SCP-3909-JP
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非活性化時のSCP-3909-JP

アイテム番号: SCP-3909-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-3909-JP周辺は財団の管理下に置かれ、一般人の立ち入りは制限されます。

説明: SCP-3909-JPは千葉県の山中に設置されている公衆トイレです。SCP-3909-JPは毎週日曜日に活性化状態に入り、不明な異常空間が便鉢に接続されます。

SCP-3909-JP-1はこの時に接続される異常空間と、空間内を占める有機物の総称です。SCP-3909-JP-1は大量の血液、臓器、脂肪で埋め尽くされており、微弱ながら脈動のような振動を起こしています。調査の結果これらの有機物はヒト由来のものであると判明していますが、DNAが合致する人物は現在見つかっていません。1SCP-3909-JP-1内の有機物は吸引・掘削等の方法で除去することが可能ですが、翌週の日曜日には除去の跡が修復されます。

Dクラス職員を用いたSCP-3909-JP-1の探査は現在までに6回実施されており、うち2回の探査にて特筆すべき現象が発生しました。以下はその音声記録です。

探査ログ3909-JP-1


探査者: D-2332

探査監督者: 河井研究員

備考: 探査者には臓器類を吸うためのバキュームポンプ、呼吸用の酸素ボンベ、ライトが支給されています。


<録音開始>

河井研究員: 空間内には入れましたか。

D-2322: ああ、入れたよ。つってもクソ気持ち悪い肉塊まみれだから全然進めねえけどな。

河井研究員: バキュームポンプで臓器や脂肪は吸い上げてください。吸い上げられないほど大きな物体があった場合はできるだけ迂回して進んでください。

D-2322: 畜生わかったよ。なんとか下に行けそうだ。

[D-2322が10分ほど下降を続ける。]

D-2322: とりあえず1、2メートルくらいは降りたんじゃねえか。このポンプ、俺が仕事で使ってたヤツよりよっぽど優秀だ。

河井研究員: 調査に関係ない報告は不要です。空間の広がりの程度は分かりますか。

D-2322: まだ全然分からねえ。ライトで軽く見てみたが、至る所が気色悪い肉やら臓物やらでギチギチだ。頭おかしくなるからしばらくライトは消しとくぜ。

河井研究員: 一旦横に移動して壁があるか確かめられますか。

D-2322: そんなことしたら肉が崩れて生き埋めになっちまうよ。もうほとんど生き埋め状態だがな。ただ、圧迫感的にはそこまで横に広くはなさそうだ。

河井研究員: 了解です。そのまま下降を続けてください。

[D-2322が30分ほど下降する。]

D-2322: なんか変な音がしなかったか。

河井研究員: 我々の方では何も聞こえていません。

D-2322: そうかい。でもかすかに歌みたいなのが聞こえた気がするんだよな。

[D-2322が10分ほど下降する。]

河井研究員: 深度が13メートルを超えました。

D-2322: なあ、やっぱり歌が聞こえるぜ。

河井研究員: では一旦パキュームポンプを止めてください。

[吸引音が停止する。]

D-2322: 聞こえたか?

河井研究員: いえ、何にも。

D-2322: 嘘だろ、どんどん音量が上がってるってのに。なんかこう、クラシックみてえな音楽なんだ。こんなとこにいるから頭おかしくなっちまったかもしれねえ。

河井研究員: バキュームポンプを再起動させます。

[D-2322が20分ほど下降する。]

河井研究員: あ。

D-2322: なんだよ。

河井研究員: 一瞬何か音が聞こえたかもしれません。

[吸引音が停止する。かすかに楽器音が収録される。]

D-2322: ようやく分かったか。

河井研究員: はい。しかし具体的な曲名までは分かりません。よりクリアに聞こえる位置までD-2322は下降を続けてください。

D-2322: 了解。

[D-2322が30分ほど降下する。]

