アイテム番号: SCP-3826
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-3826への人工入場口は長さ最低2m・厚さ最低0.5mのコンクリート壁2つにより維持されます。エアロックを通りSCP-3826に入場することが認められる職員はレベル-3クリアランスを持つ研究職員、または機動部隊ゼータ-9 ("メクラネズミ") のエージェントのみです。
探査時、職員は常に能動的通信イヤーピース及び人工監視眼鏡を着用せねばなりません。SCP-3826-1実例の集団の周囲でイヤーピースの使用について言及することは禁止されています。
説明: SCP-3826はアメリカ合衆国アラスカ州ケナイ山脈の最高点下~4kmに位置する孤立した集団構造体(civil construct)であり、ヒトに対し視覚的・聴覚的幻覚を引き起こす能力を持ちます。
SCP-3826の専有面積は20km²以下です。領域内には17世紀後半でよく見られたヨーロッパの植民に似た文明、及び二足歩行する人型実体(SCP-3826-1個体とする)の集団(~45,000体)が存在します。SCP-3826-1個体は遺伝的にネアンデルタール人 (Homo neanderthalensis) に類似し、独自の文化、技術体系、組織化された市民政府を構築しています。
SCP-3826-1の身体的外観には突然変異や他の身体的奇形が存在します。SCP-3826-1個体の身長は2.1m~4.6mであり、中でも背が高いSCP-3826-1個体は、共通して他のSCP-3826-1個体の保護者・介護者を務めることが知られています。
SCP-3826内の文明は一貫した技術嫌悪を中心とします。SCP-3826-1個体は1870年以降に発展した技術の使用を見せるあらゆる人物に対し暴力的に攻撃を加え、攻撃後はその技術部品を回収し、探査職員がまだ特定できていない場所へと運びます。1
政府構造の点では、SCP-3826は初期の文明同様に機能します。SCP-3826内には政府の治安部隊が存在し、大柄なSCP-3826-1個体がその大半を占めます。この治安部隊はSCP-3826で施行される法律に従わせるために過激な身体暴力を用いる傾向があります。SCP-3826の法律及び/又は構造体を作成した対象は不明なままです。
未特定のシンボル(オカルトに関連すると推定)がSCP-3826内の建造物、道路、壁面で共通して確認されています。
補遺: 以下は探査ログ、インタビューログ、インシデントログといった、SCP-3826に関連する情報の集積です。
前記: D-16321は女性のDクラス職員であり、元は放火・殺人といった複数の罪で投獄されていた。彼女は2029/8/19に財団管理下に置かれた。当探査中、SCP-3826の特別収容プロトコルの通りに人工監視眼鏡を使用しなかったことに注意。
[ログ開始]
D-16321: マジでずっとこの階段下りてるな。
キャロル研究員: その階段を下り続けてくれ。
D-16321: マジでいったいどこに降りてくんだ? どうして ─ D-16321が立ち止まる。 まあいい。 D-16321は階段を降り始める。
キャロル研究員: 何か見えたか、D-16321?
D-16321: いや、見てない。暑くてクソ不快なだけだよここ。
キャロル研究員: 降下を続けてくれ。
D-16321: 真面目な話さ、道のりが無駄に長いよ。
キャロル研究員: いずれ必ず底にたどり着くはずだ。
D-16321: わかった。
5分経過。D-16321は階段底部から約10mの位置にいる。SCP-3826-1の声が聞こえるようになる。
D-16321: これはある種の偵察なの—
D-16321は立ち止まって周囲を見渡し、SCP-3826を観察する。
D-16321: [間延びして] クソが。
キャロル研究員: では、周囲に彼らが居ないときだけ周辺報告をしてくれ。
D-16321: ”彼ら”? センセ、わけわかんねえよ。気に入らねえ。
キャロル研究員: 繰り返す、ただプロトコルに従え。
D-16321: わかった、わかったよ。
キャロル研究員: 今は報告できるほど安全かね?
D-16321: たぶんな。たくさんの建物が見える。天井はかなり高い。俺の隣には、あー、燃え落ちた教会みたいなのがある。あと道も。何だろうなあれ、砂利か?
