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こちらは SCP-3900-JP
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旧SCP-3900-JP 報告書(1999/7/25 更新)
アイテム番号: SCP-3900-JP
オブジェクトクラス: Ogiel1
特別収容プロトコル: SCP-3900-JPの存在は世界各地に普遍的に存在する概念であり、また日本人2の風俗・文化・生活と密接に関わりを持つ事から、財団は当該アノマリーに関して一切のアプローチを行う事はありません。また収容の試みによってSCP-3900-JPに干渉する事は未知の影響を及ぼす可能性を考慮し、遂行される事はありません。
一般社会にSCP-3900-JPに関する情報を流布する事は如何なる場合においても終了処分の対象となります。
説明: SCP-3900-JPは日本国内に存在する「秋」の概念及びそれに付随する自然現象・文化の総称です。SCP-3900-JPはミームに酷似した性質を有し、例年9月後半に発生して以降、11月後半から12月前半まで持続します。
SCP-3900-JPによって引き起こされている事象の例として、
- 落葉樹の色彩豊かな紅葉
- 金木犀の臭気の拡散
- 月の光量の増大(視覚的錯覚)
- 認識可能な可視光(色相)の増大
- 食物の旨味成分の増大(味蕾に作用する催眠効果の一種)
- 摂取可能な食物の発生・増加・成熟
- 一般大衆の精神活動の沈静化
などが挙げられ、日本国内において多様な影響を及ぼし続けています。しかしながら、これらの事象は人体に特段有害な影響を与えることは無く、多くの日本人は、これらの影響を単なる季節的特徴として概ね好意的に受け止めます。
起源: SCP-3900-JPの異常性が発現した明確な時期は不明ですが、その存在を示唆する記録は712年に編纂された「古事記」において秋の稲の豊穣を司る秋毘売神アキビメノカミなる神格としての記述が為されている事から、日本国内において少なくとも1300年以上に渡り流布し続けてきたとされています。
記録以外では、縄文時代の複数の遺跡からは大量の採取された木の実や魚骨・獣骨などの痕跡が発見されており、それらは秋季に採取されたものである事から四季の概念や備蓄などの基礎的な秋の概念が存在していた事が示唆されています。
文化的側面としては、759年には万葉集が成立し、額田王による「君待つと 我が恋ひ居れば 我が宿の 簾動かし 秋の風吹く」を始め様々な秋に関する和歌が知られています。平安時代には国風文化が花開き、十五夜の観月文化の記述がある竹取物語や古今和歌集、枕草子などの秋に関する記述が著名な作品が多数生み出され、SCP-3900-JPが現代に至るまで存続した大きな要因とされています。
江戸時代には食文化が発展し、秋刀魚が一般的な食用魚として普及。9月9日の重陽の節句が庶民に広まり、この時期に採れる栗を使った料理で祝う風習がより一般化する、また蕎麦・寿司・天麩羅などにも秋特有の食材が使われるなど、今に残る風習が構築されました。
発見記録: SCP-3900-JPは財団が進出する以前に、日本国内において異常存在の管理体制を敷いていた要注意団体"蒐集院"3によって発見されました。正確な年代は不明ですが、室町時代に蒐集院の研儀官が蒐集物の研究の為に明4に渡る際、献上品として持ち出されたモミジの木が海上で一瞬のうちに枯れたという文献がSCP-3900-JPを確認した最初の記録とされています。以降、蒐集院ではこの現象を解明する解析室が作られ、日本人が2人以上と共にモミジを国外に持ち出す場合には同様の現象が起きない事・モミジに関わらず落葉樹のみ枯れる事が後に判明しました。1900年代、技術の進歩によってSCP-3900-JPを構成する要素は2人以上の日本人が発する脳波の相互作用である事が判明しますが、第二次大戦によって研究は中断。財団に管理権限が移譲された事でより詳細なSCP-3900-JPの特性が解明される事となりました。
補足: SCP-3900-JPが他国で見られる秋と比較して明らかな異常であると判別できる点として、SCP-3900-JPを観測する事を目的に開発された“藤原式秋季濃度測定器5”(以下、秋季測定器と呼称)が日本国外や2人以上の日本人が存在しない地域において測定不能になる点や、紅葉状態の落葉樹を上記の地域に持ち出した瞬間に枯れる事などが、過去蓄積された多数の実験結果を根拠に挙げられます。
秋季濃度測定器の改良が進んだ事により、SCP-3900-JPの発生源は日本人の脳波の共振作用によるものであると判明しています。現在最も確度の高い説として、それらの共振作用が集合的無意識として昇華し、長い時間をかけて日本人の存在する周囲の自然環境までも変質させるに至ったという説が挙げられます。この自然環境の変質は日本国内に顕著に見られる他、近年では日本国外でも2人以上の日本人が存在する事で周囲の環境にSCP-3900-JPと同様の効果を若干ながら発生させる事も判明しています。この影響の強弱は日本人の人数や共振作用に晒された年数によってそれぞれ異なり、人数や年数が上になる程強くなりますが、異常性の影響範囲についてはデータ毎に全く異なる為に現在も詳細は判明していません。
