SCP-3834-JP
評価: +39+x
blank.png
Eq8F5fTY.jpg

SCP-3834-JP入り口

アイテム番号: SCP-3834-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-3834-JP入り口は建設されたサイト-81-3834に常駐する財団職員により監視されます。常駐職員をSCP-3834-JP内部へ誘導する行為は一切禁止されており、常駐職員はSCP-3834-JP内への誘導を受けた場合は無視してください。財団職員によるSCP-3834-JPへの侵入は一切禁止されます。

鶏冠山への民間人による侵入は全件監視されます。民間人がSCP-3834-JPへの侵入を試みていると判断された場合、常駐エージェントにより身柄が拘束されます。拘束された民間人の処遇についてはSCP-3834-JP担当職員により対応が検討されます。

SCP-3834-JPを利用した実験にはDクラス職員が利用されます。実験の実行には管理職員による許可が必要です。

説明: SCP-3834ーJPは山梨県甲州市鶏冠山の山腹に存在する鉱山坑道です。SCP-3834-JPは16世紀に武田信玄1の統治下で開発が進められた鉱山坑道であり、同時期に開発された黒川金山2と隣接しています。SCP-3834-JPは黒川金山と共に武田氏の軍事費捻出に利用され、武田氏滅亡以降も江戸幕府や大日本帝国によって金鉱の採掘に利用されています。ただし、武田氏滅亡以降に行われた採掘は何れも早期に中断されており、特に大日本帝国異常事例調査局3は、SCP-3834-JPの異常性を理由に閉山を決定した記録を残しています。

sinnsui.jpg

SCP-3834-JPの浸水地点

SCP-3834-JP内には坑内湧水により浸水している箇所が複数存在し、この鉱山湧水からはヒトの水死体が発見されます。一部の水死体は身元の特定に成功しており、何れも山梨県全域、北部を除く長野県全域にて行方不明となっていた人物です。行方不明者の分布で示されるエリアは武田信玄時代の武田氏の旧領地と一致します。

SCP-3834-JP内に侵入した人物は、不明な物理的干渉を受けます。この干渉に予兆は存在せず、対象となった人物は抵抗が困難な力量で、鉱山湧水による浸水地点に引摺りこまれます。不可視の非実体による干渉が推測されており、この非実体に対する対処方法を中心に研究/実験が行われています。

上記異常性はSCP-3834-JP内に水死体が出現するプロセスと推測されており、不明な理由、或いはSCP-3834-JPの未解明異常性によって誘引された人物が、上記異常性により溺死していると思われます。ただし、財団がSCP-3834-JPを発見した時点では大日本帝国陸軍により入り口が崩落させられており、行方不明者がどのようにしてSCP-3834-JPへ侵入したかは明らかになっていません。周辺地域を頻繁に出入りしていた民間人の不明瞭な証言により、時折横穴が一時的に発生していることが示唆されており、行方不明者がSCP-3834-JPにアクセスした際はこの横穴を利用している可能性が指摘されています。しかし、財団はこの横穴の発生を確認できていません。

SCP-3834-JP内部は地中である関係上通信機器の使用が困難である他、大日本帝国異常事例調査局によって異常な通信装置が設置されており、この通信装置から発される異常周波数の電波によって電子機器に不具合が生じます。SCP-3834-JPから外部へ連絡する方法は限られており、大日本帝国異常事例調査局の通信装置を利用する以外は現実的ではありません。

補遺1: 発見経緯

SCP-3834-JPは花魁淵での調査中に発見されました。花魁淵は鶏冠山の麓に存在する滝であり、武田氏が事実上滅亡した際に、金山の存在が織田氏に露見することを恐れた金山奉行が、鉱山夫の慰安を行っていた遊女を虐殺し、情報の漏洩を阻止したとされている場所です。この伝承を根拠にした心霊体験談が民間人に流布されており、財団は事実関係の確認を目的に調査を行っていました。

財団が発見した時点のSCP-3834-JPは入り口が崩落した不明な洞窟であり、財団の関心を集めませんでした。財団がSCP-3834-JPに注目したのは2020年11月からであり、大日本帝国異常事例調査局の情報将校の遺品が情報資料として回収されたことが起因となりました。

IMG20230504102102.jpg

大日本帝国時代の坑木

情報資料にはSCP-3834-JPに関する情報が記載されており、貴金属の大量採掘が期待できる隠し金山として再開発を実行したとされています。再開発開始の時点で水死体は発見されており、程なくして管轄が大日本帝国異常事例調査局に移行されています。大日本帝国異常事例調査局の監督下で採掘が進められましたが、SCP-3834-JP異常性による被害が続出したため、入口の爆破と情報の隠匿を含める閉山処置が実行されました。

SCP-3834-JPの存在は、武田氏遺臣の子孫であり、大日本帝国陸軍将校の"根津 智群"によって伝達されたとされています。根津は採掘開始直後にSCP-3834-JPから水死体として発見されており、遺族も東京大空襲で死亡しているため、根津を追跡することでの情報獲得は困難です。根津は大日本帝国異常事例調査局によって設置された通信装置を利用し、何らかの情報を大日本帝国異常事例調査局に伝達したと記録されていますが、その内容は削除されています。

