クレジット
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SCP-3966-Bの結晶構造。左の要素がSCP-3966-Aに相当。
アイテム番号: SCP-3966
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: 薬瓶に保存されたSCP-3966-Aがサイト-66の冷凍実験保管庫に置かれます。汚染の確認の為、月例検査が行われます。薬瓶内に新たな化合物が発見された場合、分光法により化学組成が分析され、開いた分子結合の存在は記録されなければなりません。
さらに、投稿されたあらゆる医学文献はSCP-3966に関する記述の有無を調査されます。記述が確認された論文は発行を拒否されます。未解明夜間突然死症候群(SUNDS)の流行が発生した場合、機動部隊ロー-7("すり鉢無き医師達")が配備され、流行地域における被害者及び生存者のSCP-3966分量の調査が行われます。検死を装い、死体からSCP-3966を抽出することが許可されています。
手順:モルフェウス-4に基づき、SCP-3966に関する全通信は保存され、認識災害部門によるスクリーニングを受けます。しかしながら、現時点においてSCP-3966は認識災害取扱プロトコルの適用下にはありません。SCP-3966に配属された研究員で周期性四肢運動障害(PLMD)の症状を被る者は、再配属の申請を行うことが可能です。
説明: SCP-3966はヒトから発見される神経刺激性のポリペプチドです。当該物質は、睡眠時死亡者の検死を行った際に██%以上の確率で脳脊髄液(CSF)より発見されます。死体から回収された状態の物質(SCP-3966-Aに指定)は、C末端を持たないという異常性を示します。SCP-3966-A末端のアミノ酸は炭素鎖に開かれた結合箇所を有しますが、同箇所は化学的反応性を示しません。
実験記録:
実験3966-1
対象: D-51174
手順: 対象は、2mlの滅菌された等張SCP-3966-A溶液を、局所麻酔下の脊椎穿刺により与えられる。生物学的反応の観察の為、対象の生命反応及び脳波の測定が行われる。脳脊髄液圧の再調整の為、30秒後に2mlの髄液が取り除かれる。
結果: 手順開始から11.5秒後、対象は突発的な侵害反射行動を示す。対象は職員により拘束されたものの、それ以上の反応は見せず、2mlの髄液が成功裏に取り除かれた。腰椎の貫通箇所における組織損傷の増加が見られたものの、完全に回復した。
対象は注入後の突然の"落下感"を報告した。脳波測定により反射反応の約1.5秒前にノンレム睡眠のステージ1への移行が発生したことが確認された。"落下感"、侵害反射、ノンレム入眠はジャーキングの症状と一致する。
生化学分析ではSCP-3966-Aの痕跡は見られなかった。新たなタンパク質(SCP-3966-Bに指定)が発見され、配列が特定された。タンパク質は化学的に非異常であり、通常通りにC末端を備えていた。SCP-3966-Bの発生過程を探るさらなる実験が必要とされる。
SCP-IMシステムに保存された通信
Pawlie: アージェント博士、こんにちは。実験が終了しました。脊椎に針がささった状態で動かれた時は焦りましたが、全て無事に終わりました。
RodArg: 報告を確認しました。新しいタンパク質の出どころは判明しましたか?
Pawlie: いえ。どうやってあの短時間で生成されたのか想像も付きません。
RodArg: 同意します。どこから出てきたのか、アミノ酸配列、構成要素、折り畳みの形状。全て調べる必要があります。
RodArg: ついでに、試験管内におけるSCP-3966-Aの活性も理解が必要です。通常ならタンパク質はN末端に始まり、C末端に終わるものです。C末端の欠如は生物学的な超高反応性を示すはずで、殆ど全てのタンパク質と結合してズタズタに破壊することでしょう。私はプリオン式のシアン化合物のように振る舞うと予想していましたが、広範囲の生理的不調は見られません。また、長寿命で開かれていることを考えると、CSFでしか発見されないのも奇妙です。細胞膜を開いて、血脳障壁を貫通するのも容易いはずですが。
RodArg: 新しい実験手順を送ります。スケジュールが許せば手伝いに行きましょう。助力に感謝を、そしてチームにようこそ、エリー。
Pawlie: はい、ありがとうございます!
