SCP-3873-JP
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アイテム番号: SCP-3873-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-3873-JPは周囲を監視体制に置き、定期的な観測が行われます。異常性の活性時間帯においては侵入が禁止され、侵入の際には標準防護装備の装着及び複数名の機動部隊隊員の同行が必要です。

説明: SCP-3873-JPは██県██郡に存在する半径約500mの草原です。

SCP-3873-JPは満月の夜にのみ異常性が発生します。該当時のSCP-3873-JP範囲内に人間が侵入した場合、SCP-3873-JP内にはクラスⅣ霊的実体(以下、SCP-3873-JP-A)が発生します。SCP-3873-JP-Aの姿は出現ごとに異なります1が、共通する特徴として、鎌や日本刀など、何らかの刃物を所持していることが挙げられます。

SCP-3873-JP-Aは侵入した人間(以下、侵入者)に対し、著しく敵対的な行動を取ります。多くの場合、所持している刃物を用いて積極的に侵入者へ攻撃を行うことが確認されており、この攻撃は侵入者がSCP-3873-JP外に移動するか、死亡するまで継続します。SCP-3873-JP-Aは会話に反応を示さず、これまでに行われた交渉の全てが失敗しています。

また、SCP-3873-JP-Aは軽度の記憶影響を有しており、SCP-3873-JPに襲撃された侵入者は攻撃による負傷を自らの不注意による負傷など、非異常性のものであると認識しています。

起源調査: SCP-3873-JPの異常性はSCP-3873-JP-Aが有する記憶影響もあり、19世紀に蒐集院が調査するまで確認されていませんでした。また、その異常性が限定された環境に留まっていたことから蒐集院による収容も比較的軽度のものに限定されていました。そのため、SCP-3873-JPに対する本格的な起源調査は財団の管轄となって以降行われました。

アプローチ - 土地

SCP-3873-JPは山間の窪地に存在しており、周囲に集落は存在していません。加えて、財団が有する限りの記録においてこの土地に定住性の集落が存在した形跡は存在せず、開墾された記録も存在しません。その一方でSCP-3873-JPの地理条件、気候条件を加味した場合、本来発生するべき森林への植生遷移が発生しておらず、現在段階でススキを主とした草原の状態が保たれていることは特筆に値します。

アプローチ - 歴史

SCP-3873-JP-Aの服装を調査したところ、最古のものは安土桃山期の甲冑であることが確認されています。これを受け、財団の有する蒐集院資料を再度調査したところ、該当する時期にSCP-3873-JP地点で激しい地鳴り及び、大規模な山火事が発生していたことが判明しています。この山火事の原因は不明とされていますが、現在のSCP-3873-JPが草原へ遷移した理由はこの火災によるものである可能性が高いと見られています。

また、後年の調査によりSCP-3873-JP付近は戦闘が頻発に発生した地域であり、複数の敗残兵が通過する地点であることが、蒐集院記録及び当時の行軍表から確認されています。ここからSCP-3873-JP-Aの起源はそれらの武士を主体とした霊体によるものであると推測され、SCP-3873-JP-A実体に対してアプローチが行われました。

アプローチ - 霊的実体

████/██/██、SCP-3873-JP-Aに対し、武装機動部隊による調査が行われました。調査には非物質変位無効装置(nPDN)、メトカーフ非実体反射力場発生装置、ハルトマン霊体撮影機が用いられました。結果は以下の通りです。

使用された装置・技術 結果
非物質変位無効装置(nPDN) 実体化に成功したものの、自ら頸部を切断し死亡。着用していた装備等に所属を確認できるものはなし
メトカーフ非実体反射力場発生装置 干渉に成功し、SCP-3873-JP-Aの有していた日本刀を回収することに成功
ハルトマン霊体撮影機 撮影に成功したものの、SCP-3873-JP-Aは撮影できず、白い発光体が映るに留まった