補遺2: 武田氏に関する調査

SCP-3834-JPの来歴に武田氏の関与が疑われることから、金山開発で著しい収入を得ていた武田信玄/勝頼父子に関する情報の収集が行われました。戦国時代の武田氏に関しては蒐集院の情報資料が明るく、織田氏に潜伏していた按察司"明智光秀4"が特筆すべき記述を残しています。戦国時代当時、織田氏と武田氏は敵対関係にあり、明智は武田氏への諜報活動を目的に様々な情報を収集していたと思われます。

明智の記録では、武田氏が諏訪地方を平定してから程なくして、武田氏の金山収入が爆発的に増加したことが示唆されています。この金山収入は、武田信玄が生涯を通じて行った侵略政策の軍資金に用いられ、周辺諸国への調略にも大量の金銭が投入されていました。中でもSCP-3834-JPと思われる名称無しの隠し金山での金鉱石の採掘量は抜群であり、明智はこの隠し金山を不審視していました。明智は蒐集院本院に調査を打診し、その結果として武田信玄が異常な方法で隠し金山を入手していたことが明らかになりました。詳しくは補遺3を参照してください。

補遺3: 武田信玄によるSCP-3834-JP獲得過程

1541年に武田信玄は実父である武田信虎を親子間の不仲を理由に追放し、武田氏の家督を相続しました。しかし、武田信虎を武力的に追放したことが家臣団からの反発を招き、武田氏は内紛の危機に瀕しました。武田信玄は家臣団の信頼を得るために侵略政策を打ち出し、侵略で得た領地/収入を家臣団に配布することで武田氏内の内紛を防ぐ計画を試みました。

1542年に武田信玄は同盟関係にあった諏訪氏を、敵対勢力と無断で和睦したことを理由に攻撃しました。諏訪氏の支配に不満を持つ諏訪氏家臣の高遠頼継など反諏訪勢を調略し、約2か月で諏訪地方を制圧することに成功しています。この際、諏訪氏当主の諏訪頼重を甲斐国に連行し、切腹させています。

諏訪頼重は諏訪大社の大祝であり、大祝は神道における現人神に該当し、諏訪信仰における最高神官職です。明智は武田信玄が大祝を殺害したことに注目しており、配下の諜報部隊に対し、武田信玄による諏訪地域平定後の周辺地域の反応について調査を命じました。調査の結果、諏訪地域及び諏訪信仰において有力氏族である守矢氏が武田信玄にコンタクトを取っていたことが明らかになりました。

明智は資料内にて、武田氏と守矢氏の会談の場にて異常な事象が発生したことを記述しています。この異常な事象は武田氏側が詳細に記録しており、明智はこの記録を獲得したとされています。以下は明智と明智配下諜報員の間で交わされた書状と、明智の所感がまとめられた手記の抜粋です。内容は可読性を加味し現代語に翻訳されています。

織田軍甲州方面隠密から明智へ送付された密書


武田信玄と守矢の司祭との会談は今から30年ほど前、武田信玄が諏訪地域を平定した直後に行われている。当初守矢氏からの武田信玄本人との会談の要請は無視される予定であったが、諏訪地域の支配地盤の安定化を謀るために参謀山本勘助の薦めで会談は実現した。山本勘助は武田家中では新参であるが、諏訪平定の戦で活躍したことで召し上げられた人物であり、実父の追放で家臣からの顰蹙を買っていた当時の武田信玄にとって数少ない信頼出来る人物だったと思われる。

守矢氏との会談は守屋山麓に存在する守矢邸で行われ、会談には山本勘助も同席した。会談で発生した異常現象については山本勘助が記録したものである。

守矢の司祭は老婆であり、御供を大勢連れていた。

山本勘助は司祭に対し、守矢氏が武田家に服属することを要求し、服属した際は守矢氏の諏訪地域における勢力維持を約束した。

司祭は服属をその場で表明したが、強気にも武田信玄を恫喝しはじめた。司祭は武田信玄が大祝を殺害したことに憤慨しており、武田信玄に対して償いを強い口調で要求した。

司祭の要求に対し、武田信玄が直々に割って入り、武力を背景に要求を拒否する発言をしたことで話は大いにもつれた。どれほど経っただろうか、口論の最中に司祭の動きがピタリと止まり、動かなくなった。騒がしかった場はすっかり静まり返り、怪訝に思った武田信玄と山本勘助はお互いの顔を見合わせ、場の空気感から言葉を発することが出来なくなっていた。

やがて静止していた司祭に動きが出始める。司祭の目玉が抜け落ち、眉間が横に大きく裂けると、瞳孔が縦に鋭く伸びた巨大な単眼が現れた。山本勘助は巨大な蛇の眼だったと特筆しており、この現象に酷く驚いた様子が伺える。

