SCP-3917-JP
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アイテム番号: SCP-3917-JP

オブジェクトクラス: Keter Safe

特別収容プロトコル: SCP-3917-JPはサイト-8181の標準物品収容ロッカー内に収容されます。新たなSCP-3917-JPが発見された場合、回収部隊による即座の回収が行われます。現在SCP-3917-JPの販売元を捜索中です。

SCP-3917-JPによる被害が確認された場合、被害者およびその周辺人物に対する隠蔽処理が行われます。SCP-3917-JPによる被害の詳細は記録されます。回収されたSCP-3917-JP-Aは内容を記録したうえで焼却処分されます。

説明: SCP-3917-JPは後述の異常性を有した名刺入れです。アルミニウム合金によって構成されています。外見に市販の名刺入れとの大きな差異は確認されていません。現在までに財団によって2個のSCP-3917-JPが回収されています (各実例を枝番号に指定済) 。

SCP-3917-JPは内部に人物名(当人物を対象者と呼称)等一般的に名刺に記載される内容1が記入された紙を収めた状態で閉じることにより、対象者の所有する名刺入れ、及びそれと同程度の収納機能を持つ物品2内に"[ランダムな平仮名1文字] さん"と記入された紙 (SCP-3917-JP-Aに指定) を1枚または複数枚出現させます。SCP-3917-JP-Aの出現数に規則性や法則性は現在まで確認されていません。SCP-3917-JP-Aに書かれた文字の筆者を特定する試みは全て失敗に終わっています。

SCP-3917-JP-Aの出現時、対象者に異常現象が発生します。発生する異常現象はランダムであり、規則性や法則性は確認されていません。研究チームはSCP-3917-JP-Aの記載内容と発生する異常現象に関連性があると推測しており、現在調査が行われています。

以下は異常事象の例です。全ての異常事象の記録はこちらより閲覧してください。

指定番号: SCP-3917-JP-A-1

記入されていた内容: "た さん"

対象者: 西島美智子氏

付記: SCP-3917-JP-Aの出現事象以降、性欲の異常増加および不明な要因による排卵の発生、排卵周期の短縮が確認されました。西島美智子氏は事象発生時78歳でしたが、死亡するまでの4年6ヵ月の間に7人を出産しました。

指定番号: SCP-3917-JP-A-4

記入されていた内容: "ず さん"

対象者: 加納祐樹氏

付記: SCP-3917-JP-Aの出現事象以降、発話時および筆記時の言葉の誤りの異常増加が確認されました。対象者は、事象発生時愛知県立██高校に勤務する国語教師でしたが、事象発生以降、業務を行うことが困難となり現在休職中です。対象者へ文章の書き取り試験を実施したところ、正しく書き写された文字が8%、誤った文字が22%、不明な文字が47%、句読点が33%でした。特筆すべき点として、対象者からは9枚のSCP-3917-JP-Aが回収されています。

指定番号: SCP-3917-JP-A-15

記入されていた内容: "う さん"

対象者: 伊藤直哉氏

付記: SCP-3917-JP-Aの出現事象以降、周囲の人物からの不自然な心象の悪化が確認されました。3対象者は事象発生時██社の営業職でしたが、事象発生以降売上が91%低下し解雇されました。元顧客への聴取の結果、"特に根拠はないが怪しく感じるようになった" "彼と仕事をすることがとても不安になった"との回答が多数を占めました。

SCP-3917-JP発見以前より、突発的に名古屋市を中心とする愛知県内で人型オブジェクトが複数発生していたことが財団によって注目を集めていました。当初SCP-3917-JP-A対象者群はそれぞれ別の異常実体としてナンバリングが為されていましたが、後述の経緯によるSCP-3917-JP-Aの発見に伴い同一の異常事象によるものであると認定され、再度ナンバリングが行われました。

補遺1: 以下は伊藤直哉氏4に対し実施されたインタビュー記録です。

インタビューログ SCP-3917-JP - 2023/02/15

対象: 伊藤直哉氏

担当者: 矢村博士

付記: 以下のインタビュー記録はAO-████-JPの初期収容時に異常性の把握及びその原因についての調査のもと実施されたインタビューのものです。AO-████-JPは、当時勤務していた██社に潜入していた財団エージェントによる"営業部に勤務している男性に突然不自然なほど不信感を抱くようになった。"という報告が財団の目に留まり、収容に至りました。

<録音開始>

[重要度の低い部分を省略]

矢村博士: そのような現象はいつ頃から?

伊藤直哉氏: およそ3週間ほど前からです。

矢村博士: 何か心当たりなどは?普段と違うような出来事などはありませんでしたか?

伊藤直哉氏: 関係があるかは分かりませんが、1つあります。

矢村博士: お聞かせ願えますか?

伊藤直哉氏: およそ1ヶ月前からです。その頃から同僚の朝日優さんという女性が、何故かはわかりませんが気味の悪い行動をするようになりまして。

矢村博士: 詳細について教えていただけますか?

