SCP-3908-JP
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アイテム番号: SCP-3908-JP
収容クラス: Memet1
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レベル3/3908-JP
機密

SCP-3908-JPの認識は原則禁止されています。


特別収容プロトコル: N/A

説明: SCP-3908-JPはタイプB-クラス5反ミーム特性2を有する夢です。その特性上、SCP-3908-JPについての記憶は経験者の記憶野に正常に残留するものの、経験者はSCP-3908-JPの内容を想起することができません。本稿執筆時点においてSCP-3908-JPの発生条件は不明であるものの、これまでに確認されている発生時点での年齢は8歳から61歳にまで及びます。標本調査の結果、SCP-3908-JPの経験者は世界人口約87%に及ぶと結論付けられました。

SCP-3908-JPの経験者がクラスZ記憶補強3などの手段によってSCP-3908-JPの内容を想起/認識した場合、経験者は自殺を試みるようになります。この作用への対抗手段は本稿執筆時点において存在しません。

















通知

あなたはプロトコル・フォビターの対象者として立候補しています。自動記憶野走査の結果、あなたはSCP-3908-JPを経験していないことが判明しました。このため、あなたはこれよりクラスZ記憶補強を受けたうえで、夢界投影によりSCP-3908-JP実例を認識する必要があります。

プロトコル・フォビター開始の準備が整い次第、速やかに入眠してください。担当職員が、あなたにクラスZ記憶補強およびSCP-3908-JP実例の夢界投影を行います。なお、入眠の際は睡眠薬などの使用が許可されます。

プロトコル・フォビターが完了し次第、あなたは終了されます。



……

………



約束の日が近づいている。これから私、ピーター・グレイは命を絶つ。

生存者は凄まじい勢いで減少しており、肉体を持つ者たちは次々に己の命を絶っている。情報災害の専門家とさえ呼ばれた財団でさえも、この事態に対してまともな対応ができずにいる  そもそも、対応するための人員が次々に命を絶ってしまうのだから仕方ないことと言えるだろう。そして、いずれ私もそこに加わることになる。

SCP-3519。考えうる限りで最悪の、絶対的な衝動を伴ったミーム感染。有効な対抗ミームは現時点で存在せず、財団職員も含めた数多くの人類を食らい続けている1つのアイデアだ。

しかし、どんなに最悪なミーム感染であれ、極めて単純な対処法がある。それは、人類の死滅だ。人類がいなくなってしまえば、感染するミームそのものがなくなってしまう。そうすれば、永遠にミーム感染は起こらない。幸い、その道はSCP-3519自身がもたらしてくれている  自殺という形で。そしてさらに幸いなことに、我々にはSCP-2000という文明の再構築装置がある。人類を一旦死滅させてしまい、その後にブライト/ザーションヒト科複製機によって感染していない新たな人類を生み出して文明をもう一度辿らせれば、それでミーム洗浄は完了する。MK-クラス世界終焉シナリオに対する、実にシンプルな回答だ。

無論、これはあくまで最悪の場合の措置だ。人類のリセットという選択肢は、あくまで最終手段として用いられなければならない。我々の目標はあくまで保護だ。人類の、そしてSCiPの保護。一旦とはいえ、人類を死滅させる選択肢をそう易々と選ぶわけにはいかない。

しかし一方で、我々はその「最悪の場合」を無視してはいけない。そのための準備と、それによって発生する不都合への対応。それが、私を含めたチームに与えられた任務だ。つまり、はなから我々チームには「英雄たれ」などという使命は託されていないのだ。笑いたくなるような話だが、笑っている暇もなかった。

私は、ファウンデーション・コレクティブの一員として、やるべきことをやってきたつもりだ。

我々チームに与えられた使命とは、SCP-3519の元型化を防ぐというものだ。元型というのは、一言で言うと夢を作り出す源である。夢のマクロなイメージの全ては元型に由来し、これゆえにヒトは己の経験に由来しない要素  太母に老賢人、トリックスターといった元型由来の要素を夢に見る。

そして、この元型というのはある種ミームのいち形態というべき関係にある。すなわち、ミームが自己複製するにあたり、その抽象的な要素が元型に写し取られ、それが次世代のミームに夢として投影されることで複製が行われるのだ。つまり、人類のミームの影法師こそが元型なのである。

そして今、人類全体に凄まじい勢いでのミーム感染が起こっている。そう、SCP-3519だ。このままでは、新たな元型としてSCP-3519が集合的無意識に刻まれ、BZHRによるヒト科複製が行われたとしてもまた元型由来でのミーム感染が発生してしまう。SCP-2000による人類史のやり直しを行うにあたって、我々は永久に2019年3月5日を越えられない無限ループに陥る可能性があるのだ。

そこで、FCの出番というわけだ。我々は何とかして、集合的無意識にSCP-3519が元型として刻まれないよう阻止しなければならなかった。そのために、持てる全てのリソースを費やして、FCは努力した。幸い、SCP-3519は肉体を持つ者にしか作用しない。オネイロイ  肉体を捨てた一部の夢の住人たちにとっては、SCP-3519はただの終末論でしかない。だからこそ、FCはSCP-3519への種々の対応を担っていた。