司祭は先程までとは全く異なる口調で償いを説明した。山本勘助が記すに、この時の司祭の声は明らかに人間の物ではなく、木々の軋む音に獣の唸り声が混ざったような声だったとしており、やはり異常な現象に山本勘助が動揺したことが伺える。司祭の発した発言の内容はおよそ以下の通り

  • 我がための贄である大祝を殺害した罪は大罪である。
  • 大罪の報いとして、諏訪家から1名女を預ける故、女との間に男子を成し、その男子を武田家当主兼諏訪大社大祝に据えること。
  • 約束を守れば大祝殺害の大罪をある程度の罰で済まし、甲斐の地に金山を与える。
  • 大祝は我の庇護下にあるのだから、結果として武田氏は大いに栄える。

上記内容が一方的に通達されると単眼は消滅し、司祭は単眼の眼窩から大量に出血し、そのまま絶命したとされている。武田信玄は変容した司祭に対し、脂汗をかきながらも気丈な振る舞いをしていたが、この消え方を見ていよいよ憔悴し、一度会談の場を離れたと記録されている。

武田信玄はこの会談の直後から本領である甲斐で新たな金山開発に着手したため、金山に関する約束は確かに履行され、武田信玄はこの時点で件の金山を入手したと思われる。

<中略>

武田信玄の元には諏訪氏より不明な女7が嫁いでおり、後の武田氏後継者である四男武田勝頼8が産まれている。このことから、武田信玄にはどのような腹積もりだったかは不明だが、一応は件の単眼との約束を守る意思があったと思われる。武田勝頼は四男であるため、当然家督継承順位も4位ということになるが、兄3名は様々な理由で死亡、または家督相続不可能である。

  • 長男義信→信玄とは不仲で30歳で謀反を起こし自刃9
  • 次男竜芳→諏訪平定直後に産まれるが、先天的に失明。
  • 三男信之→11歳で早世。

また、武田信玄の実妹禰々は諏訪頼重に嫁いでいたが、諏訪平定以降は甲斐に戻った後に不審死している。これら連続した不幸には調伏の類を疑わずにはいられない。武田勝頼を産んだ女も、産後すぐに死亡しており、こちらも関連があるかもしれない。

(元亀2年)


明智手記


面妖なる何かが接触したと評価できるが、武田信玄はその中でも結構な大物に絡まれたと見てとれる。大祝に関する話をつらつら惟るに何らかの神の一柱なのだろうか。

その神とは単純に考えれば諏訪大明神なのだろうたが、大祝を"贄"呼ばわりしている部分の違和感が物凄い。どの神にも二面性はあるものだが、建御名方神が人間の贄を要求するというのは神性から懸け離れている。

神降ろしを行うのは守矢氏の人間のみ、蛇の眼に単眼、人間の贄を要求、祟り神のような挙動、これら要素を全てを総合して判断すると諏訪地域に君臨しているのは諏訪大明神ではなく、遥かの古神である洩矢神、即ち守谷氏が奉るミシャクジ神なのではなかろうか。諏訪家は守矢氏にいいように利用されているのかもしれない。

現在、武田勝頼は25歳になるが未だ大祝に就任していない。大祝は本来16歳程度で就任するものだ。もし神との約束を違えて祟りでもあろうものなら、大きな災いとなるだろう。院と朝廷のことを考えると、武田には奮ってもらいたいのだが。

(元亀2年)

上記資料が作成された1571年から2年後の1573年に、武田信玄は死亡しています。この2年間の武田氏は三方ヶ原の戦いで徳川織田連合軍を撃破するなど好調でしたが、武田信玄の死を契機に衰退しています。後継者の武田勝頼は武田氏の隆盛に尽力し、一時期は武田信玄時代よりも広域な領土を獲得しますが、諏訪氏の血縁を持つことで家臣団から敬遠されており、衰退を阻止出来ていません。

武田信玄の死因は公的には病死とされていますが、明智は死因について特筆すべき記録を残しています。武田信玄の死亡は周辺諸侯との政治的外圧を防ぐ目的で隠匿されましたが、三方ヶ原の戦いで大勝したのにも関わらず進軍を停止し、結果的に撤退を開始したことが不審視され、周辺諸国には死亡が実質的に露見していました。武田信玄の死亡にはSCP-3834-JPとの関連性が指摘されています。

明智手記


武田信玄の病死だが、件の隠密が気になる情報を送ってきた。徳川の小僧が糞を漏らして逃げるほどの大勝だったにも関わらず、長篠城でいつまでもゆっくり休憩した挙句に何故か撤退ときたものだから何をしてるんだと思っていたが、まさかそんなことになっているとは。

2月に野田城を落城させた武田信玄は病床に伏せたとされているが、実際は行方不明になっていたようだ。総大将の失踪で軍は混乱、長篠城で2か月近く立ち往生していた。

結局、武田信玄が発見されたのは野田城から遠く離れた甲斐の隠し金山、恐らく件の金山だろう。金山の湧水溜まりから水死体で発見された。死体は激しくふやけ、腐敗しており、水死体となってそれなりに時間が経過していた。両足に怪我の痕跡が見て取れ、野田城から隠し金山まで徒歩でやってきたことを示しており、この奇行の動機は一切不明である。