河井研究員: 深度が20mを超えました。

D-2322: 結構下まで来たな。周りの壁が全部臓物だと思うと吐きそうだ。てか、今気づいたけどこの肉ども微妙に脈打ってるじゃねえか。うえっ。

河井研究員: 例の音楽はまだ鳴っているようですね。やや音が大きくなっているようにも感じます。

D-2322: そっちからは分からねえだろうけど、隣にスピーカーがあるのかってくらいデカい音で聞かされてる。学がねえから分からねえけど、なんか聞き覚えはあるぜ。確か卒業式とかで聞くようなやつだ。

河井研究員: 私の記憶が正しければパッヘルベルのカノンですかね。

D-2322: へえ、そういや中坊の頃に習った気がするな。

河井研究員: 空間内に何か変化はありましたか。

D-2322: 何にも。ひたすら気色悪い臓物が溜まってるだけだ。あっ!

河井研究員: どうされました。

D-2322: ヤバい、上の方が[激しい衝撃音]

河井研究員: 何か起きましたか。

D-2322: [無言]

河井研究員: 応答願います。

D-2322: ああ、なんとか生きてるみたいだ。肉の壁が急に崩れて、こっちに降ってきやがった。

河井研究員: 機材に被害はありますか。

D-2322: 酸素ボンベの方は無事だが、バキュームポンプの管は押し潰されててダメそうだ。

河井研究員: 分かりました。その場で探査を中断し、救助をお待ち下さい。

D-2322: はは、危うく死ぬかと思ったがお陰で帰れそうだな。それじゃあとりあえずここで[マイクに甲高い音声が収録される。]

河井研究員: 何ですか。

[大音量のカノンが収録される。]

河井研究員: 無事であれば応答願います。

[激しいノイズが発生。興奮した男性の唸り声のような音が収録される。]

河井研究員: 繰り返します。応答願います。

[ノイズ。わずかな拍手の音。]

D-2322: 卒業証書、授与。

<通信途絶>


付記: 別のDクラス職員がD-2322の救助を試みた結果、腹部が肥大したD-2322の死体が回収されました。D-2322の腹部には切断された手が詰め込まれており、そのうちの一つは千葉県内の高等学校で発行された学生証を握りしめていました。学生証には「大月 芽瑠」という名の女子生徒の情報が記されていますが、当該生徒は2012年3月に千葉駅周辺で行方不明となっています。

探査ログ3909-JP-4


探査者: D-4231

探査監督者: 河井研究員

備考: 探査者には臓器類を吸うためのバキュームポンプ、呼吸用の酸素ボンベ、ライトが支給されています。


<録音開始>

河井研究員: それでは探査を開始してください。

D-4231: はい。

[D-4231は臓器群を吸い出し、下降を始める。]

D-4231: すみません。

河井研究員: どうされました。

D-4231: 横壁の調査はどうしますか。

河井研究員: 可能であればお願いします。

D-4231: 分かりました。

[D-4231がバキュームポンプの管を横に向け、詰まった臓器を吸い出す。D-4231の体に大量の血液、脂肪、心臓、肺が落下するが、D-4231は一切反応を示さない。]

河井研究員: 何か不調がありましたらお知らせください。

D-4231: 特にありません。

[20分後、D-4231が動きを止める。]

河井研究員: 何かありましたか。

D-4231: 突然巨大な肉の塊のようなものに当たりました。

河井研究員: もし進めない場合は迂回できないか試してください。

D-4231: いえ、大丈夫です。

[D-4231が手で肉塊を掘り始める。肉塊は徐々に崩れ、脈動の音がわずかに収録される。]

[およそ30分に渡って肉塊の掘削が行われる。]

河井研究員: 現在はどのような状況でしょうか。

D-4231: 爪が剥がれましたが、特に支障なく前進できています。

河井研究員: 先程からかすかに異音2が聞こえる気がするのですが、そちらでは聞こえますか。

D-4231: いえ、一切聞こえていません。

河井研究員: 分かりました。作業を続けてください。

[およそ20分に渡って掘削が行われる。]