上記の理由からSCP-3900-JPはその存在を現在まで保持し続けています。
補遺: 近年、SCP-3900-JPの異常性に若干の弱体化の傾向が見られる事が判明しました。秋季濃度測定器による1995年の計測6では、全ての端末で0.3〜2.5Auほどの秋季濃度の減少が報告され、翌年の1996年にも全体的に減少の傾向が見られましたが、1998年には例年の平均と同程度に回復しています。1995年はまた、日本各地で紅葉の発生件数が約21%減少するなどの現象も発生しており、財団がテレビ・新聞などの報道機関に介入し、事態を鎮静化させるに至りました。この年の1月17日には阪神・淡路大震災が発生しており、関連性の有無を含めて調査が進められています。
在原博士・寂蓮博士による提言(2009/12/19 更新)
以下は年々影響力が低下しているSCP-3900-JPについて、その要因となる因子と今後のSCP-3900-JPに対する財団の方向性を提唱した在原博士と寂蓮博士による提言です。
在原博士の提言
SCP-3900-JPの異常性は日本人によって現在に至るまで保たれてきた。しかし、記憶に新しい1995年の震災によって、その安寧は突き崩されたと言っても過言ではない。
テレビや新聞の普及により、それは全国の多くの人々が実感し、恐怖し、支え合う初めての災害となった。それは時を経ても変わらなかった。
そして人々は結果として秋を忘れ、それより大切な救済への道筋について考えたのだ。
私は、1995年の一件はつまり、日本人の脳波が一斉に秋への興味・関心が薄れた事に鍵があるのではないかと見ている。未曾有の災害に陥った時、人は少なからず動揺し不安になるものだ。今回はそれが全国に満遍なく伝播し、人々の間で利他的な精神が強調された事で、逆にそれ以外への意識が軽薄になった。その影響を受けるのは他でもない、SCP-3900-JPだ。日本人の脳波の共振作用によって構成されるSCP-3900-JPにとって、一人ひとりに日本国内の世論が伝播しやすい現代の環境は最悪と呼べるものになったのだろう。
今後、日本人全体の価値観を揺るがすような事態が立て続けに発生し、異常性が弱体化し続けていった場合、日本国内に秋が存在しなくなる可能性は非常に高いと目される。その際の変化はどのようなものになるかは不明だが、日本国内において秋季が消滅すれば夏と冬の気温差によって国内にどんな異常気象が発生してもおかしくはない。紅葉は一瞬にして葉が枯れる現象へ変化し、農作物はまともに育たないまま死滅する可能性もある。影響は未知数ではあるが予測できる範囲でも混乱は避けられないのではないだろうか?国外でも少なくない影響を与えている事も考慮するとSCP-3900-JPは可能な限り現状を維持し続ける必要があると私は考えている。
SCP-3900-JPを持続させるには日本人にSCP-3900-JPを意識し続けさせる必要があり、その為には財団が主体となって政府や各メディアに情報規制を促し、世論及び日本人の脳波の共振作用が安定した状態を保つ事が必要である。もしSCP-3900-JPの弱体化が更に進行した場合、最悪は広範囲記憶処理作戦の発動も視野に入れて財団日本支部は動くべきであると考える。
寂連博士の提言
SCP-3900-JPの弱体化は一時的なものである。
第二次大戦の際には農作物の減少や紅葉の減少などが発生したという報告も少数ではあるが確認されている。しかしながら1950年代には秋季が大戦以前と何ら変化なく復活しており、震災以後も2年が経過すればほぼそれ以前と変わらない数値に戻った。
つまりSCP-3900-JPの異常性は、人の集合的無意識に変動が起きた際にのみ発生する一種の誤作動のようなものなのだ。
これらを踏まえ、SCP-3900-JPの弱体化は自然な働きであり、今後何らかの事態により、日本人の価値観が一変するような出来事が発生したとしても、それは一時的な変動に収まる。もし消滅したとしても大きな混乱は起きず、秋という認識を再度流布させ、世論を沈静化させる事で元の状態に戻ると推測している。
現状財団が取れる行動としては各メディアの統制と緊急事態に備えての情報の流布のみである。それ以上はSCP-3900-JPの自然な働きを阻害する可能性がある為に行使しない事が望ましいだろう。
関連事象タイムライン(2039/9/28 更新)
発生年 | 詳細 |
---|---|
紀元前1万6000年〜紀元前1000年前頃 | SCP-3900-JPの形成初期段階と目される。 |
712年 | 古事記が編纂される。秋の稲の豊穣を司る神格の秋毘売神アキビメノカミが記述されている事から、SCP-3900-JPの異常性はこの頃には既に機能していたと目される。 |
759〜780年頃 | 万葉集の成立。 |
900〜1100年 | 国風文化が花開く。秋に関する著名な作品が多数生み出される。観月文化が芽生える。 |
1600〜1800年代末期 | 食文化の目覚ましい発展。 |
1942〜45年 | 第二次世界大戦に日本が参戦。戦時中の蒐集院の記録から、SCP-3900-JPの異常性の弱体化を示す記述が複数発見されている。 |