実験3966-2
手順: 5%γ‐グロブリンと5%アルブミンを含む滅菌溶液0.5mlを入れたシャーレに、10%のSCP-3966-A滅菌溶液0.5mlを加える。
結果: 反応は観察されず。SCP-3966-A分量に変化無し。
実験3966-3
手順: SCP-3966-AとSCP-3966-Bのアミノ酸配列をエドマン分解及び質量分析により決定する。
結果: SCP-3966-Bの配列が決定。総鎖長:289残基。
SCP-3966-Aの配列が決定。総鎖長:143残基。始点からの142残基はSCP-3966-BのN末端からの配列に一致。最後のアミノ酸は回収されず。サンプル質量は約0.70%の割合で減少した。
SCP-IMシステムに保存された通信
RodArg: こんにちはエリー、実験3なのですが、-Aについてやり直してもらわなくてはなりません。質量の不整合からして、明らかに何かの汚染が発生しています。
Pawlie: 申し訳ありません、やり直します。随分疲れていたもので。最近眠れないのが続いているんです。
RodArg: 大丈夫です。必要なら仮眠を取ると良いでしょう。事前に器具の確認を、漏洩を起こすわけにはいきません。
Pawlie: はい、しかし最近は昼も眠れない状態で。今にも眠ってしまいそうなのに、何かに躓いて、脳が驚いて起こされるんです。ようやく眠れたとしても、今度は悪夢が。しばらく酷い状態です。
RodArg: 待ってください、ジャーキングの症状があるのですか?
Pawlie: おそらくは
RodArg: すぐに戻ります。Dクラスを確認してきます。
Pawlie: はい
RodArg: D-51174の報告も同様のものでした。もしかしたら、SCP-3966を体に含んだのかもしれません。可能性を絞る為に脊椎穿刺をお願いしてもよろしいですか?
Pawlie: 脊椎に大きな針を?
RodArg: CSFの試験をするには他に方法がありません。簡単に届くものではありませんし、血中から発見された例はありません。
Pawlie: 他の選択肢は無いんですよね。
RodArg: そうですね、ただし外来扱いにはなります。直に実験室に戻れると思います。
Pawlie: はい、博士がそうおっしゃるなら。
実験3966-3B
手順: SCP-3966-Aのアミノ酸配列をエドマン分解及び質量分析により決定する。
結果: SCP-3966-Aの配列が決定。総鎖長:143残基。始点からの142残基はSCP-3966-BのN末端からの配列に一致。最後のアミノ酸は回収されず。サンプル質量は約0.70%の割合で減少した。結果は実験3966-3と同一。
研究3966-アルファ
手順: 既知のアミノ酸配列をヒトゲノムと照合。
結果: ヒトゲノムにおける一致は無し。他の生物種のゲノムとの照合が進行中。
主任研究員付記: 由来は未判明だが、人が由来でない以上、環境から来ていると考えられる。CSFは無菌だから、どうやってか血液脳関門を通って沈着しているはずだ。血漿からCSFが生成されることから考えて、最も蓋然性が高いのは脈絡叢からの侵入だろう。しかし大脳の深部の検査を行うのは容易ではない。神経組織の要求を申請して、他の方法を検討する。
実験3966-4
対象: パウルコイック次席研究員
手順: 対象から、脊椎穿刺により脳脊髄液を1ml取り出し、SCP-3966の有無を検査する。
結果: サンプルの生化学分析ではSCP-3966-Aの痕跡は発見されず。検出されたSCP-3966-B濃度は4.2mg/dLを示した。これは過去の実験における最高値であり、以前に回収されたサンプルの350%に相当。
SCP-IMシステムに保存された通信
Pawlie: アージェント博士、どうなっているんですか?私は大丈夫なのでしょうか?
RodArg: CSFにSCP-3966-Bがあると考えられます。それも高レベルで。
Pawlie: プリオン・シアン化合物のようなものとおっしゃっていましたよね?
RodArg: それは-Aの方です。そちらの痕跡は見つかりませんでした。-Bの出所は不明で、身体に対する影響も未知数ですが、今の所は異常活性を示していません。現在ドレーク博士に頼んで、先の研究の為にヒトの神経組織を取り寄せています。SCP-3966が神経細胞、グリア細胞と結合するのか、どのようにするのか、調べる必要があります。
Pawlie: 分かりました。原因は何だったのでしょう?どうして感染が?
RodArg: 実験3において漏洩がありました。現在の私の仮説では、漏洩の際にSCP-3966に曝露したのでしょう。
Pawlie: 馬鹿なことをしました。
RodArg: 事故は起こる物ですが、今はあなたの無事に向けて動かなければなりません。今日は仕事から離れて、睡眠を取ってください。随分と疲れているようでしたから。
Pawlie: はい、やはりよく眠れないのが続いていて。意識が遠くなったかと思えば、急に落下感がやってきて、体が跳ねて目が覚めるんです。夜中そんな調子で。原因は何でしょう?
