
SCP-3983主要洞窟の洞口部。SCP-3983-03の消滅によって生じた閃光に注目。
特別収容プロトコル: SCP-3983は遠隔地に位置しているため、物理的な収容は不要です。海洋捜査部隊 シグマ-58 “海底生物”は、海洋調査機関によるSCP-3983付近への遠征が計画される兆候が無いかを監視します。
説明: SCP-3983は太平洋南部のトンガ海溝のホライゾンディープにある洞窟です。海面から約10800mの深さに洞口部が位置しています。SCP-3983は米国海洋大気庁の有人探検隊の乗組員によって初めて発見されました。この発見に関する公的なレポートは財団のウェブクローラーによって探知され、SCP-3983に関する情報を持つ人間には即座に記憶処理を施し、SCP-3983は財団の管轄下に移されました。
SCP-3983の洞口部は海溝の壁に位置する狭い割れ目となっており、最も幅広いところでおおよそ2.5mです。内部は岩盤まで続く通路となっており、徐々に傾斜の増していく平均12°の上り坂が約200m続いています。坂の終端で通路は途切れ、空気で満たされた幅およそ75mの空間に繋がります。
この空間の中心は直径およそ15m、地面から1mの高さの石造りの演台になっています。左右の壁は複雑な高浮き彫りの彫刻で装飾されており、洞窟の壁から直接彫り抜かれたように見えます。
左の壁にはぼろ切れを着た、痩せた人間を模した彫刻が施されています。この彫刻は、尖った錨爪のある海軍様式の巨大な錨を背負っており、錨は彫刻とおおよそ同程度の高さ(≈3m)です。彫刻は背負う錨の重さによって、前かがみになっているように見えます。また彫刻の顔は、被っている頭巾によって不明瞭になっています。中心となるこの彫刻の周辺には、おそらく風や海の波を表現していると思われる、単純な渦巻き模様が彫られています。また、ロンゴロンゴ語の象形文字で記述された未判読の碑文が、その彫刻の上の壁面に刻まれています。この実例はSCP-3983-01に指定されています。
右の壁の装飾は非常に複雑できめ細かいものとなっています。これは多くの生物学的構造によって構成されていますが、その詳しい形状を特定することは困難です。特筆すべき要素として、触手、甲殻類の爪、昆虫の脚、フジツボ、サンゴ、鹿の角、脊髄・肢・頭蓋骨を含む人間の骨格の一部と思われる実体が含まれます。これらの要素は不規則に配置されているようであり、何らかの中心となる塊があることが示唆されていますが、その詳しい構造は不明です。彫刻の上には、アッカド語の楔形文字で "彼女は産み、全てを喰らう。種を蒔き、収穫する。病と健康を齎す。彼女に休息はない。" と記された碑文があります。この実例はSCP-3983-02に指定されています。
この空間の後方の壁は、天井の高さ(≈7m)まで積み重なった大量の人間の死体によって見ることができません。これらの死体には、様々な程度の腐敗が見られ、中には腐敗の傾向が見られない個体もありますが、実質的に白骨化している個体も存在します。
1日に1度、ホライゾンディープ上の海面における日の出と一致した時刻に、1体の死体が自発的に動き出し、死体の山から脱出します。この実例はSCP-3983-03に指定されています。山の中のSCP-3983-03の位置によっては、この行動にかなりの時間を要する場合があります。山から離脱したSCP-3983-03は立ち上がり、階段を上って演台の中心に立ちます。SCP-3983-03の脚が機能しない場合、対象は這って移動し、可能な限り直立した姿勢を取ります。
演台の中心に到達すると、SCP-3983-03は演説を始めます。SCP-3983-03が声帯や舌を有していない場合でも、この演説の内容は常に明瞭です。
演説が終了すると、SCP-3983-03は消滅し、即座に2つの彫刻の内1つが物理的な反応を示します。財団の自律海洋観測無人機(ANOD)06は、このイベントを数例記録しました。記録の実例は以下を参照してください。
日付 | SCP-3983-03の概要 | 演説の内容 | 結果 |
