。それは巨大な水のタンクの上に吊られている。その歯車は白熱していて、ゆっくりと回転しているが、その下のタンクの閉じられた上部を、まるで非実体であるかのように通り抜けている。水が歯車と触れるところでは沸き立ち蒸気が発生している。数千の小さな金属のチューブがタンクから出ていて、より小さなタンクへと繋がっている。それぞれのタンクはさらにバルブや計器、そして部屋の壁へとつながる数百の配管で覆われている。
ネレウス: じ……蒸気機関?
シトラーテ: 道理で暑いわけだ。俺達は……排気管か何かの中にいたってわけだ。
ネレウス: 神よ……俺の手が。
シトラーテ: ネレウス、ネレウス、見ろ。壁だ。
人影が機械の壁に現れ始める。それらの人影は全て概ねヒューマノイド型をしているが、皮膚は腐り体の主要な部位は機械に置き換えられている。彼らは2人のエージェントに向かい壁を抜けて歩いてくる。
ネレウス: ファック!逃げろ!
シトラーテ: クソ!
エージェントたちは蒸気機関から部屋の反対側にある開口部へ向け逃げる。彼らはそこへ入るために四つん這いにならなくてはならなかった。それはより大きな、空のタンクに続いていた。機械のヒューマノイドたちが彼らの周りに現れ始め、そのうち数体が頂上近くの大きな車輪へと移動する。彼らがそれを回すと、水がタンクを満たし始める。
ネレウス: バイザーを下げろ!来い!
水が降り注ぐ中、2人はヘルメットを閉じる。機械のヒューマノイドたちがタンクに飛び込み、潜り彼らに迫る。両名は側面に小さなハッチが見えるタンクの底へと潜る。機械のヒューマノイドがネレウスを後ろから掴もうとするが振りほどかれる。シトラーテがハッチの車輪状のハンドルを掴み、しばらく苦心するがそれは回る。ハッチは開き、両名は水とともにタンクを飛び出して閉じた空間に出る。
彼らは暫くの間闇の中を何本ものチューブを滑っていく。やがてもう一つの部屋へと出る。その部屋は同じように狭いが、機械のヒューマノイドはいないようだ。エージェント・シトラーテのカメラがオフラインになる。
シトラーテ: ファック……クソ、カメラを下にして落ちちまったようだな。レンズが割れた。(レコーダーをチェックする)いや、レンズじゃない。レコーダー本体だ。(間)トランスミッターは大丈夫だ、だがカードも多分ダメになったな。
ネレウス: そいつを引っこ抜いて俺のに挿せ。そうすりゃ少なくとも水からは安全だ。上に出てからよく見よう。(止まり、深い息をつく)オーライ、ここには人が……いや物か……がいるってことだ。あの上にあった熱い歯車、あれが異常な動力源ってことだろう?あれがタンクの上の金属をすり抜けているのが見えたか?
シトラーテ: ああ。手はどうだ?
ネレウス: メチャクチャだ。ちょっと落ち着こう。
シトラーテは頷く。周りを見渡し、彼らの真上に幾つかのハッチがあるのに気づく。
シトラーテ: 肩を貸してくれ。上に出れる道があるか見てみよう。
シトラーテはネレウスの肩に登り、2人はさらに別の狭い空間にでる。彼らは音を立てないように注意しながら前へ進む。通路の壁を通して光が見える。行き止まりに来ると、ネレウスは壁に耳を当てる。
ネレウス: (ドアを叩く)水だ。これが外部へのドアだと思う。行こう。
シトラーテはハッチを回して開ける。水が部屋を満たし始める。部屋が十分に水没すると、彼はドアを完全に開け、外へ出る。
彼らはSCP-3813側面に吊られた多数の足場のひとつに立っている。手すりの端の向こうすぐに、潜水艇の薄暗い光が見える。
ネレウス: 非常灯だ。何かが潜水艇に起きたぞ。
ネレウスは潜水艇に手を振る。
ネレウス: ヴァンガード、聞こえるか?ここから出 ―
大きな割れるような音がして、シトラーテは彼らの後ろのハッチへ高速で引き戻される。シトラーテをSCP-3813へ引く力はネレウスを左右に揺さぶり、彼のヘルメットが手すりの側面に叩きつけられる。彼の後ろでハッチが閉まる。ネレウスのヘルメットにヒビが入り、水が入り始める。彼は潜水艇に向けて泳ごうとするが、潜水服の足が金属の手すりに挟まっている。
ネレウス: ジーザス!ヴァンガード!ヴァンガード、聞こえるか?引っかかった、水が入ってきている。ヴァンガード、助けてくれ!
エージェント・ネレウスは手すりを外そうとする。エージェント・ヴァンガードからの応答はない。
ネレウス: シトラーテ?シトラーテ!?ヴァンガード、助けてくれ!ダメだ、外れない!助けてくれ!
内部では、シトラーテが後ろへと引かれている。ネレウスのビデオフィードはシトラーテが通路の天井へと消えているのを捉えている。シトラーテのビデオトランスミッターでは、彼の周りに見えるものは動き回る金属だけであり、聞こえるのは鋼がぶつかり合う音だけである。彼のビデオフィードは現在は潜水艇へと中継されており、わずかにチラつくが安定している。
外では、エージェント・ネレウスがもう一度脚を引くと手すりから外れる。スーツを高速で水に満たされながら、彼は潜水艇に泳いでいく。
ネレウス: ヴァンガード!ヴァンガード、ハッチを開けろ!ヴァンガード、水が!ヴァンガード!
エージェント・ネレウスが潜水艇に近づいているのが見えるが、その動きは不規則でほとんど進んでいない。
ネレウス: ヴァンガー(水の音) ― 助け、俺 ― (窒息) ― 助け、頼、あいつ ― (バチャリという音) ― きな ―
エージェント・ネレウスは彼のベルトを引き抜き、ビデオレコーダーを外し、潜水艇に投げる。彼は続く23秒間ヘルメットを外そうとし、停止する。彼のスーツは潜水艇の前で浮遊する。一瞬の後、彼の体はSCP-3813へと沈んでいく。
エージェント・シトラーテのビデオフィードは、SCP-3813の内部へと引き込まれてから数分間暗くなる。その後、小さな、薄暗く照らされた部屋が見える。ヒューマノイド実体たちが部屋の周囲で機械を操作している。蒸気が空気を満たし、エージェント・シトラーテの手足は壁に拘束されており、彼はそれに抵抗している。
部屋の中央で、床から大きな機械部品が噴出するように現れ、血に染まった張られた皮膚と、薄い灰色の毛髪を備えた骨格状の姿へと組みあがる。金色のサークレットが実体の頭皮に融合している。実体がエージェント・シトラーテに顔を向けると、それは笑い、その歯の後方、喉で炎が燃えているのが見える。小さな赤い光がその眼窩で光っている。