死に方が死に方である故、死を隠匿せざる負えなかった。盗掘などで遺体が万が一露見したら沙汰であるため、遺体は諏訪湖に水葬し、武田信玄の水死を秘匿しようとしたようだ。

どう考えても武田信玄は調伏死だ。妙な怪異に絡まれていたようだが、よもやここまでの物とは思わなかった。織田は武田を完全に滅ぼす腹積もりなのだが大丈夫なのか? 未だに大祝に就任していないとはいえ、武田勝頼は一応大祝候補なのだ。殺したりしたら何かあるのではないだろうか。織田はともかく、私に迷惑が降り掛からねばよいのだが。

しかし、後継者は予定通り武田勝頼な訳だが、傍から見ていると、武田家が諏訪家に乗っ取られたようにも見えるな。諏訪の血を理由に「信」の通字を貰えなかった武田勝頼が当主になるときたら家臣団の反発は強そうだ。調略が簡単に決まるだろうな。

(元亀4年)


明智手記


武田信玄は何に調伏されたのか。武田信玄はこれまで様々な侵略戦争を成功させており、こと怨恨に関しては心当たりが大量にあるだろう。しかし、武田信玄の死に方は凄まじく、ただの調伏ではないと思われる。だとすれば、件の単眼による調伏が最もありえそうだ。

武田勝頼は家臣団からの評判は悪いが、武田信玄からの評価は高かったようだ。事実、滝山城攻めでは殿軍を務め、大将首をあげるなど武将としての才覚は素晴らしいものがある。武田信玄は「侵略者から諏訪の地を守る事業の最中であるため」と武田勝頼の大祝就任を延期していたと報告されており、延期は件の単眼から武田勝頼を守る意図があったのではないだろうか。一時的に武田勝頼に高遠諏訪家を継がせて諏訪姓を名乗らせたり、諏訪家の通字である「頼」を名前に与えたりと、その辺りの駆け引きにはかなり力が入っているように感じる。

だとすれば、武田信玄は武田勝頼の大祝就任を妨害する存在ということになり、件の単眼に消されたと思えば合点がいく。

(元亀4年)


明智の記述が正しければ、SCP-3834-JPの最初の被害者は武田信玄であると予想されます。その場合、武田信玄が守矢氏との会談で存在が示された異常実体は、SCP-3834-JP異常性の起源に関連していると思われます。ただし、野田城は現在の愛知県に存在していた城郭であるため、異常性の典型例からは逸脱しています。また、この時点ではSCP-3834-JPの誘引/水死異常性は武田信玄が死亡した実例以外では発生しておらず、当該事案はSCP-3834-JP異常性に於いて特異な実例であると評価できます。

武田勝頼率いる武田氏は長篠の戦いにて織田徳川連合軍に敗北し、この敗北は武田氏の衰退は決定付けるものとなります。武田勝頼はこの時点でも大祝に就任していませんでしたが、この敗北以降、守矢氏による就任の催促が頻発したと明智は記録しています。また催促の中で異常実体の出現が記録されています。記録では異常実体の出現は1582年の2月とされており、織田徳川連合軍による甲州征伐10の直前に該当します。前年より石山本願寺を攻略をした織田氏主導の元侵略は行われており、高天神城の戦いなどで敗北するなど武田氏の劣勢は客観的に明らかな状態でした。結果として、甲州征伐では武田氏陣営の人物が連続して離反し、武田勝頼が自害に追い込まれたことで大名としての武田氏は滅亡しています。明智はこの連続した離反にも異常実体の関与を指摘しています。

明智手記


隠密から早馬が届いた。話が大きく進展しそうだ。

武田勝頼の大祝就任は、諏訪地域の安全保障事業の最中であることを理由に延期されてきた。これは武田信玄の時代から守矢氏へ通達され続けていたが、武田信玄があの死に方をした以上、守矢側は納得していなかったことが推測できる。そして武田勝頼は、未だにこの理由で大祝に就任していない。

しかし、ついに守矢側も動いた。守矢氏が大祝就任の催促に訪れた場で件の単眼が現れたのだ。隠密はその場面に居合わせ、内容を記録している。以下はその抜粋だ。

会談は深夜から明朝にかけて行われた。この日の催促はいつにも増してしつこく、守矢の司祭が全然引き下がらなかったのだ。そしてついに守矢の若い司祭の目玉が抜け落ち、眉間が割れ、巨大な単眼が現れる。山本勘助の記述の通りであり、実物を目の当たりにすると恐怖で何も考えられないほどの迫力がある。眼が合うだけで血の気が引き、震えが止まらなくなる。狼狽する私に比べて武田勝頼は取り乱す様子も無く単眼を見つめている。やはり武将としての才覚を十分に感じる男だ。

