アイテム番号: SCP-3836
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-3836はベッド、洗面台、シャワー、ジャングルジムを備えた4×4×5mのチャンバーに収容されます。SCP-3836には要求に応じて娯楽目的の工具や小さな機械部品が提供されます。午前9時から午後6時までの間、SCP-3836の要求に応じてチャンバー内に音楽を流しても構いません。SCP-3836は最低1名の同伴者がいるという条件の下にチャンバーを退室し、施設内を移動することが認められる場合があります。
SCP-3836には食事を1日2回与え、毎月1回オイル交換を実施します。
SCP-3836の実験に用いられる全ての材質は、使用前にレベル3以上の職員から承認を受けなければいけません。全ての実験は屋外の破壊試験場で行い、観察者は全員保護障壁の裏に待機するものとします。
2017/11/17以降、SCP-3836は未収容です。SCP-3836の存在を検出するため、財団レーダーは深宇宙の監視を継続します。
説明: SCP-3836は成熟した雄のニシローランドゴリラの死骸です。死骸の上半身からは殆どの肉が失われており、露出した骨に軽い焦げ跡があります。頭蓋骨は顔面中心部に大きな亀裂があり、眼球以外の肉がありません。若干の腐敗が身体の各所で発生しており、軽傷を負ってもいます。SCP-3836の全ての血液は、未知の理由によって市販用エンジンオイルの混合物に置換されています。このオイルが少なくとも6週間に1度交換されないと、SCP-3836は新しいオイルが提供されるまで昏睡状態に陥ります。SCP-3836は通常、大量の染み汚れが付着したオーバーオール、作業用ブーツ、色付きの安全ゴーグルを着用しています。
身体の損傷にも拘らず、SCP-3836は完全に生命と知性を維持しており、自律移動し、大雑把に発話することができます。SCP-3836は同種の他個体より遥かに高い知能レベルを有し、英語の読み書きと基本的な算術の実行が可能ですが、両方とも時折 頻繁に間違っています。SCP-3836は、通常その類の機器を理解するうえで不可欠な知識分野の経験を欠いているにも拘らず、機械学と工学の分野で専門知識を実証しています。極めて短絡的な性格だと確認されており、テンポの速い音楽の聴取や、自動車両の修理・改造を楽しんでいます。これらの車両改造の目標は、SCP-3836が繰り返し述べるところによると、“速く行く”ことです。
インタビュー3836-011-D
日付: 2015/8/7
質問者: サンブレ博士
回答者: SCP-3836
[記録開始]
サンブレ博士: こんにちは、SCP-3836。インタビューに応じてくれてありがとう。
SCP-3836: 大丈夫。前の速く終わった、新しいの考える時間要る。急がない。
サンブレ博士: 成程、考える時間はたっぷりあるんだね。それじゃ、君についてもう少し詳しく知りたいと思う。例えば、何処で話し方を学んだのか教えてもらえないか?
SCP-3836: 話す簡単、ただ口から空気速く行く。俺速い物全部分かる。言葉、もっと難しい。全部の言葉速くはない。速い言葉全部本で覚えた、他要らない。
サンブレ博士: ふーむ。君は速い物が好きだと明言している。それは何故かな?
SCP-3836は椅子から立ち上がり、片足をテーブルに乗せ、片手を胸に当てたヒロイックなポーズを取る。
SCP-3836: 速いは世界行く方法! 世界? 太陽の周りで速い! 太陽の暖かさ? とても速い、世界に! 俺、お前? 脚ある、脚そんなに速くない。もっと早く行く必要、真の速いに至る! 太陽のようになる! 全てへの暖かさ、眩しさ、輝き! 死より速い、もう死要らない! ただ速い!
サンブレ博士: …で、それを君の発明する機械で達成したいんだね?
SCP-3836: 良いスタート。まだ速くなる必要。エンジンにもっとブーン、それかもっとエンジン。それか両方!
サンブレ博士: そうか、まぁ“ブーン”がエンジンの中に留まっている限りは構わないだろう。もう一つ質問がある、それが済んだら考え事に戻っていいよ。君はどうも… 上半身に深刻な怪我を負っているように思える。何処で負傷したんだい、そしてどうやって生き延びたんだい?
SCP-3836: ああ、俺超速い行った時窓から乗り出した。どれだけ速いか分からない、ダイヤル沢山9言った後ブーンした。
サンブレ博士: …それを生き延びたって?
