保護ガラスの裏で希釈した化合物-IKARを研究する████████博士。
アイテム番号: SCP-393-FR
脅威レベル: 黄 ●
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-393-FRは完全に乾燥して化合物-IKARを生成しなくなるまで現在地に放置しなければいけません。化合物-IKARが完全に回収された後に、SCP-393-FRを除去し、相応しい埋葬を行うものとします。収集した化合物は分析・実験のためにサイト-アレフ医療棟の安全ロッカーA8に保管しなければいけません。異常な状況で愛情を抱く人物を失った経験の無い職員と、近親者との死別に際してクラスC記憶処理を受けた職員のみが、化合物-IKARへの接近を許可されます。
2019年以降行方不明であり、現在逃亡中と推定されるテロリスト組織“SAPHIR”構成員のアーサー・カプラン、アントニー・フォスター、マーク・グルタートに対して、フランス国家星警隊と共同の捜索通知が出されています。この通知はFBI異常事件課と、逃亡者たちが避難した可能性がある全ての同盟国に送付されました。
SCP-393-FRが発見された施設の買収と再開発が提言されていますが、そこで発生した事件の性質のため、議論が現在も進行中です。
説明: SCP-393-FRはフランス国家憲兵隊が2019/09/21、グアドループ県███████████の廃ビルの地下室で発見した3体の死体の総称です。発見当時からの腐敗の進行状態により、死亡したのは約3ヶ月前の2019年6月頃だと推定されました。異常性質が確認されると、この事件は速やかに国家星警隊所属の監察医に引き継がれ、彼らは遺体の身元を特定するためにSCP財団の協力を仰ぎました。
SCP-393-FRは、財団の積極的な捜索対象であり、当該事件の10年~9ヶ月前から活動を停止していた要注意人物3名の遺体であると特定されました。個別にSCP-393-FR-A、-B、-Cと指定されるこれらの遺体は、以下の人物として識別されています。
PoI-4146 : Daniele Dominico
タイプ グリーン
‖ 3.5 kC | エボニー | ナチュラル | タイト ‖
ステータス : 死亡
2013年に監視下に置かれたPoI-4146の住居 兼 活動拠点。
略歴 : ダニエレ・ドミニコ、男性、ラテンアメリカ人、年齢不詳。中レベル現実改変能力者。2012年以降は財団の積極的な捜索対象だが、現在まで捕縛されていない。PoI-4146はダウン症候群患者であり、兄のアマタロ・ドミニコから日常生活を支援されていた。障害による極めて深刻な精神的ハンディキャップのため/にも拘らず、ダニエレ・ドミニコは商業目的の無軌道かつ危険な現実改変能力の行使で知られるようになり、多数の異常な医薬品を流通させた。
特筆すべきネットワーク : 独立した製造者/供給業者。
死後の更新 : その不安定性と能力に鑑みて、PoI-4146は遠隔監視下に置かれていたため、失踪時の正確な状況を把握することは不可能だった。PoI-4146の活動停止は、アメリカ合衆国内国歳入庁にPoI-4146の税金が納入されなかった会計年度末まで発覚しなかった。アマタロ・ドミニコも同様に失踪が確認されている。
PoI-1339 : Achille Ameilhon
タイプ ブルー
‖ 2.5 kC | レモン | ナチュラル | タイト ‖
ステータス : 死亡
略歴 : アシル・アメイロン、出身不詳。最初の出現は1859年に観測され、帝国特異学士院アーカイブにおいてSAI-818として言及される。PoI-1339の存在は1859年から2009年にかけてフランス、イギリス、イタリアの新聞に掲載された15,313件の広告で証明されている。これらの広告は全て“アシル・アメイロン博士”の権威を掲げているが、この人物の名前や称号は如何なる出生、死亡、博士号の記録においても確認されていない。悪名高い偽医者として知られるPoI-1339は、様々な詐欺への関与が示されるのみならず、異常性質を持つ化粧品や“奇跡の水薬”の販売も行っていた。これらは常に使用者に有害だった。
特筆すべきネットワーク : マーシャル・カーター&ダーク株式会社との関係が疑われている。
