SCP-3848-JP
アイテム番号: SCP-3848-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-3848-JPは地上に設置された観測機器により監視されます。高度および全体量を記録し、今後予測される移動方向と上昇高度を算出してください。
現状、SCP-3848-JPは財団の保有施設では管理されません。前述の監視と位置の推測によってSCP-3848-JPの収容を疑似的に維持します。既に地上からの目視は困難な高度に到達しているため、SCP-3848-JPの目撃者への記憶処理は情報発信があった場合のみに限定されています。
SCP-3848-JPに部位の脱落が確認された際は、近隣の管理施設から回収班を派遣して回収してください。住宅地など一定数の目撃者が予測される地域に落下した場合には地域全体に記憶処理を実施、落下に伴い物的損害が生じた場合には適切なカバーストーリーを流布します。回収物は検査後、異常が検出されなければ焼却処理されます。
説明: SCP-3848-JPは20██/██/██に自殺した真桑友梨佳氏の死体です。
SCP-3848-JPは上空4000mに滞空しており、なおも高度を上昇させています。この浮遊はSCP-3848-JPの体内に存在する浮揚ガスが原因です。死後動物の死体に発生する腐敗ガスが変化し、浮揚性を獲得したものと推測されます。
現在、SCP-3848-JPは500体以上の真桑友梨佳氏の死体で構成された、球状の集合体として成立しています。これらの死体はオリジナルのSCP-3848-JPから増殖した複製体であり、これらの複製体もまた複製として死体を発生させることが判明しています。個々の複製体は互いにいずれかと絡み合い、連結して固定されている状態です。その性質から、SCP-3848-JPは現在も増殖過程にあります。なお、死体の体内は浮揚ガスが充填され、ほとんどが丸く膨張しています。
SCP-3848-JPは当初、単一の死体だったと推測されています。生前の真桑友梨佳氏とその周辺に異常存在の形跡は確認できず、死によって異常性を発現させたと考えられます。死因は首吊りによる縊死であり、周辺状況から自殺と判断されています。所有していたSNSアカウントには、過度な自己嫌悪や自己批判に関連した投稿が慢性的に見られます。逃避欲求および「自己の救済」への執拗な言及も確認されており、真桑友梨佳氏は倒錯した思考から自死を選択したと思われます。
SCP-3848-JPの肉体に10cm以上の裂傷が生じた際、損傷部位から複製体が発生します。発生する複製体は裂傷1箇所につき1体となることが多いものの、部位の脱落などによって大きな切断面が生じた場合、損傷の規模に連動した数の複製体が発生します。
以下は損傷部位の発生以降、SCP-3848-JPに生じる変化を記録したものです。
| 経過 | SCP-3848-JPにて発生する変化 |
|---|---|
| 0~1時間 | 肉体に生じた裂傷が拡張し、SCP-3848-JPと同成分で構成された肉塊が発生する。肉塊はSCP-3848-JPの頭部と同一の形状を持って裂傷から突出。1時間程度で頭部は裂傷から完全に露出し、SCP-3848-JPから枝分かれしたような外観となる。 |
| 2~3時間 | 裂傷から完全に露出した頭部が、外部へのさらなる伸長を開始する。裂傷はさらに大きく拡張して、複製体が首、胴、腕など頭部に近い部位を露出しながら伸長。発生の時点で複製は死亡しており、SCP-3848-JPの性質を継承している。発生した複製体は他の複製との間隙に身体部位が食い込み、伸長の進行によって集合体の一部として安定する。 |
| 4~6時間 | 複製体の伸長が脚部まで到達し、伸長は停止する。停止時、複製体の脚の一方は損傷部位と接続した状態となる。拡張された裂傷は胴部を排出した時点で脚部より大きいが、間隙にあたる部分は不定形の肉塊に埋没し、その固形化によって連結が固定される。他の複製も密集しているため、複製体は人体としては多重の負荷が掛かった姿勢を保持することとなる。 |
| 6~10時間 | 複製体に大量の浮揚ガスが発生する。ガスは時間の経過とともに複製体の内部に生じ、全身に充填された時点で発生が終了する。複製体1体のガス充填には5m程度の浮力が観察されるため、SCP-3848-JPは裂傷の発生回数に比例した浮力を獲得すると予測される。 |
現在、1日に3体前後の複製体の発生が確認されています。これはSCP-3848-JPを構成する複製体の多くが発生時から負荷の掛かった状態で固定され、ガスによる膨張も相まって裂傷の生じやすい状況が持続するためと考えられます。また既に高高度に達しているため太陽光や風雨、昼夜の寒暖差などの気象影響を受けやすく、そうした劣化によって自然な損傷が生じることも要因として挙げられます。
しかし、現状況からのSCP-3848-JPへの介入は困難と考えられます。これは牽引による降下を試みた際、SCP-3848-JPの肉体の脆弱さから大量の脱落部位が発生、裂傷の発生により複製体の大規模な発生に繋がったためです。牽引の強行が及ぼすSCP-3848-JPおよび地上への影響が予測できないことから、SCP-3848-JPについては監視と脱落部位の回収を除いて介入しない方針を採択しています。
補遺: 将来的に、SCP-3848-JPは喪失される可能性があります。
高度上昇による気圧の低下に伴って、SCP-3848-JPが内包するガスは膨張を続けています。この膨張は将来的にSCP-3848-JPを構成する複製体を破裂させ、現状の状態維持を困難にすると考えられます。現在はSCP-3848-JPに耐久可能な程度の膨張ではあるものの、SCP-3848-JPの内部から裂傷が生じる機会は微増傾向にあります。
SCP-3848-JPを構成する複製体は、高度8000m以上でガス膨張に対する限界を迎えます。限界高度到達時、大気圧の低下に伴ってSCP-3848-JP内圧との間に急激な気圧差が生じることから、SCP-3848-JP群体は同時多発的かつ終局的な破裂を発生させると予測されています。一方でSCP-3848-JPの増殖とガス充填のプロセスには約10時間を要するため、この終局的爆発が発生した場合にはSCP-3848-JPの増殖が追いつかない可能性が高いと見られています。このことからSCP-3848-JPの継続的な滞留高度の上昇は、必然的にSCP-3848-JPの無力化をもたらします。
高高度からの落下と地面もしくは海面との衝突によって、大量の複製体と連結しているSCP-3848-JPも原型を留めない形で破壊されることが予測されており、これを回避するための計画が必要とされています。SCP-3848-JPの肉体を剪定し、一定高度を維持させる方法が最も現実的な収容プランと推測される一方、結果的に増殖サイクルを高速化して限界高度到達を早めるとして実行されていません。
具体的な方針を提示できない以上、SCP-3848-JPへの不介入は継続されます。