1950〜60年代 | 財団にSCP-3900-JPの管理権限が移譲され、SCP-3900-JPのより詳細な観測のために藤原哲蔵博士らが藤原式秋季濃度測定器の初号型を完成させる。これにより明確な観測が可能となる。秋季濃度が最大を迎える時期が11月16日である事が判明し、最も高数値となった1956年の数値を100Auに指定。 |
1985年 | オーストラリアにて開催されたフィラハ会議をきっかけに世界的な地球温暖化に対する問題提起が行われるようになる。この年の秋季濃度の最大値は86.47Auであり過去最低の数値を更新した。詳しい関連性は不明。 |
1995年 | 阪神・淡路大震災の発生。関連性は不明だがこの年秋季濃度の最大値が82.23Auと大幅に低下。 |
1999年 | SCP-3900-JPの報告書第4版が纏められる。これ以前の記録は蒐集院の管理方法と同一であった。第二版以前の記録は第二次大戦で消失。 |
2009年 | 在原博士と寂蓮博士によるSCP-3900-JPへの提言が発表される。秋季濃度の最大値は85.25Au。 |
2011年 | 東北地方太平洋沖地震、並びに福島第一原子力発電所のメルトダウンが発生。東北・関東地方の秋季濃度測定器の端末が一部機能不全となる。テレビ・SNS等の各メディアにより被害状況が拡散し、この年の秋季期間は過去最低の45日を更新する。これは秋と認識される日数の合計を表すため、観測史上最も秋が短い年であると言える。この年の最大値も77.10Auと過去最低を更新。 |
2020年 | 秋刀魚などの漁獲量が日本の周辺国の乱獲や温暖化の影響等で減少し市場の相場に混乱が見られる。この年の最大値は78.62Au。 |
2021年 | 新型コロナウイルスのパンデミックにより国内で外出制限が行われる。この年の最大値は69.49Auと最低値を大幅に更新した。 |
2026年 | 新型の秋季濃度測定器である九号型が開発。より精密な秋季濃度の測定が可能になる。秋季の旬の食べ物について全国各地の2000人を対象に調査した所、秋刀魚が秋の魚である事を認知していない人物の割合は36%を超えた。これは2020年以降続く秋刀魚の乱獲や個体数の減少が影響し、秋刀魚への関心が薄れている事によるものだと推定している。この年の最大値は77.11Au。 |
2028年 | SNS上で発生したエコテロリズム団体による運動が破壊活動に発展し、国内の主要な森林観光地に放火する事態が発生する。国内の落葉樹に大きな被害が見られ、一部で財団の機動部隊が派遣される事態に陥った。国内でテロ活動への反対意識が強まる。この年の最大値は54.09Auと過去最低を更新。国内にはカバーストーリー「地球温暖化」が流布される。 |
2031年 | ホルムズ海峡でイランと欧米・湾岸アラブ諸国との間で戦争が勃発。日本へのエネルギー資源の供給が滞り、国内の不満が高まる。全国で紅葉を目的にした観光客が前年度から31%減少する。この年の最大値は69.08Au。 |
2033年 | エネルギー資源の輸入の停滞で国内の輸送能力が大幅にダウン。各地で食物不足が報告される。世界各国で同様の現象が発生した為、財団本部は各国政府との調停に追われる形となった。この年の最大値は66.57Au。 |
2039年 | 富士山噴火。東海地方以北で農作物の記録的な不作。この年の最大値は59.13Au。 |
音声記録(2040/1/16 更新)
2040年1月13日。SCP-3900-JPの影響に関して関係者各位を交えての討論会が行われました。以下はその際の記録です。
会議 2043/1/13
議題: SCP-3900-JPについての財団の今後の対応について。
主要な会議参加者: 在原恒喜ありはらつねよし博士、寂蓮じゃくれん博士、日本支部理事 獅子、三葦一郎太撮影長
<録音開始>
進行スタッフ 本日はお集まりいただきありがとうございます。議題は皆さんご承知の通り、弱体化しつつあるSCP-3900-JPについての今後の財団の対応についてです。本日は長らくSCP-3900-JPの専任スタッフとして尽力されました在原博士、寂蓮博士。日本支部理事会より獅子理事。SCP-3900-JPの実態調査のため各地を巡ってのフィールドワークに務められた三葦撮影長にご出席いただき、今後の次第を決定するものでございます。皆様よろしくお願いいたします。
[各位、軽くお辞儀]
進行スタッフ: それでは在原博士からお願いいたします。
在原博士: はい。
[在原博士、軽く咳払い]
在原博士: 皆様もご存知の通り、先日の富士山の記録的な噴火により国内の自然環境や農作物は相当のダメージを受けました。これにより日本人の不安・不満は徐々に高まっています。結果、人々は秋への関心を無くし、秋季濃度は低下の一途を辿っている。私が30年ほど前に提唱した通りです。日本人が秋を忘れる事で、SCP-3900-JPの効力は弱体化する、と言ってよいでしょう。
在原博士: 私はここで改めて提唱します。財団日本支部は、SCP-3900-JPのこれ以上の弱体化を防止する為に動くべきではないでしょうか。
[しばしの沈黙]
寂蓮博士: それは早計というものでは?