キャロル研究員: 道に沿って進んでくれ。
D-16321: あー、了解。
2分経過。
D-16321: ジーザス・ファッキン・クラ—
SCP-3826-1-A: [解読不能]
D-16321: 何なんだテメエはよ?
SCP-3826-1-A: 返答無し。
D-16321: センセ、どうすりゃいい?
キャロル研究員: D-16321、そういうことはしないようにと言っ—
SCP-3826-1-B: [粗訳] 悪魔め!
D-16321: なあ、下がれよ!
キャロル研究員: D-16321、落ち着いて—
D-16321: センセは黙ってろ!テメエがこんなのに巻き込んだから出ていこうとしてるんだろが!
SCP-3826-1-B: [解読不能]
D-16321: 下がれっつってんだろテメエ!さもないとボッコボコに3—
SCP-3826-1-C: [粗訳] 解体せよ!
D-16321: 下がれって、なあ!下がれっつって—
キャロル研究員: D-16321? もしもし?
[ログ終了]
前記: D-16899は男性のDクラス職員であり、元は誘拐・脅迫・暴行といった複数の罪で投獄されていた。
[ログ開始]
D-16899: よお、センセ。
キャロル研究員: ハロー。
ゼータ-9のエージェントらがSCP-3826の収容エアロックを開いてゆく。D-16899はエアロックに踏み込み、その背後で扉が閉じる。彼の前方に位置する扉が開く。
キャロル研究員: 進んでくれ。
D-16899はSCP-3826に繋がる階段を降り進んでいく。
D-16899: なあ、ここスゲー寒いぜ。
キャロル研究員: ああ、他の奴等もそう言っていたよ。
D-16899は降下中の大部分で黙ったままである。階段底部にいる大柄のSCP-3826-1個体を発見した際、彼はそこからおよそ20メートルの位置にいる。D-16899は息を荒げ、何歩か後退する。
キャロル研究員: D-16899、進んでくれ—
D-16899: アイツ何者だ? 何なんだよ?
キャロル研究員: ここの市民だ、ブリーフィングしたやつだよ。市民と交流し、また—
D-16899: センセ、ありゃぜってえ市民なんかじゃねえぞ。
キャロル研究員: …そこにいる間は生物と交流し、またSCP-3826の大部分の調査を試みてくれ。
D-16899: わかったわかった、大丈夫だ。
呼吸が落ち着くにつれ、D-16899の心拍数は減少する。彼は階段を降り続け、最終的に底へと到達する。周囲には当文書に掲載されているものと同様のSCP-3826の内部イメージが存在する。
D-16899: いったい何なんだ?
キャロル研究員: うん?
D-16899: 奴等、皆してどこへ向かってるんだ?
キャロル研究員: 我々で調べよう。SCP-3826を進み、探査し、調査してくれ。
D-16899: 了解、行ってくるよ…
D-16899はSCP-3826-1個体により舗装されたらしき道を進む。まばらな間隔で数度道を曲がり、やがてある教会へと導かれる。
D-16899: 別の教会か? あのクソ共、超宗教的じゃねえか。あるいは思ってた通りか。
キャロル研究員: D-16899、その教会に入ってくれないか。
D-16899: …冗談だろ。
キャロル研究員: 残念だが冗談ではない。教会に入ってくれ。
D-16899: いい加減にしろよ、なあ、俺はこんなことさせられたくな—
キャロル研究員: D-16899、教会に入れ。さもなくば武装職員が君を回収するために派遣される。
D-16899: わかったよ、クソが。
D-16899は教会入り口にある両開きの扉を開く。およそ40体のSCP-3826-1個体が、不明な人型実体と共にD-16899の監視機器に映る。この実体はSCP-3826-1個体よりも顕著に背が低く、上半身はローブを着用したヒト女性と同様であり、下半身の先端は蛇の様になっている。
D-16899: 口ごもっており、不明瞭。
不明な実体: お前、何しに — お前の服。お前の服からは奴の匂いがするぞ!
