天見橋。
特別収容プロトコル: 現場は交通規制を理由に封鎖され、簡易的な隠蔽措置が取られています。異常性の作用に関わるため、現場の関係物への干渉は認められません。
説明: SCP-3822-JPは宮崎県南部の天見橋(あまみばし)で発生している異常な降雨です。
天見橋を中心とする半径約15m内では、降雨の向きが逆転しています。雨粒は橋の下を流れる川の水面から約1m上方に突如出現し、未解明の作用により上空へと"落下"していきます。
重力が反転したかのように見受けられる当該現象の様相にもかかわらず、範囲内に重力の反転は見られません。現象は雨粒のみに適用されると考えられます。
上空へと落下する雨粒は気温の影響を受けて雲を形成するため、橋の上空は常に雲に覆われています。ただし、通常の降雨が発生する事はありません。
補遺: 近辺の防犯カメラ映像
以下の映像は現象の最初の発生を記録したものです。
小学生と見られる2名の男女が橋を通りかかる。彼らはランドセルを背負っており、下校中と考えられる。
にわか雨が降っており、彼らは相合傘で雨を凌いでいる。傘は花柄のデザインをしており、持ち手を女児が持っている事からも、該当の女児の所有物だと考えられる。
雨が強くなる。
▐ 男児: 雨、強くなってきたね。大丈夫?ぼくが持つよ。
▐ 女児: いいって。私が持ちたいの。
▐ 男児: そう。似合ってるよ、そのお花。
▐ 女児: ありがと。ホントはずっと見てたいけど、上を見ながら歩くのは危ないよね。
雨が強くなる。
▐ 女児: 傘、ちょっと重いかも。こんな大雨だとずっしり来ちゃう。
▐ 男児: やっぱりぼくが[…] うん。にしてもすごいなぁ、傘って。
▐ 女児: どうして?
▐ 男児: [上を見上げて] だって、こんなにたくさんの雨でも受け止めてくれるんだからさ。
▐ 女児: ほんとだね。[…] そうだ。この雨つぶ、私の傘に向かって降ってるんじゃない?
▐ 男児: どういうこと?
▐ 女児: だって、こんなにキレイな花だもん。雨つぶさんも見とれてるよ、きっと。
▐ 男児: [笑い] そうかも。[空を見て] そうなの?
雨が強くなる。
▐ 女児: ほら!きっと今のはお返事だよ。じゃあさ
女児は男児と共に橋の手すりがある端へと向かう。
▐ 女児: こうしてみようよ。
女児は開いた傘を逆さにし、持ち手を欄干に掛ける。
雨が逆様に降り始める。
▐ 女児: やっぱり!
2人はこの異常な現象に対し混乱も疑念も示さず、それが当たり前であるかのように現象を眺めている。逆様に降る雨は橋によって遮られており、もはや彼らは傘を必要としていない。
暫くの間、彼らは現象を眺めている。現象外の正常な降雨が止んだ事に気付くと、女児は男児の手を取って歩く。2人は橋を渡り終え、やがてカメラの視界から外れる。
現在は2人の身元確認および橋に掛けられた下向きの傘が与えた影響に調査の焦点が向けられています。更なる進展があるまで、傘への干渉は認められません。
追記: 現象の不可思議さや観測のし易さから、現象の見学を望む職員が散見されています。もし貴方がこれに興味がある場合、当該アノマリーを管轄しているサイトの然るべき管理者に許可を得て見学する事を、我々が止める事はありません。
見学者・野本研究員による現象の描写。