単眼が口を開く。

「勝頼よ。大人しく我が贄となれ。お前は愛しき頼重の孫よ。お前が大祝となるならば、我の力を貸し与えてやらんこともない。かつて大樹の神々を滅ぼした力を授けてやろう」

声は男でも女でもない不気味な声だった。風は吹いていないにも関わらず、声にあわせて周辺の樹木がザワザワと揺れていたのをよく覚えている。勝頼は普通の人間ならたじろいでしまうような人外からの呼びかけにも動じず、表情変えなかった。そして勝頼は言葉を返した。

「その愛しき頼重が父上に攻められた時、なぜ神々を滅ぼしたとかいう力を授けなかったのですか? 気紛れで人間を弄び、武田を愚弄する怪物の力など借りるつもりはございませぬ」

武田勝頼は単眼にハッキリと楯突いた。その堂々とした物言いに私は驚いたが、単眼も少し驚いたようだ。声にならないうめき声を口から発している。そこに武田勝頼はさらに追撃をかける。

「私は諏訪の後継者では無く、去る信玄公の子にして武田の後継者、武田四郎勝頼である。大祝なんぞになるつもりはありませんな。貴方は私が信仰するべき神などではなく、尊敬する両親の仇、滅するべき化物だ!」

私はてっきり武田勝頼は諏訪家に近い人物だと思っていたが、その口ぶりは違う様だった。武田勝頼は小太刀を抜き、単眼の瞳孔に深々と刀身を差し込んだ。単眼は差し口から漆黒の液体が噴き出し、そのまま倒れ込んだ。意外とあっさり倒せるものだな、などと考えていたところ。木々の騒めきが悲鳴のようにキシャキシャとなり始め、単眼の口は動いていないのに悍ましい声が空間を包み込んだ。

「愚か。神域を穢した罪を、貴様で許してやろうと慈悲をかけてやったというのに無礼者が。愚かな父より惨めに破滅させてやる。我が施した黄金で権力を得ている分際でその態度、千年許されぬ狼藉だと知るが良い」

そう発し終わると、巨大な爆発音が轟き、大地が大きく揺れ始めた。浅間山が噴火したのだ。爆発音に気を取られていたが、単眼はいつ間にか姿を消していた。

私はこの戦で気になっていたことがあった。調略があまりにも通り過ぎるのだ。どの敵もアッサリと武田を見限り、織田に靡くか逃げ出すのどちらかを選び、武田の軍勢はみるみる勢いを失っていた。浅間山の噴火は天が武田勝頼を見放した証拠だとする風説がそこらじゅうで蔓延しているらしく、武田軍の離反者は凄まじい数になるらしい。私が特に驚いたのは木曽義昌の離反だ。木曽義昌の正室は武田信玄の娘であり、武田勝頼は義兄に当たる。武田一門衆であるはずの木曽義昌はアッサリと武田を見限り、弟を人質として差し出してまで織田についてきたのだ。

私には武田家中心人物の相次ぐ離反も、単眼の仕業に想えて仕方がない・・・。

(天正10年)


明智手記


武田勝頼、天目山にて自刃。重臣小山田信茂11の裏切りで甲斐本国に戻ることも出来なくなり遁走。いよいよ行き場の無くなった武田勝頼を一門衆や重臣までもが次々裏切り、最期まで武田勝頼に付き従っていたのは僅かに41名。大した戦闘も無かったのにもかかわらず、当初8000人近く存在した兵がほとんど脱走した。最後は多勢に無勢、大量の織田軍に囲まれ、19歳の妻と16歳の息子と共に自害と相成ったそうだ。ここに武田宗家は滅亡したということになる。才覚ある将の最後とは思えぬほど、惨めな最後であると思えてならない。

ところで、私はとても嫌な報告を受けている。

高遠城攻略の後に諏訪に着陣した織田信忠12が諏訪大社に放火したらしい。

はい、馬鹿。あんなに警告したのに、尾張のうつけ者の称号は今日から信忠に使うのがふさわしいだろうな。馬鹿の子供は馬鹿。それが諏訪大社でなかったとしても、信仰の聖地を燃やすと民衆の統治が難しくなるとかって考えられないのか? この馬鹿親子は聖地に放火するのが大好きらしいな。

[織田父子への中傷が続くため中略]

さて、件の隠し金山で妙な動きがあったらしく。武田信玄の時の様な水死体が発見されるようになったらしい。これだけでも悍ましい話だが、高坂弾正13の子飼いだった根津為五郎八兵衛なる男が、水死体の発生や武田家の衰退はミシャクジ神の祟りに違いないと主張し、諏訪大社御頭祭14にならい金山で働く花魁を斬首し、それを鉱山直下の沢に捧げたという。いよいよ狂気の沙汰だ。せっかく武田を滅ぼし自由に出入りできるのだから金山を確認したいところだが、諏訪大社を放火したなどと聞くと恐ろしくてあの辺りにはあまり関わりたくないと思ってしまう。本院に任せるのが吉だろうか。

(天正10年)


明智手記


守矢氏を名乗る使者が京の屋敷に現れた。案の定信長に合わせろと要求してきた。

言わんこっちゃない。信忠を大祝にしろとでも始まるのだろうか。冗談じゃない。

信長への面会要求を断り、使者を追い返した。無視を決め込んだところで無事であるという保証はないがな。

とりあえず本件は全て本院に預けよう。今は邪魔されたくない。

(天正10年)