伊藤直哉氏: 例えば、付き纏いですとか。帰宅する時に私は電車を利用するのですが、何度か朝日さんが同じ電車に乗ってきたことがありまして。彼女が普段帰るのは逆方向であるにも関わらずです。

矢村博士: ふむ。

伊藤直哉氏: その時はただ彼氏の家にでも向かうのだろうと思っていたのですが、ある時私の家まで着いてきていることに気がつきました。彼女は私が家へ入ろうとすると帰っていくようでした。住所を押さえられたのでしょう、それ以降彼女のことが不気味に思えて仕方がありません。

矢村博士: 他には何か?

伊藤直哉氏: ええ、以前頻繁に行っていたのは私の携帯電話を覗き込むような行為ですかね。それも電話帳を開いている時に限ってです。いつの間にか近くへと来て、じろじろと何かを探すかのように覗き込んでくるのです。

矢村博士: それは、好意によるものではなく?

伊藤直哉氏: まさか、有り得ませんよ。むしろ私自身彼女には嫌われているものだと思っていました。

矢村博士: 何故です?

伊藤直哉氏: 私は彼女に対してかなり厳しく接していましたので。というのも、彼女は少々…素行に問題があるとして以前から注意を数々受けていまして。

矢村博士: 具体的にはどのように?

伊藤直哉氏: 主には、やる気についてですとか。与えられた仕事を十分にこなす事も出来ないにも関わらず、その責任を他人へ押し付けたりですとか。すぐに物を無くすとも言われていましたね。注意を受けた時に逆ギレすることも多かったように思います。

矢村博士: ふむ、なかなかですね。

伊藤直哉氏: 私は少しでも彼女の為になればと思い、普段から厳しく指導を行っていたのですが。おそらく彼女の性格を鑑みると私に好意を抱くようなことはないと思います。

矢村博士: なるほど、動機について疑問が残りますね。こちらでも彼女については調査をしてみましょう。

伊藤直哉氏: それともう1つあります。これも3週間ほど前からでしたか、財布の中から身に覚えのない落書きのような紙が出てきました。こちらなのですが。

[伊藤直哉氏が“う さん”と記載された紙を手渡す]

矢村博士: ふむ、これは?

伊藤直哉氏: 分かりません、いつの間にか入っていました。ただ、気がついた時はちょうど取引先に契約を切られた最初の日だったと覚えています。

矢村博士: こちらは預からせて頂いても?

伊藤直哉氏: ええ、お構いなく。

矢村博士: ありがとうございます。それでは本日のところはここまでにしましょう。浅倉君、彼を部屋へとお連れしてあげなさい。

<録音終了>

終了報告書: 過去の異常実体に対し実施されたインタビューにおいて、複数回出所不明の紙について言及されていたことから再調査やインタビュー等が実施された結果15例がSCP-3917-JPによるものと認定され、報告書が作成されました。当初SCP-3917-JPはその出現事象に規則性が見出せず予測が困難であったことに加え、その性質上大衆に異常事象が露見する可能性が高かったことから、オブジェクトクラスはKeterクラスに指定されました。

補遺2: 朝日優氏という人物への調査の結果、前述のSCP-3917-JP対象者全員において当該人物と何らかの関係を有することが判明しました。以下は異常事象の例に朝日優氏との関係を赤文字で追記したものです。

指定番号: SCP-3917-JP-A-1

記入されていた内容: "た さん"

対象者: 西島美智子氏

付記: SCP-3917-JP-Aの出現事象以降、性欲の異常増加および排卵周期の短縮が確認されました。西島美智子氏は事象発生時78歳でしたが、死亡するまでの4年6ヵ月の間に7人を出産しました。 対象者は朝日優氏の元交際相手の母でしたが、重度の認知症を患っており、朝日優氏に対して日常的に暴行を行っていたことが破局の直接的な原因となったと経歴調査の結果判明しています。

指定番号: SCP-3917-JP-A-4

記入されていた内容: "ず さん"

対象者: 加納祐樹氏

付記: SCP-3917-JP-Aの出現事象以降、発話時および筆記時の言葉の誤りの異常増加が確認されました。対象者は、事象発生時愛知県立██高校に勤務する国語教師でしたが、事象発生以降、業務を行うことが困難となり現在休職中です。対象者へ文章の書き取り試験を実施したところ、正しく書き写された文字が8%、誤った文字が22%、不明な文字が47%、句読点が33%でした。特筆すべき点として、対象者からは9枚のSCP-3758-JP-Aが回収されています。 対象者は朝日優氏が高等学校在籍時の担任教師です。高等学校在籍時の同級生らへの聞き取りの結果、朝日優氏は対象者から常習的にわいせつな行為を受けていたことが確認されています。

指定番号: SCP-3917-JP-A-15

記入されていた内容: "う さん"

対象者: 伊藤直哉氏

付記: SCP-3917-JP-Aの出現事象以降、周囲の人物からの不自然な心象の悪化が確認されました。5対象者は事象発生時██社の営業職でしたが、事象発生以降売上が91%低下し解雇されました。元顧客への聴取の結果、"特に根拠はないが怪しく感じるようになった""彼と仕事をすることがとても不安になった"との回答が多数を占めました。 対象者は朝日優氏の同僚で、朝日優氏は対象者に頻繁に叱責を受けていたことが確認されています。

これにより朝日優氏がSCP-3917-JP異常事象の発生に関係するとの見立てが立てられました。

また、朝日優氏が2023/02/03に知人女性によるストーカー被害を警察に相談していたことが判明しています。

補遺3: 以下は朝日優氏がストーカー被害を受けたと証言していた高瀬茜氏に対して行われたインタビュー記録です。

インタビューログ SCP-3917-JP - 2023/02/22

対象: 高瀬茜氏

担当者: 浅倉研究員

<録音開始>

[重要度の低い部分を省略]

浅倉研究員: 朝日優さんへのストーカー行為というのは、好意ゆえではないということなのですか?