しかし、そのFCの力をもってしてもなお、その直接的な収容自体は間に合いそうもなかった。そして、SCP-3519の元型化もまた防げそうになかった。全てが後手後手だった。

だからこそ、我々チームは最後の悪あがきをした。

反ミームフィルター。もはや適用しようもないほどにメディアに拡散してしまったSCP-3519に対しては、本来有効ではないはずの手段。我々チームはそれを、SCP-3519の元型に適用することにした。こうして、誰も思い出せない夢を投影する元型が出来上がった。きっと、近い将来それは何某かの番号を割り当てられ、表向きは自己収容特性を持った夢として何らかの対応をされるのだろう。

これで、我々の仕事は終わった。世界は着実にMK-クラスへと突き進んでおり、それを止める術はこちら側にない。後は、ただ黙って世界の終わりを待つだけだ。

そして、その前に私にもその「終わり」の時がやってきたようだ。今、私がいるのは現実で勤めていたフロント企業の屋上。ここから飛び降りれば、私はSCP-3519に導かれるまま自死を迎える。そして、この体験もまたSCP-3519の元型に写し取られ、誰も覚えていられない夢として投影されていくのだろう。

ファウンデーション・コレクティブ、我が生涯の勤め先。全人類の死滅によって夢界が失われれば、オネイロイであろうと無関係に全員が滅ぶことになるだろう。そして、人類史のやり直しにあたってFCは再構築される。

再構築されたあなたたちがこの夢をどう使うのかは知らないし、さしたる興味もない。ただ、もしこの夢が意図的に投影されるようなことがあれば、この言葉だけは残させてほしい。

死ぬには持ってこいの曇り空だ。



………

……



通知

プロトコル・フォビターが完了しました。現実のあなたの肉体は終了され、あなたはオネイロイ化されました。

ようこそ、ファウンデーション・コレクティブへ。あなたの再就職を歓迎します。
















アイテム番号: SCP-3519-ARC
収容クラス: Euclid
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レベル4/3519-ARC
機密

特別収容プロトコル: これまで集積された情報から、SCP-3519-ARCは2019/03/05をもって無力化するものと推定されます。SCP-3519-ARCの無力化に伴い、SCP-3519-ARCの元型における反ミームフィルターの維持業務は停止される予定です。

説明: SCP-3519-ARCは、本稿執筆時点において対抗策の存在しないミーム感染です。このミーム感染は、2019/03/05に世界の終わりが来るということ、そしてその事象が発生する前に自殺するのが望ましいということへの強い確信から成っています。

SCP-2000の起動により、残存するSCP-3519-ARCの能動的発信媒体は集合的無意識内の元型のみとなっています。当該元型は反ミームフィルターによって現在隠匿されているため、現存人類にSCP-3519-ARCの感染が発生する蓋然性は極めて低いものと推定されます。

また、SCP-3519-ARCは肉体的な自殺を誘引するものであるため、オネイロイに対しては重大な影響を及ぼしません。このため、SCP-3519-ARCに関する情報の閲覧が許可されているのはオネイロイである職員のみです。

SCP-2000の起動後である本稿執筆時点において、SCP-3519には異なるアイテムが分類されているため、SCP-3519-ARCはArchivedカテゴリに再分類されました。


補遺3908-JP.1: プロトコル・フォビター

文書記録


プロトコル・フォビター

概要: 当該プロトコルは、不特定の理由での安楽死とそれに伴うオネイロイ化が予定されている財団職員に対し実施される、SCP-3519-ARCの情報共有ならびにファウンデーション・コレクティブへの再就職プロトコルである。

  1. 対象者の記憶野を走査し、SCP-3908-JPの記憶が存在するかを検証する。
  2. SCP-3908-JPの記憶が存在していればそのまま、存在していなければSCP-3908-JPを夢界投影した後に、対象者にクラスZ記憶補強を施す。
  3. 覚醒前に対象者を終了する。この際、クラスZ記憶補強によってこれまでの全夢界経験を想起した状態であった対象者は、自然にオネイロイ化される。

上記手順により、対象者はSCP-3519-ARCの情報を共有する。

付記: このプロトコルは、必要な情報の伝達のためのショートカットだ。誰しも、実際の主観経験を夢という媒体で摂取すれば、その危険性などを確実に知ることができる。夢というのは便利なツールだ。他人の経験を夢界投影するだけで、主観経験のバトンリレーをすることができるのだから。

SCP-2000の機能上、2019年3月5日を越えた時点から文明を再始動させることはできなかった、のだろう。追加機能などをSCP-2000に搭載でもすればよかったのかもしれないが、SCP-3519-ARCに対してはそんな猶予はなかったのだ。ゆえに、リセット以前のFCはSCP-3519-ARCの元型に反ミームフィルターを施し、SCP-3908-JPという誰も思い出せない夢を作り出したわけだ。

こうして、バトンは手渡された。あとは、我々新FCが、人類を2019年3月5日を越せるように保護し導いていくだけだ。これを読んでいる君も、恐らくはあの夢を見てここにやってきたのだろう。ならば、1つだけ肝に銘じてほしい。

神は全能にあらず。されど、それを万能にする者こそ人間なり。

FCへようこそ、新入職員よ。

— 新ピーター・グレイ、あるいは新フォビター博士

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