在原博士: どういう事です?
寂蓮博士: 正直、最近の世界情勢や自然災害は日本人から秋を楽しむ余裕を無くすのには十分に逼迫した状態と言えるだろう。SCP-3900-JPの根源は日本人の思考の総体。ならば疲弊した状態にある日本でSCP-3900-JPがその効力を失いつつあるのは自然な状態と言えるのではないか?
[しばしの沈黙]
在原博士: 可能性はあるでしょう。
寂蓮博士: 財団はこれまでSNSや各メディアにてSCP-3900-JPの異常性保持を目的にした「秋」に関する情報の流布や火災によって消失した森林地域の保全などを行ってきた。現在の財団がSCP-3900-JPの現状維持を行えているかについては確かに議論の余地があるだろうが、しかしこの状況下において過度な干渉をすれば、財団が一国に肩入れする事態に陥りはしないかね?
日本支部理事 獅子: 財団としてはアノマリー保全のためとはいえ、日本に対して外交上有利に働く様な権力の行使は容認できない。財団の各支部はあくまで中立な立ち位置であり、その理念は日本支部も同じ。財団は国に阿る存在では無い。
在原博士: 財団の理念は私も重々理解しているつもりです。しかしこのままではSCP-3900-JPの異常性が消失する可能性もあります。保護の理念の観点からも私はあえて干渉する道を提唱します。
[しばらくの沈黙]
会議参加者: 発言の許可をいただけますでしょうか?
進行スタッフ: はい。どうぞ。
会議参加者: 今後SCP-3900-JPの異常性が弱まり続けた際、結果的にどういった影響が出るとお考えでしょうか?
寂蓮博士: 私の一考察としてならばお答えしよう。
会議参加者: お願いします。
寂蓮博士: SCP-3900-JPの異常性の減衰によって最も変化を感じられるのは気候だ。有り体に言えば夏季と冬季の境が段々と消えていくという事だからな。夏の陽気から一転、翌日には吹雪という事態も有り得るかもしれん。まあそれは一時的なもので、SCP-3900-JPを構築する日本人が根絶するわけではないのだから、人々が秋を認識している限りは自然と元の状態に戻るのではないかと考えているわけだがな私は。
[小さな喧騒]
寂蓮博士: 在原博士。君はどうだね?
在原博士: 最も恐るべきは異常性が喪失した後、日本人の脳波の共振作用がどのような影響を及ぼすか、という部分にあります。一つの季節を2000年以上構築し、自然環境をも変質させるほどの作用が、その力を向けるべき対象を失った瞬間にどうなるのか。我々にとっては完全に未知なのです。それを黙って見届けるほどの余裕は無いと私は考えています。
日本支部理事 獅子: ……確かに。過去、SCP-3900-JPを蒐集院が管理していた時代には、管理業務は各地の紅葉状況を監視する程度であった。故に現在のこの状況はかなり逼迫していると言える。
会議参加者: 私からも宜しいですか?秋に関する関心を強く広く国内に伝搬できれば解決するのではないですか?
在原博士: 可能性は低いでしょう。秋を強く認識し続ける事はつまり、秋の事以外に割く脳のリソースを大きく減らす事になります。そうなれば日本の政治・経済は混乱するでしょう。ただでさえ富士山の噴火で追い詰められているこの状況下では日本の現状すら守れなくなります。行うとすれば、それはSCP-3900-JPの異常性が保てなくなった時です。
会議参加者: それは記憶補強剤のような薬剤の散布も同様ですか?
