SCP-3990-JP
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SCP-3990-JP

アイテム番号: SCP-3990-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-3990-JPは缶に入れられた状態で低脅威度物品収容ロッカーにて保管されます。

説明: SCP-3990-JPは製造元不明のクッキーです。SCP-3990-JPが入れられていたスチール缶の側面には「うんちっちクッキー!」という製品名がポップな字体で記されています。また、缶のラベル中央部には人間の大便を模したとみられる一頭身のキャラクターが載せられています。SCP-3990-JPに関する説明文、成分表示等は一切ありません。

SCP-3990-JPは8cm程の大きさであり、デフォルメされた人間の大便のデザインになっています。SCP-3990-JPの摂食者は約15分後に極度の腹痛を訴え、30分以内に約3kgの大便を排出します。便は一般的な成人男性の普通便よりも太く、とぐろを巻くような形になっており、視認者の多くは「児童向けマンガ/アニメに出てくるような便」と形容します。摂食者の状態から、SCP-3990-JPは自身を核にして大腸内で有機物を生成し、大量の大便を作っていることが判明しています。この有機物の核となったSCP-3990-JPは消化液の影響をほぼ受けず、そのまま体外へ排出されます。

SCP-3990-JPは一部のみの状態でも効力を発揮しますが、欠片のサイズがあまりにも微小な場合は異常性がほぼ失われます。缶のラベルには7枚入りと記載されていますが、缶内に現存しているSCP-3990-JPは5枚のみです。

発見: SCP-3990-JPは2015年に自殺した海原晶氏の自宅アパートから発見されました。海原氏の主な自殺理由は多額の借金を抱えた事だということが判明していますが、アパート内で発見された遺書からはSCP-3990-JPの異常性に関する記述の他、「SCP-3990-JPを入手したことで人生が破綻した。」「あいつは俺を忘れてない。」1という趣旨の記述が見つかっています。遺書によると海原氏は1997年2にSCP-3990-JPを入手し、同級生へのいたずら目的で使用していました。

海原氏の元同級生を調査した結果、「白岩健」「賀川哲夫」という2人の人物がSCP-3990-JPを摂取していたことが明らかになりました。なお、このうち賀川氏は1997年に小学校からの下校途中で自殺しています。

以下は、SCP-3990-JPを摂取した人物の一人である白岩氏へのインタビュー記録です。
インタビュー記録3990-JP-1

対象: 白岩健

インタビュアー: Agt.不黒根

<録画開始>

Agt.不黒根: こんにちは白岩さん。お忙しい中我々にご協力いただき誠にありがとうございます。先程ご説明したとおり、海原さんの人物像についていくつか質問をさせていただきます。また、我々は白岩さんがどのような発言をしたとしても警察やその他関係者に報告することはありません。事実をそのままお話ください。

白岩氏: もちろん構いませんよ。あんなクズの過去なら遠慮なく暴露できますから。

Agt.不黒根: 海原さんは白岩さんにいじめを行っていたとお聞きしているのですが、間違いありませんか。

白岩氏: 事実です。私ともう1人、賀川という生徒がいじめの標的にされていました。確か2年くらいいじめられていたと思います。最初の方は悪口くらいだったんですけど、最後の数ヶ月くらいはほとんど奴隷みたいな扱いでした。殴る蹴るは当たり前で、酷い時はその辺に落ちてる虫を食べさせられたりしました。あの時の辛さと屈辱は今でも鮮明に思い出せます。刑事さんも知ってると思いますけど、小学校卒業前に賀川はとうとう自殺して、海原は消えました。その後は一切会ってないんで近況はわからないですけど、大方ろくでもない生き方をしてるでしょうね。

Agt.不黒根: 海原さんが自殺したことはご存知でなかったのですね。

白岩氏: え、死んだんですか。しかもあの海原が自殺なんて。

Agt.不黒根: 自殺するような人間ではなかったということでしょうか。

白岩氏: そりゃまあ、とにかく自己中心的で傍若無人な男でしたし。一体何があったんですかね。

Agt.不黒根: 遺書には小学校時代に手に入れたクッキーの話が書かれていたのですが、心当たりはありますか。

白岩氏: クッキーですか。ああ、よく覚えてます。うんこの形のふざけたお菓子ですよね。こう、マンガにあるような綺麗なとぐろをまいたやつ。確か小学校卒業の数週間前に突然海原が持ってきていました。

