特別収容プロトコル: SCP-3888-JPの収容は現実的でないため、SCP-3888-JPへの対応リソースはその発生による社会への影響を許容できる範囲へと収めることへと向けられています。SCP-3888-JPはVHクラス事象に関連する現象の中では比較的低い優先度であると見なされており、担当職員の業務はO5評議会により発布された指令(現在有効なものは A-37239,C-3196,E-1753,E-2863.)に沿った対処のみが行われます。
説明: SCP-3888-JPはVHクラス事象1の余波として発生し続けている、ヒトの死後意識の異常な転送現象です。SCP-3888-JPの影響下にある人間が死亡した場合、直後に出生した新生児のうち少なくとも1人に対し、死亡した人物に酷似した精神的特徴が確認され始めます。実施された検査の結果、この状態に置かれた新生児の記憶及び人格は死亡した人物とのほぼ完全な連続性を保っていることが明らかになりました。
第二の異常として、SCP-3888-JPの対象となった人物の遺体の近傍にはクラスB霊的実体(SCP-3888-JP-A)が出現します。SCP-3888-JP-Aの外見は転送の対象となった新生児と同一であり、恐らくは強いショックのため常に泣き叫んでいます。当初この霊的実体の出現は独立した超常現象として認識されていましたが、その後各地で報告され始めた"天才児"とSCP-3888-JP-Aとの外見の相似が指摘されたことを発端に関連性が判明し、当報告書へ統合されるに至りました。
既知のSCP-3888-JP発生地点は現時点で世界全ての人類居住大陸に及んでおり、対象となる人物の共通項は新たな実例が発見される度に定義が拡張され続けています。このため、担当研究班の中では場所・条件を問わず現在生存しているあらゆる人間が、何らかの要因でSCP-3888-JPの影響下に置かれているものとの仮説が主流となっています。
補遺I: 現在有効なO5評議会指令の一覧
新生児への記憶処理の停止: VHクラス事象に関連した死者数の増大により先進諸国の新生児のうちSCP-3888-JP影響者の占める割合が30%を突破したことによる薬剤・機材の深刻な不足、及びこれまで看過されてきた脳機能に対する重大な副作用リスクのため。(指令A-37239号)
- 代替措置としてSCP-3888-JP現象を包括した形での正常性の再定義を実行するとともに、一般社会向けにそれらを穏便に受容させるための広域社会プログラムを実施。主要政府との対応戦略決定のための折衝が進行中。
非実体収容房増設計画の中止: VHクラス事象の進行による収容リソースの不足、及び倫理的懸念のため。(指令C-3196号)
- 代替措置としてSCP-3888-JP-Aの無力化を承認。この措置は、1人の新生児に複数の人格が混在した事例と関連すると思われる、身体が複数部位に細断された外見の実体に対して、苦痛の緩和のため優先的に適用される。
ROUETシステムの局所適用: 各国の終末論的不安を背景とした混乱を一時的に鎮静するため。特に、以下に列記する進行中の問題に対し随時適用。(指令E-1753号)
- 大規模な暴動 — 関連死者数の増大及び社会機能の不全により、直接的/間接的にSCP-3888-JPの更なる発生に影響しているため。
- 各国の政治的対立 — 内部人格と国籍が異なる新生児の責任所在に関する議論の紛糾が、VHクラス事象の対応についての国際協調を妨げているため。
- (集団的)自殺の流行 — 自殺や安楽死が実際にはSCP-3888-JPの発生を誘発するに過ぎないにもかかわらず、VHクラス事象に起因した不安・絶望からの最も手軽な逃避手段として喧伝され続けているため。
- 激しい宗教的/信条的対立 — SCP-3888-JPの解釈を巡る既存宗教間の対立と、社会不安を背景とする先鋭化した超常カルトの勃興が財団の対応リソースを圧迫しているため。
- 出産控え・妊娠中絶の流行 — 出産数の減少が副次的な問題を齎しているため。
ヒト科複製機の修復と稼働: 出産数の激減と死者数の更なる増大によって一人の新生児内に多数の人格が混在する状況が恒常化しており、多くの新生児が子宮から摘出された後にもがき苦しむ、意図的な窒息を試みるなどによって自殺しようとしている状況を緩和するため。(指令E-2863号)
- ブライト/ザーションヒト科複製機(BZHR)には明確な欠陥が確認されており、基準を大きく上回る先天的及び遺伝的欠陥の分布により複製された個体の生存能力は約60-75%となっている。これらの欠陥を修復する試みが進められているが、十分な稼働を可能とするだけの財団資産の枯渇は差し迫っている。