死後の更新 : PoI-1339は遺体が発見されるまで物理的に観測されなかったため、純粋に広告媒体上の存在だと推測されていた。彼がどのように発見され、捕獲されたかは不明である。
PoI-2701 : Man Adi
タイプ グリーン
‖ 4.0 kC | マラカイト | シャープ | ルーズ ‖
ステータス : 死亡
略歴 : マン・アディ、マディソン・ブワナ(本名)、女性、アフリカ系アメリカ人、66歳。中レベル現実改変能力者。カルト宗教団体“オブラカの人々”(1968-1977)、“ラ・メゾン・オランジュ”(1982-1991)、“春秋奇跡の捜索者連盟”(1993-1999)の創設者 兼 教祖。ヴードゥー教の影響力を以て、PoI-2701は急速にニューエイジ地下社会の主要人物に出世した。しばしば失踪、汚職、脅迫、奇跡的な治癒の事例に関与したが、1970年から1990年の間に8回の捜索が行われたにも拘らず、彼女を有罪とする証拠は発見されなかった。PoI-2701は約6年間消息を絶った後、2010年に惚れ薬やドラッグといった“超常薬草医”製品の広範な密売の中心にいると判明したが、所在地は特定されなかった。
特筆すべきネットワーク : “神の手の連合” - ハイチ発祥の音楽、ラシンのオカルトネットワーク。
死後の更新 : PoI-2701の失踪は2018/02/07、フランス領ギアナのカイエンヌにある邸宅(後に仮本部だったと判明)への放火に続いて発生した。建物の出口は全て封鎖されていたため、襲撃の詳細を証言できる生存者はいなかった。
以下は、現地の法医病理学者たちによる発見です。
注記 : この乾燥はアノマリーが最初に示す異常性の1つです(下記参照)。体組織の乾燥によって、死体は身元を確認するのに十分良好な状態に保たれていました。
- 3体の死体には多数の痣や傷跡があり、また肘正中皮静脈や前腕に集中して注射痕が残されています。
注記 : 現場からは数多くの空の注射器が発見されました。残留物質を調査した結果、新奇かつ極めて強力なメタンフェタミン誘導体が入っていたと断定されました。
- 3人の囚人は右足首に装着された長さ約2mの鋼鉄の鎖で、地下室のコンクリートの床に繋がれていました。ただし、SCP-393-FR-Aと-Cの鎖は鋸で切断されているか、破断しています。
注記 : 広範な分析により、これらの鎖は平均より遥かに高い正常性値を有しており、物理形状を維持しつつも、それらを破壊・透過する異常な手段の行使を封じていると判明しました。これにも拘らず、鎖は異常生成された鋸や石灰で破壊されています。この性質は鋼鉄が含有している炭素に起因するようです — 恐らくは木炭からの派生物で、周辺正常値は30 Stです。該当する特性を持つ植物の積極的な捜索が開始されました。
- 3人の囚人は、お互いに接触することなく、部屋の中央に設置された作業台を利用できるように配置されていました。
注記 : この作業台には、三角フラスコからマンドレイクに至るまで、科学・オカルト両方のツールが50種類ほど並べられていました。このテーブルからはカセットプレーヤーも発見されています。
- 3人の囚人は、現場から発見されなかった鋭利な物体で手首の血管を切断され、失血死していました。集団自殺の可能性が濃厚です。
注記 : 凝固した血液は死体の周囲から発見されませんでした。これはアノマリーが最初に示す異常性の1つです(下記参照)。
- 3体の死体は、死後に両腕・両脚の関節を外され、作業台の周囲にオカルト的なパターンを形成するように動かされていました。
注記 : この理由は現在も明らかになっていません。死体を動かしたのが誘拐犯たちであるという証拠はありません。
SCP-393-FRの死肉には、通常の腐敗した死体と同様に、ハエ目をはじめとする腐肉食昆虫が産卵・成長しています。しかしながら、何らかの理由により、これらの幼虫は死体を食べずに、口元の牙で体液の微細な滴を収集して部屋の中心へと運搬します。これらの体液はガラスの晶出器に徐々に蓄積され、化合物-IKARを形成します。
