SCP-4024
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アイテム番号: SCP-4024 Level 4/4024
オブジェクトクラス: Keter 機密

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SCP-4024の中心部を収容している寺院。


特別収容プロトコル: SCP-4024に影響されている領域は立入禁止ゾーンとして確立されています。境界線は収容エリア43の管轄下にある一連の機動前哨部隊によって監視されます。これらの前哨部隊は境界線の拡大に伴って移動します。クラスC以上のクリアランスを有する職員がSCP-4024と直接的に物理接触することは禁止されています。全ての職員は、領域内で経験される声や感情は現実のものではなく、無視すべきであることを念頭に置いてください。

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SCP-4024の推定規模は青で、中心部は赤で示されている。

説明: SCP-4024は、ゴビ砂漠に存在し、ある仏教寺院跡の内部に収容されている塩泉です。SCP-4024に完全に水没した物体や生物は、未知の場所へ即座に転移します。

SCP-4024の直近に位置する土地は、深刻な砂漠化と濃い霧の存在を特徴としています。非異常性の化学組成にも拘らず、SCP-4024が生成した霧の吸入は、知的生物に軽度の精神的苦痛と幻聴を引き起こします。

2018/10/24現在、SCP-4024影響領域の半径は約98kmであり、不確定の速度で拡大中です。中心部に接近するにつれて、SCP-4024の異常な影響もまた強度を増します。

補遺4024.1: 実験シリーズ4024-01

SCP-4024中心部の異常な空間転移特性の実験は2018/07/30、収容エリア-43のガンバータル・ツァヒア博士とジョナサン・ハリマン上級研究員の監督下で始まりました。注目すべき実験結果が以下にまとめられています。

オブジェクト ステータス 注記
ぺんてる社製シャープペンシル、1本。0.5mmの鉛芯が2本入っている。 回収不能。 オブジェクトは完全浸水した瞬間に未知の場所へ空間転移した。
UV/CKY-19モデル自動水中ドローン、1機。 回収不能。 物理的オブジェクトの空間転移に加えて、全ての映像・音声通信もまた完全浸水の瞬間に喪失した。
雄のイエネコ(Felis silvestris catus)、1匹。毛色は鼈甲色。右耳に裂傷あり。 回収不能。 無生物オブジェクトだけでなく、生物にも空間転移が発生する。

補遺4024.2: SCP-4024-1実例

2018/08/24、ジョナサン・ハリマン上級研究員の死亡と推定される結果を招いた事案の発生と、その後の検死調査によって、SCP-4024の液体内容物との直接接触は異常な反復性の夢、以下SCP-4024-1を引き起こすと判明しました。ハリマン研究員は2018/07/30、実験シリーズ4024-01の間に誤ってSCP-4024中心部と直接接触した後にSCP-4024-1実例を経験し始めたようですが、当該情報を公式な財団文書に記録することを私益のために差し控えるという過失を犯していました。

SCP-4024-1実例の広範な記録が、ハリマン研究員の私的な研究日誌から見つかりました。重要な発見を以下に抜粋します。

2018/08/03
毎晩のように奇妙な夢を見る。私は自分の放浪を制御できないらしい。足が勝手に動いているようなものだ。奇妙なテクニカラーの海を渡り、霧の中を迷いながら当てもなく歩くのにどれほどの時間を費やしたかもう分からなくなった。絶え間ない無意味なお喋りの声はとてもやかましく、自分の思考を意識するのもやっとの思いだ。感覚過負荷で頭痛がする。

時々、人間のようなものの姿を見るが、その存在は近付き過ぎると毎回薄れて消えてしまうし、向こうからは私が見えていない。彼らが知性体だとは考えていない。感覚さえ有しているとは思わない。これは全く以て魅惑的だ — そう、生涯一度の機会と言っていい。きっと途方もないブレイクスルーがここにはある、私が最初にそこまで辿り着いてやる。

2018/08/30
人生でこんなに興奮したことはかつて無い。素晴らしい。自由の女神像の上で不可視の敵と刃を交える、完全防備の戦装束に身を包んだ戦士。ウサギはクモになってフェラーリの真っ赤なルーフの上を素早く横切り、流し目の男になって運転席に飛び込む。沸き立つ水面の上、刈り取られた稲穂や洗濯機の間を裸足でクルクル回りながら通り過ぎてゆく妊婦。彼女は投げキッスを送り、白いハトに姿を変えて飛び去る。

余りに明白なことだ。彼らは原型なんだ。英雄、トリックスター、母親… それ以外に何が有り得るだろう? いきなり結論に飛びついているが、私が正しいのは分かっている。実に素晴らしい。夢の実現。自らが人間の意識の座にいると気付いたら、学問の徒は感激するのが当たり前というものじゃないか?