最後の手記から程なくして、明智は本能寺の変を起こし、織田信長/信忠父子を殺害しています。殺害の動機は諸説あり、詳細は不明です。明智は織田父子殺害後、山崎の戦いで織田氏遺臣羽柴秀吉に敗北し、逃走中に死亡しています。SCP-3834-JPに関する調査は当時の蒐集院本院に引き継がれたと思われますが、蒐集院本院によるSCP-3834-JPの調査記録は発見されていません。

根津為五郎八兵衛とされる人物は、SCP-3834-JPを大日本帝国異常事例調査局に伝達した陸軍将校 根津智群の先祖に当たる人物です。根津為五郎八兵衛がSCP-3834-JPの異常性や危険性を認知していた場合、子孫である根津智群に危険性が相伝されておらず、SCP-3834-JPの存在のみが相伝されているのは不自然です。SCP-3834-JPへの誘引に関する異常性の一部である可能性が指摘されており、SCP-3834-JPを認知する人物は、他者をSCP-3834-JPへ誘導する精神影響災害に罹災する可能性が後述するSCP-3834-JP内部探査の結果などから指摘されています。

また、これまで獲得された情報資料によって、江戸幕府もSCP-3834-JPの採掘を試みていることが明らかになっています。江戸幕府初期に2度にわたって開発が行われた記録が残されており、1度目は松平 信吉15の提案によるものであり、2回目は保科 正之16の提案によるものです。両名とも武田氏に所縁がある人物であり、武田信玄の次女である見性院17を養母に持つ共通点があります。両名がSCP-3834-JPを見性院を通じて認知していた場合、見性院はSCP-3834-JPの異常性を認知していた可能性が高く、SCP-3834-JPの存在を友好的な縁者である両名に伝達するのは不自然です。見性院がSCP-3834-JPの誘引異常性の影響を受けていた可能性が指摘されています。

SCP-3834-JPの採掘を提案した両名は何れも幕府中枢に近い人物であり、2回とも幕府直轄の金山としてSCP-3834-JPが再開発されています。再開発の度にSCP-3834-JP異常性の発生は確認されており、2回目の再開発の際に、幕府参謀/仏法顧問の南光坊天海が蒐集院と連携し、封印を施しています。ただし、現在でもSCP-3834-JP異常性は失われていないことから、この封印は不完全、或いは一時的なものだったと予想されます。天海は以前からSCP-3834-JPの存在を認知していたとされており、どのような経路で認知していたかは不明です。

SCP-3834-JPの異常性は、武田勝頼が異常実体に対する敵視を露わにしたことで発現したと思われます。異常実体を何らかの神格存在であると仮定した場合、SCP-3834-JP異常性は神格存在の齎す異常現象に典型的な呪術の類、或いは祟りとされる報復行為だと考えられますが、武田勝頼の死から400年以上経過した現在も異常性が継続していることは特異な実例です。

補遺4: SCP-3834-JP関連氏族に対する調査

様々な調査の結果、SCP-3834-JPの無力化に役立つ情報は得られなかったため、SCP-3834-JPとの関連性が疑われる守矢氏と諏訪氏への調査が実行されました。両氏はSCP-3834-JP異常性の起源に関して有力な情報を所持している可能性が高いと評価されており、財団によって注視されていました。

守矢氏と諏訪氏に伝わる宗教的な秘儀や製薬に関する知識は、深夜の祈祷殿で一子相伝によって口伝されます。大祝職は明治時代の時点で廃止されており、この廃止に伴って口伝が途絶えており、有力な情報を入手できませんでした。SCP-3834-JP異常性の起源となったと思われる異常実体へのコンタクト方法が失われている場合、SCP-3834-JP異常性を無力化することは困難であると思われます。

補遺5: SCP-3834-JP内部調査

chosa.jpg

内部調査の様子

SCP-3834-JPの探査が実行されました。SCP-3834-JP異常性によって被害が発生する可能性を加味し、最低限の人員を除き、探査チームはDクラス職員で構成されます。探査に際しては7名の人的消費が発生しており、何れもSCP-3834-JP異常性に典型的な水死です。

SCP-3834-JP内部は複雑な構造であり、全6層の坑道全てが迷路状に開発されています。このような無計画で煩雑な仕様で採掘がおこなわれた理由は明らかになっていません。坑内には大日本帝国異常事例調査局によって設置されたと思われる比較的近代的な物品も存在しており、大日本帝国異常事例調査局がこの構造を是正しなかった理由は不明です。坑道に変化を加えると何らかの悪影響が発生する可能性や、坑道の形状が不明なプロセスで変化する可能性が指摘されていますが、結論には至っていません。

KIN.jpg

採掘漏れの金鉱石

坑内では掘削漏れと思われる金鉱石が多く発見されており、SCP-3834-JPでの採掘を中途で停止したと痕跡だと思われます。ただし、この採掘漏れはSCP-3834-JPの入り口付近でも確認されており、これまでSCP-3834-JPを所有してきた各勢力がこれらを採掘しないことは不自然です。この採掘漏れの金鉱石は前述の坑道の形状が不明なプロセスで変化するという仮説の根拠となっています。