RodArg: 確実な答えはありませんが、睡眠時痙攣は、睡眠移行時間と睡眠時麻痺の移行の不均衡に関係すると言われています。科学者によっては進化により発生したもので、樹上で生活していた猿にまで遡るとのことです。私は懐疑的ですが。他の動物にもみられる現象ですが、彼らはレム睡眠中の痙攣で目覚めることはありません。いずれにせよ、健常な大人子供にとってはありふれたことです。鬱陶しいですが、正常です。
Pawlie: 早く止まって欲しいんです
RodArg: もう一つだけ。悪夢を見ると言っていましたね?
Pawlie: はい、どうして?
RodArg: 私も昨晩、奇妙な夢を見ました。あなたのはどんな内容でしたか?
Pawlie: 大学の頃、シルクスカーフの染色をしていました。水面に染料を浮かせて、ストローをうまく使って表面にデザインを描きだして、それをスカーフに移すんです。夢の中で、私はそれをしていて、でもデザインが急におかしく見えてきました。模様が血や臓物や目に見えてきて、私の方を見つめているようでした。そして蜘蛛の群れが天井から湧き出てきて、水面に糸を垂らし始めたんです。糸から色が吸い出されていきました。私の色も吸い出そうと、蜘蛛が糸を貼り付けようとしてきました。虹色の蜘蛛の群れから、逃げなければいけませんでした。
RodArg: なるほど、私のとは少し異なりますね。
Pawlie: 博士の方は?
RodArg: 大学生だった頃に、『エニグマ』という漫画がありました。90年代初期のです。それにザ・ヘッドという殺人鬼がいました。痩せた、背の高い怪物で、巨大な頭に窄んだ唇がついていて、被害者の鼻に金属のストローを突き刺して脳を吸い出すのです。一晩中それに追いかけられました。
Pawlie: 90年代の漫画は無茶苦茶ですね。
尋問官: こちらは認識災害監視部門からのメッセージです。会話マーカーにより、ミーム感染の可能性が提示されています。当該SCPに関する通信の全ては保存・監視・分析の対象となることに留意ください。
Pawlie: ああ、またトラブルですか?勘弁してください、こんな時に。
RodArg: 少し違うと思いますよ。
尋問官: こんにちは、ええ、トラブルではありません。ただ、同時期にストローと逃走を含む夢を共有したのが記録されただけです。偶然の可能性もあり、認識災害の存在は確定していませんが、念のためにミーム感染の有無を調査します。心配なさらずとも、これらが倫理委員会や上級代表に送られることはありません。あくまで認識災害の追跡が業務ですから。
Pawlie: 失礼します。睡眠薬でも飲んで過ごします。
RodArg: おやすみなさい、エリー。また明日。実験は私の方で終わらせます。
実験3966-5
手順: SCP-596に接触したDクラスより採取されたヒトの神経組織に対してSCP-3966-Bを加える。組織を分析し、結合箇所の探索を行う。
結果: SCP-3966-Bは神経細胞上のN型カルシウムチャネルと弱い結合を形成した。結合はイオン輸送を慢性的に妨害するが、細胞電位の変化(神経細胞の電気信号伝達等)により解除される。生理活性は限定的。治療学的には、極めて軽度の麻痺と痛覚麻痺を発生させるのみであり、通常活動時には観察されない。
注意すべき点として、SCP-3966-Bは睡眠時痙攣を発生させない。つまり、基本的に無害だ。私に言わせれば不活性なタンパク質だ。- R.アージェント
実験3966-6
手順: SCP-596に接触したDクラスより採取されたヒトの神経組織に対してSCP-3966-Aを加える。結合箇所の探索を行う。
結果: SCP-3966-Aは外毒素として作用し、神経細胞上のN型カルシウムチャネルと強い結合を形成した。シナプス前終末では連鎖的なミスフォールディングが発生し、カルシウムチャネルが開いた細胞孔に組み替えられるように観察された。神経伝達物質、イオン、細胞質は孔を経由して急速に流出し、数秒以内に細胞死を発生させた。
サンプル重量は実験前の93.2%に減少。漏洩は検出されず。細胞外の神経伝達物質は検出されず、間質液のカルシウムイオン濃度も増加しなかったことが記録される。
またしても質量が大幅に変化したが、漏洩無し?神経伝達物質もイオンも消えたというのか?この再折り畳みの目的は何だ?- R.アージェント
実験3966-7
手順: 数理モデリングにより、SCP-3966-A及びSCP-3966-Bの折り畳み構造、N型カルシウムチャネルとの結合様式を解析する。
結果: カルシウムチャネルを孔化させる酵素による折り畳みに、SCP-3966-Aタンパク質構造のN末端寄りの部分が関与していることが確認された。この際、不在C末端は孔に差し込まれるように移動した。SCP-3966-Bの動作も類似したものであったが、C末端の突起部は孔に入り込もうとして失敗し、N末端の結合を不安定化させ、チャネルは本来の構造に戻った。
SCP-3966-Aの末端部分のタンパク質構造をモデル化する試みは、結論が得られなかった。
平たく言えば、プログラムがクラッシュした。出力は意味不明で、数字は爆散した。- R.アージェント
SCP-IMシステムに保存された通信
RodArg: コーデリア?今いる?
