SCP-3936-JP

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過去に報告されたSCP-3936-JPの含有要素群から出力した自動生成描画
[blue; under_water.img] 貴方は今、夢の中に居る。

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過去に報告されたSCP-3936-JPの含有要素群から出力した自動生成描画
[red; sink_hole.img] 貴方は今、現の中に居る。

アイテム番号: SCP-3936-JP

オブジェクトクラス: Dagdagiel Keter1

特別収容プロトコル: 現在、SCP-3936-JP現象の完全な封じ込め手法は確立されておらず、確実な収容方法と対応手順の最適化に関する研究が今も続けられています。また現時点において、仮に貴方がその影響下にあると判断できた場合、直ちに付録項目の対応手順を参照の上で実行してください。

説明: SCP-3936-JPは財団職員を対象とする突発的な意識の喪失現象と、それに付随して経験する異常な夢見の総称であり、現時点においては貴方がその影響下に置かれています。この夢中の環境描写は、貴方が意識を失う直前に行っていた現実活動風景 — 多くの場合、何らかの端末を用いてSCP-3936-JP報告書に目を通していた場面 — を継続する形で開始されます。そのため、この突然の文書表示のような何らかの干渉が為されない限り、貴方のような被験者が、自身が夢中に居るという事実に気付くことは極めて稀です。

仮に干渉が行われなかった場合、貴方を含む全ての被験者は夢中で残りの人生 — その者が思い描いていた凡その未来予想図に沿った内容 — を送る羽目になります。そして、貴方がその仮初の人生の道中で事故や事件、あるいは単に病気や老衰によって死亡した場合、夢中の場面は再び、貴方がSCP-3936-JPに初めて被験した時点から再開されます。この時、反復前の記憶は保持されず、大抵は一瞬の白昼夢の経験であったと即座に忘却の対象となることでしょう。加えて、夢中における1回分の人生の反復が、最短でも10-6秒という極めて短い現実時間内に生じる出来事でしかない点には留意すべきです。

その一方で、夢中の貴方に対してこの文書表示による干渉に成功した場合であっても、SCP-3936-JPはその干渉内容を完全否定する明らかに誤った導引内容を、定格化されていない何らかの形式で — 貴方への干渉内容が終わらない夢見からの解放を目的としたものであった場合には、特により一層のこと狡猾に擬態して — 夢中に表出させて貴方に見聞きさせようと試みます。そのために、貴方は周囲の人物や現象に対して、常に注意を払わなければなりません。

時折、SCP-3936-JPの象徴の1つは 青色 であるとも報告されますが、いずれの場合もその理由は説明されません。

説明: SCP-3936-JPは財団職員を対象とする、精神的干渉を伴った突発的な教唆現象です。全ての場合において被験者となった財団職員は、財団によって未だ発見・解明されていない不明な導引内容に従い、周囲から明らかに異常もしくは奇妙と見做され得るような行動を取るように誘導されます。この時、いずれの被験者も共通してSCP-3936-JPから"此処が夢の中である"という明らかな偽情報を伝達されており、それを事実であると誤認していることが判明しています。そのため、各異常行動の実施意図自体も、夢中からの覚醒を目的とした結果であることが推測できます。

また現時点で知られている限り、全ての精神的干渉と教唆現象は、被験者がSCP-3936-JP報告書を閲覧している最中にのみ発生・実行されています。このことから、SCP-3936-JPによる導引内容が被験者にのみ認識可能な悪意ある文書形式として出力されているか、あるいはSCP-3936-JP報告書内部にある種のミームウイルス形式として潜伏している可能性も指摘されていますが、依然としてそれらの証左となる痕跡・証拠を発見できた事例はありません。

それに加えて、影響下に置かれた被験者に対する積極的な干渉の試みは、多くの場合で教唆行動の実施を抑制させることに繋がらず、むしろ多くの場合で被験者の導引手法に対する信頼・妄信を強化する結果となることが大半です。更には、被験者へと干渉を繰り返した場合、SCP-3936-JPによる導引内容が第三者や器物を加害するよう被験者へと働きかける、過激な内容へと置き換わる可能性があることも確認されています。そのため現在、被験者と第三者間の意識的な干渉・接触は可能な限り推奨されていません。

時折、SCP-3936-JPの象徴の1つは 赤色 であるとも報告されますが、いずれの場合もその理由は説明されません。

補遺: 現時点においてSCP-3936-JP影響下から脱するための最良な手段は、明らかに不要もしくは不穏であるように思えたり、まるで儀式的・魔術的と評されるような複合的要素から為る対応手順を遂行することのみと知られています。現行推奨手順に不可解な要素が多分に含まれる要因に関しては、依然としてどの要素がSCP-3936-JPに対して最も効果的であるのか解明できていないために他ならず、現在も手順の発展・最適化を目的とした研究および反芻実験が続けられています。