在原博士: 財団の多少の介入がありながらこれほど異常性が弱体化している事を鑑みると、恐らく長続きはしないでしょうね。
進行スタッフ: お三方、ありがとうございます。三葦撮影長、各地を巡ってきた経験をお持ちの貴方からも一言お願いします。
三葦撮影長: はい。
[マイクのハウリング]
三葦撮影長: 先ほど獅子理事よりお話があったように、各地の監視業務は時代錯誤もいい所の古典的な管理手順です。なので自分から言える事などたかが知れていますが、幾つかのデータと所感を述べさせていただきます。まず近年特に見られるようになったのは、秋季濃度の異常低下についてです。一夜にして濃度が5.0Au以上低下するという事例は、ここ2年間で52件以上発生しています。これは財団の観測史上でも類を見ない出来事です。同時に人々の秋に対する関心の低さも強く感じましたね。フィールドワークでお尋ねした2347人の回答者のデータを纏めた所、実に19%が紅葉という現象について「知らない」と報告しました。
三葦撮影長: 次に秋季濃度測定器と各地の自然環境との相関関係についてですが、ほぼ正確に気候状態などを反映できていると感じました。濃度が低下した地点では落葉樹が全く紅葉していなかったり、逆に枯れていたり、月の目視でのサイズも季節的な変化は見られませんでした。最高気温も12℃前後とかなり冷え込んでいましたね。
日本支部理事 獅子: そうなるとSCP-3900-JPは、日本の秋は、確実に消滅していっているという事なのか。
三葦撮影長: えぇ。自分の所感も一部含まれている事は否定できませんが。
三葦撮影長: 話を戻します。私は秋季濃度が低下している複数の地点に赴き、その付近の様子を確認してきました。その地点は秋季低下の前日までは比較的高い濃度を測定できていました。濃度が急激に低下したその日に私はそこへ飛んで行きました。愛知県豊田市の香嵐渓と呼ばれる場所です。本来ならモミジの美しい場所ですが、そこにあったのは葉の散り切った裸同然の木々だったんです。数時間前にライブカメラで確認した時点で赤や黄に色付いていた森がですよ?
三葦撮影長: それだけじゃ無い。散った葉を隈なく観察しましたが、それらは全て朽ちかけていたんです。状況から確認できる限りだと、そこでは1日で葉が散り、そして朽ちたとしか考えられなかった。恐らくですが、SCP-3900-JPの弱体化によって秋の期間が短くなっているだけでなく、夏から秋、秋から冬への移行期間すらも急激になっているんです。もしこのまま秋が短くなれば、先ほど両博士が述べたように異常な気候変動や温度低下が常態化する可能性は十分に考えられます。確実に言える事は、これが明らかな異常事態であるという事です。
在原博士: ありがとう三葦くん。さて、私はこの場を借りて財団、いえ、財団日本支部によるSCP-3900-JPの異常性保持を目的に「アントゥジャスト・プロトコル」の発動を視野に入れたより強いアプローチを提案します。長らく日本に根付いたSCP-3900-JPを弱らせ続ける事は何かしらの歪みに繋がる可能性が高い。このままでは未曾有の事態が起こることも十分にあり得るのです。
寂蓮博士: 馬鹿な!この情勢不安定な中でのアントゥジャスト・プロトコルなど以ての外だ。人々は消えゆく秋について異常なまでに考えるようになるぞ?アンニュイの逆、人にそれが異常であると認識させる。それこそ人が秋の期間が短く、いつの間に終わっている現状を疑問に思えば無意識領域にも影響はするだろうさ。だがそれは我らが今まで侵した事のない禁忌。それこそ君の言った季節を構築しうる力を別の何かに向けてしまう可能性もあるのではないかね?
在原博士: それほど状況は逼迫しているのですよ寂蓮博士。私も馬鹿ではない。今この状況でしてはならない事くらい分かっていますとも。あくまで戦後の最終措置としての話です。私もそれまでに調整を随時行なっていく所存です。
[少しの間]
寂蓮博士: どうやら狂っていないようで何よりだ。……では私も提案しよう。SCP-3900-JPの保全手順はあくまで現状を維持し、異常性の回復を待つ。刺激を与える事は日本人の脳波の共振作用に異常をきたす恐れを含み、最悪日本人全員を道連れにしかねない。もし異常性が喪失しようとも、秋という存在を認識させれば復元する可能性はあるだろう。
進行スタッフ: ではこの場にいるSCP-3900-JP関係者全員で採決を取ります。
[省略]
進行スタッフ: それでは発表します。SCP-3900-JPへの対応について、賛成者多数により寂蓮博士の現状維持を主体とした案が採用されました。しかし在原博士への賛成者も少なくない為に協議の結果、折衷案として「サブリミナル効果を用いたSCP-3900-JPの間接的な広報活動」及び「異常な濃度の低下が発生した際の微量な記憶補強剤の散布」を含める事を結論としてこの度の会議を終了させて頂きます。最後に獅子理事よりお言葉を頂戴いたします。
