SCP-4004-JP
評価: +63+x
blank.png
%E5%B8%8C%E6%9C%9B%E3%81%8C%E4%B8%80%E6%9D%AF.png

SCP-4004-JP-A

アイテム番号: SCP-4004-JP

収容クラス: Archon

特別収容手順: SCP-4004-JPはそれぞれサイト-81YHの管理下に置かれます。SCP-4004-JP-Aは対認識災害用保管庫に不透明なケースに入れた状態で収容されます。SCP-4004-JP-Bは標準霊安室に収容されます。実験時を除きSCP-4004-JP-AとSCP-4004-JP-Bが距離10m以内まで接近することは禁止されています。

収容以前のSCP-4004-JPに関する情報および対象者は、非異常のものとして関連事案が広まっていることと、対象者自身がSCP-4004-JPの異常性を認識していないことから、通常時の対応はそれらの監視のみに留められます。SCP-4004-JP-Bの応援会名義で年忌法要を開催し、対象者の援助欲求を制御します。各種関連事案については内集団バイアスによる異常な熱狂というカバーストーリーを適用します。

説明: SCP-4004-JPは段ボール製の箱(以下SCP-4004-JP-A)とその元所有者である伴田大河氏(以下SCP-4004-JP-B)の総称です。SCP-4004-JP-Bは発見時には死亡済みでしたが、関連事案から生前と異常性が変化していないことが判明しています。SCP-4004-JPはA、Bの両方を直接目視した人物(以下対象者)に対して精神影響を及ぼします。

対象者はSCP-4004-JP-Bに対して憐憫の情を覚え、何かしらの援助をしたいと強く思うようになります。しかし後述する方法を除き、いかなる形式の援助もSCP-4004-JP-Bに対して相応しくないと考えます。対象者は唯一SCP-4004-JP-Aの中に「希望」と記載された紙を入れることが最高の援助だと認識し、これを行うことで強い達成感を覚えます。この精神影響は記憶処理等での除去は不可能です。

SCP-4004-JPに起因する事案は、少なくとも20██/██/██から発生していることが確認されています。各事案においては路上生活者であるSCP-4004-JP-Bに対して、希望を与えられたという証言が共通しています。しかし明らかに異常であると断定しきれないものであったため、2007年に開始された超常証跡データベースを用いた異常存在探知による発覚も大幅に遅れることになりました。

SCP-4004-JP関連事案001

発生日時: 20██/██/██

概要: 大学生の箱崎氏がSNSのTwitterでSCP-4004-JP-Bに関する旨を投稿した。インターネット上におけるSCP-4004-JP関連の情報では最古のものになる。以下は箱崎氏へのインタビュー記録である。

対象: 箱崎氏
インタビュアー: Agt.馬場
付記: Agt.馬場は高い認知抵抗値を有している。


<記録開始>

Agt.馬場: 箱崎さんがあの段ボール箱を知った経緯を教えてください。

箱崎氏: 箱っていうかあのおじさんじゃないですか?知ったっていうとあの辺にに出掛けてぷらぷらしてたらそこでおじさん見かけまして、その瞬間絶対この人を助けないとって思ったんですよ。

うーんお恥ずかしい話なんですけど、今までそこまで誰かを助けたいと思ったことも無かったんですよね。でもここでそう思ったってことは、俺もようやく誰かに優しくできるような大人になれたんだなってことだと思うんですよ。

でも例えばここでただお金を渡してってのも何か味気ないじゃないですか。お金があれば幸せだって言いきれるほど人間って単純じゃないですし。なんかお金で喜ぶ人間って言外で言ってるようで失礼じゃないですか。

Agt.馬場: 個人的にお金は結構大事だとは思いますよ。

箱崎氏: まあまあまあもちろんお金が必要なことだって色々ありますけど、それは今じゃないなって思ったんですよ。でまあ他にも食べ物とか洋服とかウチに泊めるとか色々考えたんですけど……なーんかどれもしっくりこないんですよね。どれもどれもこのおじさんが本当に欲していることじゃないなって。

それでめっちゃくちゃ悩んでるところに多分サラリーマンの人が寄ってきて、もしかしてこのおじさんに出来ることで悩んでますかって言われたんです。えーなんで分かるんですかって聞いたら私も昔同じこと思いましたからって、まさかの人生の先輩だったんです。