もしも貴方が現時点でSCP-3936-JP影響下にあると判断できた場合、以下の付録項目に必ず目を通してください。

付録: SCP-3936-JP対応手順

手順1: SCP-3936-JP報告書を閲覧可能な端末を所持した状態で、その場を離れてください。その時、貴方は然も普段通りのように振る舞わなくてはなりません。そこが外部で友人や知人が傍に居るようであれば、コンビニエンスストアに寄るとでも嘯き、そこが職場であれば同僚にはトイレへ行くとでも説明して、そこには二度と戻らないでください。貴方が自室にいる場合でも同様です。明らかに慌てるような素振りは、SCP-3936-JPが問題の発生を理解する切っ掛けになります。

手順1: SCP-3936-JP報告書を閲覧可能な端末を所持した状態で、その場を離れてください。周囲から離席の理由を尋ねられた場合は、緊急事態であるとだけ伝えた上で、"詳細はSCP-3936-JP主任研究員のリース氏に確認してほしい"という旨の回答をしてください。そのような人物は実在しませんが、この回答内容は、多くの者に対して貴方の状況を理解させる十分な効果があります。仮にそれでも引き止められるようであれば、可能な限り穏当な手段で対象を沈黙させてください。

手順2: 先ほど居た場所から問題なく離れることに成功した後は、明確な目的地を定めず、ただ同じ方向へと前進し続けてください。進む方向は直感に従って問題ありませんが、乗り物の使用はお勧めできません。また、進行方向の先に建造物や河川などの障害がある場合、それらを漫然と迂回するだけであれば進行方向を一時的に変えても不具合は生じません。

ただし絶対に、特定の場所へ向かおうとする明確な目的意識を持ってはいけません。仮に意識すれば、貴方は数分程度でその目的地 — そこが本来ならば地球の裏側であったり、あるいは到達不可能な空想上の場所であろうとも — へと辿り着くことになります。彼/彼女たちは貴方をそこに迎え入れようとしますが、それらは全てSCP-3936-JPです。出会ってしまったのならば、暴力的あるいは非道徳的な内容を含む、あらゆる手段を用いてでも、それらから逃げ延びてください。

手順2: その場から離れることに成功した次は、自身で運転可能な何らかの移動手段を確保してください。自動車やバイクが望ましいですが、なければ自転車やウマ・ロバなどの動物でも構いません。ただし、羊と梟は避けてください。あるエージェントは実在するはずのない"東部の夢の果て"へと梟に乗って旅立ったまま、永遠に戻って来ることがありませんでした。

移動手段を確保できた後は、サイト-3456に向かってください。そのようなサイトは表向きに実在していません。しかし、貴方がそこへ向かおうとする明確な意思を持った時点で、確保した移動手段で十分に到達可能であり、なおかつSCP-3936-JPの影響を受けにくいはずだと貴方の思い描く位置座標上に、そのサイトは実在するようになります。これらの際中、貴方はあたかも、増長するSCP-3936-JPの導引内容に表面上は従い続けているかのように振る舞ってください。

手順3: 前進を始めてから短ければ数分後、長ければ数時間後に、貴方はどこか見覚えのある建造物 — 多くの場合は生まれ育った家や学生時代の宿舎、それ以外にも学校・友人の家・行きつけの店・葬儀場・ペットショップ・花屋・初勤務先のサイトなど — を見つけることになります。それ以外は全て絶対に無視しなければなりません。同様に、見覚えのない建物の窓から手を振る存在、周囲の公衆電話への着信コール、それらはSCP-3936-JPによる罠ですので前進を続けてください。

周囲を警戒した上で、明らかに異常な存在が見当たらなければその場所に立ち入って問題ありません。異常な存在が居た場合は、それらが立ち去るまで時間を潰すか、財布の中身を路上に打ち撒けて気を引くか、場合によっては危な気な犬や猫が威嚇する時の真似をしてそれらを立ち退かせても構いません。間違っても、話しかけるような真似は避けてください。

手順3: サイト-3456を発見した場合、即座に乗り物を停止させるのではなく、一度わざと通り過ぎてください。その際、サイト周辺の状況を観察することを忘れてはいけません。安全が確保されているようであれば、貴方はすぐに引き返してサイト内へと立ち入っても問題ありません。一方で、違和感を覚える存在を目撃した場合は、周辺の他のサイトへと連絡を取り、"サイトの傍にアノマリーを発見した"という旨の内容を伝えてください。視線を外せば、その違和感は取り除かれます。