ハリマン研究員は2018/09/11、奇行とメンタルヘルスの急激な悪化 — 当時は以前からの抑鬱傾向によるものと考えられていた — を理由に無期限の医療休暇を申し渡されました。2018/10/22、ハリマン研究員の医療休暇からの復帰申請は承認されました。彼が最後に記録したエントリは以下の通りです。

2018/10/21
やあ、子猫くん。これはとんだ珍客だ。潜在意識が私を弄ぶためのトリックか、それとも私の仮説の反駁できない証拠なのか。雄のイエネコ、Felis silvestris catus、1匹。鼈甲色の毛に裂けた右耳。私は君があの呪われた泉の塩水の下に姿を消すのを見ていた。そして今ここに君はいる、私の夢に立ち込める霧の中を魚のように泳いでいる。猫の形をした私の灯台。

遂に理解した。門だ。自分が正しいのは分かっているが、それでも確信が持てない。これは昔からずっと漏れ続けている水門だ、私たちの精神に由来する果てしない悲哀の流れを現実世界に滴らせている。私が入ったら何が起こる?

好奇心が私を殺そうとしている。想像力の、人間のの具現体に足を踏み入れるという機会… 私は中に入り、この目で確かめなければならない。もしそうしなかったら、私は真に自分を科学者と呼べるだろうか?

これは、私の妄信だ。

2018/10/24、ジョナサン・ハリマン上級研究員は無許可でSCP-4024ゾーンに入場し、SCP-4024に身を沈めました。後ほど、1週間分の食料が収容エリア-43の保管庫から紛失していることが判明しました。ハリマン研究員は回収不能と見做され、死亡が推定されました。

補遺4024.3: 情報漏洩の可能性

2018/12/17の定期的な心理評価で、ガンバータル・ツァヒア博士は故 ハリマン研究員の登場する奇妙な夢を見たと報告しました。この問題に関するその後の調査は、世界各地の財団職員███名が2018年10月から12月にかけて、ハリマン研究員の体格および個人的特徴と合致する姿の男性の夢を見ていたことを明らかにしました。

2018/12/22、短編小説“スパイ・オン・ザ・ウォール”(オレクサンドラ・オレイニク著、2018/07/31にウクライナの文芸誌に掲載)が財団の注意を引きました。同作には、実験シリーズ4024-01に使用された財団特製の水中ドローンが、名称や数多くの内部機構も含めて正確に記述されていました。オレイニク女史は財団についての事前知識を有していませんでした。関連セクションの抜粋は以下の通りです。

ブラックジャックはドックの傍らに身体を強張らせて跪き、遠隔操作の海中車両が波間へ沈むのを見ていた。悪党どもがいつ押し寄せてきてもおかしくないが、今さら止めることなどできない。このミッションは重要度が高すぎる。そしてUV/CKY-19は唯一の希望なのだ…

後日、財団の調査で“ジョナサン・ハリマン”が登場する世界各地のメディア████点が追加で発見されました。全ての作品は2018/10/24、もしくはそれ以降に公表されています。作品には中国のアートシアターの映画、新作彫刻の発表会、イギリスの児童書シリーズなどが含まれます。以下はホイットニー・ブレーク著 “呪文のために立ち止まる(ヘムロックの魔術師シリーズ第4巻)” 157ページからの抜粋です。

「行け、弟子よ」 魔術師ハリマンは身を震わせた。緑の毒晶が急速に身体を包み込んでいても、彼の暗い目には熱に浮かされたような勝利の輝きが燃えていた。「お前はわしの声となれ。その足が許す限りの速さで逃げろ。わしの言伝を運ぶ者として—」

「でもあなたはどうするのよ?」 エルサベスは叫んだ。「置いてなんかいけない!」

「そんな事はどうでもよい」 老いた魔術師はしわがれ声を張り上げた。「わしらの使命の方が重要じゃ。お前は第四十三院のサリヴァン・コルネリウス・ペンドラゴンを見つけねばならん、そして奴に伝えろ…」

ハリマンは言葉を切り、喘いだ。足元で使い魔が悲し気にミャアと鳴いた。鼈甲柄の雄猫は主人を取り巻く結晶の牢獄を必死になって引っ掻いたが、それがダークエルフの呪詛の冷酷な歩みを遅らせるわけもなかった。

「何を伝えればいいの?」 エルサベスは夢中で顔を拭い、涙を堪えようとした。

「わしらが見つけたものを」 ハリマンは声を絞り出した。「門のことを、わしらが彼方の領域へ渡った術のことを伝えるんじゃ。初めから全てわしは正しかったと伝えてくれ。誓え、エルサベス!」

「誓うわ」 エルサベスの囁きは、しかし遅すぎた。結晶はハリマンの顔に達し、彼は世界から失われていた。

2018/12/26現在、更なる情報漏洩の可能性があるため、SCP-4024での浸水実験に用いる全てのアイテムは収容エリア-43の管理官に提出して承認を受ける必要があります。

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