Agt.不黒根: 海原さんはクッキーを手に入れた場所や、クッキーの性質について何か話されていましたか。

白岩氏: 「美味しいお菓子を買ってきたから食べてみろ」としか言われてなかったです。

Agt.不黒根: それで、白岩さんはクッキーを食べられたのですね。

白岩氏: ええ。海原に強制されて、丸々一枚パクっと。急に食べ物を渡してくるなんて絶対怪しいとは思いましたが、逆らうことはできないので嫌々食べました。

Agt.不黒根: 食べた後はどうなりましたか。

白岩氏: 給食中は何も起きませんでしたが、昼休みになってから海原に校庭へ連れ出されて、そこで強い腹痛に襲われました。多分クッキーに下剤のようなものが仕込まれていたんだと思います。

[白岩氏が軽い貧乏ゆすりを行う。]

白岩氏: トイレに行きたいと海原に訴えましたが全く聞き入れてもらえず、結局校庭の隅で催すことになりました。こんな状況なのにその、量が出て、恥ずかしさと惨めさで気が狂いそうになりました。海原は俺が出してる間ずっとニタニタこっちを見てきて、「ウンコ野郎」だの「マンガみてえなウンコ」って馬鹿にしてきて、本当にキツかったです。その後海原は出したものを片付けるよう命令してきました。私と賀川はそれを木の棒でぐちゃぐちゃにして、穴に埋めました。

Agt.不黒根: 辛い思い出をお話くださりありがとうございます。では次に、白岩さんとともにいじめられていた賀川さんについてお話いただけますか?

白岩氏: あー。賀川ははっきり言って、私以上にいじめられていたと思います。あいつは親が中途半端に金持ってたせいで頻繁にカツアゲされてましたし、ちょっと口が悪いところがあったので海原に殴られる回数も多かったです。まあ、今思えば賀川は人の気に障るようなことばっかしてたのでやや納得ですが。

Agt.不黒根: その賀川さんもクッキーを摂取していたのでしょうか。

白岩氏: はい。私が苦しむ様子を見せつけた上で、海原は賀川にクッキーを1枚渡しました。流石に賀川は逃げ出そうとしたんですがすぐに捕まり、軽く蹴られた後無理やり食わされていました。ここからが悲惨なんですけど、その日の昼休み明けにはちょうど全校集会が予定されてたんです。

[白岩氏が再び貧乏ゆすりを行う。白岩氏はやや興奮した口調になる。]

白岩氏: で、賀川のクッキーの効果が集会の真っ最中に発生しちゃって。凄まじい音とともにデカいうんこが放たれました。周りの男子は爆笑して逃げ回るわ、女子は大声で泣き出すわで集会は阿鼻叫喚の地獄になりました。

Agt.不黒根: その後、賀川さんはどうなったのでしょうか。

白岩氏: すぐに先生に連れられて早退したらしいです。そして、これが賀川を見た最期の姿でした。あいつはその日帰宅せず、近くの公園の木で首を吊りました。

Agt.不黒根: なんとも痛ましい話です。

白岩氏: ええ本当に。でもまあ悪いことばかりって訳でもないんですよ。この一件がきっかけで海原のいじめが明るみに出て、海原は賀川が死んだ日を境に一切学校に顔を出さなくなりましたから。

Agt.不黒根: なるほど。海原氏が遺書にクッキーについて記していたのはそれが理由なのですね。では最後の質問です。海原氏の遺書には「あれは俺を忘れてない」という文言があったのですが、何かご存知ですか。

白岩氏: あー。いえ、誰のことだか全く知りません。

Agt.不黒根: 分かりました。では質問は以上です。ありがとうございました。

<録画終了>

当インタビュー終了後、Agt.不黒根の指摘によって白岩氏の発言に2つの疑義が浮上しました。指摘された点は以下の部分です。

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疑義となる点1: SCP-3990-JPの枚数に関する相違


詳細: 白岩氏は「海原氏に強制されて、自分と賀川がそれぞれ1枚ずつ消費した」と発言しているが、SCP-3990-JPの缶に異常性の説明は記されてなかったことから、海原氏はSCP-3990-JPの摂食無しには異常性を発見できなかったと考えられる。よって海原氏もSCP-3990-JPを摂食しており、SCP-3990-JPは発見時7枚中4枚のみ残っている必要がある。しかしSCP-3990-JPは7枚中5枚残っており、白岩氏の発言には誤りがあると考えられる。