日本支部理事 獅子: うむ。
日本支部理事 獅子: 「秋」の存続は貴殿らの双肩にかかっている。人々の愛するものが消える事は如何に重大で恐ろしい事なのか、私たちは誰よりも識っている筈。この世に不変のもの、消えないものなど存在しないが、それでも私たちは抗い続けなければならない。
日本支部理事 獅子: 確保・収容・保護。今一度原点に立ち返り、己が使命を全うせよ。
<録音終了>
財団日本支部 危機管理部門からの通達(2046年6月1日 更新)
財団日本支部 危機管理部門より通達
2046年6月1日、日本時間13時22分08秒。関東地方、東海地方、関西地方、中国・四国地方、九州地方で地震が観測されました。震源の深さは約400km、地震の規模はM9.3。震源は駿河湾沖から日向灘までの広い範囲である事から、当該地震は南海トラフ地震であると推測されます。
現在、東海地方から九州地方にかけて最大21mの津波が到達する事が予測されています。
現在、関東・中部・関西・地方の主要な都市は機能を喪失。国内の主要幹線道路は全面的にダウンしています。
財団日本支部全施設の全職員は負傷者の救護及び収容されているアノマリーの状況確認を行い、アノマリーの収容違反が確認された場合は如何なる手段を用いても確保してください。現在収容違反が確認されているSCP-████-JP、SCP-████-JPの確保には、財団本部より派遣された機動部隊β-11「聖歌隊」が当たっています。北海道地方および東北地方の出撃可能な機動部隊全隊は直ちに各地方の支援にあたってください。
— 財団日本支部理事 獅子
— 財団日本支部 危機管理部門 神田篤宏管理官
SCP-3900-JP 関連事象タイムライン(2078/12/5 更新)
発生年 | 詳細 |
---|---|
2046年 | 南海トラフ地震が発生。死者11万2987人、行方不明者2万7767人、負傷者54万2811人。収容違反したアノマリー 43種、異常性を喪失したアノマリー 2種、行方不明のアノマリー 3種(現在捜索中)。財団がアノマリーの対応に追われた事で情報統制が間に合わず、各メディアにて被害状況が報告される。首都の機能が崩壊した為、宮城県仙台市に首都が移転する。SCP-3900-JPの保護の観点から日本国内に微量な記憶補助剤が散布される。この年の最大値は21.14Au |
2047年 | 幹線道路のダウンにより流通および経済が麻痺。国内の不満が高まる。暴徒と化した一般人が仙台市の仮設国会にて自爆テロを行う。財団の機動部隊が即座に残党の鎮圧に向かった為に被害は軽微なものとなったものの、政府とのSCP-3900-JP関連事項の擦り合わせを行っていた寂蓮博士がテロに巻き込まれ殉職。享年79歳。この年の最大値は32.56Au。記憶補強剤の効能によるものだと目される。 |
2051年 | 世界最大の油田であったサウジアラビア ガワール油田が枯渇。バイオマス燃料や水素を用いた発電方法に注目が集まる。これにより日本の自動車メーカーの世界総売上が自然災害に端を発する円高も相まって前年度を大きく下回る。この年の最大値は26.99Au。在原博士が死去。享年86歳。 |
2053年 | 京都府・大阪府にて秋季濃度が測定不能。エージェントにより、当該地域内では紅葉するはずの落葉樹は全て青葉もしくは枯葉の状態で発見され、大気中の水分量や塵は夏季と同等以上に上昇していた事が報告される。計測不能になった詳細は不明。同年、全国3900人の日本人を対象に秋季に関するアンケート調査を行った所、回答者の65%が秋季に関する正確な知識を十分に有していないと判断された。特に顕著だったのは京都府と大阪府の回答者で、正答率は10%を下回った。 |
2056年10月22日 | SCP-3900-JPが急激に活性化。秋季測定器の最大値が急激に上昇する。一時的に最大値が77.65Auまで増大。これにより国内で落葉樹が瞬間的に紅葉へ変化する、太平洋上に存在していた台風15号が消滅する、金木犀の臭気の発生などが確認された。原因不明。 |
2057年 | SCP-3900-JPの急激な発生は確認されず。この年の最大値は37.10Auと若干増大。前年の秋季の異常発生により日本人の関心が高まった為であると推測される。 |
2065年 | 白神山地にて大規模な落葉樹の枯死が確認される。当該現象を観測されたのは9月であったにも関わらず同地点では積雪が確認された。この年の最大値は17.77Au。 |
2067年 | 秋季の期間が14日間となる。過去最低の記録。四国・九州地方で秋季測定器が一切の電波を感知できず。観測衛星・ライブカメラ・エージェントによるフィールドワーク等で得られた情報から、当該地域で秋季の気候・要素は全く確認されなかった。この年の最大値は15.73Au。 |
2069年 | 前年度に続き四国・九州地方で秋季を測定できず。当該地域において秋季は消滅したと結論づけられる。この年の最大値は12.12Au。 |