運搬経路は長く、成長初期の幼虫は概して飢餓で死亡します。幼虫の一部を採取した結果、これらは一度現地から除去して別な環境に移すと通常のウジと同じように行動し始め、正常な摂食と移動を行うことが証明されました。幼虫はそれ自体異常ではないようですが、恐らくある種の類魂という形でSCP-393-FRの影響を受けています。
化合物-IKAR
化合物-IKARは異常現象に近接している/遭遇した人物、とりわけ異常な状況によるトラウマや死別を経験した人間に、複数の感覚障害、精神障害、心身症を引き起こす溶液です。超常的な経験が無い人物はこれらの効果の対象とならず、液体の組成に関連する自然な嫌悪感を示す程度です。
その明らかに複雑な有機的性質にも拘らず、化学分析は一貫して、化合物-IKARが水(H2O)とショ糖(C12H22O11)のみで構成されていることを示します。
化合物-IKARは同質療法ホメオパシーの原理に従っているらしく、化学の基本法則に反して、活性成分を希釈するほどに効果が変化、激化します。これらの効果は、異常な状況下で愛する者と死別した人物たちを被験者として試験されました。
希釈度 |
被験者の反応 |
純粋 |
化合物の吸入は精神的苦痛、パラノイア、幻聴を引き起こします。直接摂取は重度の心的外傷後ストレス発作を引き起こし、被験者を緊張病状態に陥れる可能性があります。 |
1 CH |
化合物の摂取は被験者のトラウマを再想起させます。これはクラスAまたはB記憶処理でトラウマを曖昧化した人物の場合も同様です。 |
4 CH |
被験者は明晰性、興奮、反射速度の向上を報告します。多くの被験者はこれを、フルボディコーヒーを摂取した時の感覚と比較しました。 |
7 CH |
若干のプロノイアと注意力の欠如。被験者は異常物に対面した時に関心と不信感を喪失するらしく、非現実感を報告します。 |
9 CH |
様々な幻覚。被験者は現実世界との接触を喪失するようであり、トラウマ的な出来事の間に死亡した愛する者を見る/触れる/話すことができると主張します。 |
15 CH |
幻覚には被験者との面識が無い非実在人物や故人が含まれるようになります。被験者から見覚えが無いとされているこれらの人物の詳細は、会話や読んだ文書から少しずつ収集され、潜在意識に保存された情報が化合物によって呼び起こされたものである可能性があります。 |
30 CH |
被験者は死亡します。正確な生物学的死因はまだ断定されていません。 |
更新 : 財団職員への化合物-IKARの投与は、その目的が治療であれレクリエーションであれ、追って通知があるまでは禁止されます。違反者は降格処分されます。
補遺1: 音声記録 GoI-096-393-A
SCP-393-FRの発見地点には約40個のオーディオカセットが散在しており、その殆どには壁に投げ付けた痕跡がありました。磁気テープの回収と無傷のカセットの聴取によって、SCP-393-FRの起源と目的に関する新たな洞察が得られました。特に関連性の高いメッセージを以下に転写します。
カセット#1
ようこそ、気楽にしてください。答える必要はありませんよ。これは音声録音です。まずは皆さんの後ろのドア、具体的に言えばその下のハッチに注目してください。このハッチを通して、皆さんの今後の食事や、僕たちの指示を吹き込んだカセットが提供されます。まず最初に軽い自己紹介から。僕はアーサー・カプラン、同行者は友人であるアントニー・フォスターとマーク・グルタートの2人です。アントニーはとても怒っています。彼の妻は去り、一人息子であるアンリの親権は彼女に渡りました。アンリは中耳炎に罹りました — ごく普通の事です — ただ、アントニーの妻はいわゆる“大手製薬業者”の医師や産業毒を信用しませんでした。ええ。彼女はこの病気を放置し、自然に、ホメオパシーで治そうとしたんです。そしてアントニーは幼いアンリを、今度は永遠に失いました。マークの事情は少し違います。どうやら彼の父は — 地の塩とでも言うべき、愛すべき老人でしたが — 禿げていることに悩んでいたようです。彼はこの問題を解決するためなら何にでも手を出す覚悟でした。そして間違いなく、インターネットで奇妙な広告を発見しました。彼はトイレで、沢山のウサギに囲まれて死んでいました。大量に出血してね。悲惨でした。僕はと言えば… 緊張感を保つためにも、話すのは止めておきます、もしかしたら後日。彼らと同じように、もう失うものは余り無いとだけ言っておきましょう。でも僕たちはSAPHIRに出会い — お互いに出会い — フロントガラスに投げ込まれる運命という名のコンクリートブロックの全てを、頭を下げて辛抱強く受け入れる必要なんて無いんだと理解しました。さて、そろそろ自分たちがどんな状況に陥ったか分かってきたでしょうから、皆さん同士の自己紹介はお任せします。