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2010年 4月 4日 | 著しい腐敗が明白にみられる、肥満の女性。対象の腹部と上肢には創傷が存在する。 | 「私は生涯を通して、一生懸命に働き続けました。決して働くのをやめませんでした。私はろくでなしと交わり、子供を産みました。私は子供たちを愛していました。彼らを愛し、私の持てる全てをもって育てましたが、私は無力でした。また、そのことは私にとって重荷でした。私は道を見失いました。結局のところ、私は子供たちを十分に愛せていなかった、ろくに頑張れてもいなかったのです。私は安堵を求めることに溺れました。私は失敗しました。二度とこのようなことは繰り返しません。私は私自身を活かすことを選び、重荷を受け入れます。」 | SCP-3983-03は青色の閃光を発しながら消滅する。大量の結露がSCP-3983-01表面上で融合し、床へと流れ落ちる。 |
2010年 5月 13日 | 背の高い、やせ型の男性。皮膚が青白いことを除き、ほぼ腐敗の兆候は見られない。 | 「私はぜいたくな暮らしのために、この職を選んだわけではない。私の使命は、生命とその永続化にある。私は皮膚を縫い、骨を接ぎ合わせ、病気を治療してきた。私たちが停滞に陥るのを許すことなどできない。たとえ恐ろしい変化を受け入れる必要があったとしても、私たちは強く、健康でなけらばならないのだ。私は腰抜けではない。私は屈しない。永遠に戦い続けることを選ぶ。私に休息など無い。」 | SCP-3983-03は緑色の閃光を発しながら消滅する。アメリカヅタ(Parthenocissus quinquefolia)に似た蔓草がSCP-3983-02表面から生え、その後急速に腐敗・崩壊する。 |
2010年 7月 8日 | 背が高く、肩幅の広い男性。腐敗は軽度。上腕から胸部にかけて、多数の刺青が施されている。 | 「クソくらえだ。今まで誰にも俺の心を踏みにじるようなことはさせなかったんだ。俺は他人に嫌がらせをするためだけのバカなギャングになんか二度と入るつもりはない。楽しみは終わった。今回こそは、お袋が望んでいたような正しいことをする。このチャンスを無駄にはしない。今度はしない。俺は最強の荒くれだ、きっとお前を夢中にさせてやる。よく見てろ、アバズレ共。マニー マルケスは、重荷を受け入れるぞ。」 | SCP-3983-03は青色の閃光と、トキイロコンドル(Sarcoramphus papa)の鳴き声に似た音を発しながら消滅する。SCP-3983-01の体勢が僅かに変化し、錨がより直立した状態になるよう調整される。 |
2010年 6月 2日 | 背の低い女性。腐敗が進行しており、明確な特徴を検出することが難しい。対象は少なくとも、死亡後1年以上は経過していると推測されている。 | 「あたしは何者でもなかった。あたしが知っていたのは、痛みと憎しみだけだった。チャンスが欲しい。あたしの受けた仕打ちを味わせてやる。あたしに休息なんてない。」 | SCP-3983-03は緑色の閃光を発しながら消滅する。SCP-3983-02表面の至る所から血液が発生し、徐々に凝固・乾燥する。 |
2010年 7月 17日 | 小さな骸骨。5-6歳の児童の遺体であると推測されている。 | なし。SCP-3983-03は演台の中央に立ったが、全く声を発さず、腕を胸郭に添わせて震えていた。 | SCP-3983-01とSCP-3983-02の最初の明白な活発化。SCP-3983-02は、触手をSCP-3983-03に伸ばす。SCP-3983-01は即座に壁の凹面から外れ、演台の上に向かって移動する。SCP-3983-01は錨をSCP-3983-02の触手に向けて振り回し、触手を粉砕する。およそ140dBの轟音が発生し、空間内を振動させ、ANOD-06のマイクロホンの一時的な断絶を引き起こす。SCP-3983-01はSCP-3983-03とSCP-3983-02の間に立ち、錨を演台の上面に叩きつける。46秒間の活動停止の後、SCP-3983-03は青色の閃光を発しながら消滅する。SCP-3983-01は片方の手を上げ、短時間SCP-3983-02を指し示す。その後、SCP-3983-01は錨を背負い、元いた凹面の以前と同じ位置に戻る。 |
2010年 11月 27日 | 腐敗の進行した、背の低い女性。腹部と手足にある裂傷、多数の肋骨の骨折をはじめとした、顕著な損傷がみられる。 | 「私は私の道をゆく。」 | インシデントレポート 3983-01を参照。 |
現在、これらのイベントに込められた意味を明らかにするための調査が進行中です。これらの関係の規模の究明を目的として、SCP-3899との有意味なコミュニケーションを確立する内容の出撃計画が立案されています。