備考: SCP-3990-JPは欠片であっても異常性を発揮するため、海原氏が完全に摂食せず、欠片を賀川氏に渡していた場合この疑義は消滅する。なお、白岩氏自身はSCP-3990-JPを丸々一枚摂食したと発言しているため、欠片を食した可能性は無い。

疑義となる点2: 海原氏の遺書内の記述に関する発言


詳細: 「あいつは俺を忘れてない」という記述に関する発言への疑義。インタビュー中、Agt.不黒根が白岩氏に対して意図的に「あれは俺を忘れてない」という文言に言い換えて質問したところ、白岩氏は「誰のことか知らない」と返答した。「あれ」という曖昧な表現であれば人物名ではなく組織名などの可能性も考えられたが、白岩氏は人物名であると断定していたため、何らかの理由で虚偽の回答をしていた可能性が浮上する。


以上の理由から、白岩氏はSCP-3990-JPの使用経緯及びその異常性について意図的に秘匿していた可能性があり、白岩氏に対する再インタビューが許可されました。

インタビュー記録3990-JP-2

対象: 白岩健

インタビュアー: Agt.不黒根

<録画開始>

白岩氏: まさかまた呼ばれるとは思いませんでしたが、今回はどのようなご要件でしょうか。

Agt.不黒根: 今回はそこまで長いお話にはなりませんので、リラックスして、可能な限り正確な記憶をもとにお答えください。

白岩氏: 分かりました。

Agt.不黒根: それでは質問します。賀川氏は白岩さんと同様にクッキーを丸々一枚食べられたのでしょうか。

白岩氏: はい、一枚しっかり飲み込んでましたよ。これ前のインタビューと何が違うんですか?

Agt.不黒根: 分かりました。では、質問の意図についてご説明します。

[疑義「SCP-3990-JPの枚数に関する相違」についてAgt.不黒根が説明する。]

Agt.不黒根: そして、今白岩さんがおっしゃられた事によりこの矛盾が決定的になりました。当時の状況や、クッキーの異常性についてまだ隠してることがあるのでしたらお話いただけますか?

[白岩氏は無言で宙を見つめている。]

Agt.不黒根: 白岩さん?

白岩氏: あ、いやあ。単にびっくりしただけです。まさかそこまでバレるなんてなあ。確認ですが、何を言っても警察には一切伝えないんですよね?

Agt.不黒根: もちろんです。

白岩氏: じゃあもう正直に話しますか。実は、賀川にクッキーを食わせたのは俺なんです。あの鈍臭いチビ、頭空っぽなくせにやたらと反抗したがるもんだから、毎日のように海原をキレさせてたんですよ。で、その鬱憤が俺にも来るっていう。腹立てるなって方が無理でしょう。

Agt.不黒根: なるほど。

白岩氏: 俺がクッキーを食ったあの日も、賀川が朝からやらかして海原をイラつかせていました。だから本来は賀川だけが罰を受けるべきなのに、なぜか俺がみじめな思いをする羽目になりまして。その後賀川もクッキーを食べさせられるのかと思いきや、海原は俺へのいじめで満足して帰ってしまい、仕方なく俺がやることにしたんです。

Agt.不黒根: しかし、どのようにしてクッキーを賀川さんに食べさせたのでしょうか。その場にはクッキーの欠片すら無かったと考えられますが。

白岩氏: いえ、欠片ならありましたよ。

Agt.不黒根: どういうことですか。

白岩氏: 私が出した便の中ですよ。

[白岩氏の言動が興奮した口調に変化する。]

白岩氏: どうやらあのクッキーは消化されないらしくて、便と一緒に欠片がそのまま出てきたんです。だから賀川をとっさに押さえつけて、試しにその欠片を食わせてみたら見事にあいつも派手な下痢を起こしてくれました。

[白岩氏は明確な興奮を見せ、時折机を殴打する。]

Agt.不黒根: 白岩さん、あなたは賀川氏に排泄物を強制的に摂取させたということですか。

白岩氏: だから私そう言ってますよね。そういうことなんですって。完璧でしょう?下痢が起きたタイミングも奇跡的でした。あの日はちょうど昼休みの後に全校集会があったんですけど、その集会のど真ん中で派手に漏らしたんです。当然集会はパニックになって、賀川は即帰宅になりました。