SCP-3836: 大丈夫、ゴーグル付けた。
[記録終了]
SCP-3836の主な異常性は自動車両への異常な改造を達成・適用する能力にあります。例外無く、SCP-3836が施した改造は、その車両を運転するにあたって異常現象が発生する結果を招きます。これらの異常現象には、本来なら互換性の無いメカニズムの組み込み成功、通常の物理的改造を介した既存部品への異常性付与、そして全く新たな異常部品の製造と使用が含まれます。これらの改造をSCP-3836以外の人物が再現する試みは全て失敗に終わります。
実験 SCP-3836-05
対象車両: ヤマハ・ドライブG29ゴルフカート
改造: 燃料タンクに直結する排気管、軽油と亜酸化窒素の混合物に置換された燃料、排気管の終端に設置された点火済みマッチ棒、金網製の正面風防、ボンネットに赤ペンキで記された“FAST”の文字。
結果: 点火直後、排気管から一連の急速な爆風が噴き出し、SCP-3836が乗った車両を時速227kmで推進させた。26秒後、燃料が枯渇して車両は減速した。車両の後部全体が著しく損傷し、タイヤは4本全て融解した。SCP-3836は大声で笑いながら運転席から退出した。
注記: ██名の負傷者が出たことに鑑み、実験に使用する材質は、SCP-3836に与える前にプロジェクト主任の承認を受けなければならない。
実験SCP-3836-08
対象車両: ベスパ946電動スクーター
改造: プラスチック製ストローで作られたエンジンに直結する吸気管(ヘッドライトと置換)、ガソリンタンク内に配置された信号銃、射出座席の設置、両サイドに取り付けられた雑な板金の翼、ハンドル中心部に設置された“FAST”と書かれている大きなボタン。
結果: ボタンを押していない間、スクーターはごく普通に機能した。ボタンを押すと、それまで発見されていなかった車両後部のハッチが開き、巨大なノズルが突出した。吸気タービンの回転が始まるとノズルから炎が噴き出し、車両は時速241kmまで加速してから空中に浮上、最終的には時速385kmに達した。SCP-3836は1分30秒間空中に留まったが、車両が急降下したため射出座席を起動した。射出座席は正常に機能し、車両本体は墜落した。
注記: 予期せぬ移動モードの起動を防ぐため、SCP-3836は実験前に車両の用途を報告しなければならない。 報告内容は全ての事例で“速く行く”のみだったため、前述の規定は撤回された。
実験SCP-3836-14
対象車両: 2017年製トヨタ・プリウスC
改造: 車両表面に無作為に設置された様々な大きさのテスラコイル18個、ダッシュボードに埋め込まれた漠然とトースターに類似する未知の機器、フロントガラスに接着された分解済プラズマランプの一部、AAバッテリーで完全に満たされたトランク。
結果: 時速74km以上の速度で移動している間、全てのテスラコイルが起動し、車両は走行中の地面を除く全ての物質を完全に透過する。透過対象には大気が含まれるため、空気抵抗がゼロになる。透過状態の車両は余分な労力無しで時速120km以上の速度を達成することが可能であり、最高速度は時速233kmまで記録された。
注記: 車両はフィールド任務で運用するために保管中。職員各位は、透過中に大気との相互作用が無いため、補助装置が無ければ呼吸できないという点に留意すべし。
実験SCP-3836-16
対象車両: セスナ172スカイホーク
改造: プロペラブレードが3倍に増やされ、各ブレードの表面に“FAST”と記入された。
結果: 当該航空機は、改造前の最高速度が時速302kmだったのに対し、ほぼ3倍の時速907kmまで加速できることが示された。
注記: 航空機はフィールド任務で運用するために保管中。
実験SCP-3836-23
対象車両: ハンドルバー付きセグウェイ・ミニプロ
改造: 2馬力電動モーターの代わりに506馬力ディーゼルエンジンの設置、両車輪への頑丈なオフロードタイヤの取り付け、プラットフォームに設置されたスロットルバルブに類似する未知の部品、“FAST”と記されたナンバープレートの追加、ステレオ装置の搭載、ハンドルバーに緩く結びつけられたシートベルト。
結果: 実験に先立ち、SCP-3836は幾つかの傾斜路や障害物を含む特定の仕様に従った実験エリアの構築を希望した。車両に乗ったSCP-3836はシートベルトを腰に巻き付けた後、前方に加速し始めた。車両は時速71kmで最初のジャンプを行い、着地前に後方宙返りを2回成功させた。着地時点でステレオが起動し、紙吹雪が車両後部から吹き出し始めた(構築素材に紙吹雪は含まれていなかった点に留意)。SCP-3836はその後、片方の車輪でバランスを取りつつ、火花を紙吹雪に引火させながら金属平均台に沿って走行した。この時点でSCP-3836はエンジン音を上回るまでステレオの音量を上げたため、アメリカのヘヴィメタルバンド“モトリー・クルー”の"Kickstart My Heart"を流していたことが明らかになった。SCP-3836は両方のタイヤが摩擦で破裂し、車両が破壊されるまで速度を上げながらスタントを実行し続けた。
注記: SCP-3836は車両損壊にあたって両脚に重傷を負ったが、完全な移動性を維持し、不快感や能力低下の兆候を示さなかった。SCP-3836はこれが設置したシートベルトのおかげであると主張した。同じ実験を繰り返したい/類似するアリーナでの実験を行いたいという職員の要請は却下された。
実験SCP-3836-28
対象車両: 財団宇宙船 モデルG-3351
改造: エンジン内部に沿って配置された電磁石と大量の電子機器から成る未知の機器、燃料タンク内に追加されたタービン、数層増加された熱シールド、全ての生命維持システムや計算システムと置換された追加エンジン、宇宙船外部に設置された未知のリング状機器、制御盤に追加された“FAST”と記されている変速レバー。
結果: 補遺1を参照。
補遺1: 2017/11/17、実験SCP-3836-28は████████管理官の特別な許可を得て実施されました。生命維持装置を装着したDクラス職員がSCP-3836の代わりに宇宙船を操縦する予定でしたが、SCP-3836はメインスラスターの隣接箇所に秘密裏にハッチを取り付けており、この決定を通達された際にハッチから搭乗して宇宙船を打ち上げました。SCP-3836と宇宙船は成功裏に地球の大気圏を離脱し、打ち上げから28秒後に全ての財団レーダーから消失しました。この現象を実現するためには、実質的に光速を上回る加速が求められます。消失直前、SCP-3836からと思われる1本の通信が宇宙船から発信されました。
ジュウブンハヤイ。
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