3939-アルファ: カルロス、私のオフィスに来なさい。
彼がドアをノックするまでに10分かかる。あなたは彼が入れるようにドアを開く。
「席について、カルロス。」と言って、あなたは自分のデスクの後ろ側の席に座る。
ドアの横に小さな木製の椅子があるが、その上にスーツケースが乗っている。部屋にある椅子はこれだけなので、カルロスはスーツケースを手に取って慎重に床に置き、椅子を部屋の中央に引きずる。彼の表情は読めない。
「カルロス、君の下書きはひどいよ。」
彼はあなたと目を合わせる。今は読める。燃えるような怒りに満ちた、冷たい目だった。
「ええ、████、知ってますよ。」
あなたは、私と話すときは████博士と呼んで、と言いたいところだが抑える。結局のところ、あなたは上席研究員だからだ。「何故だ?これよりもうまくやれると私は知っているよ。」
「どうしてだと思いますか?僕は翌朝までにできると言ったのに、あなたは1時間でと言ったじゃないですか。もちろん、ひどいことになるでしょう。どれだけの時間が必要なのかを僕は言ったのに、あなたは無視した。」彼が話す言葉は、彼が指の関節を鳴らす鋭い音によって中断される。
「ちょっとした時間制限のプレッシャーにも耐えられないのか?」
「何ですって?」彼は椅子にもたれていたが、今は前にかがんでいる。「ここでまともな仕事をするにはどれぐらい時間がかかるかは知っているでしょう。何事も中途半端には出来ない。徹底的にやる。1時間で帳尻合わせなんて無理だ。」
「聞いて、カルロス。ちゃんと仕事をするのに十分な時間を与えなかったのはわかっている。本当に感謝している。本当だ。ただ…」
彼を侮辱することなく、自分の言いたいことが言える言葉を見つけようと口を止める。言葉がどこかにあることを知らせるように、左手を空中に振る。
「ただなんですか、████?」彼は話を遮る。
ちゃんと目を合わせる。目に見えて彼はうんざりしている。「君はただ3行書いただけで、全部ろくでなしだ。」
彼は立ち上がる。「僕のせいにするんですか?本当に、████?」
「私と話すときは████████博士と呼びなさい。」彼に言う。「それで、ああそうだ。もっといい仕事をしてくれると信じていた。」
彼はあなたと机に向かって1歩踏み出す。「僕を信じて立って?僕らがSCP-███に取り組んだ時のことを覚えているのか?思い出せるか?クリケットを覚えているか?あなたは僕をすっごく信用できると知っているんだね。僕がなんと呼ぼうかは知ったこっちゃないけどね。」
「ああ。」あなたは言う。「クリケットのことを覚えているよ。私は怪物じゃない。しかし、君は私にとってただの次席研究員だ。他の人と同じレベルの仕事を期待している。それでこれは —」あなたは下書きを指して「— 十分なレベルではない。」
「何?」彼は尋ねる。それは普通の『何』ではなく — 彼の声は2つの音節のちょうど真ん中で割れていて、それを強調するために彼の頭が非常にわずかに傾いたようだ。「僕たちがクソみたいなことをやった後で?」
「下書きを書き直してくれ。これを個人的なものにしては駄目だ。」
「ああ、あなたは階段の一段上にいるだけなんだ。僕らは実質兄弟みたいなものだったけど、今は僕の父親みたいに振る舞っている。」
立ち上がって机の前に移動し、彼に近づく。「兄弟のように振る舞うな。一緒に働いていた。それだけだ。私にとって君たちは何物でもない。」
彼は頷きはするが、同意はしない。「自分の位置づけが分かってよかった。」
「記事を書き直して、カルロス。」
「それとも何だ?」彼は言う。「知ったこっちゃないが、あなたは僕をSCP-████認定するのか?前回確認した時は、あなたはただの研究者で、くだらないクリアランスがなかったからね。」
ワオ、彼はこれを個人的なものにしようとさえしていない。「そのことをここに持ち込むな。私はこれから昇進するんだ。」
「わざと僕が下書きをめちゃくちゃにしてあんたはどう思った?あなたは最低なヤツだ、クラス4にふさわしくないと考えたことがないのか?あなたの家族のせいだとは —」
「やめろ。」彼に言う。「一線を越えようとしている。戻れ。」
「それとも?」彼は前に手を伸ばして、あなたの胸を押す。真ん中の四角い部分、胸骨の所に。痛みを感じるほどでも、身体を押し倒すほどでもなく、バランスを崩すほどだった。だが危険な空気を生み出すのには十分だ。
あなたは怒っている。煮えくり返っている。隠そうとはしているが、上手くいかず、言葉では怒りのほんの一部しか吐き出せない。別の方法を。もっと大きな方法で。もっと思い切った方法。怒って、混乱している。頭がおかしくなっている。一瞬以上考える時間も感情的余裕もない、早く決断をしなければ。
デスクの上に3つの物が。腕を後ろに回して、片手でつかむ。