CArgent: いたのね、ロデリック。調子はどう?
RodArg: 良くは無い。今担当しているプロジェクトが全く意味不明だ。助手は不眠で、今度は彼女の脳脊髄液からステルスタンパク質が見つかった。
CArgent: 彼女の何だって?どうやって見つけたの?
RodArg: …脊髄穿刺を受けてもらった。
CArgent: 随分大げさじゃない?何をそんなに怖がっているの?
RodArg: 送る。
<==scp3966.scpを送信==>
CArgent: 確かに、変ね。タンパク質一つにこんなに時間をかけているとは思わなかった。待って、これ認識災害チームにモニターされてる?
RodArg: うん。すまない。言っておくべきだった。
CArgent: 私も悪夢を見るはめになるわけね。気の利く兄弟だこと。
RodArg: ただの予防措置だ!認識災害があるかどうかなんて誰も分かってない!大丈夫だよ。感染させているわけじゃない。本当に。
CArgent: 言い訳ばかり。らしくもない。私に何か出来ることはある?
RodArg: 折り畳みモデルの出力を見てくれる?C末端で破綻するんだ。計算がおかしくなっている。
CArgent: それで異常物理博士に確認して欲しいと。いいよ、見てみる。
CArgent: なるほどね。通常ベクトルで見ようとするとおかしくなるけれど、四元数を使えば数値を単純化出来る。
RodArg: 四元数?何?
CArgent: まず、複素平面は分かるよね?一つの軸が実数(1, 2, 3)で、もう一つがそれに垂直な虚数軸(i, 2i, 3i)。
RodArg: うん、大丈夫だ。
CArgent: 四元数はiだけを使うのでなく、i、j、kを使う。3つのイマジナリーナンバー。3つの軸が全て実数軸に垂直。
RodArg: それをどうやってイメージすれば?
CArgent: まあ無理ね。4次元空間が必要になってくるから。
RodArg: じゃあ、このタンパク質は― クソ。
CArgent: 今度は何?
RodArg: ああ、ごめん、行ってくる。緊急の用事だ。また後で話す。
実験3966-8
対象: パウルコイック次席研究員
手順: 対象のCSFよりSCP-3966-Aを採取し、予備的な診断を行う。
結果: 時刻0015、対象が着用していた生命反応モニターがアラームを発し、同氏はベッドで死亡した状態で発見された。CSFの体液分析は5.1mg/dLのSCP-3966-A及び1.6mg/dLのSCP-3966-Bの存在を示した。死因はSUNDSと見られる。神経組織の分析により、SCP-3966-Aに由来する細胞孔と、体積の減少した神経細胞が多数発見された。
毒素分析はシクロベンザプリン及びゾルピデムの大量服用を示した。これらは強力な鎮痙剤・鎮静剤であり、副作用による麻痺が発生し得る点に注意が必要である。心肺機能が影響を受けた様子は見られないものの、骨格筋の活動は顕著に減少していたことが確認された。
主任研究員付記: 運が良かった。CSF試験体を一本落としたが、割れたりせず、結果としてSCP-3966-Bしか含まれていなかった。本当に仮眠が必要だ。 - R.アージェント
研究3966-ベータ
手順: SCP-3966に対応するゲノム配列の自動探索の継続。
結果: 完全な一致は発見されず。最も類似した(87%)のは、SCP-848の糸に含まれるタンパク質。
主任研究員付記: SCP-848が一体どこから獲物を捕まえて来ているのか、全く分かっていない。睡眠薬を使う訳にはいかない。蜘蛛と寝る必要があるなら、そうしよう。 - R.アージェント
実験3966-9
対象: ロデリック・アージェント主任研究員、D-51174(対照)
手順: SCP-848収容チャンバー内で睡眠実験を行う。
結果: 対象は計9時間、問題無く睡眠を取ることができた。収容チャンバーに入って5時間後に対象は一度目覚め、対照実験を中止し、D-51174を収容チャンバー内に移動させた。
主任研究員付記: 彼に延々と寝返りをさせておく訳にも行かない。私はよく眠れた。Dクラスは私や蜘蛛と一緒することに抵抗したが、もとより選択権は無い。彼は丸まって、私に掴まってきた。落ち着かせるのに結構な手間がかかった。本当に蜘蛛が嫌いなようで。目覚めると、一匹が顔の上を這っていた。エリーが蛹に包まれているのを見る夢を何度も見た。今日の巣は一際厚い。コーデリアに教えないといけない。きっと、治っているはずだ。 - R.アージェント
SCP-IMシステムに保存された通信
RodArg: やあ。少し気分が良くなってきた。
CArgent: ああ、ロデリック。来たのね。すごく心配してた。助手については聞いた。お悔み申し上げます。
RodArg: ああ。良い人だった。まだかなり混乱している。どうして彼女が致命的な量のSCP-3966-Aを貰ったのか分からない。寝たら死ぬんじゃないかと心配だった。CSFは測っていないが、兆候は出ている。
CArgent: Dクラスはどうしたの?