なお、サイトの外観は定まっておらず、多くは貯水槽、水力発電所、水道局、水族館、下水処理場などの姿形も取りますが、それも必ずではありません。しかしながら、見覚えがないはずのそれが目的のサイトであると、貴方は直感的な確信を得るはずです。なお、移動手段が動物であった場合、貴方はサイト内へ入る前に、それを安らかに沈黙させてください。

手順4: 建造物内に問題なく立ち入ることができたなら、貴方は次に最下階を目指してください。貴方の思い出の中の建造物内に地下階が無い場合でも同様です。探索中の貴方はきっと、違和感なく自然な形に成長し切った、地下へと続く仄暗い階段や先の見えないトンネルを見つけることができるでしょう。ただし、エレベーターやエスカレーターの使用は避けてください。それらは残念ながら、貴方が意図して選択したはずの目的階とは、まるで異なった場所で貴方を降ろそうとします。

見慣れぬ階段やトンネルを進む際中、不意に貴方は何かの反響音を耳にします。多くは水滴の繰り返す落下音、あるいは排水口に流れて行く水音とも表現されますが、無視しても問題ありません。気になるようであれば、何か思い出の曲を口ずさむのも良いでしょう。絶え間ない水音が消えた後、貴方は間もなくして目指していた場所に行き着くはずです。

手順4: サイト内に問題なく立ち入ることができたなら、まずは内部に存在する全ての扉を確認してください。位置不明な目的の部屋を除き、他の扉はおそらく全て施錠されているはずです。ただし時折、目的地でないはずの部屋の扉が施錠されておらず、誤って侵入できてしまう場合もあります。そうならないように貴方は、その部屋の中が水で満たされていないことを扉越し、あるいは窓越しに適宜判断しなければなりません。付け加えれば、廊下の伸張、扉の増殖、それらは全て錯覚です。

似通った長い廊下を進む際中、不意に貴方は照明が徐々に暗くなっていることに気が付きます。これは正常な状況であり、貴方が目的の部屋を発見するまで照明が完全に消えることもなく、無視しても問題ありません。気になるようであれば、何か楽しかった出来事を振り返るのも良いでしょう。その回顧が終わった時、貴方は目的の部屋に行き着くはずです。

なお、内部を探索している際中、貴方は備え付けられたロッカーやキャビネットから銃や刃物、場合によっては固く結ばれた首吊り縄などの凶器を度々発見することができます。しかしながら、貴方がそれらを使用する必要はありません。

手順5: 最下階に到着すると、上部から真っすぐ伸びるロープ、クレーンフック、ハシゴなどを貴方は発見します。貴方はそれらを利用して、上へ上へと向かって登り続けてください。その時に頭上から何かの音か声が聞こえてきますが、見上げることなく無視して問題ありません。頭上に光が見えた後は、その先に向かって手を伸ばしてください。

その後、誰かが貴方の手を掴んで引き上げます。この時、抗う必要はありません。静かに目を見て、微笑んでください。

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過去に実施された手順5の報告群から出力した自動生成描画
[blue; under_hole.img] 貴方は今、穴の外へと上っている。
だけれども、どうか忘れないで。

手順5: 目的の部屋に入ると、部屋の中央に設置された1台のパソコンを貴方は発見します。貴方はそのパソコンを使用して、これまでの状況をまとめたレポートを作成してください。その時のフォーマットは標準的SCP報告書形式を推奨しますが、貴方のお好みで問題ありません。作成の完了後は、リース主任研究員に対してメールで提出してください。

その後、部屋への注水が始まります。この時、慌てる必要はありません。静かに目を閉じ、深呼吸してください。

real_side_sinkwater.jpg

過去に実施された手順5の報告群から出力した自動生成描画
[red; sink_water.img] 貴方は今、水の底へと沈んでいる。
だけれども、どうか恐れないで。

手順6: 貴方の意識が明瞭になると、最初にSCP-3936-JP報告書を閲覧していた場面・状況・時間に、自身が再び置かれている事実に気が付きます。時計を見れば、時間もあの時から一刻も進んでいないことが分かることでしょう。その時に貴方は取り乱すこともなく、普段通り冷静に振る舞わなくてはなりません。

まずは、貴方が今日の出来事を覚えているか、明らかに誤った記憶を保持していないか、思い返してみてください。例えば、物思いに耽っていたせいで道に空いていた高さを伸ばし続ける穴の中へと落ちたりはしてませんか? もしくは、溺れている子供を助けるために深さを増し続ける水の中へと飛び込んだりもしていませんか? そうであったのならば、とても素晴らしいことだと言えるでしょう。

さあ、貴方がSCP-3936-JP影響下から脱することができたのかを確認するため、当報告書を再確認してください。

もしも貴方がまだ影響下にあると判断できた場合は、再び付録項目に目を通さなければなりません。

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