[白岩氏が机の脚部を激しく蹴る。]

Agt.不黒根: 白岩さん一旦落ち着きましょう。

Agt.不黒根: この時教師にチクられるか不安だったんですけど、結局賀川は何も言わずに帰ったらしいです。[笑い声] あ、賀川が自殺したのは確かその帰り道だった気がします。ラッキーなことに、賀川が死んだことで学校がようやくいじめ問題に気づいて、海原は次の日から学校に来なくなりました。

[白岩氏が突然動きを止め、無表情に変化する。]

白岩氏: すみません、あの時の思い出を振り返るとちょっと興奮してしまって。話してて気づいたんですが、やっぱりあの時の事は完全に脳に刻まれているみたいです。

Agt.不黒根: それは過去の行為に罪悪感を持っているからでしょうか。

白岩氏: うーん、それは全然違うんですよね。なんつーか、成功体験なんですよ。 一般的には小学生の頃の思い出なんて大したもんじゃないでしょうけど、私には忘れられない経験でして。その後の人生も、この成功体験に引っ張られてきたようなものです。結局この時以上に自分が輝いてた時期がなかったんですね。それで今は、かつて私を解き放ってくれたクッキーのように、子どもたちを笑顔にしたいと思って仕事をしてるんです。

Agt.不黒根: 理解はいたしました。では次に、白岩さんの発言のもう一つの矛盾点に関して質問させていただきます。

[疑義「海原氏の遺書内の記述に関する発言」についてAgt.不黒根が説明する。]

白岩氏: あー。あはは。そういえばそんなことを口走っちゃいましたね。

Agt.不黒根: 虚偽の発言であったと認めるということでよろしいですね。

白岩氏: ええ、まあそうです。「あいつ」が誰か知らないと言ったのは自分が海原を脅迫していたと勘違いされないためでした。

Agt.不黒根: 「あいつ」が指す人物は誰ですか。

白岩氏: まあ私のことで間違いないでしょう。答えは死んだ海原しか知りませんけどね。

Agt.不黒根: 「あいつ」が白岩さんであるという理由は何でしょうか。

白岩氏: 多分あのことですね。実は私、海原の持ってた例のクッキー缶をずっと持ってたんです。

Agt.不黒根: 詳しくお聞かせ願います。

白岩氏: 賀川が自殺した次の日、たまたまゴミ捨て場に例のクッキー缶が落ちてたんです。多分海原が慌てて処分しようとしたのでしょう。しかし私からしたらあのクッキー缶は自分を救ってくれた存在ですから、つい拾ってそのまま何年も保管してしまいました。でもほんの1ヶ月前、実は海原にあのクッキー缶を送ろうとしたんです。もちろん住所なんて分からないんで彼の実家に送ることにしましたが。あ、送った理由はこれです。

[白岩氏が財布から色褪せた写真を取り出す。写真にはコックコートを着た白岩氏と、「しあわせのクッキーハウス」と書かれた店舗看板が写っている。]

白岩氏: 私の店のオープン記念ってやつですね。最近やっと修行が終わって、店を持つことができたんですよ。簡単に言えばクッキーだけのお菓子屋さんです。子どもたちがこれを食べて、幸せな人生になってくれたらいいなと思い始めました。

[白岩氏が写真を乱雑に丸める。]

白岩氏: なんだかんだで海原がいなかったら店を出すことも無かったと言えるので、自慢半分お礼半分で店の写真とメッセージカードを添えてクッキー缶を送りました。メッセージカードには昔の話とか色々な思いを書きました。

Agt.不黒根: それを実家経由で受け取った海原氏は、白岩さんからの脅迫だと感じて思い詰めてしまったということでしょうか。

白岩氏: そういうことになりますね。いやあまさか私のことをそこまで恐れていたなんて意外でした。

[白岩氏が写真を乱雑に折り、開き、再び折る。]

白岩氏: あ、ちなみにうちのクッキーは例のクッキーと違って変な効果はついてませんから勘繰らないで大丈夫ですよ。銀座の師匠のレシピ通りですから。ただ、少しだけ隠し味を加えてますけど。

[白岩氏が写真を握りつぶす。]

白岩氏: [笑い声]そう、隠し味です。きっと、気づいた子どもの人生が明るく変わると信じています。

<録画終了>

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