雰囲気を盛り上げるために1つだけ — 君たち3人は少なくとも400人の死に責任を負っています。楽しんでください。
カセット#2
この問題はちょっと複雑なんですよね。誰もがSAPHIRに同意してはいませんし、それが普通です。マークを例に挙げましょう。彼は父親が死んだ状況を強く疑っています。彼に言わせると、死因は脳に達した発毛ローションの蒸気です。ウサギは、どうやってそこまで来たか分かりませんしどうでもいい事ですが、偶然居合わせただけでしょう。酩酊して幻覚を見た彼は気絶し、身体を強く打ち付けて死んだ — 少し違うかもしれませんが、知るのは不可能です — 気化した化学物質が充満するトイレに入った救急隊員は、どういうわけかウサギが彼の身体から飛び出して即死させたと思い込んだ。その結果、有害物質を吸引しなかった人々も含めて、喪に服す家族全員がある種の集団ヒステリーに影響された。心理的に弱っていたから、こんな馬鹿馬鹿しい話でも信じてしまった。有り得る話でしょう? 僕たちはもっと奇妙な物だって見てきましたよ。
僕個人の意見はやや対比的で、疑う余地がもう少し残っています。でも全員の意見が一致している点が1つあります。実際に何が発生したにせよ、責任者は報いを受けなければならない。重力に圧し潰されただの、石に呑み込まれただの — 不条理な死、アンデッド、偽陽性反応、こんなのはSAPHIR構成員に毎年起きてます。
ノセボ効果ってご存知ですか? ある影響が君に吐き気を及ぼしていると軽く説得されると、本当はそんな効果が一切無くても吐いてしまうんですね。ここにはある種のノセボ効果が働いているというのが、SAPHIRの現在の総意です。心理的影響、犠牲者の周囲にいた人々に — そして、恐ろしい目に遭った犠牲者自身にさえも — その人物は既に死んでいると思い込ませるほど強烈なトラウマ。自然の法則に沿った死因なんてとても受け入れられない。どれだけ自分を納得させようとしても、彼らは僕たちの目から見ると死んだままです。こんなのは耐えられない。生きていけない。想像してください、生物学的には生きているのに自分は死んだと確信し、身動きせず、水も食べ物も受け入れず、本物の死が追い付くまで自分の思い込みに囚われたままなんですよ。少なくとも、そういう理論があります。確認するのは不可能です。
僕たちの心が強いという事実は全く助けになりません。一度根付いたノセボ効果と戦うのは、僕たち自身の精神的な防御壁との戦いを意味している。そこで皆さんの出番です。皆さんは詐欺の天才でしょう? どんなひねくれ者でも口先三寸で丸め込めますよね? それでは、僕らを感動させてください。僕らを説得してください。僕らを非人格化してください。世界最高のプラセボ効果を及ぼす薬を、僕らのために作ってください。僕らがもう一度、彼らに会えるように。
カセット#9
“明晰薬”、バージョン1、第1テストの結果。責める気はありません、僕たち自身がやってもせいぜいその程度だったでしょう。でも真面目な話、少しぐらいは不振を抱かれると思いませんでしたか? 実験用ラットは必要な数だけ用意します。仕事を早く終えれば、その分早くここから出られますよ。
カセット#14
ああ、またしてもおはようございます。自由にやってください。注射器は部屋の中央の作業台に置いてあります。皆さんを捕えた時、僕たちは自問自答しました。この人々はシンギュラリティ、奇術師の王者だ。どうやって逃亡を阻止する? どうやら“現実改変者”は物理法則の対象ではない。彼らはただ彼ら自身の対象である。実を言うと、この時点で皆さんが僕の言葉をちょっぴりでも耳に入れているかどうか、確信が持てません。それがどういうドラッグなのかは教えてあげませんよ。自家製レシピですし、勝手に作ってほしくありませんから。ごく一般的な化学物質だけで完成したとだけお伝えしておきます。それに、皆さんが頭蓋骨から脳の半分をふっ飛ばさずに向精神性分子のシナプスを除去できるかは怪しいです。それを皆さんが望むかはとても怪しいです。気持ち良かったですか? もっと欲しいなら、簡単な話です。さっさと仕事に戻ってください。