SCP-3826-1らが座席から立ち上がり、D-16899に接近し始める。D-16899はすぐさま振り返り、彼の来た方向へ全力疾走しだす。SCP-3826-1らはより速い速度でその後を追う。
D-16899: クソクソクソクソクソクソ—
キャロル研究員: D-16899、逃げ—
技術機器の突然の落下により、キャロル研究員は妨害される。SCP-3826-1らは追跡を止め、不明な実体は監視ツールを拾い上げて顔の近くで持つ。
不明な実体: 戻ってくるな、異端者め。
[ログ終了]
後記: 事件後、機動部隊ゼータ-9のエージェントらが不明実体の回収のため派遣されたものの、不明実体はSCP-3826内に確認できなかった。回収試行目的で派遣されたエージェントらは、皮膚が全く存在しないように見える巨大な生物を描写する視覚的・聴覚的な幻覚を想起した。全エージェントは、この生物は胴体の先に複数の”尾”を持ち、頭部がイカのそれと酷似する形状をしていたと報告した。
以下は認可を得たSCP-3826の自主探査後の、ロイ・キャロル研究員による音声ログです。
[ログ開始]
キャロル研究員: これから話すのは、あー、SCP-3826での私の探査に関するものだ。
キャロル研究員: 彼らはポータルを建造している。これがベストな用語であるかはわからないが、その目的は亀裂を開くことにある。この亀裂がどこへと向かっているのかはわからないが、何を構築しているのか理解するためにSCP-3826-1間の会話を山ほど聞いた。
キャロル研究員: どこへ向かっているのかと尋ねてみたが、彼らは皆同じ答えを返した: ”現在(the present)”。この裏にある意味は不明だが、私の研究員チームが現在ありうる事柄を調査中だ。
キャロル研究員: ポータルの周囲のみ、ヒュームレベルが周辺エリアと比べ極めて不安定であった。彼らの”計画”に貢献してしまうだけの可能性があったため、スクラントン現実錨は使用すべきでないと判断された。
キャロル研究員: また、私は最近悪夢を見ている。通常であればこれは関係ないだろうが、SCP-3826内でゼータ-9エージェントの見た幻覚と同一の描写が悪夢の中に存在した。これを説明できる者がいるかは全く以てさだかでないが、SCP-3826内のオカルト関連であろうシンボルは — わからない、出血だろうか? 悪夢の後、映像を見直している際にようやく気がついた。
キャロル研究員: 繰り返すが、これもまた調査中だ。こちらロイ・キャロル研究員だった、サインオフ。
[ログ終了]
補遺3826-HLELA: 2033/4/15、SCP-3826から5km以内にいた全財団職員が共通の幻覚を体験しました。以下はゼータ-9のエージェント・マグベインによる報告書です。
報告書提出者: ゼータ-9 ("メクラネズミ") 工作員 ランディ・マグベイン
アクセス: レベル-3、機密2033年4月15日、SCP-3826に割り当てられた全ての研究員、機動部隊員、Dクラス職員がある一つの聴覚的・視覚的な幻覚を共有しました。この幻覚はサーキシズム、及びその指導者である崇高なるカルキスト・イオンに関するものでした。
この幻覚は全ての参加対象が、自分たちが未知の場所に転移したと考えるところから始まりました。注目すべきことに、SCP-3826の監視テープの調査によれば、このような転移は実際には発生していません。参加者らが転移した場所は肉様の生物学的物質から構築された教会であるとしか形容できません。
教会内にはSCP-3826-1個体らが、3826-探査-2の不明な実体、そして崇高なるカルキスト・イオンと共におり、その全員が主要なサーキックの神であるヴァジュマの像の周囲に集まっていました。
集会に近寄ると、崇高なるカルキスト・イオンが財団職員に近づき、以下の文章を述べました(全幻覚目撃者から広く収集): ”これを見てくれるかね? 見えるかね? 我らが主たるヴァジュマは再び立ち上がる準備をしておられる。救済の全片はMekhaneの再構築に利用できうるが、我らはこれを赦せない。我らは彼の領域たる”現在”へと転移し、彼の反乱を援助せねばならない。我らは君がMekahaneの反乱を感じることを知っている。木星は我らが怨敵の成長に伴い揺れている。我らは一度は戦争に勝利したが、今再び戦が始まろうとしているのだ。彼の信望者たる我ら、この次なる戦争だけでなく、永遠に勝利の立場を維持せしめよう。”
その後、更なる幻覚は見られませんでした。幻覚で描写された場所は、その発見を最終目的として現在調査中です。