2071年 | 財団職員を対象にしたアンケートにて、日本人の職員のみに秋に関する認識の大幅な欠如が共通して見られる。該当調査においても日本人にのみ共通して同様の症状が確認された。財団職員にはSCP-3900-JP及び秋に関する講習が必須事項として取り入れられ、各都市のサブリミナル効果発生のための諸事業が強化される。この年の最大値は12.00Au。 |
2072年 | 中部・関西・中国地方で秋季測定器が電波が感知不能になる。四国・九州地方と同様、当該地域で秋季の気候・要素は全て消滅していた為、秋季は消滅したと目される。この年の最大値は7.87Au。 |
2073年 | 関東の秋季が消滅。関東以南の夏季・冬季の気温差によって起こる気圧・気団の変化が日本国の領土20km以内とそれ以外の地域とで干渉していない事が判明する。この年の最大値は7.01Au。 |
2075年 | 岩手県・秋田県以南の地域から秋季が消滅。 |
自動メッセージ(2077/12/6 更新)
2077/12/6
緊急通知
国内の秋季濃度測定器は今期、全端末が測定不能を報告しました。
この事から、SCP-3900-JPの異常性が完全に消失した事が確認されました。
日本国に秋は存在しません。
SCP-3900-JPの認識保持の為、財団日本支部理事の命令の下、現時刻を以てアントゥジャスト・プロトコルが発動されます。
担当職員はこれよりSCP-3900-JPの動向を24時間態勢で調査・監視し、変化が確認された場合は速やかに上層部に報告してください。また財団日本支部全関連施設にアントゥジャスト・プロトコルの発動を報告し、記憶補強効果による副次的なアノマリーへの影響を最小限に抑えるよう適切な処理を促してください。
SCP-3900-JP 報告書(2078/12/13 更新)
アイテム番号: SCP-3900-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-3900-JPの異常性は現在進行形で全世界に影響を及ぼし続けています。この内、月の公転軌道の変化についてはカバーストーリー「小惑星の大規模な衝突」が全世界に流布されています。
担当職員はクラスW記憶補強薬を1日3度投与し、異常性変質以前の記憶を保持し続けなければなりません。何らかの原因により投与が行われなかった場合、当該職員には再度SCP-3900-JPに関する知識を教育する必要があります。
現在までにSCP-3900-JPの異常性を2078年以前の状態に回帰させる全ての試みは失敗しています。現在、科学的検知から共振作用に干渉する方法を検討中です。
説明: SCP-3900-JPは日本国内にかつて存在した「秋」の概念及びそれに付随する自然現象・文化を構築する日本人の脳波の共振作用です。SCP-3900-JPはミームに酷似した性質を有し、かつては9月後半〜12月前半に秋を発生させる異常性のみを有しました。
2078年の異常性の消失後にSCP-3900-JPは再度活性化しましたが、それによって引き起こされる事象は異常な形に変質しています。
SCP-3900-JPによって引き起こされている事象の例として、
- 落葉樹・常緑樹問わず全ての樹木の紅葉
- 芒の大量発生
- 屋内外問わず発生する金木犀の臭気
- 月の接近
- 摂取可能な食物の異常発生・増加・成熟及び可食部の増大
などが挙げられ、日本国内において多様な影響を及ぼし続けています。
特に月の接近については、月の公転軌道が日本列島上空を中心にして歪曲するように変化しており、これによる潮汐力の変化から、日本国内では523の市町村、世界各国では1718の都市が海に沈み、急激な気候の変化や地震・噴火が各地で相次ぐ結果となりました。
また食物に関しては、日本近海で海中の魚類が、秋刀魚・イナダ・秋鮭・スズキ・アジ等の秋魚として知られる魚類への変換、田畑における種苗が存在しない状態からの農作物の結実、食物に含まれるグルタミン酸やイノシン酸、グアニル酸等の旨み成分の異常な増大等の変化が報告されています。
しかしながら全ての日本人は、これらの影響を単なる季節的特徴として概ね好意的に受け止めます。この認識はSCP-3900-JPに関連する事象を視認した際に発動し、影響する過程で異常性変質以前の記憶を上書きする形で行われます。
SCP-3900-JPが変質するに至った理由は明確に判明していませんが、SCP-3900-JPの異常性消失直後に発動された「アントゥジャスト・プロトコル」が関連しているという説が有力視されています。これは、長期的に正確な形の秋季を観測できず、関心を無くしていた日本人に、秋季の消失が異常であると認識させた事で、脳波の共振時に本来の形とは異なる知識が強く共有されたのではないか、とする説です。
