クレジット
タイトル: SCP-4026 - 「守」る者 (原題: guardian "angel")
著者: Uncle Nicolini
オリジナル: http://www.scp-wiki.net/scp-4026
訳者: Rokurokubi
査読協力: to2to2 does not match any existing user name, ccle
アイテム番号: SCP-4026
オブジェクトクラス: Neutralized
特別収容プロトコル: 現時点では収容プロトコルは必要ありません。
説明: SCP-4026はイングランドのイースト・サセックス州にある、ビーチー岬として知られている石灰岩の断崖、推定100メートルに及ぶ土地に影響を与えている現象です。SCP-4026事象を活性化するためには、単身の対象者が自殺目的で影響範囲に接近する必要があります。崖の縁から5メートル以内に進入するとSCP-4026-1が現れ、対象者に接触します。
SCP-4026-1は年齢や性別が不明確な、人型と思われる実体であり、軽度の認識災害性を有します。これまでのところ、SCP-4026-1を捕獲、またはその特徴 (声を除く) を説明しようとする試みは失敗に終わっています。SCP-4026事象の生存者は、SCP-4026-1と対話した記憶はないと主張しますが、不可解な手段で命を絶つことを制止されたという点については想起でき、概して自身の行動に対して過剰に否定的な感情、嫌悪感を示します。対象が5メートル以内に居なくなった時、SCP-4026-1は消失します。
記録されたSCP-4026事象の93%が活性化を行った対象者の生存につながっています。
補遺4026.01: 2019/07/07、エリオット・シュナイダー (男性、32歳) が隠されたSCP-4026の観測領域に接近し、異常を引き起こしました。注目すべきことに、これはSCP-4026事象が5分以上続いた最初の事例でした。以下は、シュナイダーとSCP-4026-1の対話を書き起こした記録です。
<記録開始>
SCP-4026-1: 素晴らしい眺めだと思わないかい?
シュナイダー: なんてこった、いったいどこから出てきやがった。
SCP-4026-1: 私はいつもここら辺にいるんだ。実に楽しいものだよ。
シュナイダー: ああ、そうかよ。
SCP-4026-1: 君は飛び降りようと言うのかい? ここに来るほとんどの人の目的はそれだよ。
シュナイダー: だったら何だよ。守護天使を気取ろうってか? 止めようとしてくれるのはありがたいが、まあ、うん、俺だったらそんなことに首を突っ込みはしないね。頼むよ、どっか行ってくれ。
SCP-4026-1: これはこれは。私はむしろここに居たいね。雑談でもしようじゃないか。どうだい?
シュナイダー: 断る。なんでそんなに俺に構うんだ?
SCP-4026-1: まあそう気にするな。結婚はしてるのか?
シュナイダー: いや、してない。今年の2月に離婚して以来はな。
SCP-4026-1: 子供は? 奥さんが連れて行った?
シュナイダー: ああ、親権は完全にあっちにある。犬まで連れて行ったよ。
SCP-4026-1: はっはー、犬までね。奥さんは君をこっぴどく打ちのめしてしまったようだな。
シュナイダー: なんだってんだよ。お前、俺を飛び降りさせようとしてるのか?
SCP-4026-1: どうしてそうじゃないと思った? そのために私はここにいるんだ。
シュナイダー: おいマジかよ。
SCP-4026-1: 素晴らしい見せ物だよ。他に誰も見ていないのは残念だがな。
シュナイダー: ……そうやって楽しんでるわけか。イカれ野郎め。
SCP-4026-1: 見せ物をやってくれるのか、やってくれないのかどっちなんだ?
[30秒間の沈黙が続く。シュナイダーは苛立ちが募り、息を荒らげているのが聞き取れる。]
SCP-4026-1: それで?
シュナイダー: 決めたよ。
SCP-4026-1: そうかい? どうするんだ?
シュナイダー: まずお前が俺の質問に答えてからだ。
SCP-4026-1: いつもなら断るところだが……まあ、君なら約束は破らないだろう。言ってみたまえ。
シュナイダー: なんで人が飛び降りるのを見るのが好きなんだ?
SCP-4026-1: 理由なんて無いよ。何もしないよりかはましだね。
シュナイダー: 本当か? 人がこの崖から飛び降りるのを見るのがただただ好きなのか? そんなに単純なのか?
SCP-4026-1: もっと凄くて込み入った答えでも期待していたかな? 本当にそれだけのことなんだよ。さっさと次に進めよう。もう待ちくたびれたよ。
シュナイダー: くたばれ。
SCP-4026-1: そうだ、いいぞ。何とでも言いたまえ、これでもう大丈ぶっ──
[2人の間で争うような物音が15秒間続き、シュナイダーの荒い呼吸のみが聞こえるようになる。SCP-4026-1の悲鳴が上がる。]
[遠くでドスンという音がして静寂に包まれる。時折シュナイダーの呼吸音が入り込む。]
シュナイダー: ……クソっ……クソ! 警察が俺をぶっ殺しに来るぞ!
<記録終了>
財団のエージェントがシュナイダーを捕縛するため現場に急行し、SCP-4026-1を捜索しました。崖下の海岸に物体が激突する音や、シュナイダーの遠回しな供述にもかかわらず、遺体は発見されませんでした。これを最後にSCP-4026事象は発生しておらず、無力化されたと考えられています。
シュナイダーには標準的な再配置記憶処理の後、ロンドンで精神科医とセラピストが割り当てられました。