坑内湧水で浸水した地点を水中ドローンで調査したところ、浸水個所から大量の水死体が発見されています。Dクラス職員を潜水させ、死体や物品類を回収する試みはすべて失敗しており、全件で人的消費が発生しました。浸水地点はSCP-3834-JPの最深部である第6層のものが最も広大であり、浸水地点の最深部には到達できておらず、SCP-3834-JPの全容は解明されていません。第6層の浸水地点からは水死体以外にもヘビの抜け殻と思われる巨大な物体が発見されています。

tel.jpg

通信機のあるボックス

SCP-3834-JPの最深部には大日本帝国異常事例調査局が設置したと思われる通信機器が存在します。この通信機器は異常な方法で稼働を継続しており、現在でも使用することが可能です。SCP-3834-JP内で発生している異常周波数による電波は、この通信機器から発生しています。この通信機器から発信された通話は暗号化されており、受信者は発信元を特定することが出来ません。財団が調査した所、SCP-3834-JP内で水死体として発見された民間人が契約していた携帯端末から、この通信機から発信されたと思われる不審な通話を受信していた履歴が確認されました。通話内容の獲得には成功していませんが、財団もこの通信機器からの通話を受信しており、その内容を記録しています。以下はその記録です。

受信記録 #001
2023/08/08

付記: 音声はSCP-3834-JP探査中に安否不明となったD-2415の声に酷似している。D-2415はこの通話から8日後に第4層の浸水地点から水死体で発見された。



<再生>

D-2415らしき声: もしもし、野中先生?

[通信を受信した職員に対し、呼びかけに応じずに沈黙するように指示される]

D-2415らしき声: 聞こえているんでしょう。先生、助けてください。迷って出られなくなりました。

[沈黙]

D-2415らしき声: 無視しないでください。今、6層の通信機から通話してます。お願いです。助けに来てください。

[長い沈黙]

D-2415らしき声: 先生。

<終了>


追記: 通信機には監視カメラが設置されていたが、D-2415らしき人物は通信機を利用しておらず、どのようにこの音声が発信されたか不明。


受信記録 #002
2023/08/16

付記: 音声はSCP-3834-JP探査中に浸水地点への潜水を命じられ安否不明となったD-1335の声に酷似している。D-1335は現在も発見されていない。

通話にはD-3364が応じる。D-3364はD-1335と同日に探査チームに編成されたDクラス職員であり、D-1335とは面識がある。



<再生>

D-1335らしき声: もしもし、聞こえますか。

[D-3364に対し、応答するように指示が下る]

D-3364: もしもし、ええと、1335?

D-1335らしき声: 3364? 良かった。助けてくれないか? 今第6層にいるんだけどさ、怪我して動けないんだ。

D-3364: そんな、なんで生きてんだよ。あんな所に入って行って、どうやって戻ってきたんだよ。

D-1335らしき声: そんな事はあとで教えるから早く助けに来てくれ。このままじゃ本当に死んじまう。

[D-1355が監視カメラを確認し、通信機を利用している人物が存在しないことを確認する]

[D-1335が野中博士に向かって監視カメラの映像を指さす。野中博士はD-1335がどのように通信しているのか質問するように指示する]

D-3364: なぁ。1つ聞いてもいいか。

D-1335らしき声: いい加減にしろよ。死にかけてるって言ってるだろ。つべこべ言わずに助けに来いよ。

D-3364: おまえどうやって掛けて来てるんだ? 俺は今、カメラでそっちの様子をモニタリングしてるんだが、誰も映ってないんだよ。

D-1335らしき声: あ? あ~。

[通信機に設置された監視カメラの映像が暗転する]

<終了>


追記: 監視カメラは金具ごと強引に取り外されており行方不明。監視カメラは小型のものを再設置する。


受信記録 #003
2023/09/04

付記: 音声はSCP-3834-JP内で水死体として発見されたD-2221の声に酷似している。

通話にはD-3364が応じる。D-3364はD-2221の死体を目撃している。



<再生>

D-2221らしき声: おい、誰か。

D-3364: いやいやいや、そんな馬鹿な。

[舌打ち]

<終了>


追記: 通話が早期に終了した理由は複数考えられる。誘導が失敗することを予期された、或いはD-3364の声を記憶されていたなどが挙げられる。次回以降受信役を変更する。


受信記録 #004
2023/09/27

付記: 音声は探査チーム内で技師として参加した職員、菊池 隆盛技師に酷似している。

菊池は自宅で休暇中であり、外出は報告されていない。通話にはD-5520が応じる。



<再生>

菊池らしき声: 野中先生。到着しました。

D-5520: 菊池さん? 到着したって言いました?

菊池らしき声: ええ、野中先生にこの通信機に細工して欲しいって言われて。野中先生いますよね?