財団は当該事態を沈静化させる事を目的に「アンニュイ・プロトコル」を発動させましたが、国外に秋の概念が存在する事、歴史的・国語的観点における秋の関連項目の過多から失敗に終わっています。
SCP-3900-JPの異常性が2078年以前の状態に回帰した事例は現在まで確認されておらず、また財団による人為的な異常性の改変も成し得ていません。
SCP-3900-JPの異常性を回帰させる試みは続けられます。
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子供の頃。父に連れられ見に行ったモミジの紅色は、今でも鮮明に覚えている。穏やかな太陽の光に照らされ、青い空にかかる幾つものそれは子供心に驚くほど綺麗で、それが世の理を超えた異常によって作られたものであっても、極彩色のコントラストは私に世界の美しさを教えてくれた。
しかし日本は、世界は変わってしまった。
SCP-3900-JPの管理官として、私はここに記さなければならない。
本当に申し訳ない。
SCP-3900-JPの変質を阻止できず、日本の無辜の人々を巻き添えにしてしまった。とはいえ、それを認識している人間はもうこの世界にごく少数だ。本当の意味で秋を知る者も、また同様に。
私や一部の職員のように、定期的にクラスW記憶補強薬を投与しなければ変質以前の記憶を忘れてしまう。
あまりに暴力的で悪辣だ。未だ私の頭の中では、SCP-3900-JPを更なる異常へ至らないようにするにはどうすれば良かったのかを思考し続けている。
もしサブリミナル効果などでなく、もっと直接的にかつて長らく続いていた秋の姿を思い起こさせていたら如何だったか?そうすれば日本の秋は消える事なく残り続けたのでは無いかと。
もしアントゥジャスト・プロトコルを発動していなかったら如何だっただろうか?消えゆく秋を異常だと思い込ませるためのこのプロトコル。これが人々の「消えてしまった秋」をもう一度望む想いに強く作用し、今なお日本や世界すら蝕むSCP-3900-JP変質の原因となったのでは無いかと。
今更そんな事を考えた所で、残された時間が伸びる訳でも無いというのに。
これを見ている罪無き無知なる同志よ。君は恐らくこう考えている事だろう。今の秋は素晴らしい季節だ。食べ物も獲れるし月は美しい、金木犀の香りをどこでも感じられる。その何がおかしく、異常で、恐ろしいのかと。それを消してしまうなど何と愚かな事だろうと。
しかし、かつての異常によって作られた秋を知っていた私にとって、それは偽りにしか思えない。薄っぺらで中身のない、ただ綺麗なだけの代物だ。
私の知る秋は、日本人によって作られた秋は、
全てに儚さがあった。
全ての人に優しかった。
そして、今よりずっと綺麗だった。「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉を知っているだろうか?秋分の日から数日を過ぎれば秋がやってくる。私の小さな頃の認識はそんなものだった。夏の暑さが落ち着いて、過ごしやすくなってくる。ゆったりと変わり流れゆくその日々が、何とも言えない物悲しさと安らぎを与えてくれた。
本当の金木犀の香りを知っているか。ほんのりと甘い香りがふとした瞬間に風に乗って漂いながら、私を優しく包み込んでくれる。秋の訪れを感じるのはいつもそんな瞬間だった。少し肌寒い風は、一層その香りを強く感じさせてくれた。
秋刀魚の美味しさを知っているか。何処のどんな魚が変質したのか見当もつかぬ改変された魚ではない。本物の秋刀魚だ。プリプリと脂の乗ったそれを炭火で焼けば、香ばしい匂いが辺りを包み、嫌が応にも食欲を掻き立てられる。少し焦げ目が付く程度まで焼き上げたそれに檸檬やおろしポン酢をたらして口に運べば、皮はパリッ、中はしっとり。噛む度に脂の甘みが溢れ出す。檸檬は爽やかな酸味と香りで身の旨みを引き立たせ、さっぱりとしたおろしポン酢は脂のしつこさを抑えつつその魅力を何倍にも引き立てる。そこに白飯や酒があれば実に最高だ。これ以上の贅沢は無いだろう。
いずれにせよ一家団欒で秋刀魚を楽しんだひと時は、随分と懐かしい筈なのに昨日の事のように思い出せる。
また、もう一度食べたかった。
秋は、確かにこの国にあった。
かつての日本、仄かな温もりの溢れたこの地に。
日の光を透かし、青空に輝く紅葉。
夕日を背に、風に靡く芒。
季節の移り変わりを知らせるアキアカネ。
深みを増し、見る者を立ち止まらせる空の色。
黒い夜空に浮かぶ、真っ白な月。
日本人は、かつてそれらを「秋」と呼んだ。
成り立ちこそ異常だが、日本人はそれを愛した。
それが何よりかけがえのないものだったから。
本当に、本当に。
君にはどうか、いつまでも忘れないでほしい。
この国には、秋があった事を。
どんな国のどんな季節より美しい、ここにしかない秋があった事を。
私たちは進む。
私たちは忘れぬ。
私たちが愛した、異常で素晴らしい本当の秋を取り戻すまで。
— 在原巧 SCP-3900-JP担当管理官