D-4231: あ。今小さな穴が貫通しました。

河井研究員: 肉塊の先には空洞が存在するのでしょうか。

D-4231: とりあえず穴を広げます。

河井研究員: 何か異常な音、現象が起きればすぐにお知らせください。

D-4231: 少なくとも音に関してはほとんど感じ取れません。先程から脈動音が弱まっていると感じます。

河井研究員: こちらでは脈動音の他に何か歌のような音3が聞こえるのですが。

D-4231: あ、今肉塊の壁が一気に崩れました。ちょっとライトで照らしてみます。

[不鮮明なノイズ。]

河井研究員: 通信が乱れたようです。応答願います。

[女性の叫び声のような音声、脈動音。]

河井研究員: D-4231、歌うのをやめてください。

D-4231: 何でしょうか。

河井研究員: 今、あなたは錯乱した様子で謎の歌を歌っていました。

D-4231: 私はライトで壁の向こうを確認していただけで、歌ってなどいません。

河井研究員: 何らかの異常性が発生している可能性が高いですね。周囲に変化が生じていないか確認しつつ、肉塊の向こうの状況を報告してください。

D-4231: 分かりました。壁の向こうは細い通路のようになっていて、肉や内蔵ではなくぶにぶにした黄色い物体で壁がつくられています。その他に周囲の変化は見当たりません。

河井研究員: 黄色い物体は恐らく脂肪ですね。触ることはできますか。

D-4231: 先程軽く足を踏み入れましたが、特に問題はありません。

河井研究員: では通路に沿って進んでください。

D-4231: 分かりました。

[D-4231が通路内に入り、前進する。]

[7分経過後、ノイズ混じりの不明な話し声が収録される。]

河井研究員: 何か歌が聞こえますね。

D-4231: こちらは私の足音以外聞こえてきません。

河井研究員: 脈動音なども止まっている状態でしょうか。

D-4231: はい。ブニブニとした足の感覚と音以外は発生していません。

河井研究員: 通路がどこまで続いているか見えますか。

D-4231: ちょっとライトのパワーを上げて確認します。

[D-4231が足を止める。話し声がよりはっきりと収録され、女性と男性の会話であることが伺える。]

河井研究員: 何か近づいてきていませんか。

D-4231: 今遠くまで確認しましたが、私以外誰もいませんでした。ちなみに通路はあと100mほどで行き止まりになっているようです。

河井研究員: 分かりました。周囲を確認しつつ進んでください。

[D-4231が行き止まり付近まで進む。話し声はやや遠のく。]

D-4231: 一応行き止まりではあったのですが、左手に細い隙間のようなものがあるようです。

河井研究員: 入ることはできますか。

D-4231: バキュームポンプの管を置いて、無理やり体をねじ込めば行けそうです。

河井研究員: 管の放棄を許可します。進んでください。

D-4231: やってみます。

[D-4231の通信機が脂肪と接触し、ゴムが擦れるような音が収録される。]

D-4231: あ、どうやら向こう側にも空間があるようです。

河井研究員: 特に異常はありませんか。

D-4231: 今の所は。とりあえず隙間からは出れました。

河井研究員: [激しいノイズ]

D-4231: 分かりました。先程同様ライトで周りを照らしてみます。

河井研究員: 歌のような音はしていますか。D-4231が隙間を脱した時点から歌うような金切り声が聞こえるのですが。4

D-4231: うっすらですが、学校の合唱曲のような独特な歌が聞こえます。5

河井研究員: そのようですね。隙間の外はどうなっていましたか。

D-4231: 思ったより広々としています。小型の机と椅子がいくつも置かれているのですが、よく見たら小学校とかで使われてるもののようです。

河井研究員: 学校の机ですか。ということはその空間は教室に当たるものでしょうか。

D-4231: ただ、見たところ黒板や窓はありません。あ、端っこの机の上に何か置かれてました。

河井研究員: 何でしょうか。

D-4231: ええと、花瓶のようですね。中は液体で満たされています。

河井研究員: ちょっとこぼしてみてください。

D-4231: はい。

[水とともに大量の粒が落ちる音が響く。]