[野中博士は自身の指示では無いことをD-5520に伝える]

D-5520: いや、そんな指示はしてないっぽいですけど……。

菊池らしき声: え? さっきまで木村君も一緒にいたし、木村君も指示受けてるって言ってたけど。

[木村通信技師は野中博士の隣におり、木村通信技師は自分を指さし、野中博士にアピールする]

[財団エージェントにより、菊池が自宅にいないことが報告される]

野中博士: 菊池君、罠だ。すぐに脱出しろ!

[菊池が何かに気付いた様子で通信機を投げ捨て、通信機のある子部屋から出ようとする]

[菊池が静止し、ゆっくりとした動作で再び通信機を手に取る]

野中博士: どうした。

菊池: 外に何か居ます。何か大きなものが這っている音がする。

野中博士: そこを動くな。すぐに救援を送る。

菊池: いや、止めた方が。ヤツが周りをグルグル回っていて、絶対俺に気付いてる。

野中博士: なら、尚更 ────

菊池: 多分俺が助けを呼ぶのを待ってるんです。来たらダメだ。

[何かが軋む音]

菊池: 何かが巻き付いてきてる。さっき這ってた奴だ。

[沈黙]

菊池: 音が止んだ?

[ひとりでに扉が開く]

[菊池が監視カメラを取り外し、通信機器の外部を撮影する。映像に特別な被写体は存在しない]

菊池: 何もいない……。先生 ────

[監視カメラの映像が大きく乱れる]

野中博士: き、菊池君?

菊池: 先生! [叫び声]

[菊池の右足が中空に吊り上げられており、菊池が引き摺られていると思われる映像が流れる]

IMG20230504104036.jpg

菊池が引き摺り込まれた地点

[セメントで湧水が堰き止められている地点まで菊池が引き摺られていく]

菊池: [絶叫]

[セメント上部には鉄柵が設置されているが、鉄柵の隙間を菊池の身体が強引に通り抜けていく]

[着水]

<終了>


追記: 菊池は帰還していない。SCP-3834-JPの誘引異常性には様々なパターンが存在し、看破が難しいケースも存在すると思われる。

菊池が途中で取り外した監視カメラは、有線ケーブルで地上の通信設備と接続されているものであり、接続の際に有線ケーブルを約50 mにわたり余分に確保している。菊池は引き摺られていた最中も監視カメラを手放さなかったため、有線ケーブルを辿ることで菊池の遺体は回収可能だと思われる。


tobira.jpg

鉄扉

有線ケーブルを追跡することで菊池の遺体の回収が実行されました。有線ケーブルは菊池が引き摺り込まれた湧水地点を通過し、未確認の空洞部で千切れているのが確認されました。この地点の湧水は比較的小規模であったため、ポンプを利用し湧水を汲み出すことで、その先の空洞部の探査が可能です。結果として、この空洞部では特筆すべき物体が複数発見されています。

空洞部に鉄扉で隔離された空間が存在します。この鉄扉は一部錆の付着が見られるものの、酸化の進行度合いは多湿な環境下であるにも拘らず明らかに軽度であり、鉄扉が近年に設置されていることを示します。大日本帝国がSCP-3834-JP入り口を崩落させたのは1944年の出来事であり、それ以降組織的にSCP-3834-JPにアクセスを行った存在は確認されていません。SCP-3834-JPへの誘引異常性によってSCP-3834-JPにアクセスした個人が鉄扉を設置した可能性が指摘されましたが、計画性なしに設置するのは困難な鉄扉であると評価されたため、この指摘は否定されています。鉄扉には錠前が存在しますが、内部機構の錆は極めて軽微であると評価されています。これは日常的に錠前が施錠/開錠されている可能性を示します。

moriya.jpg

祭壇

鉄扉の先には神道式の祭壇が存在する空洞が存在します。空洞の天井部分には試し掘りとして開けられた小規模な穴が大量に確認できることから、空洞自体はSCP-3834-JPが金山として利用されていた当時から存在していると思われますが、祭壇の大部分は木製であり、腐敗がほとんど進行していないことから、この祭壇は鉄扉と同じく近代に設置されたと考えられています。祭壇の右隣には石碑が設置されており、彫刻による単眼の意匠が確認されていることから、SCP-3834-JPの来歴に関連した石碑であると予想されています。石碑には文字も刻印されていたと思われますが、石碑の作成年代は祭壇や鉄扉より遥かに古い紀元前のものであると判明しており、風化や浸食によって刻印が失われているため解読は困難です。

これら物品を運搬/設置/保守している存在は明らかになっていません。

財団はSCP-3834-JPの収容に関して、異常性の発生をコントロールすることは困難であると結論付け、発生した事案に対処する特別収容プロトコルを制定しました。SCP-3834-JP内部の通信機器の撤去が提案されていますが、財団が能動的にSCP-3834-JPに関する情報を得る数少ない方法であるため、結論は保留されました。

研究チームは情報収集を目的とした実験を積極的に実施しており、財団理事会はSCP-3834-JP研究チームがDクラス職員を過剰に浪費していることを指摘しています。

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。