アイテム番号: SCP-3840-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容手順: 回収済みのSCP-3840-JPは1個ずつ防水容器に封入した上で低脅威度物品保管ロッカーに入れてください。未回収のSCP-3840-JPについては、購入記録に基づいて所有者を捕捉し適切なカバーストーリーの下でオブジェクトを回収した後、所有者に記憶処理を行ってください。
説明: SCP-3840-JPは直径約10 cmの球形のバスボムです。色や模様は各実例で異なりますが、構成成分は着色料を除いて同一であり、それ自体で異常な成分は含有されていません。
SCP-3840-JPは浴槽中の湯船に投入して使用された際に異常性を発現させます。SCP-3840-JPが湯に完全に溶解した状態で人間(以下、対象)が湯船に身体を浸漬すると、湯に接触した身体部位が発泡しながら"溶解1"します。この際、湯の色調や透明度はオブジェクト本体に由来するものから変化しません。
対象の全身の"溶解"が完了した後、数分から数時間程度の幅をもった時間をおいて対象の身体の再形成が起こります。その過程は前述した"溶解"の逆転として形容することが可能です。具体的には、湯中で微細な粒子が凝集して身体部位を段階的に形成し、最終的に対象と同一の外見および内部構造を持った実体が形成されます。対象は身体の再形成が完了した直後に自然な入浴行動を再開し、これをもってSCP-3840-JPの異常性の発現は終了します。
財団による収容以前、SCP-3840-JPは北海道札幌市██区に所在する雑貨店「███████」において6個入りのセットで販売されており、合計27セットの購入記録が残っています。現在SCP-3840-JPは店舗に残留していた在庫も含め合計155個が回収され、回収された順にナンバリングされています。
補遺: 以下はSCP-3840-JP-109〜114を購入し、その内の一つ(SCP-3840-JP-109に指定)を使用した青沼 美優氏に対し、オブジェクトの回収に伴って行われたインタビューの記録からの抜粋です。
日付: 2025/02/09
インタビュアー: エージェント・降旗
対象: 青沼 美優氏
付記: 青沼氏はSNS上でSCP-3840-JPの使用およびその異常性を示唆する投稿を行い、財団Webクローラ(“Farewell”)により捕捉されました。インタビュアーのエージェント・降旗はオカルトに関する話題を中心に扱うWebメディアのライターに偽装してコンタクトをとり、当該のエピソードに関する記事の執筆を目的とした対面でのインタビューを取り付け、敢行しました。インタビューは財団のフロント企業が経営する喫茶店で行われました。
<抜粋開始>
インタビュアー: では、例のバスボムについてですが、何か買おうと思ったきっかけはありますか?
青沼氏: 最近通ってる「███████」って言う雑貨屋さんがあるんですけど、ああ、これは載せないでくださいね。それで新しくあのバスボムが出てたので、仕事の疲れを癒そうと思って買ったんだったと思います。
インタビュアー: なるほど、その時点では特に不思議なところはなかったんですね。では、実際に使った時のことについて教えていただけますでしょうか。
青沼氏: はい。買った日の夜にさっそく使ってみようと思いまして、珍しくお湯貯めたんです。普段は大体シャワーなんですけど。それで箱から出したのを湯舟に入れてシャワー浴びてたら、まあ体が温まってリラックスしてくるわけじゃないですか。そうするとなんか、昼間は考えないような色んな事考えちゃうんですよね。
インタビュアー: ほう、少々ぶしつけな質問ではありますが、記事の参考になるかもしれないので聞かせていただいてもよろしいですか。
青沼氏: 大丈夫ですよ。もう終わったことですし。
インタビュアー: 終わったこと、ですか。切り替えがお上手なのですね。
青沼氏: あはは、ありがとうございます。振り返ってみれば、他の人から見たらよくある悩みだったとは思うんです。ようやく仕事に慣れてきて、今までは環境に慣れるのが精いっぱいで気付かなかったような会社の悪いところが目に入るようになっちゃったんですかね。うちってブラックなのか、あれってパワハラなのかみたいなことをずーっとグルグル考え込んでて。で、そう考えてるうちにシャワーを浴び終わって、すっかりバスボムも溶けてました。
青沼氏: そうしてやっと湯舟に浸かれると思ってざぶんと全身浸かったんです。このバスボムいい香りだな、色もほんのりピンクで可愛いな、なんてのんびりしてたら手足の先から泡が出てることに気づきました。最初はもちろん浴槽についてたかバスボムから出たやつだろうなと思ってたんですが、体が溶けてるってわかってびっくりしましたよ、本当に。でも疲れてたから逃げる、というか出るというか、そういうような気も起きなくて、あきらめて身を任せました。それでついにはもう完全にお湯と一体化したみたいになって。もう人生終わりかなーとか仕事ももうしなくていいのかなとかしばらくぼんやりしていたら、ちょっと形容が難しいんですけどぎゅーっと固まるような感覚があっていつの間にか元に戻りました。
青沼氏: 奇妙な体験をしたせいか、その時の私には身も心もずっと軽くなった感覚がありました。そしてすぐに湯舟を上がって浴槽の栓を抜いて、バスボムについての話はこれで終わりです。ただあの時、湯船に浸かる前の元々の私は排水口の奥へお湯として流れていったんだって、そう思うんです。抱えていた悩みと、それからあのバスボムの香りや色と一緒に。
インタビュアー: それは、例えるなら生まれ変わりのような、自分の連続性が一部失われるような感覚でしょうか。
青沼氏: まあそう言えなくもないですね。でもそれって、そんなにおかしなことでもないでしょう。きっと、どんな人だってその存在がずっと続いているってことは無いと思うんです。それぞれ生きていく中できっかけがあって、あるいは無くても考えが変わることはある。私にとってはそれが、しゅわっと溶けてまた固まるっていうちょっと不思議な出来事だっただけなんですよ。
<抜粋終了>
付記: 青沼氏にはインタビュー終了後にクラスA記憶処理を行いました。
SCP-3840-JPの与える精神影響が異常なものであるか、あるいは異常現象に直面したことによる正常な情動反応であるかは調査中です。