カセット#19
いいですか、神経の繋ぎ直し云々はもう終わりです。明らかにこれは感覚変化を回避できませんし、フラッシュセッションからは何も得られていません。それと — 催眠術とか、正気ですか? 皆さんは催眠術をこれっぽっちも分かってないでしょうから言っておきます。その1、映像によるサブリミナルメッセージは作り話である。その2、提案では他人がやりたくない事を、ましてや自殺なんて強制できない。これを仕掛けた人には — 率直に言います、アシル、夜でもあのカメラには映るんですよ — 今夜“鍼治療”を行います。もう一度。それまで皆さん、調合に戻ってください、他のお2人はきっと喜んでいるでしょうね。夜までに新しいアイデアを考え出して、必要物資をリストアップしてください。さもないと全員に鍼治療です。
カセット#26
“明晰薬”、バージョン9、結果。僕たち3人は全員、皆さんの最新の試作薬を摂取しました。とりあえず、僕たちはまだ死んでいません。ですが、結果にはやはり不満があるとお伝えしなければいけません。マークは自宅に電話して — 奇跡です! — 父親と会話できました。偽薬の効果が現れ、幻想は見事に砕けたかのようでした。マークの父は何事も無く、勝手に死亡宣言されて皆に無視されるのは怖かったと断言しました。そして感動のドラマ — アントニーが元妻に電話すると、出たのは幼いアンリでした。ごく普通の病気で間違いなく死んだはずのアンリです。そこでようやく僕たちは、皆さんが幻想の上にもう1枚別の幻想を被せただけだと気付きました。
僕たちは死者に会いたいんじゃないんですよ。生きているのを見たいんです。
ちょっと説明が必要ですね。ここで1つ問題です。ピエールは粒子線によって崩壊して死んだ。可能か不可能か? 外れ。あはっ、やっぱり揺れますよね? 外れです、人間の身体が丸ごと粒子崩壊するなんて物理的に不可能ですよ。さぁ、集中してください。問題: ジーンは心臓発作で死んだ。可能か不可能か? これはもう完璧に可能です。イージー問題です。次はもっと複雑です。問題: ポールは幽霊を見て心臓発作で死んだ。可能か不可能か? 外れ! あぁ、これは痛そうです。そう、軽いひっかけ問題でした。存在しない物を見たと思い込んで心臓発作を起こすのはかなり有り得る話です。
ええと、でも皆さんの事前録音への答えがどうだったか関係なくビリビリやったのは少し不公平だったかもしれません。ええ、電気けいれん療法が不要なのは理解しています。これはかつて多くの人々から有効と信じられた治療法でしたけれど、後には完全にふざけたものだと判明し、それまでの間に大勢を傷付けました。皆さんと微妙に似てるのが分かりますか? それは良かった。これから皆さんにさっきと同じジャンルの問題を30回出して、上手く機能しているか確かめます。目の前にある赤と緑の目印を、問題が可能か否かに応じて上げてください。カメラで見ています。では始めましょう。
カセット#39
解放は間近です、友よ! ここ数日間で大きな進歩を遂げたので、全員で祝っても良いだろうと思います。皆さんがいなければ成し得なかった事です。僕たちは少々辛い時間を過ごしてきました — ごく普通の事です。僕らは後悔するような言葉を浴びせ、無情な行為を行いました。ですが、皆さんは忘れ去られてはいません。喜んでください。明日、全てが上手くいけば、皆さんにちょっとしたサプライズを用意しています! 疑いなく、皆さんはその後、心血を注いで仕事に取り組むことになるでしょう。
本当ですって。
補遺2 : 覚え書き断片 GoI-096-393-N
観察室と思われる部屋がビルの1階で発見されています。警察が到着した時点で、建物は既に無人であり、清掃されていました。しかしながら、国家憲兵省はこの部屋から、過激な無神論者として知られるアメリカ人生物学者 リチャード・ドーキンスの著作 “神は妄想である”を1冊発見しました。回収された本の第1ページには大量の書き込みが残されていました。
文書を開く
本は内側をくり抜かれ、未知のオブジェクトの容器として使われていたようですが、発見時には既に空でした。