高瀬茜氏: 好意だなんて、とんでもありません。そんなつもりで、やってた訳じゃないです!

浅倉研究員: 落ち着いてください。我々はそれについて罰を与えたりなどはしません。ただ動機についてお聞かせ願いたいだけです。

[13秒間の沈黙]

高瀬茜氏: すみません、取り乱してしまいまして。

浅倉研究員: いえ、問題ありません。では、なぜストーカー行為をしたのですか?

高瀬茜氏: 私は、彼女に復讐しようと思って。

浅倉研究員: 復讐?

高瀬茜氏: 私、高校3年生の頃彼女にいじめられていたんです。初めはたまたま彼女がすごく荒れていた時に、近くに居たって。それだけだったと思います。

浅倉研究員: なるほど。

高瀬茜氏:何か気に食わないことをしたような覚えはありませんでしたが、きっとたまたま近くに居た気が弱そうな人間ってそれだけだったと思います。それ以降ずっと何かある度一目のつかない所に連れて行かれては、引っ叩かれたり無理やりわいせつなことをされたり。そんな毎日でした。

浅倉研究員: それは、災難でしたね。

高瀬茜氏: まるで、何か八つ当たりをするかのようでした。男の人とトラブルがあったみたいなことを頻繁に口にしていたのを覚えています。弱みを握られてるみたいな。

浅倉研究員: つまり、いじめによる報復を目的に行っていたということですね?

高瀬茜氏: 大方はそういうことになります。

浅倉研究員: 大方ということは、具体的には何が目的なのですか?

高瀬茜氏: 正直に言うと、朝日優の個人情報を集めていました。

浅倉研究員: 何故です?用途によっては犯罪ですよ。

高瀬茜氏: 違うんです。流出させようとしたっていう訳じゃないんです。

浅倉研究員: 何をしたというのですか。

高瀬茜氏: 私はただ、ネットで見たことをそのままやっただけです。ネット通販で売られていた名刺入れ、”恨みの紹介状 怨恨廻書”って書いてありました。それを説明書通りに使えば恨めしい相手に報いがあるって。

浅倉研究員: 使い方とは?

高瀬茜氏: 使いたい相手の名刺を作るんです、写真と個人情報を貼り付けて。それを名刺入れの中に入れて蓋を閉めれば、何かが起きるって。

浅倉研究員: なるほど。その名刺入れはどちらに?

高瀬茜氏: えっと、今持っています。

浅倉研究員: そちらの名刺入れ、少し見せていただけませんか?

高瀬茜氏: は、はい。これですが。

浅倉研究員: ありがとうございます。なるほど、そのままで少々お待ちいただけますか。

<録音終了>

終了報告書: 高瀬茜氏はAクラス記憶処理が行われた後解放されました。インタビューの終了後、”怨恨廻書”という名刺入れに関連すると思われる出品の即時の停止が行われました。販売元の捜査は現在まで有益な成果を得られていません。当該インタビューによりSCP-3917-JP-Aの発生条件の確認、およびSCP-3917-JPが発見されたことに伴ってオブジェクトクラスの変更、報告書の大規模な改定が行われました。

当インタビューにより朝日優氏がオブジェクトの影響下にある可能性が確認されたことから、朝日優氏宅6への調査が実施されました。特筆すべき点として朝日優氏宅の周辺から、異なる時期に付けられたとみられる複数人分の靴跡が確認されています。

朝日氏宅内からは、自作したとみられる対象者の名刺の収められた名刺入れ、及びその取扱説明書とみられる紙が回収されました。これに伴い、SCP-3917-JP報告書の改定が行われました。また、部屋全体にやや乾燥した赤褐色の土状物質が確認されています。サンプル調査の結果、これらはヒト由来の成分により構成されていると判明しました。

当部屋のキャビネット等内から対象者の個人情報や経歴に関する冊子や書類、電話帳、盗撮したと思われる対象者の写真等が多量に発見された点や、朝日優氏が複数の対象者に対してストーキング行為を行っていたことが対象者の周囲の人物へ行われた聞き取り調査の結果判明した点から、朝日優氏はストーキング行為等などによって個人情報を収集し、名刺を自作することによって故意的にSCP-3917-JPによる異常事象を発生させていたと推測されています。

回収時、朝日優氏宅から発見されたSCP-3917-JP内には15枚の対象者について書かれた名刺に加え、21枚のSCP-3917-JP-Aが発見されたことは特筆すべき点です。

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発見されたSCP-3917-JP-A

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