回収された日本刀の組成を調査したところ、通常の鋼ではなくケイ酸塩鉱物からなるガラス様の物質であることが確認されました。このSCP-3873-JP-Aの所有する武器は一般的な鉱物で作られたものではないという事実から、SCP-3873-JP-Aは安土桃山期の武士を起源とする霊的実体である、というこれまでの説に疑義が発生しました。

それを受け、ハルトマン霊体撮影機の結果に対する評価を再度検証する必要性があると判断され、遠野妖怪保護区と連携を行ったうえで再度撮影内容の調査及び現像が行われました。結果として発光体は霊的実体が他の生物を模倣している状態、一般的に"化ける"状態で撮影されたことによって発生する現象であると確認されました。それを踏まえたうえで調整を行い、再度撮影された画像が以下のものです。




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SCP-3873-JP-A近影




この撮影結果に加え、日本刀の組成に用いられていたケイ酸塩鉱物は、イネ科の植物において蓄積される2物質であるという事実を受け、SCP-3873-JP-Aは従来推測されていたヒトの霊的実体ではなく、ススキの霊的実体が化けたものであると結論付けられました。

アプローチ - SCP-3873-JP

上記のアプローチを受け、SCP-3873-JP内部の調査を行ったところSCP-3873-JP内部にはススキの霊的実体が密集していることが判明しました。ここから、SCP-3873-JPの有する軽度の記憶影響及び上記土地的アプローチにおいてSCP-3873-JP内部が森林化していない原因は、SCP-3873-JP内部のSCP-3873-JP-Aが自らの生存領域を保護する目的で意図的に霊的アレロパシー3を作用させていることによるものであることが確認されました。

一方で、SCP-3873-JP-Aは、植物が自己保存本能の低さから霊体質量が低く、霊体変質の規模が小さいというカルマ則の定説から反していることが新たな疑問点としてあげられました。それを受け、SCP-3873-JP-Aがススキ以外の霊的リソースを持つとすればカルマ則に反しないという説が提唱され、SCP-3873-JPの発掘調査が計画、実行されました。

発掘調査を行ったところ、安土桃山期の地層から全長約3m、重さ約60tの玄武岩が発見されました。この玄武岩を調査したところ、生成が約46億年前であること、鉄含有量の差異、表面に確認できる溶融皮殻等の要素から月隕石であると結論付けられました。この月隕石は無機物でありながら同質量のヒトと同じ規模の霊体質量を有しており、SCP-3873-JP-Aの霊的リソースはこの月隕石によるものであることが確認されました。

この結果と上記歴史的アプローチで判明した情報より、SCP-3873-JPは安土桃山期に発生した月隕石の衝突に起源を持つと結論付けられました。

アプローチ - 月隕石

上記アプローチによって発見された月隕石を移送しようとしたところ、該当日時が満月及び夜間でないにもかかわらず、複数のSCP-3873-JP-Aが出現し襲撃を行いました。この襲撃は関連人員が撤退した段階で終了したことから従来の攻撃を目的としたものとは異なり、月隕石の奪取に重点をおいたものであることが推測されます。撤退後、月隕石の周囲にはSCP-3873-JP-Aが継続して出現しており、侵入及び移送はSCP-3873-JP-Aへの対応が決定されるまで保留され、監視体制に置かれました。

████/██/██、満月の出現と同時に月隕石表面から水滴が発生しました。この水滴はエーテル様の物質であると推測され、後続調査における採取はその揮発性の高さから失敗しています。水滴の発生を確認したSCP-3873-JP-Aら4は月隕石表面の水滴を撫でるように拭い、数回満月の方向を見上げる仕草を取ると、月隕石を埋める作業を開始しました。月隕石が完全に埋没した後、SCP-3873-JP-Aは消失し、周囲には非異常性のススキが発生しました。このススキには月隕石表面に発生したものと同様の水滴が付着していたことが確認されています。

このアプローチを受け、SCP-3873-JP内部に存在する月隕石の調査は安全な態勢が構築されるまで延期されています。

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