そしたらその人カバンから紙とペンを出して、そこに希望って書いて段ボール箱に入れたんですよ。えーどういうこと?って思ってたら顔に出ちゃってたんでしょうね。不思議に思う気持ちも分かりますけど、やってみてくださいって紙とペンを渡されたんです。

それでまあ自分でもやってみたら、これが本当にびっくり、これこそが俺が、いや俺とおじさんが求めてたことだーってのが感覚で分かったんですよ。やはり人が人に与えられるもので最も尊いものは希望、金だ飯だなんて考えてた自分がもう恥ずかしくて恥ずかしくて。

そのサラリーマンの人も自分の先輩に教えてもらったそうなんですけどね、それが俺に受け継がれてこうして希望の連鎖が繋がっていくんだなって思いましたよ。

Agt.馬場: いい話だとは思いますが、結局それは紙に書かれた希望というだけですよね。

箱崎氏: まあおじさんを知らない人はそう思いますよ。だから一度おじさんに会いに行ってください。たくさんの希望に満ち溢れて、それでニコニコしているおじさんを。おじさんは今も大変な境遇ですが、それでもニコニコ出来るのは俺の、みんなの希望で溢れているからなんです。そういう人が本当に大切にしなきゃいけないことをおじさんは身をもって教えてくれたんです。

<記録終了>



SCP-4004-JP関連事案019

発生日時: 20██/██/██~

概要: ██町の████幼稚園でSCP-4004-JPを利用した道徳教育が行われた。████幼稚園は幼稚園教諭の大半が本事案前に対象者となり、自身が担当する幼稚園生を積極的にSCP-4004-JPに暴露させていた。以下はこの教育を行っていた幼稚園教諭に対するインタビュー記録である。

対象: 福田氏(████幼稚園教諭)
インタビュアー: Agt.馬場


<記録開始>

[重要度の低い箇所を割愛]

Agt.馬場: まず福田さんは路上生活者の方、伴田さんをご存じでしたか。

福田氏: ご存じも何も、あの町で伴田さん以上に有名な方はいません。まさに道徳の体現者、いやそのものと言っても過言ではありません。なので亡くなられたと聞いた時は……本当に、本当に、惜しい方が亡くなられたと思います。

Agt.馬場: まったくその通りだと思います。それで伴田さんで道徳教育を行ったとはどういうことでしょうか。

福田氏: ええ、ご存じかとは思いますが、伴田さんは苦境に立たされても希望があれば人は生きていけるということを体現されている方です。これほどまでに貴い生き方をされている方を私は知りません。園児たちにも伴田さんのようになってほしいという想いで、私たちは伴田さんに希望の支援をさせていただいたんです。

Agt.馬場: なるほど、しかし伴田さんはその後に亡くなられたように身体面でも強い危機に晒されておりました。無論本来は行政が行うべきことではありますが、そのような物質的な援助も現実的には必要ということも教えるべきではないでしょうか。

福田氏: あなたのおっしゃることも理解はできます。人は希望だけで生きることはできないかもしれません。しかし逆に、希望が無い人は生きていると言えるのでしょうか。昨今無気力で生に頓着の無い若者が増えていると聞きます。あの子たちにはそんな死人のように生きているだけの人に、私はなってほしくありません。なので命よりも大事なものがこの世にあるってことも、今回のことで学んでほしいなと思っています。伴田さん、本当に……ありがとうございました。

[福田氏は泣き始める。]

<記録終了>



SCP-4004-JP関連事案067

発生日時: 20██/██/██

概要: 横浜を中心に活動しているYouTuberの萩原氏は横浜に関連する有名人を取り上げる動画シリーズを作製しており、その中で生前のSCP-4004-JP-Bに対するインタビューを行っていた。撮影は路上生活を行っている場所で行われており、撮影時点でSCP-4004-JP-Bは著しく衰弱している様子を見せた。以下はYouTubeに投稿されたインタビュー動画である。

萩原氏: はいどうも!横浜YouTuberのはぎちゃんです!今回お話させていただく浜っこさんはこちら!

SCP-4004-JP-B: ……ん、ああ、どうも。

萩原氏: 今話題のホームレスおじさん、伴田さんです!いやぁこの度は出演許可をしてくださって、ありがとうございます。

SCP-4004-JP-B: ええ、どうも。

萩原氏: それでは早速お聞きしちゃいますが伴田さん、これだけの希望をみなさんからいただいてるお気持ちを率直にどうぞ!