D-4231: えーと、中身は大量の歯でした。一体誰のでしょうか。

河井研究員: 歯、ですか。念のためいくつか回収してください。机の特徴は何かありますか。

[強い脈動音]

D-4231: 特に特徴はないですね。机の持ち主も分かりません。

河井研究員: 特徴がなければ一旦その空間を離れ、廊下まで戻ってください。先程から金切り声で音声が聞き取りにくいです。6

D-4231: 何も聞こえません。それから、色々と気になる点があります。

河井研究員: 何か明確に調査すべき異常があればお知らせください。

D-4231: はい、あります。

河井研究員: お聞かせください。

D-4231: この机を使っていた人物が分かりません。音は特にありません。

河井研究員: 机の所有者に関する調査は現在のところ不要です。先程伝えた通り、一度廊下に移動してください。

D-4231: 机の持ち主は誰でしょうか。

河井研究員: 机の所有者についての情報は要求していません。繰り返しますが、現在謎の音声の影響で通信が難しくなっていますので一度廊下に移動してください。

D-4231: この席の女の名が見つかりません。

河井研究員: D-4231、こちらの指令は届いていますか。

D-4231: あった。教卓の上。座席表。女の名は、オオツキメル。

[激しく劣化したチャイムの音。]

河井研究員: D-4231、今すぐ廊下に戻ってください。

D-4231: 今日は悲しいお知らせがあります。

河井研究員: D-4231、誰と話しているのですか。

D-4231: 私たちのクラスの大切な仲間であるオオツキメルさんが、昨晩から行方不明となっています。何か知っている人がいたらすぐ先生に知らせてください。

[激しいノイズ。甲高い女性の声、大勢の人物が談笑する声が含まれる。]

河井研究員: 危険な状態に陥っている可能性がありますので、すぐに歯を持ったまま帰投してください。

D-4231: [激しいノイズ]な人には近づかず、美しい3年生として卒業しましょう。

河井研究員: 応答が無ければ通信を切断します。

[「メル」という名を叫び、泣く不特定多数の声。]

[劣化した合唱曲の音声が2分間収録される。曲名は「巣立ちの歌」であると推測される。]

<録音終了>


付記: 直後に別のD-クラス職員がSCP-3909-JP-1内に侵入した結果、肉塊部分に埋まった状態でD-4231の死体が発見されました。D-4231の死体のポケットには乾いた歯が複数個入っており、DNA鑑定の結果SCP-3909-JP-1内の有機物とDNAが一致しました。

死体の口内にはジップロック7が詰め込まれており、ジップロック内には一枚の顔写真とメモ用紙が入れられていました。メモは一部が意図的にちぎられた状態であり、その意図は不明です。死体に傷はほとんど存在しませんでしたが、頭部が河井研究員と特徴の一致する成人男性のものに置換されていました。実際の河井研究員に肉体的不調は一切確認されていませんが、当探査終了後にSCP-3909-JP研究チームからの離脱を申請し、受理されています。当探査以降「廊下」に到達した探査者は存在せず、1km以上に渡って掘削を行った事例でも肉塊の突破は失敗に終わっています。

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探査ログ3909-JP-4で回収されたジップロック内の顔写真、メモ。写真の被写体は男性だと考えられるが、顔の上から長髪の人物の絵が描かれている。髪型は「大月 芽瑠」に類似しているが、意図は不明。

探査ログ3909-JP-4で発見されたメモには住所と考えられる文字列が記されていました。この住所は既に閉店した飲食店のものであり、当該店舗の関係者とSCP-3909-JPは一切無関係であることが確認されています。しかし、財団職員が現地調査を行った結果、閉店した店舗付近にコインロッカーが設置されていることが判明しました。

住所の下に記されていた6桁の番号に対応するロッカーが1個存在していたため、その場で職員が解錠を行った結果、大量の毛髪と切断されたヒトの陰茎が発見されました。分析の結果、毛髪のDNAは「大月 芽瑠」のDNA、切断された陰茎のDNAはSCP-3909-JP-1内の有機物のDNAとそれぞれ一致しています。

現在「大月 芽瑠」の捜索が継続中です。

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