RodArg: まだ生きてる。一度も睡眠補助を与えられていなかった。自分が眠れていることに気付いたから、一緒に収容チャンバーに来てもらった。
CArgent: 収容チャンバー?…聞かないでおく。私は大丈夫だと思う。この件が気にかかって、引きつる度に感染していないか気にしていたけど。
RodArg: 本当にすまない、コーデリア。こうして、自分のことばかりで、そっちの事情のことは全然考えていなくて。
CArgent: 夜に一回や二回落ちる感覚があるのは、前からのことだから。多分何も変わっていない。
RodArg: 良かった。それで、タンパク質はおそらく4次元の物だと言っていたよね?
CArgent: その方が数字はよく当てはまる。カルボキシ基が抜けているのはそれが原因で、隣のアミノ酸と繋がっているけれど、私達には見えない。
RodArg: どうしたら見える?いや、どうして見えないんだ?
CArgent: きちんと説明出来るかどうか…平面世界(Flatland)は聞いたことある?
RodArg: 二次元の世界で、人が全部図形の?
CArgent: それね。あなたは三次元の住人で、平面世界を見下ろしている。そこには誰かの家があって、全部を一度に見ることが出来る。どの部屋に住人がいるのか、戸棚がどこか、全て。でも住人達はあなたが全く見えない。それはあなたが平面世界にいなくて、上から見下ろしているから。平面世界に"頭上"は存在しない。
RodArg: それなら、平面世界に手を伸ばさない限り、住人には気付かれない?
CArgent: その通り。それで指を使って平面世界に触れたとしても、彼らには指先しか見えない。
RodArg: つまり、こちらからは4次元生物の断片しか見えないけれど、あちらからは全て見えていると。
CArgent: 分かったみたいね。でもそれだけじゃない。あなたは平面世界の家の台所の棚に手を伸ばして、コップを取り出して、テーブルに置くことも出来る。棚を一回も開けずにね。
RodArg: 待って、こちらが家の中も全て見えているなら、棚の中さえ…それなら人の中身も見えているわけだな?触れるところに?
CArgent: そう。
RodArg: …ところで、お爺さんは睡眠中に亡くなったよね。
CArgent: そうだね。20年くらい前、だったかな?未だに寂しく感じる。確か心臓発作だったよね?
RodArg: 友人から検死結果を引っ張ってきてもらった。実際は原因が分からなかったらしい。ただの老衰だと書いてあった。
CArgent: 何、別の原因に心当たりが?
RodArg: 試験管を落としたが、中にはSCP-3966-Bしか入っていなかった。人は痙攣したり、動き回ったりするが、最終的に臓器から見つかるのはBだけだ。もし平面世界に手を伸ばして、彼らが動いたら、彼らに引っ張られる、そうだよね?
CArgent: そう。同じように、あなたが引けば彼らには加速度が働く。感じることもできる。
RodArg: でもそれは、気付かない方向の力だ。落下でなければ説明が付かない…最後の実験をやらないといけない。うまくいけば、説明を改訂することになる。ありがとう。気を付けて、おやすみなさい。
実験3966-10
手順: ガラスマイクロピペット格子のそれぞれにN型カルシウムチャネルを固定した試料を準備する。一本の光ファイバーを各ピペットの先端まで通す。器具は等張の25%SCP-3966-A溶液に浸される。カルシウムチャネルが孔に再構成される際、光ファイバーは孔に差し込まれ、視覚情報が記録される。
結果: チャネルの孔化は完了した。光ファイバーはピペットの先端から孔の中に10μm分差し込まれた。外部顕微鏡からは、光ファイバーがピペットより先を通過した様子は観察されなかった。手順に従い、画像の生成に成功した。