[萩原氏がSCP-4004-JP-Aをカメラの前に持ち上げる。]

SCP-4004-JP-B: そう、ですね。ええ、嬉しいです。はい。

萩原氏: ですよねぇ、この人と人の繋がりが希薄になった現代社会で、ここまで多くの人から慕われるというのはそれだけで偉業といって差し支えないでしょう!伴田さんご自身はどうしてここまでの存在になったなんてのはどう思われますか?……あれ、伴田さん?伴田さーん?

[SCP-4004-JP-Bが衰弱により応答が遅れる。]

SCP-4004-JP-B: ……ああ、はい。なんででしょうね、ちょっと分からないです。

萩原氏: そんなご謙遜を、やはりここまでの希望を集めるお方だ、お人が非常に出来ております。こういう方だからこそ、多くの人が希望をあげたいと思うようになったんでしょう。では最後に、伴田さんにとっての一番の希望を教えてください。ちょっと意地悪な質問かもしれませんが。

SCP-4004-JP-B: 俺の……俺の希望!

[SCP-4004-JP-Aをひっくり返し、地面に散らばった紙を漁る。]

萩原氏: 伴田さん?!

SCP-4004-JP-B: あ、あった。

[大量の紙から一枚を手に取りそれを萩原氏に見せつける。紙は他のものと同様に希望と書かれており、シワだらけになっている。]

SCP-4004-JP-B: これが、これが俺の希望です。これは俺が入れた希望です。これがあるから、俺は生きていけるんです。

萩原氏: これはチラシに書かれたものですね。一体どうしてこれが一番の希望なんですか?

SCP-4004-JP-B: これは本当に、本当に死ぬかもしれないと思った時の希望でした。寒くてひもじくて腹も減って……でもそんなことでも俺は、この希望があるから生きられたんです。これは俺にとって……唯一の希望なんです。

萩原氏: すごい熱の入れ様ですねえ。もしよろしければ、それはどなたが書かれた希望ってお聞きしてもよろしいですか?

SCP-4004-JP-B: ええ、これは俺が書いたものです。

萩原氏: え、伴田さんが?

SCP-4004-JP-B: はい、俺が入れたものです。ここに住み始めてしばらくで、俺はもうおしまいなんだって、そう思ってました。しかもこれは俺が俺の借金で招いた、完全な自業自得の境遇です。だから、だか

[SCP-4004-JP-Bは大きく咳き込む。]

萩原氏: 伴田さん、大丈夫ですか!ほら、今のあなたにはこんなに希望がありますよ。

SCP-4004-JP-B: あ、ああ大丈夫です……だから、もう俺にはこれっぽっちの希望しかないって、自嘲する気持ちで入れたんです。でも、そしたら、その希望を入れた途端、本当に希望が自分の中で湧いてきたんですよ!今俺は、俺にとっての希望になれたんだって!残されたたった一つの希望は俺が人生に絶望しないためのものだったんだって!……だから、俺はこれが、この希望があるってだけで生きていけるんですよ。

萩原氏: ……なるほどー、ありがとうございます!これからも伴田さんの生きる希望になれるように、みんな頑張っていきましょう!それじゃあ、ばいばーい!

回収された紙片の中に上記動画内でSCP-4004-JP-Bが作成したものと同じものが確認された。当該紙片は付近の生活困窮者支援団体が作成したチラシを用いたもので、配布日時は確認済みのあらゆるSCP-4004-JP関連事案よりも前のものだった。動画内の挙動を含めてSCP-4004-JP-B自身もSCP-4004-JPの影響下に置かれていたと考えられる。

SCP-4004-JP関連事案108

発生日時: 20██/██/██

概要: 死亡したSCP-4004-JP-Bを発見した地元住民の男性が、他住民を募って後日に大規模な葬儀を行った。葬儀は██町の██公園の夜に行われ、その形式に宗教性はなく送別会に近いものであった。この葬儀は行政への許可がないまま公共のスペースを使用したものであったにも関わらず、住民による通報や警察の出動がなかった。葬儀の翌日に職員が██公園に放置されているSCP-4004-JP-Bの遺体を発見したことにより発覚した。SCP-4004-JP-Bは棺桶を模した大きな段ボール製の箱に安置され、内部には大量の「希望」と記載された紙が投入されていた。

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。